タロットチートで生き残る!…ことが出来るかなあ

新和浜 優貴

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本編

28,休憩する勇者たち

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「やっぱり、おかしいわよね……」
「どれのことだ?」
「多分、こないだのキマイラの事なんじゃないかと」

  訓練の休憩時間。丸いテーブルを囲んでお茶を飲んでいるとき、私のつぶやきに勇者の二人、御影さんと光一くんが反応してくれる。二人とも違和感は覚えていたみたい。どうにもおかしいのよね、やっぱり。

「キマイラのこともだけど、まあ色々ね。そのキマイラは特殊個体ってやつだったらしいけど、私たちの初陣としてはちょうどよかったはずなのに、全部終わったあとに知ったでしょ」
「そうですね。確かに話を聞いた時は、あれ?  とは思いましたね」
「だな。意図的に隠されてた感じはした」

  彼らも私と同じ意見みたい。よかった、これなら話がしやすい。

「二人とも、この国正直どう思う?」
「胡散臭いですよね」
「右に同じ」

  そう、この国は何か怪しい。国というよりは国の上の方、はっきり言ってしまえば王様と神官長のあのおじいさん。ひたすらにへりくだった感じで私たちと話すけど、尊敬とはまた違うねばついた感じの目で見てくるよよね。

「訓練だって言って戦ってはいるが、相手は城の兵士たちだ。魔王軍が相手なら魔物も相手にしなきゃいけないのに、魔物に関しては一切情報がない。まるで魔物と戦わないようにされてるみたいにな。兵士たちはそのうち魔物と戦うことになるんじゃないか、とは言ってたけど。どうもな」
「そうなんですよ。使用人の人達にも色々聞いてますけど、魔王軍は殆どが魔物で、人と同じような姿をしてるのは部隊長クラスらしいですよ。確かに部隊を潰すにはトップを倒した方がいいとは思いますけど、そこまでたどり着くには周りを切り崩さないとですから対人より対魔物の方が訓練するべきだと思うんです」

  二人とも色々と情報収集はしてたみたいね。自分と同じように考えてくれてる人がいるのって心強い。

「沙夜香さんは何か聞いてます?」

  多分戦いについての話よね。……あんまり気分のいい話ではないけど、この二人には話しておかないとね。

「貴族連中から少しね。私に話しかける貴族の殆どが口を揃えて『私と我が民があなたをお守りします』って言うのよ」
「それって……」
「おそらく、兵士は私たちを幹部にぶつけるまで消耗させないための盾よ」
「どこでも上のために下は犠牲になるもんなのかね……」

  重苦しい空気が私たちの周りに立ち込める。戦争なんてもの経験したこともなければ、人の死に関してもはっきりとした記憶はない。でも誰かが私のために死ぬなんてのは、気持ちのいいものじゃない。

「二人とも、少しいいですか?」

  光一くんが真剣な顔をして私と御影さんを見る。促すように少し身を乗り出して指を組む。少し司令官っぽいわねこれ。

「単刀直入に聞きますね。二人はあの子、入江さんがどうなったと思いますか?」
「メルドのじいさん曰く、戦闘のない安全な屋敷にかくまってるとのことだが……。まあ違うだろうな」

  私たちと一緒にこの世界に来てしまった女の子、入江杏子さん。あの子はとてもじゃないけど戦えるような加護を持っていなくて、それどころか占いがよく当たるってだけの加護しか持ってなかった。私たちとは別の部屋に連れてかれたあと姿を見てない。御影さんの言う通り、かくまわれてるなんて嘘よね。戦闘のない安全な場所って、つまりここ、王城なんだから。

「貴族にも確認を取ったけど、王国内で戦闘のない場所はないらしいわ。ここ、王城を除けばね」
「だろうな。となると入江さんはどうなったかだが……」
「それについてはメイドの一人から少しだけ聞けました。王城から追放されたって」

  ……あのおじいさんならやりそうね。神官長だし宗教の考え方にかなり染まっているだろうし。

「デウグレス教……だっけか。加護は神に愛されし証。強き加護を宿す者ほど神に愛されたよき人である。そんな教えのトップからしたら、入江さんはさぞかし邪魔だったんだろうな。そのあとの話は?」
「分かりません。ただメイドさんは入江さんの荷物に守り刀のナイフを入れてくれたらしいです。手放したりよっぽどのことがなければ助けてくれるとのことでした」
「それってどんな見た目なの?」

  私が聞くと、光一くんが少し困ったような表情を浮かべる。そんな顔をするくらいひどいものなのかしら。

「金と宝石で装飾されたナイフだそうです」
「それは……」

  逆に狙われそうね、強盗とかに。うん、光一くんもそりゃ苦笑いするわ。

「もう一つ頭の痛い話ですけど。そのナイフ、持ち主のメイドさんに届けられたんですよね。知り合いの武器屋に売られたとかで」
「あー……。手放したのね……」

  まあ普通そうするわよね。でもそうなると守り刀としての役目は果たせないわけだけど、入江さん大丈夫なのかしら。

「とりあえずその後どうなったかは色々調べてもらってるところです」
「そっか……。じゃあ光一くんはそのまま使用人の人たちの方でお願い、御影さんは……」
「俺は兵士の方で調べてみる。貴族は頼んだ」

  私の意見を先回りしてくれる。やっぱり考えが似てると意思疎通が取りやすくて楽ね。勇者としての共通点とかなのかしら。

「とりあえず、当面は普通に訓練して入江さん探しだな」
「ですね。無事だといいですけど……」

  私たちは今後の方針を立て、再び訓練に戻る。勇者としてちやほやされるのは正直楽しいし、人を助けるのもやぶさかじゃないけど、利用されるのは嫌だ。たいてい最後はバッドエンドになっちゃうからね、そういうのだと。私は日本に帰るにしてもこの世界で過ごすにしても無事でいたい。それは多分他の三人も同じ考えだと思う。
  だからこそ、入江さんは私たちが見つけて、助けてあげなきゃいけない。私たちは年上だし、何より勇者の力があるんだから。
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