Gemini

あきら

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 もじ、と床に敷かれたラグをいじる。
 テーブルを挟んだ向こう側、ソファーの上で寝そべりながら雑誌片手にお菓子をつまんでいた樹の手が止まった。

「……マジで?」

 黙ったまま、俺は頷く。
 少し固まって考えて、よいしょと体を起こした双子の兄は、見ていた雑誌を閉じて俺を正面から見た。

「あれから、何か月だっけ」
「確か……あれが7月ぐらいだから……」
「もう半年近いな。年明けちゃうぞ」
「わかってんの!そんなことは!」
「いや、なんつーか、らしいっちゃらしいけど」

 リビングで会話をしていた俺たちの声のトーンが少し大きかったのか、まだ起きてるの、という母親の声がする。
 慌てて口をつぐみ、樹が食べかけのお菓子を。俺が二人分の飲み物を持って、自室に退散することにした。

 思春期ごろに分けられた俺と樹の部屋。まあ分けたところで、だいたい二人してどっちかの部屋で一緒にいるわけだけども。
 その俺の部屋に逃げ込んで、一応鍵をかける。あまり家族には聞かれたくないし。
 べたりと床に座り込んでクッションを抱えた樹が、それで、と話を切り出した。俺は俺でベッドに座る。

「智にぃが手を出してこない、と」
「ずいぶんはっきり言うねお前……まぁその通りなんだけど」

 俺と智にぃ、それから樹と圭人。それぞれがいわゆる『おつきあい』を始めて、もう数か月。
 俺の目下の悩みは、恋人である智にぃとの仲が進展しないことだった。

「キスは?」
「……してる」
「触ったり?」
「と、途中、まで。でも、あんまり触らせては、くれない」

 うーん、と難しい顔をした樹が首を捻る。
 圭人の影響のおかげで、すっかり垢抜けた樹。俺と並んで歩けば、確実に双子だとわかるぐらいには髪も服装も以前とは変わっていて。

「――てか、樹さぁ。前はこの手の話題乗ってこなかったくせに」
「な、なな、なに」
「恥ずかしがって話してくんなかったじゃん」

 髪や服装以前に、なんか今の樹からは余裕みたいなものすら感じる。
 その理由を考えて簡単に思い当って。

「あーそうか。そうですか。もう経験済みってことね」
「楓!」
「だってそうだろ?いいもん圭人に聞くから」
「やめろってば!もう!」

 携帯電話を取り出した俺にクッションを投げてくるから、笑って冗談だと返した。当たっても痛くない程度の力で投げてくるのが樹らしい。

「俺の話はいいだろ?!」
「参考にしたいんだってば」
「何をだよ」

 ううう、と唸りながら俺を睨みつける樹に、少しだけ真面目なトーンになってしまう。

「だってさぁ、何も――まぁキスとかは置いといて、そういうことしてこないってのは、俺にそういう魅力がないのかなって思って」

 冗談っぽく言いたかったのに、上手くできなくて、投げられたクッションに顔を埋めると、苦笑が聞こえた。
 それから、ベッドにもう一人分の体重がかかると、くしゃりと頭を撫でられる。

「そんなことないと思うけどなぁ、俺は」
「じゃあなんでかなぁ」
「俺は智にぃじゃないからわかんないけど、たぶんでいい?」

 ゆっくり顔を上げる。にこ、と笑う樹と目が合った。
 小さく頷くと、もう一度たぶんね、と前置きをする。

「俺ら、ほんとちっちゃいころから一緒だったじゃん。だから智にぃは楓のちっちゃいときを知ってるわけじゃん?罪悪感とかありそう」
「……なにそれぇ」
「大事すぎて手を出せないんじゃない?やっぱり、ほら、長いこと俺らの兄ちゃんポジションだったからよけいに」

 うなり声が俺の口から出て、樹が眉を下げた。

「圭人はその辺遠慮みたいなのが全然ないからさ」
「なぁ樹。樹はどうだった?」
「は?」
「その、圭人としたとき、どうやってそーいう雰囲気に持ってったの」

 数秒の間があって、ぼん、と音がしそうなほどその顔が真っ赤に染まる。

「どど、どうや、って、って」
「だって普通に遊んで家でテレビ見たりゲームしてたりするのに、どっからそういうふうになんだよ」
「えー……だ、だって、さぁ。俺は」

 両手を頬に当てて、そこにこもった熱を逃がそうとしているみたいに俯いた。

「その、えっと……さい、しょのとき、は……宣言、されたから」
「宣言?」
「きょう、その、するから、って」

 小さな小さな声で、それでもなんとか絞り出すように答えるから。我が兄ながらかわいらしく思えてしまって、クッションを放り投げぎゅうと抱きついた。


 とはいえ、何の解決にもなっていない。
 何やらパソコンに向かって作業をする背中を眺めながら、どうしたものかと考えた。
 慣れているはずの智にぃの部屋。いや慣れてるからよくないのか、という考えがまたぐるぐるとしだして、ぼす、とベッドに突っ伏す。

「どしたの、眠たくなった?」
「んー」

 こちらに背を向けたまま、おそらくは音で俺が何をしているのかわかったんだろう、苦笑交じりに聞かれた。

「眠くはない」
「そっか、ごめんね。今やってるこれだけ終わらせちゃうから」

 せっかく来てくれたのにね、なんて言うけど。
 智にぃの都合も聞かず、いきなり押しかけたのは俺のほうで。昔からの慣れと言うか癖と言うか、のせいではあるけれども嫌な顔ひとつせず、ちょっとだけ待ってて、なんて言うんだ。

「智にぃってさぁ」
「なに?」
「怒ること、あんの?」

 俺の唐突な問いに、キーボードを叩く音が少しだけ止まる。

「なぁに、僕が今まで怒ったことないって思ってる?」
「いやそうじゃなくてさぁ。そりゃ怒られたことはあるよ、覚えてるもん」
「でしょ。だったらあるに決まってるじゃない」
「だって、いきなり来ても怒らないし」
「そんなことで怒らないよ。嬉しいから」

 え、と間の抜けた声が口からこぼれた。

「楓が僕のとこに来てくれるのは、いつだって嬉しいんだから怒るわけないじゃない」
「……そっか」
「だから、もう少しだけ待っててね」
「うん」

 なんていうか、現金なものだと自分でも思う。
 手を出されない事を散々悩んで、あげくに樹にも相談したというのに。俺は、智にぃのそんな言葉で嬉しくなって舞い上がって、それなら別にいいかなんて思ってしまうんだ。

「まぁ、それだけが大事なわけでもねぇしな……」
「ん?なに?」
「なんでもない。独り言。ちょっと下行ってくる、飲み物もらっていい?」
「あ、じゃあ僕の分もお願いしていいかな」
「いいよ」

 そう、別に焦る必要なんかない。圭人と樹には圭人と樹の。俺と智にぃには、俺と智にぃのペースがあるんだし。
 ただちょっと、キスはしたいな、なんて思いながら勝手知ったる家の階下に向かった。
 うちと同じような間取りのリビングに入って、キッチンの中にいる智にぃのお母さんに声をかける。

「飲み物もらっていい?」
「あら楓くん、来てたの?」
「うん」

 この人も、俺と樹が小さいころからもう一人の母親のように接してくれている人だ。何の遠慮もなく頷くと、珍しく困った顔をした。

「ごめんね、これからわたし出かけるのよ」
「いいよ、おかまいなく。夕飯は食べてきたし」
「そう?じゃあお言葉に甘えて。たぶん三時間くらいかかると思うわ」
「そういえばおじさんは?」
「会社の飲み会ですって。だから迎えに行くんだけど、ちょっと遠いのよねぇ」
「あー、なるほど。確かに行って帰ってだとそのぐらいかかっちゃうね……行ってらっしゃい、気を付けてね」
「ありがと楓くん」

 にこにこと笑って玄関に向かう姿を見送って、改めて冷蔵庫から飲み物を取り出した。
 智にぃと、何故か当たり前のようにある俺用のコップに、それぞれコーヒーと紅茶を入れて持っていくことにする。
 その瞬間、ふと気づいた。今、この家にいるのは俺と智にぃだけ、ってことに。

「い、いやいや」

 一瞬頭に浮かんだ何かを振り払い、二つのコップを手に智にぃの部屋へと戻った。

「ありがと」
「あれ、終わったの?」

 パソコンでの作業はもう終わったのか、部屋の真ん中にあるテーブルに肘をついていて。その小さなテーブルにコップを二つ置くと、俺もそこに座った。

「母さんと何か話してなかった?」
「ああ、おじさん迎えに行ってくるって」
「――そっか」

 少しだけ違う気がする声。なんだか落ち着かない気持ちになりながら、コップの中身に口を付ける。

「ねえ楓、こっちきて?」
「え、こ、こっち、って」
「ん、こっち。僕の横」

 ぽすぽすと軽く床を叩く手。クッションの置かれたそこに、気恥ずかしくなりながら移動して座り直した。

「う、わっ!」

 いきなり腕を掴まれ体を引かれてバランスを崩す。俺の驚いた声は右から左にスル―して、智にぃの腕が抱きしめてきた。

「な、なんだよ。びっくりしたぁ」
「ふふ、ごめんね。早くぎゅってしたくなっちゃって」
「んと、こっちの体勢のほうがいいんだけど」
「いいよ。楓の好きにして」

 くすくすと笑い合いながら、少し俺の場所を調整する。膝立ちになって、智にぃの頭を抱きしめるように腕を回した。

「はー……楓の匂い」
「嗅ぐなっての」
「なんで?良い匂いだよ」
「……じゃあ俺も嗅ぐ」
「あ、だめ僕まだ今日シャワー浴びてない」

 こら、なんて。笑いながら言ったって説得力のかけらもない。

「もう」
「っ、あ……」

 智にぃの顔が上を向いて、俺に近づいてくる。
 ちゅう、と音を立てる触れるだけの唇。もっと欲しくなって、誘うみたいに勝手に口が開いてしまって。

「舌出して?」
「ん……」

 言われた通りに、唇に舌を乗せた。全部食べられるみたいに覆い尽くされる瞬間が好きで、息を漏らしながら一生懸命に熱い舌に吸い付く。
 まるで甘い毒みたいな。もっともっと欲しくなって、背中に回した指先で軽く引っ掻いた。

「ん、ぅ……は、ぁ」
「楓」
「や、だぁ……もっと、して」

 そんな言葉は俺の意識の外で勝手に口からこぼれていく。
 僅かに眉をしかめた智にぃの、その表情には気づかないふりをし、離れた唇を追いかけた。

「っ、ん、ふぁ、あ」
「……触ってもいい?」

 うん、と小さく頷けば服の中に手が入ってくる。
 耳朶を柔く噛まれて、背筋が震えて。何度も繰り返されれば、甘ったるい刺激に我慢なんかできなくなってしまった。
 なのに。なのに、智にぃはひとしきり俺の体を手のひらで撫でまわしたかと思うと、ぱっと離してしまう。
 力が抜けた俺の体をそっと受け止めて、落ち着かせるように優しく背中を叩き始めるけど。それは、俺が小さなころ眠れないときにしてくれたものと同じだ。

 一度は押しやった思いが、腹の奥で燻っている。中途半端に触れられて、終わりにされるのが一番辛い。
 じわ、と目に涙が浮くのがわかった。

「……智にぃ」
「なに?」
「おれ……って、そんなに、こども?」

 つぶやくように漏らした言葉の意味を考える間、背中の手が止まる。

「智にぃから、見て、そんなに、こども?」
「どうしたの?そんなことないよ」

 柔らかな手付きで、今度は俺の頭が撫でられた。いつもだったら嬉しいそれも、今は何も嬉しくない。

「っ、わかった、もういい」
「ちょっと、楓?」

 その手を軽く振り払って立ち上がると、部屋の入り口まで行って部屋の鍵をかけた。
 ついでだから、俺の家の方向にある窓のカーテンも勢いよく閉める。
 それから戸惑う智にぃの手首を掴むと、ほとんど無理やりベッドの上に放り投げた。筋力は俺の方があるし、背は俺より高いくせに体重は大して変わらない体が、さしたる抵抗もなく転がる。
 投げ出された長い足の上に跨って座って、智にぃのシャツに手を伸ばした。

「ちょ、ちょっと、ちょっと楓?!」
「智にぃにその気がないんだったら、俺が智にぃ抱く」
「ま、まって、まってまってほんとにまって」

 ぐぐぐ、と俺の両手を押し返そうとするから、体を屈めて、噛みつくようなキスをして。ぴちゃりと音を立てて下唇を舐め離れる。驚きの表情の奥に、珍しく焦っているのが見て取れた。

「だ、だめだって、だめだよ楓」
「いいから、ちょっと黙ってて」
「無理無理!黙ってられるわけないでしょ?!」
「だって」

 ぼた、と。相変わらず緩い俺の涙腺から、雫が落ちる。

「だって、つらい。いつも、ひとのこと触ってそれでおしまいで。俺ばっか、したくなって」
「――楓」

 智にぃの声が、いつもより低い気がした。

「したいの?僕と?」
「っ、ほか、に、誰がいんだよっ!」
「ん、ごめん」

 握られたままだった両手が引かれ、智にぃの上に倒れこんだ。

「嬉しい。言ってくれてありがと」
「っ、ばか。なんで、こんなに」
「ごめんね」

 少し上げた俺の顔中、唇が触れていく。

「僕、不安だったみたい。楓が、ちゃんと僕のこと好きで側にいてくれてるのかって」
「……ばか……」
「うん、馬鹿だね。本当は、ずっとわかってたはずなのに勝手に僕が不安になったんだ」
「……不安にさせた、俺も悪い、から、いい。ごめん」

 小さく笑う声。そうやって、優しく俺に微笑みかける声が、顔が、大好きで。
 誰にも渡したくないって、他の誰かにそれを向けて欲しくないって、俺だってずっと思ってる。

「なにより僕が、楓をどうしたいかって知られたら……嫌われるんじゃないかって、どっかで思ってた」
「智にぃ――じゃあ、教えて?どう、したい?」

 息を飲む音が聞こえたような、そんな気がして。
 気づいたら、体勢はひっくり返されて、天井の灯りを智にぃの顔が遮っていた。

「っ、ふ」
「あんまり、煽らないでよ……優しくしたいんだから」
「ふふ」

 思わず笑いが漏れる。なにさ、と俺の首筋から唇を離して、不満げに言う智にぃを見上げた。

「智にぃは俺を抱くことしか考えてなかったのかなって思ったら、面白くなっちゃって」
「……え?」
「あのさ、俺も一応男なんだけど?」
「……あ、え、あ……そっか、そうだよね……え、楓、は」
「俺はどっちでもいいよ」

 それは俺の本音だったから、別に深く考えもせず答える。
 
「智にぃが俺を抱けないなら俺が抱いてやるぐらいの気持ちではある」
「……男前すぎない?」
「かっこいいだろ?」

 くしゃ、と情けないほどに相好を崩して、智にぃが笑った。



 開かされた足に、唇が触れる。
 ひく、と震えた俺を優しく見る、その目の奥にチラつくのは欲情で。
 
「痛かったら言って?」
「う、うん」

 流石に未知の感覚に対する恐怖はあった。
 ただ、ベッドの下に隠されていた紙袋からローションとゴムが出てきたのを見たら、それも少し和らいだ気がする。同時に、背中がぞくりとした。
 目の前にいる、この人が。どんな顔して、俺を抱くために、そんなものを買ったんだろう、と。

「楓」
「っ、あ、っふ、ぁあっ」
「なに、考えてるの?僕のことちゃんと見て?」

 俺の思考に入り込んでくる感覚。
 ね、と細められるその目が好きで、抱きつきたくなる。
 伸ばした手を取られ、手のひらにキスされると、勝手に体が反応した。

「上手、息吐いて……大丈夫?」
「っ、いた、くは……ないか、ら。だいじょぶ」

 ぐち、と俺の体の内側が音を立てる。
 智にぃの綺麗な指が動いて、ゆっくり拓かれていくそこは、俺の意思とは無関係にひくりと反応を返した。
 
「ひ、っあ!」

 突然の感覚に、勝手に声が出てしまう。
 あからさまに反応が変わるその場所を見つけられて、喉を反らす。
 震えた俺を優しく、だけど熱く見る智にぃの笑みに全身がぞくぞくした。

「見つけた」
「っや、あ、っ……な、なに……っ」
「楓のいいとこ。ここ」
「あ、あぁっ!あ、ま、まってっ」

 腹の内側を押されて。
 自分でもわかるぐらいに指を締め付けてしまう。

「大丈夫だから、そのまま気持ちよくなって」
「ひ、っあぅ、ん、っあ、あぁあぁっ!」
 
 かぷ、と耳を甘く噛まれ、それと同じかそれ以上に甘い声で囁かれて、俺はどくりと自分の腹の上に白濁を吐き出した。

「っ、は……ぁ」
「いいこ、ちゃんとイけたね」
 
 優しく頭を撫でるその手にも感じてしまって、ぴくぴくと震える。

「僕も、限界。そのまま力抜いててくれる?」
「……ん……がんばる……」

 かわいい、と囁く声。ああ、俺の好きな声だ。
 まるで体の内側から溶かされていくような、とろとろした智にぃの声。どこまでも優しくて柔らかな声なのに、その奥にはあからさまな欲情が浮いている。
 ピッ、という小さな音がして、視線を上げた。小さな袋を、口と手で器用に開ける姿を見つめる。
 恥ずかしいんだけど、と苦笑しながら、それでも萎えそうにないそれにゴムが被せられて。

「……あ……」

 ひた、と智にぃ自身が俺の後ろに触れて、思わず声が出た。
 
「っ、か、えで……そんな顔、反則でしょ」
「え、っ」
「辛くしちゃったら、ごめんね」

 いいから、という俺の声は智にぃの口の中へ吸い込まれる。
 そのまま体を開かれて、押し入ってくる質量に息が止まりそうになった。

「っは……っ、あ、ぅ」
「……大丈夫……?」

 心配そうなその声に、こくこくと頷きを返す。
 疑いの目で見てくるから、手を伸ばして頬に触れた。もっと深く繋がりたくて、首に腕を絡めて引き寄せる。

「ちょ、っと」
「いい、から……っ、もっと、おく……っ」
「かえ、で……ほ、んと、っ、なんでそんなっ」
「おれ、が、いいって、言ってんの」

 ついでに両足も絡めて、途中で腰が引けた智にぃの体を押した。
 
「だ、だめ。僕が、保たないからっ」
「……ふふ、いーよ……うご、いて?」

 焦ったような言葉に嬉しくなる。
 だから、全身でぎゅう、と抱きついて、動いてくれるように強請った。
 耳元で、息を飲む音がする。
 
「っあ?!」
「楓……あんまり煽らないでよ」
「ぁあ、っ、あ、んっ、あぅっ」

 腰が掴まれて、中を強く抉られて。
 
「ま、まっ、あ、ぁああっ!あ、だ、め、おれ、もうっ」
「ん、ちゃんと、イけ、てるね」
「と、とま、っ、ぁ、ぅっ!あ、あぁあっ、ひ、ぁうっ」

 ぐちゃぐちゃと音を立てて突かれ、吐き出した俺の精液を指先で拭ったかと思うと、そのまま口に運ぶから。
 羞恥で目を逸らしたいのに、逸らせないまま。その仕草を見つめてしまう。

「あ、っ、とも、に」
「しっかり掴まって。いいとこ、してあげる」
「ひぁ、ああ、っ」

 いい、と首を横に振った。なんで、と苦笑混じりの声に、体が熱くなる。

「いい、からぁ……とも、に、も……きもち、よく、なって……っ」
「だ、からっ」
「あ、ひぅっ!や、やだぁ、おれ、おれだけ、またっ」
「……大丈夫。一緒に、イこ?」

 これでもかと言うほどに蕩けたように微笑んで言うから。
 俺は思い通りにならない体でしがみつき、あられもない声を上げ続けた。



 にこ、と笑う樹の顔を見る。
 即座に視線を逸らしたけれど、俺の横顔に注がれる視線は上機嫌そうだ。

「……なにさ」
「んー?あれからけっこう経つけど、うまくいったんだろうなーって思って」

 たぶん俺の顔は真っ赤で。
 そんな俺を、俺よりも嬉しそうに見てくるから、照れとか恥ずかしさもあるけれど。

「……樹」
「なに?」
「その、ありがと。一応、お礼、言っとく、遅くなったけど」

 驚いた顔の樹が、嬉しそうに笑う。
 それから、少し考える素振りをして。

「な、なぁ。今度は俺の相談に乗ってもらっていい?」
「?なんだよ。なんかあったの?」
「あった、っていうか……」

 いつぞやの俺と同じように、もじ、とラグをいじった。

「あ、あの、さぁ。ぶっちゃけ、ぶっちゃけな?二人、って、その、どんくらい、してる?」
「っ、え?」
「はじめて、して、から、その後、どんくらいしてる……?」

 ちら、と俺を伺う仕草を見ながら考える。
 正直、それほど多くはない、と思う。互いに実家住みだし。
 それを答えるのは簡単だったけれど樹の相談内容に興味を惹かれた。

「なになに?どーいうこと?」
「ど、どうっていうか!教えろよ!」

 恥ずかしさからか、樹の声が大きくなる。
 それが聞こえたのか、まだ起きてるのか、という父親の声がした。
 にやりと笑って、お菓子と飲み物を手に階段を上がる。

「んじゃ、今日は樹の部屋で。話聞かせてよ」
「うう……ちゃんと相談乗ってくれよ……?」

 もちろん、と。
 同じ顔をした兄に向かって笑い、俺は樹の部屋の扉を開けた。


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