12 / 97
本編
11,謎のおじいさん
しおりを挟むウェアウィードに許された場所だけでも剣葉草は八束も集まった。金貨一枚と銀貨二枚。充分な稼ぎだ。
剣葉草を採り終えた私たちは、せっかくだからウェアウィードと一緒にお昼を食べることにした。けど、お昼を食べているとどこからかウェアウィードが一人、また一人と増えていって、最終的に宴会みたいになった。
最初のウェアウィードはみんなにドライフルーツを分けてあげてる。列になって順番に受け取っていくのはなんだか配給みたい。
「さっきのは君へのお礼なんだから、君のにしていいんだよ。こっちをみんなで分けなね」
レベッカと一緒にドライフルーツをウェアウィードにあげる。ギルドカードでウェアウィードの情報を見ると、魔物だけど人間に友好な種で、とても仲間想いだって書いてあった。ちょっと打算的な考えだけど、これで少しでもお近づきになれればと思う。この森にはこれからも通うことになるだろうしね。
「随分とよくしてくれてるみたいじゃな。こやつらも懐いておるみたいじゃ。感謝する」
声のした方を見ると、ウェアウィードみたいに緑のレインコートみたいな服を着たおじいさんがいた。誰だろうこの人。
「そう構えるな。何も危害は加えんよ」
いつの間に抜いたのか、レベッカが剣を構えてた。いや、このおじいさんは怪しいけどいきなり剣を向けるのは失礼だよ!
「レベッカ、剣しまって!」
「しかし……」
「大丈夫だよ、ほら」
おじいさんに気づいたウェアウィードたちが、群がるようにおじいさんに集まっていく。ウェアウィードに大人気ってことは悪い人じゃないと思う。その様子に毒気を抜かれたみたいで、レベッカも剣をしまった。
おじいさんは少しだけウェアウィードを構うと、私の方に向き直る。なんだろう。
「入江杏子よ。お主に会いたがっている者がおる。ついて来て欲しい」
なんでこのおじいさん私の名前を!? しかも杏子ってちゃんとした方を。それに会いたがっている人って……?
「アンジュ、やめた方がいい」
「大丈夫だよレベッカ。おじいさん、私をその人のところに連れてって」
私が言うと、おじいさんはにっこりと笑う。
「案外度胸があるようじゃな」
おじいさんが、とん、と足を鳴らすと、妖精の舞台の一つが緑色に輝き始めた。緑色の光はそのまま上に伸びていって柱みたいになった。ゲームのワープゲートみたいだ。
「ここに入ればお前を待つ者の場所へ飛べる。先に行っとるぞ」
おじいさんの姿が光の柱に飲み込まれて消える。
「じゃあ行ってくるね」
レベッカに手を振って、私は光の柱の中に入っていった。
10
あなたにおすすめの小説
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私
とうとうキレてしまいました
なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが
飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした……
スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます
『異世界に転移した限界OL、なぜか周囲が勝手に盛り上がってます』
宵森みなと
ファンタジー
ブラック気味な職場で“お局扱い”に耐えながら働いていた29歳のOL、芹澤まどか。ある日、仕事帰りに道を歩いていると突然霧に包まれ、気がつけば鬱蒼とした森の中——。そこはまさかの異世界!?日本に戻るつもりは一切なし。心機一転、静かに生きていくはずだったのに、なぜか事件とトラブルが次々舞い込む!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる