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本編
42,宗教と亜人と帝国と
しおりを挟むギルドを出て中央街ってところに向かいながら、さっきの話を聞いてみることにした。
「レベッカ、差別がどうこうって話してたけど、なんの話?」
「ああ、中央街は人間と亜人の街なんだよ。亜人だけの亜人街、人間だけの人街、そしてどちらもいる中央街。その三つで帝国はできてるんだ」
「亜人?」
「前話したエルフとか、ドワーフとかの、精霊と生物の間みたいな亜精霊。獣の特徴を持つ獣人。魔物の特徴を持つ魔人。こういう種族を総称して亜人と言うんだ」
なにそれ会いたい! 特に獣人!
自分ではあんまり自覚なかったけど、この前のスクイレル・ラフィーのときに思った。動物を思う存分もふもふしたい!
獣の特徴っていうのがどのくらいかわからないけど、失礼じゃなければ耳とか尻尾とか触らせてもらいたい。
正直遠目で見るだけでも構わないけど、見たら絶対触りたくなるもんなあ。
「アンジュは亜人を知らなかったのか?」
「お恥ずかしながら……」
ギルさんに聞かれたから素直に答えると、なんかすごい顔された。信じられないものを見るというか、珍獣を見るというか。とりあえずなんだか失礼なことを考えられてる気がする。
「それで、その亜人の人たちがどうしたの?」
「亜人は加護を持たないんだよ。だから強い加護を持つ人ほど偉いって考えのデウグレス教からしたら、亜人は人にあらずってことらしい」
なんだその理屈。いくらなんでもおかしいでしょ。ん、待てよ?
「もしかして王国ってデウグレス教?」
「国教がそうだね。もっとも心の底から信じてるのは神殿に仕えてる奴らくらいだけどね」
よく戦争起きないなあ。世界史だと結構宗教戦争起きてたイメージなんだけど。神殿にあんまり権威がないとかなのかな?
「帝国は宗教は自由だし、皇帝陛下が亜人に友好的だから亜人への差別意識は低い。亜人は優れた技術を持ってるから、その恩恵を受けてるのもあるね。帝国にもデウグレス教信者はいるし、他の国から来た亜人差別主義者用に人間のみの人街が作られたんだ。まあ亜人街を作る理由にもなったし、人種関係無しの中央街も出来たからあんまり支障はないみたいだけど」
なるほどなあ。なんか敵が多そうだね、帝国って。でも住み心地はいいんだろうな。歩きながら周りを見てるけど、どこも活気がある。みんな笑顔だし、国に不満はなさそう。ここはまだ人街みたいで、人間しかいないけど。
「そろそろ中央街だ。人が多いからはぐれないようにね」
「うん、わかった」
はー、ついに人間以外の人を見れるのか。なんだか緊張す……る……。
「なにあれ」
「あれかい? あれば中央街の入口。四大門の一つ。雷門だ」
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