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本編

24,前線へ

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「アンジュのことだから止めると思ってたよ」

  前線に向かってる途中、レベッカが訊いてくる。

「だってレベッカたちは止めても行くでしょ。それなら一緒に行った方がいいよ」

  むしろ私に後方支援に行くように言ってきた方が意外だよ。街で待ってるように言われると思ったのに。

「しっかり考えがバレてるな、レベッカ」
「うるさいよ」

  ギルさんとレベッカが軽口を叩き合ってる。二人にガイルさんの仇討ちに向かってるけど、さっきみたいな張り詰めた感じは無い。いいこと……なのかな。固くなりすぎないって意味では。

「二人とも、気を緩めすぎじゃないかしら?  これから戦うのよ?」

  ミリアさんが二人をたしなめるけど、そういう本人も顔が笑ってる。

「そう言われてもね……。なんだかもう色々気が抜けたというか」
「だな。アンジュ、こいつは一体なんなんだ?」
「私にも詳しくはわからないですけど……。まあ、乗り物ですかね」
「それはわかるんだがよ……」

  今私たちは平野を爆走する物の中にいた。キャタピラの音を響かせて、真っ直ぐに走る戦車の中に。
  どうしてこんなことになっちゃったの……。

                                            ※

「アンジュ。馬車も馬も手配してないけどどうするの?  いくらなんでも徒歩じゃ間に合わないよ」
「大丈夫、考えがあるから」

  ギルドからそのまま北の門へ行って、街道を走って行く。街からそれなりに離れたところで一旦止まる。

「みんな、少し離れててください」

  ちゃんと三人が離れたのを確認して、タロットカードの力を使う。リュウセン様からはあんまり説明されなかったけど、普通の馬車より速い乗り物が出るとは聞いてるこの力。

戦車チャリオット!」

  私が唱えた瞬間、ズシン、という地響きとともに私の目の前に戦車が現れた。想像してたのと違う!  戦車って馬に引かせてるあれじゃないの!?

「お、出番っスね。どうも、自分はマジマっス」

  そう言って、戦車の上から飛び降りてくる人。ジーンズに白地にでかでかと、戦車、って書いてある半袖Tシャツ。髪型はポニーテール。顔は黒子みたいに紙で覆われてて、そこには大きく馬の一文字。体つきと声からしたら女性っぽい。
  この人は誰なのか、なんてことを考えたけど、多分あれだよね。戦車を引く馬って事だよね、多分。戦車を操縦するために人型ってことなんだよね。うん、わけわからん!

「とりあえず、今回はこんなごつい物になったっスけど、ちゃんと普通の馬車みたいなのも出せるんで安心して欲しいっス」
「じゃあなんで今回はこんなのに……」
「出せる中で一番速いのがこれだからっスね。ご主人、速いのがよかったみたいっスから」

  私のせいか!  確かに速い方がよかったけど、これならまだファンタジーの枠内で一番速いのがよかったよ!
  恐る恐る振り向くと、案の定三人は固まってた。

「えーっと……。まあ、乗ってください」

  声をかけると、三人は無言で動き出した。うん、まあそうなるよね。突然こんなものが出てきたら言葉失うよね。決してこんなものを出した私に引いてるわけじゃないよね。

「こっからどうぞっス」

  マジマさんの案内に従って戦車に乗ると、高級ホテルみたいな部屋が広がってた。ソファに、ベッド、ローテーブル。どれもこれもすごく高そう。というか、この部屋明らかに戦車の見た目より広いよね。

「それじゃあ行くっス。適当にくつろいでていいっスよ」

                                       ※

  そして今に至る。それにしても、みんな慣れるの早くないかな……。私はまだ混乱の方が強すぎるよ。

「ご主人、ちょーっとまずそうな状況みたいなんで急ぐっス。あと十分ってとこっス」

  戦車が、ぐんっ、とスピードをあげる。しばらくすると、遠くの方に大きな影が見えてきた。

「見えてきたっスよ。全員、準備してくださいっス」
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