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恥ずかしい!
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「良かった。キャンディの効果は消えているみたいだな」
「キャンディ……」
その単語を聴いて口の中に甘酸っぱい味を思い出し、私は急にめくるめく官能の時間を思い出した。
ゆでダコになるのではというぐらい体が熱くなるのを感じ、私は「あぁぁ……」と声を上げながら布団の中へフェードアウトしてゆく。
「こら、アメリア」
あああ……! 恥ずかしい! 恥ずかしい! 恥ずかしい!
私、こんな綺麗な人の前であられもない姿になって、変な声を出していたんだわ! あーっ!
絶叫したい声を喉に留め、私は両手で耳を塞いで布団の中でもだもだと暴れる。
エデンはしばらく沈黙していたが、羽根布団の上から優しく私をなだめてくれた。
「思い出したか? ……その、この上もなく可愛かったぞ」
ううう……! 嬉しい、けど、恥ずかしいんです!
「そうむくれるな。……そうだ、俺のわがままにつきあってくれた礼として、いいものを見せてやろう」
いいものと聞いて私は現金にも興味を示してしまい、少しためらってからモソモソと目から上だけを布団から覗かせる。
「イグニス、鏡を持ってきてくれ」
「えっ!? イグニスさんいらっしゃるんですか!?」
部屋の中にイグニスさんがいるのかとびっくりした私は、とび起きて広い室内を見まわす。
けれど、優しい色合いで統一された部屋の中には、私たち以外の気配はない。
「心配するな。今のは俺から遠く離れたイグニスに、念をこめて連絡をしただけだ。声に出したのは、事情を知らないお前が急にイグニスが訪れては驚くだろうと思ったから」
「あぁ……、そうなんですね。ありがとうございます……」
びっくりしたぁ……。けど、エデンはそうやって私のことをさりげなく気遣ってくれているの、やっぱりとても優しいな。
見つめていると震えてしまう位の美形で、私のことをお姫さまなんじゃないかと錯覚させるぐらいに優しくしてくれる。
肌を重ねて彼の熱も知ってしまって……。
気がつけば、あれほど「恐ろしい魔王」と思っていた人相手に、私はすっかり身も心も溶かされてしまっていた。
チラッと隣を盗み見すると、どこか影のある超絶美形が少し気だるげに前髪をかき上げている。
それが私の夫なのだと思うと、世界中に向かって大声で自慢したくなってしまう。
「鏡、って何ですか?」
ベッドの下に落ちてしまっていたナイトドレスを拾い上げて、何とか胸を隠しつつ頭から被ると、私はエデンに問う。
「望むものを見ることができる、万望の鏡だ」
「望むものを……」
オウム返しにつぶやき、魔王の城なのだから魔法の道具があっても不思議ではないと、私は顎に手を当てる。
私の望むもの……。
母さんの居場所。母さんが無事かどうか。それから村の様子。シスターサマンサや兄弟たちの無事。
ただ、それだけを確かめたい。
今になればエデンが残忍な魔王ではないというのは分かっているから、彼が村に危害を加えていないだろうことは承知している。
けれど……、離れてしまった故郷を見たいという願望は、誰だって抱くものだ。
「声が少しかすれている。喉は痛くないか?」
「少し……」
返事をするとエデンはベッドサイドに置いてある果物やお酒、水やジュース。その中から器用に瓶の中身を配合し、薄黄色の液体が入ったグラスを私にくれる。
「ハチミツを入れてあるから、喉にいいはずだ」
「ありがとうございます」
言われてみれば喉は少し痛くなっていて、私は受け取った飲み物をコクリと飲む。
「おいしい……」
レモンが入っているのか少し酸っぱくて、ハチミツが入っているからほんのり甘く、けれど味はそれだけじゃない。
「他は何が入っているんです?」
「さぁな? 感覚だけで混ぜたから、俺にもよく分からん」
「感覚で? 凄いですね……」
つくづく、この人は色んなことに対して器用な気がする。
魔王のお仕事って何をしているのか詳しくは分からないけれど、きっと膨大な量のお仕事を一人で片付けなくてはならないのよね。
それを思うと、頭の回転も速くて手先も器用なのは自然なことなのかとぼんやり思う。
そのときコンコンとドアをノックする音がして、イグニスさんが現れた。
「キャンディ……」
その単語を聴いて口の中に甘酸っぱい味を思い出し、私は急にめくるめく官能の時間を思い出した。
ゆでダコになるのではというぐらい体が熱くなるのを感じ、私は「あぁぁ……」と声を上げながら布団の中へフェードアウトしてゆく。
「こら、アメリア」
あああ……! 恥ずかしい! 恥ずかしい! 恥ずかしい!
私、こんな綺麗な人の前であられもない姿になって、変な声を出していたんだわ! あーっ!
絶叫したい声を喉に留め、私は両手で耳を塞いで布団の中でもだもだと暴れる。
エデンはしばらく沈黙していたが、羽根布団の上から優しく私をなだめてくれた。
「思い出したか? ……その、この上もなく可愛かったぞ」
ううう……! 嬉しい、けど、恥ずかしいんです!
「そうむくれるな。……そうだ、俺のわがままにつきあってくれた礼として、いいものを見せてやろう」
いいものと聞いて私は現金にも興味を示してしまい、少しためらってからモソモソと目から上だけを布団から覗かせる。
「イグニス、鏡を持ってきてくれ」
「えっ!? イグニスさんいらっしゃるんですか!?」
部屋の中にイグニスさんがいるのかとびっくりした私は、とび起きて広い室内を見まわす。
けれど、優しい色合いで統一された部屋の中には、私たち以外の気配はない。
「心配するな。今のは俺から遠く離れたイグニスに、念をこめて連絡をしただけだ。声に出したのは、事情を知らないお前が急にイグニスが訪れては驚くだろうと思ったから」
「あぁ……、そうなんですね。ありがとうございます……」
びっくりしたぁ……。けど、エデンはそうやって私のことをさりげなく気遣ってくれているの、やっぱりとても優しいな。
見つめていると震えてしまう位の美形で、私のことをお姫さまなんじゃないかと錯覚させるぐらいに優しくしてくれる。
肌を重ねて彼の熱も知ってしまって……。
気がつけば、あれほど「恐ろしい魔王」と思っていた人相手に、私はすっかり身も心も溶かされてしまっていた。
チラッと隣を盗み見すると、どこか影のある超絶美形が少し気だるげに前髪をかき上げている。
それが私の夫なのだと思うと、世界中に向かって大声で自慢したくなってしまう。
「鏡、って何ですか?」
ベッドの下に落ちてしまっていたナイトドレスを拾い上げて、何とか胸を隠しつつ頭から被ると、私はエデンに問う。
「望むものを見ることができる、万望の鏡だ」
「望むものを……」
オウム返しにつぶやき、魔王の城なのだから魔法の道具があっても不思議ではないと、私は顎に手を当てる。
私の望むもの……。
母さんの居場所。母さんが無事かどうか。それから村の様子。シスターサマンサや兄弟たちの無事。
ただ、それだけを確かめたい。
今になればエデンが残忍な魔王ではないというのは分かっているから、彼が村に危害を加えていないだろうことは承知している。
けれど……、離れてしまった故郷を見たいという願望は、誰だって抱くものだ。
「声が少しかすれている。喉は痛くないか?」
「少し……」
返事をするとエデンはベッドサイドに置いてある果物やお酒、水やジュース。その中から器用に瓶の中身を配合し、薄黄色の液体が入ったグラスを私にくれる。
「ハチミツを入れてあるから、喉にいいはずだ」
「ありがとうございます」
言われてみれば喉は少し痛くなっていて、私は受け取った飲み物をコクリと飲む。
「おいしい……」
レモンが入っているのか少し酸っぱくて、ハチミツが入っているからほんのり甘く、けれど味はそれだけじゃない。
「他は何が入っているんです?」
「さぁな? 感覚だけで混ぜたから、俺にもよく分からん」
「感覚で? 凄いですね……」
つくづく、この人は色んなことに対して器用な気がする。
魔王のお仕事って何をしているのか詳しくは分からないけれど、きっと膨大な量のお仕事を一人で片付けなくてはならないのよね。
それを思うと、頭の回転も速くて手先も器用なのは自然なことなのかとぼんやり思う。
そのときコンコンとドアをノックする音がして、イグニスさんが現れた。
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