78 / 97
本編
77,宮廷占術官
しおりを挟む皇女様とのある意味頭が痛くなるお話から開放されたと思ったら、パーティー会場に戻った途端テレジアさんたちに捕まった。そうだったよ、こっちにはこの人達がいるんだよ。
「アンジュ様、皇女様とのお話はもういいのですか?」
「ええ、皇女様からはパーティーを楽しむようにと言われました」
「アンジュ様は皇女様と何をお話していたのですか?」
アンナさんが無邪気に訊ねてくる。流石に皇女様と話したことをぺらぺらと喋るわけにはいかないよね。占いのお客さんでもあるし。
「流石にそれはちょっとお話出来ません」
「そうですか……残念です……」
見るからにしゅんとするアンナさん。ちょっと申し訳ない気持ちになる。占いをしたことくらいは言ってもいいかな。
「内容はお話出来ませんが、一つ占いをしてきたんです」
「まあ、本当ですか? さすがアンジュ様ですねいずれは宮廷占術官でしょうか」
「宮廷占術官ってなんですか?」
私がそう訊ねると三人がびっくりしたように固まった。
「アンジュ様は占い師なのですよね?」
恐る恐るといった感じでマリアさんが聞いてくる。
「まあ、そうですね。趣味ですけど」
「それで宮廷占術官のことを知らないのですか?」
「し、仕方ないわ。アンジュ様たちは王国から来たのです。宮廷占術官のことを知らなくても無理はないわ」
狼狽える姉妹をテレジアさんがなだめる。そんなに知らないことがおかしいか。仕方ないじゃん、そんなの初耳だよ。言葉的に想像は出来るけど分からないって。
「宮廷占術官は簡単に言ってしまえば言葉通り、帝国のお抱え占い師です。ですが、宮廷魔導師や宮廷神官ほどの権力はありません。本当にただの占い師として雇用されています。基本的な仕事は文官と同じですね。なので、文官の役職の一つと考えた方が分かりやすい知れません」
「なるほど、部長とか課長とかと同じ感じですね」
実際の権力はそこまでじゃないらしいから少し違うかもしれないけどね。
「ブチョー……ですか?」
「ああ、いや、こっちの話です。続きをお願いします」
「は、はい。文官として登用されますが、宮廷占術官は占いの実力のみが重視されます。過去には孤児で十二歳の女の子が登用されたこともあるそうです」
へー、占い師重視なんだ。文官だから頭がいい人が雇用されるのかと思った。その中で占い師として優秀な人が選ばれるわけじゃないんだね。宮廷なんて、特に産まれとか歳とか重視しそうなものなのに。
「権力こそ普通の宮廷仕えの方と同じものの、宮廷に仕えること自体が素晴らしいことですから、密かに目指している占い師の方も多いと聞きます」
ミリアが言ってたのと少し違う? 王国と帝国の違いかな。王国じゃあんな扱いだったけど、帝国だと宮廷に雇われるくらいなんだもの、そりゃ違うか。
「そうなんですね。丁寧に教えてくださってありがとうございます」
「いえいえ、この程度でよろしければいくらでも」
お礼を言うと、照れくさそうにほんのりと頬を染めるテレジアさん。うーん、反応が乙女だ。なんだか今日はいろんな意味で乙女な人と関わるなあ。誰かに恋してたり、感謝されたことに照れたり、あと普通に年齢的に乙女だったり。自分で言うのもなんだけど、私も一応乙女って年齢だ。けど……、うん。魔物に全力で切りかかってるのを乙女とは言えないよなあ、この人達と比べたら。
そんなことを考えていると、バスカルヴィーさんが最初に挨拶したところに現れた。
「ああ、もう終わりなのですね。まだお話したいことがありますのに……」
「仕方ないわ、アンナ。また今度の楽しみに取っておきましょう」
「マリアの言う通りよ。アンジュ様、今度お茶会を開くので是非参加してくださいね。今日のパーティーほど固いものではないので気軽に」
「はい。機会があればぜひ」
テレジアさんたちと約束をして、バスカルヴィーさんの挨拶を聞く。挨拶が終わると、バスカルヴィーさんが近づいてきて、今日のお礼と帰りの話をしてくれた。帰りはアルフレッドさんがまた馬車を出してくれるとのこと。
今日は色々と疲れたから早く帰ろうと思ってレベッカたちを探すと、妙にげんなりしたギルと笑いを堪えてるようなレベッカたちがいた。何があったのか聞いても。
「すまん、今は聞かないでくれ……」
と言うばかりで、何も話してくれない。レベッカたちに聞いても本人から聞く方が良いってはぐらかされるし。まあいいや、今日はさっさと帰って寝よう。ギルの話は後で聞けばいいや。
宿屋に戻ったらすぐにベッドに潜り込んだ。ゆっくり休んで、明日もまた一日頑張ろう。
10
あなたにおすすめの小説
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
猫好きのぼっちおじさん、招かれた異世界で気ままに【亜空間倉庫】で移動販売を始める
遥風 かずら
ファンタジー
【HOTランキング1位作品(9月2週目)】
猫好きを公言する独身おじさん麦山湯治(49)は商売で使っているキッチンカーを車検に出し、常連カードの更新も兼ねていつもの猫カフェに来ていた。猫カフェの一番人気かつ美人トラ猫のコムギに特に好かれており、湯治が声をかけなくても、自発的に膝に乗ってきては抱っこを要求されるほどの猫好き上級者でもあった。
そんないつものもふもふタイム中、スタッフに信頼されている湯治は他の客がいないこともあって、数分ほど猫たちの見守りを頼まれる。二つ返事で猫たちに温かい眼差しを向ける湯治。そんな時、コムギに手招きをされた湯治は細長い廊下をついて歩く。おかしいと感じながら延々と続く長い廊下を進んだ湯治だったが、コムギが突然湯治の顔をめがけて引き返してくる。怒ることのない湯治がコムギを顔から離して目を開けると、そこは猫カフェではなくのどかな厩舎の中。
まるで招かれるように異世界に降り立った湯治は、好きな猫と一緒に生きることを目指して外に向かうのだった。
学校ごと異世界に召喚された俺、拾ったスキルが強すぎたので無双します
名無し
ファンタジー
毎日のようにいじめを受けていた主人公の如月優斗は、ある日自分の学校が異世界へ転移したことを知る。召喚主によれば、生徒たちの中から救世主を探しているそうで、スマホを通してスキルをタダで配るのだという。それがきっかけで神スキルを得た如月は、あっという間に最強の男へと進化していく。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
男子高校生だった俺は異世界で幼児になり 訳あり筋肉ムキムキ集団に保護されました。
カヨワイさつき
ファンタジー
高校3年生の神野千明(かみの ちあき)。
今年のメインイベントは受験、
あとはたのしみにしている北海道への修学旅行。
だがそんな彼は飛行機が苦手だった。
電車バスはもちろん、ひどい乗り物酔いをするのだった。今回も飛行機で乗り物酔いをおこしトイレにこもっていたら、いつのまにか気を失った?そして、ちがう場所にいた?!
あれ?身の危険?!でも、夢の中だよな?
急死に一生?と思ったら、筋肉ムキムキのワイルドなイケメンに拾われたチアキ。
さらに、何かがおかしいと思ったら3歳児になっていた?!
変なレアスキルや神具、
八百万(やおよろず)の神の加護。
レアチート盛りだくさん?!
半ばあたりシリアス
後半ざまぁ。
訳あり幼児と訳あり集団たちとの物語。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
北海道、アイヌ語、かっこ良さげな名前
お腹がすいた時に食べたい食べ物など
思いついた名前とかをもじり、
なんとか、名前決めてます。
***
お名前使用してもいいよ💕っていう
心優しい方、教えて下さい🥺
悪役には使わないようにします、たぶん。
ちょっとオネェだったり、
アレ…だったりする程度です😁
すでに、使用オッケーしてくださった心優しい
皆様ありがとうございます😘
読んでくださる方や応援してくださる全てに
めっちゃ感謝を込めて💕
ありがとうございます💞
狼になっちゃった!
家具屋ふふみに
ファンタジー
登山中に足を滑らせて滑落した私。気が付けば何処かの洞窟に倒れていた。……しかも狼の姿となって。うん、なんで?
色々と試していたらなんか魔法みたいな力も使えたし、此処ってもしや異世界!?
……なら、なんで私の目の前を通る人間の手にはスマホがあるんでしょう?
これはなんやかんやあって狼になってしまった私が、気まぐれに人間を助けたりして勝手にワッショイされるお話である。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる