タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

92,始まり

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「……これで行くの?」

  色んな準備を整えて宿で待ってると、ルルリカさんは丁度太陽が昇りきる頃に馬車に乗ってやってきた。正確には物に乗って。

「ええ、そうですよ。もしかしてアンジュさん……」
「はい。なんでかは分からないですけど、私には見えてます」

  引いてるものは確かに幌馬車なんだよ。でも、それを引いてるのは明らかに馬じゃない。青黒い鱗が全身を覆ってる大きな恐竜。それが馬車を引いてた。魔道王国は魔物を操れるみたいな話を聞いたけど、これもそうなのかな。魔物だとするとドラゴンの一種とかかな?  

「私たちには普通の馬車に見えるけど、アンジュは違うんだね?」
「うん、全くの別物。強いて言えば竜車かな?」
「竜……。なるほどね」
「やはりアンジュさんには幻影が効かないようですね……。正直自信を無くします」

  そんな事言われてもなあ。最初は分からなかったし、なんで見破れたのかも分からないんだから気にしなくていいと思うんだけど。

「ミリアにも見破れねえ精度の幻影を作れて、自信なくすなんて言われてもなあ。この場合おかしいのはアンジュだろ」
「うるさいよギル」

  その通りかもしれないけど人に言われるのは微妙に腹立つ。というか、ギルに言われるのが腹立つ。

「それでは行きましょう。二、三日で着くはずです」
「分かりました。よろしくお願いします」

  バシン、とルルリカさんが手綱を鳴らして出発する。魔道王国、一体どんな国なんだろう。少し興味はあるけど、観光しようとは思わない。ささっと話して、ちゃっちゃと帰って来れるといいなあ。

―――――――――――――――――――――――――

  一度自分の格好を見直す。崩れている場所がないことを確認してドアをノックした。

「入りなさい」
「失礼致します」

  部屋の中には私の雇い主であり、友人であり、この国の皇女でもあるリーゼロッテがいた。椅子に体を預けている彼女の横に、まるで従者のように小太りの男が立っている。

「いらっしゃい、アリエラ」
「こんにちは、リーゼロッテ様。バスカルヴィーさんもお元気そうで良かったです」
「やあ、アリエラ殿。貴女も変わりないようで」

  挨拶を終えたあとリーゼロッテの向かいに座る。バスカルヴィーが私にお茶を入れてくれた。この人は商人だけれど、お茶を入れたりお菓子を作ったりするのが得意だ。正直従者の方が向いてるんじゃないかと思う。

「それで、どうかしらアリエラ。あの人の占いは再現出来そう?  ああそれと、この部屋の話は聞こえないようになってるから口調はいつも通りでいいわよ」
「分かったわ。……正直、非常に難しいと思う」
「どうしてかしら」
「あの呪い札、あれはアンジュさんが考えたものではないそうよ。彼女の故郷ではかなり昔から知られていて、記録もあるらしいけど、私は知らなかった」

  私がそう言うとリーゼロッテが顎に手を当てて考え出した。

「宮廷占術官であるあなたが知らない……?  それに、彼女が作ったものではないということは呪い札の作り方を彼女は知らないの?」
「ええ、恐らくね。彼女も誰かから聞いたような話ぶりだったから。それに、故郷がどこか隠しているようだったわ。本当に分からなかったのかもしれないけれど」
「分からない?」
「村の出身だと彼女は言ったけれど、その村がどこの国かは分からないってね。もしかすると、あの占いはその村に伝えられている秘術の可能性があるわ」
「なるほどね……。それだと確かに再現は難しいわね」

  アンジュさんが村の場所を隠しているのであれば、何とかしてその村を見つけ出したとしても歓迎されることはまず無い。かと言ってアンジュさんを抱き込むか脅すかして情報を得ようとしても、失敗に終わるだろう。
  バスカルヴィーの誘いを断った上でギルドで占いを続けてるのだから、名誉やお金では動かないはず。脅すとしても使えそうな人はパーティの仲間と中央街ギルドの職員くらいだ。冒険者としてかなりレベルの高いパーティらしいあの三人は襲うのにまずリスクが高い。職員は襲うリスクはないだろうけれど、冒険者ギルドを敵に回してしまう。
  何より、仮に成功したとして彼女がどれくらいのことを知ってるか分からない。下手をすると何も知らないってことも有り得る。秘術を隠すために記憶を書き換えている可能性もないとは言えない。

「やっぱりアンジュさんと何とかして協力関係になるしかないかしらね……」
「それしかないでしょうね。でも、確かアンジュさんの占いは人以外を対象には出来ないんじゃなかった?」
「そういう情報はありますね。確か彼女が有名になり始めた頃に一人そのような占いを頼んだ男がいて、その時にそう言っていたそうです。一応他の商人からも情報を集めましたが、基本的に目の前にいる人かその人がよく知る人でないと占うのは難しいようです」

  さすがは帝国で一、二を争う商会の会頭。情報集めには余念が無いようね。

「それはそれでやりようがあるわ。それに、その程度の縛りがあっても彼女の力は十分に強力よ」
「それもそうね。なら私は彼女と友好を深めるのがいいかしら?」
「ええ、よろしく。恐らく彼女は情に弱い性格だから出来るだけ仲良くなっておいて」
「分かったわ。個人的にも彼女の占いには興味があるから」
「頼むわね」

  一番重要な話も終わり、思い出した話を言ってみる。

「もう掴んでるかもしれないけど、セリゼの森で王国が演習をしてるらしいわね」
「そのようね。練度はお粗末とまではいかないものの、微妙らしいけれど」
「その王国軍だけど、秘密兵器を持ってるらしいわよ」
「秘密兵器?  それは初めて聞いたわね。どんなもの?」

  突然の話でもリーゼロッテは食いついてくる。どんな情報でも自分で確認して取捨選択するところがこの子の優れたところね。

「詳しくは知らない。でも魔物とかへの対抗手段の一つらしいわ」
「魔物とか?  ということは魔人とも戦える可能性があるということ……?  アリエラ、その情報はどこから?」
「それがね、アンジュさんなのよ」
「……彼女は王国の機密も知ってるの?」
「分からない。ただ、あの様子は秘密兵器があることを確信してるというよりは、存在を知ってるように感じたわ」
「なるほど……。ありがとうアリエラ。私の方でも調べてみるわ。バスカルヴィーもお願い」
「かしこまりました」

  改めて思うけど、アンジュさんって一体何者なのかしら。あの占いも王国の情報も、普通ならどちらも知ることの無いもののはず。これからそれも含めて教えてくれるといいのだけれど。
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