【R-18】魔王の生贄に選ばれましたが、思いのほか溺愛されました

臣桜

文字の大きさ
19 / 38

恥ずかしい!

しおりを挟む
「良かった。キャンディの効果は消えているみたいだな」

「キャンディ……」

 その単語を聴いて口の中に甘酸っぱい味を思い出し、私は急にめくるめく官能の時間を思い出した。

 ゆでダコになるのではというぐらい体が熱くなるのを感じ、私は「あぁぁ……」と声を上げながら布団の中へフェードアウトしてゆく。

「こら、アメリア」

 あああ……! 恥ずかしい! 恥ずかしい! 恥ずかしい! 

 私、こんな綺麗な人の前であられもない姿になって、変な声を出していたんだわ! あーっ!

 絶叫したい声を喉に留め、私は両手で耳を塞いで布団の中でもだもだと暴れる。

 エデンはしばらく沈黙していたが、羽根布団の上から優しく私をなだめてくれた。

「思い出したか? ……その、この上もなく可愛かったぞ」

 ううう……! 嬉しい、けど、恥ずかしいんです!

「そうむくれるな。……そうだ、俺のわがままにつきあってくれた礼として、いいものを見せてやろう」

 いいものと聞いて私は現金にも興味を示してしまい、少しためらってからモソモソと目から上だけを布団から覗かせる。

「イグニス、鏡を持ってきてくれ」

「えっ!? イグニスさんいらっしゃるんですか!?」

 部屋の中にイグニスさんがいるのかとびっくりした私は、とび起きて広い室内を見まわす。

 けれど、優しい色合いで統一された部屋の中には、私たち以外の気配はない。

「心配するな。今のは俺から遠く離れたイグニスに、念をこめて連絡をしただけだ。声に出したのは、事情を知らないお前が急にイグニスが訪れては驚くだろうと思ったから」

「あぁ……、そうなんですね。ありがとうございます……」

 びっくりしたぁ……。けど、エデンはそうやって私のことをさりげなく気遣ってくれているの、やっぱりとても優しいな。

 見つめていると震えてしまう位の美形で、私のことをお姫さまなんじゃないかと錯覚させるぐらいに優しくしてくれる。

 肌を重ねて彼の熱も知ってしまって……。


 気がつけば、あれほど「恐ろしい魔王」と思っていた人相手に、私はすっかり身も心も溶かされてしまっていた。

 チラッと隣を盗み見すると、どこか影のある超絶美形が少し気だるげに前髪をかき上げている。

 それが私の夫なのだと思うと、世界中に向かって大声で自慢したくなってしまう。

「鏡、って何ですか?」

 ベッドの下に落ちてしまっていたナイトドレスを拾い上げて、何とか胸を隠しつつ頭から被ると、私はエデンに問う。

「望むものを見ることができる、万望の鏡だ」

「望むものを……」

 オウム返しにつぶやき、魔王の城なのだから魔法の道具があっても不思議ではないと、私は顎に手を当てる。

 私の望むもの……。

 母さんの居場所。母さんが無事かどうか。それから村の様子。シスターサマンサや兄弟たちの無事。

 ただ、それだけを確かめたい。

 今になればエデンが残忍な魔王ではないというのは分かっているから、彼が村に危害を加えていないだろうことは承知している。

 けれど……、離れてしまった故郷を見たいという願望は、誰だって抱くものだ。

「声が少しかすれている。喉は痛くないか?」

「少し……」

 返事をするとエデンはベッドサイドに置いてある果物やお酒、水やジュース。その中から器用に瓶の中身を配合し、薄黄色の液体が入ったグラスを私にくれる。

「ハチミツを入れてあるから、喉にいいはずだ」

「ありがとうございます」

 言われてみれば喉は少し痛くなっていて、私は受け取った飲み物をコクリと飲む。

「おいしい……」

 レモンが入っているのか少し酸っぱくて、ハチミツが入っているからほんのり甘く、けれど味はそれだけじゃない。

「他は何が入っているんです?」

「さぁな? 感覚だけで混ぜたから、俺にもよく分からん」

「感覚で? 凄いですね……」

 つくづく、この人は色んなことに対して器用な気がする。

 魔王のお仕事って何をしているのか詳しくは分からないけれど、きっと膨大な量のお仕事を一人で片付けなくてはならないのよね。

 それを思うと、頭の回転も速くて手先も器用なのは自然なことなのかとぼんやり思う。

 そのときコンコンとドアをノックする音がして、イグニスさんが現れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

男として王宮に仕えていた私、正体がバレた瞬間、冷酷宰相が豹変して溺愛してきました

春夜夢
恋愛
貧乏伯爵家の令嬢である私は、家を救うために男装して王宮に潜り込んだ。 名を「レオン」と偽り、文官見習いとして働く毎日。 誰よりも厳しく私を鍛えたのは、氷の宰相と呼ばれる男――ジークフリード。 ある日、ひょんなことから女であることがバレてしまった瞬間、 あの冷酷な宰相が……私を押し倒して言った。 「ずっと我慢していた。君が女じゃないと、自分に言い聞かせてきた」 「……もう限界だ」 私は知らなかった。 宰相は、私の正体を“最初から”見抜いていて―― ずっと、ずっと、私を手に入れる機会を待っていたことを。

ヤンデレ王子を闇落ちから救ったら愛執まみれの独占欲に囚われました

大江戸ウメコ
恋愛
幼い頃に精霊の祝福である未来視の力が開花し、「夫である第二王子ナハルドに殺される」という己の運命を知った伯爵令嬢ツィーラ。この悲惨な未来を変えるべく、ツィーラは彼を避けようとしたが、ひょんなことから婚約者に選ばれてしまった! ならば、ナハルドが将来闇落ちしないよう、側で彼を支えることを決意する。そんな努力の甲斐あって、ツィーラへの好意を隠さず伝えてくるほど、ナハルドとの関係は良好になった。だけど、彼の並々ならぬ執着心のすべてを、ツィーラはまだ知らなくて――

巨乳令嬢は男装して騎士団に入隊するけど、何故か騎士団長に目をつけられた

狭山雪菜
恋愛
ラクマ王国は昔から貴族以上の18歳から20歳までの子息に騎士団に短期入団する事を義務付けている いつしか時の流れが次第に短期入団を終わらせれば、成人とみなされる事に変わっていった そんなことで、我がサハラ男爵家も例外ではなく長男のマルキ・サハラも騎士団に入団する日が近づきみんな浮き立っていた しかし、入団前日になり置き手紙ひとつ残し姿を消した長男に男爵家当主は苦悩の末、苦肉の策を家族に伝え他言無用で使用人にも箝口令を敷いた 当日入団したのは、男装した年子の妹、ハルキ・サハラだった この作品は「小説家になろう」にも掲載しております。

冷徹団長の「ここにいろ」は、騎士団公認の“抱きしめ命令”です

星乃和花
恋愛
⭐︎完結済ー全16話+後日談5話⭐︎ 王都最硬派、規律と責任の塊――騎士団長ヴァルド・アークライトは、夜の見回り中に路地で“落とし物”を拾った。 ……いや、拾ったのは魔物の卵ではなく、道端で寝ていた少女だった。しかも目覚めた彼女は満面の笑みで「落とし物です!拾ってくださってありがとうございます!」と言い張り、団長の屋敷を“保護施設”だと勘違いして、掃除・料理・当番表作りに騎士の悩み相談まで勝手に開始。 追い出せば泣く、士気は落ちる、そして何より――ヴァルド自身の休息が、彼女の存在に依存し始めていく。 無表情のまま「危ないから、ここにいろ」と命令し続ける団長に、周囲はざわつく。「それ、溺愛ですよ」 騎士団内ではついに“団長語翻訳係”まで誕生し、命令が全部“愛の保護”に変換されていく甘々溺愛コメディ!

【R18】純粋無垢なプリンセスは、婚礼した冷徹と噂される美麗国王に三日三晩の初夜で蕩かされるほど溺愛される

奏音 美都
恋愛
数々の困難を乗り越えて、ようやく誓約の儀を交わしたグレートブルタン国のプリンセスであるルチアとシュタート王国、国王のクロード。 けれど、それぞれの執務に追われ、誓約の儀から二ヶ月経っても夫婦の時間を過ごせずにいた。 そんなある日、ルチアの元にクロードから別邸への招待状が届けられる。そこで三日三晩の甘い蕩かされるような初夜を過ごしながら、クロードの過去を知ることになる。 2人の出会いを描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスを野盗から助け出したのは、冷徹と噂される美麗国王でした」https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/443443630 2人の誓約の儀を描いた作品はこちら 「純粋無垢なプリンセスは、冷徹と噂される美麗国王と誓約の儀を結ぶ」 https://www.alphapolis.co.jp/novel/702276663/183445041

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

世間知らずな山ごもり薬師は、××な騎士団長の性癖淫愛から逃げ出せない

二位関りをん
恋愛
平民薬師・クララは国境沿いの深い山奥で暮らしながら、魔法薬の研究に没頭している。招集が下れば山を下りて麓にある病院や娼館で診察補助をしたりしているが、世間知らずなのに変わりはない。 ある日、山の中で倒れている男性を発見。彼はなんと騎士団長・レイルドで女嫌いの噂を持つ人物だった。 当然女嫌いの噂なんて知らないクララは良心に従い彼を助け、治療を施す。 だが、レイルドには隠している秘密……性癖があった。 ――君の××××、触らせてもらえないだろうか?

処理中です...