10 / 20
10
しおりを挟む
がくがくと、勝手に俺の足が震える。
必死に息を吸って酸素を取り込んでいるのに、まだ解放してくれる気はないらしい。
「っ、ま、って……やすま、せて……っ」
「んー?じゃあこっち向いて」
俯せになっていた肩を引かれて、されるがまま仰向けになる。くしゃ、と軽く俺の頭を撫でた手が離れて、そこでやっと深呼吸をした。
「ほら、口開けて」
「じ、自分で、飲むってば」
離れた手が、ペットボトルの蓋を開ける。
貸して、と言ってみるけど俺の意見は通らない。おもむろにその中身を口に含んだかと思うと、整った顔が近づいてくる。
つう、と指先が俺の唇をなぞって。ほとんど反射的に開いた口に、薄く笑った唇が重なった。
「ん、う」
口腔の体温でぬるくなった水が流れてくる。こぼさないように飲み下すと、満足そうに口は離れた。
「あ、ありがと」
「ん」
笑う横顔を追いかけるように見つめる。
やっぱり恰好いいなぁなんて考えていると、蓋を閉めたペットボトルをサイドテーブルに置いて。何やらその引き出しを探り始めた。
「ど、したの?」
「ちょっとな……あ、よかったあったわ」
「なにが?」
少しばかり嫌な予感はしたけれど、とりあえず聞いてみる。すると、彼は振り返ってとてもいい笑顔で言った。
「ゴム。まだもうひと箱あった」
「……え?」
「つーわけで、まだできるよな?樹」
にやり、と口角が上がる。
それを目にして、ひ、と俺の口から引きつった声がこぼれた。
うううう、と唸る俺の肩を、双子の弟が優しく叩いてくれる。
「なんなの?!なんなのあいつ!絶倫なの?!」
「樹、声でかいって。落ち着け」
「だってさぁ、ほんと、なんなの……無理って言ったって聞いてくんないし、意識飛ばしたのだって一回や二回じゃねぇし、なのに手加減もしてくれないし」
「よしよし」
言ってるうちに涙が浮いてきて、ぎゅう、と楓に抱き着いた。
「それでか、何回か圭人が代わりに電話よこしたの」
「うう……俺が気絶してる間に泊まらせるって連絡入れてたっぽい」
「別に無断外泊しようが、もう二十歳過ぎてんだしそんな気にされないのにな。変なとこ律儀だなあいつ」
笑いながら言うけど、笑いごとじゃない。
楓と智にぃの仲が無事に進展したらしい今日この頃。それに反して、俺の悩みの種は。
「いやでもまさか、圭人がそんなに絶倫だとは」
ぽそりと楓がつぶやく。
そう、俺の悩みの種は、恋人である圭人のその絶倫さにあった。
「確かにされるほうはけっこうしんどいよなそれじゃ」
「べ、べつに、別に痛いとか、嫌だとか、そういうわけじゃないんだけど。だけどさぁ、その、ヤり過ぎなんじゃないかって」
「俺らと比べてもしょうがないけど、まぁ、うん、なんだ」
なんでもはっきりきっぱり言う性格の楓が、珍しく言いよどむ。
「もうちょっと気遣ってくれてもいいよなぁ」
「そうそれ!」
よしよし、と俺の頭を撫でる楓の手が、背中に移動した。ぽんぽんと落ち着かせるみたいに優しく叩いてくれる。
その仕草がまるで智にぃみたいだなと感じて、微笑ましく思えた。だけど。
「まぁ、あれだよ。何よりさぁ、それ目的だけみたいじゃん」
「……ちがう、と、おもい、たいけど」
「違うとは思うよ?俺も。ごめん、泣かないでよ樹」
「ないて、ない」
「……うん」
泣いてない。そう言いながら、楓の肩にくっつけた額を上げることもできず。
「俺から言おうか?」
そんな言葉に、少し考えて。いい、と首を横に振った。
「じぶん、で、言う」
「そっか。無理すんなよ、しんどいなら俺も付いてくから」
「……ありがと、楓」
いえいえ、と冗談めかして言ってくれる弟の存在が、本当にありがたい。
だから、抱きついたままの腕にもう一度力をこめる。
「強いって、樹」
「感謝の気持ち」
「まあ、俺の大事な兄貴を泣かせるようなやつは許せねぇし?」
「頼むから智にぃには言うなよ」
「言わねぇよ……その足で乗り込むだろあの人。殺しかねない」
「言えてる」
今頃智にぃがくしゃみしてるんじゃないかな、なんて考えながら。
たぶん同じことを考えた楓と、同時に小さく笑った。
だけど、せっかく人がちゃんと話をしようと決意したその後から、なかなか俺と圭人は会うことができなくなっていた。
いつも通り大学へ通って、空いている教室で弾くよとメールしてみても、ごめん行けない、という返事がくるだけだ。
理由はいろいろだった。レポートが終わらないとか、ゼミの教授に手伝いを頼まれただとか。
「……別に、仕方ない、けど」
ぽそ、と。一曲弾き終わって、独り言が漏れる。
もう、三週間ぐらい顔を見ていない。話がどうとかより、単純に寂しさのほうが強くなってしまう。
俺がため息をつくのに合わせたように、携帯電話がメッセージの到着を告げるから、もそもそと移動してそれを確認した。
『悪い、明日も会えそうにない。本当にごめん』
「……そっか」
いいよ、がんばって、と心にもない返事をして、椅子に深く座り直した。
学部もキャンパスも、同じ敷地内とはいえ異なる俺たちは、会おうと思わなければ会うことすらできないんだという事実を改めて噛みしめる。
いつもは、圭人の方が来てくれていたから。そんなことを実感する暇もなかったけれど、当たり前のことだ。
「――よし」
いつまでもこうしてても何も変わらない。椅子から立ち上がり、戸締りをして空き教室を出る。
途中で圭人の好きなコーヒーを買って、俺は工学部のキャンパスへ向かうことにした。
歩いて数分の距離だけれど、ずいぶん長く感じる。何しろ、入学してから他の建物のほうへ行くことなんてなくて。
そもそも臆病で引っ込み思案で人見知りの俺には、知らない場所というだけでハードルが高すぎるのだ。
「ううう」
軽く頭を振り、いつの間にか止まってしまっていた足を踏み出す。
圭人に、会いたかった。
話だとか、そういうものはとりあえず全部横に放り投げて、ただ、会いたいという気持ちのほうが大きくなっていた。
「ひっろ、いな……どこって言ってたっけ」
少し急ぎ足できたせいで、軽く上がった息を整える。
確か、と以前聞いたおぼろげな記憶を頼りに、圭人が普段いるだろう建物の方へと足を向けた。
こっちにもカフェテラスがあるんだな、と周囲を見回しながら、奥にある目的の建物を目指す。
中に入るのは少し気が引けたので、本当にここにいるのか辺りの人に聞いてみようか、なんて考えた。
「あれ?あんた、うちの学部じゃねえよな?」
不意にかけられた声に振り向く。俺より頭ひとつ分ぐらい低い位置から、その声はした。
「どっかで見た気はすっけど。一応そこの建物、部外者立ち入り禁止なんだわ」
「あ、え、えっと、すみませ、ん」
「いいって、入ってないんだから。で、部外者がこんなとこでどうした?」
「あの、えっと、人を、探し、てて」
にか、と笑ってくれたので少し安心して聞いてみる。
まあ座れよと近くのベンチを指され、大人しく従った。
「誰探してんの?俺の知ってる奴なら、呼んできてやるよ」
「い、いや、悪い、し」
「大した手間じゃねえし、ちょうど今暇してたとこなんだ。気にすんなって」
それなら、という思いと、いやでもやっぱり自分で、という思いが混ざり合う。
結局断ろうとしたところで、俺の横に座った彼は、あ、と声を上げた。
「よう!今終わりか?」
「ったく、まだあるっつの。お前も手伝えよ」
聞き慣れた声に、思わず振り向く。驚いた目が、俺を見た。
「樹?!なんでここに」
「あ、それは、その」
うまく言葉を紡げなくて、眉が下がる。こういうときの自分が、本当に嫌だ。
「なんだ探してたのって圭人のことかよ」
「は、はい」
「探してた?おい佐倉どーいうことだよ」
「どうもこうも。こいつがそっちの研究棟行こうとしてたから止めたら、誰か探してるって言うからさ」
圭人が佐倉、と呼んだ彼を見て。それからまた、その視線が俺に戻った。
眉を顰めて、口元は笑っているけれど目が笑っていない。そんな初めて見る顔に、びくりと体がすくむ。
来ちゃいけなかったんだろうか。やっぱり、俺なんかを友達と会わせてしまったことに後悔しているんだろうか、とぐるぐると嫌な考えが頭の中を巡った。
「樹、せっかく来てくれたのに悪い。さっきメールした通りで」
「う、うん。いいよ、俺が勝手に近くまできちゃっただけだから。はいこれ、差し入れ、頑張ってね」
幸か不幸か、こういう時に取り繕うのは得意だ。
にこ、と笑って手の中のコーヒーを押し付けるように渡してやる。
「樹、あとで連絡するから」
「いいって、無理しなくて。お前にはお前のやることがあるんだろ?俺なら大丈夫だから」
「連絡する」
真剣な目と声。だけど、俺の唇は嘘ばかりつく。
「……わかったよ。それじゃ」
「ああ」
ひらりと手を振って踵を返し、自分のキャンパスに戻ろうと、気づけば震えていた膝を叱咤し、何とか逃げるようにしてその場から立ち去った。
ぼたぼたと落ちる涙が鬱陶しいけれど、なかなか止まってくれない。
どうしよう、と考えた。こんな状態じゃ、楓にも会えないし智にぃにはもっと会えない。
二人とも、圭人に何するかわかったもんじゃない、と思えば少しだけ笑いが零れた。
とりあえず、楓にだけメールを送っておく。少し遅くなる、とだけ。
がんばれよ、なんて優しい返事が届いて、俺は抱えた膝に顔を埋めた。
結局、俺は何も変われてない。見た目だけ変えても、中身は俺のままで。楓みたいにはできない。
「……がんばったよなぁ……」
あの場で泣き出したり取り乱したりせず、表面だけでも普通にできた自分を褒めてやりたくて、そんな言葉が零れた。
俺のスマホが光って、今度は着信を知らせた。楓かな、と思って画面を見てみると、そこに表示されたのは圭人の名前だ。
嫌だ、と思った。何を言われても、変なことを口走ってしまいそうで。
気づかないふりをして、その着信には出ずにスマホをひっくり返す。
「かえら、ないと」
ぼそりとつぶやいてはみるけれど、体がひどく重かった。
サークル棟の、その一室。あまり顔は出せてないし活動頻度も低いけれど、一応俺が所属しているカードゲームのサークルが利用している部屋で、ごろりと横になる。
そのままうとうとしてしまい、気づけばとっくに日は暮れて、あたりは真っ暗になっていた。
さすがにまずいと起き上がり、鞄を手に取る。電気を消して、とにかく帰ろう、と放りっぱなしのスマホを掴んだ。
「――うわ」
画面を埋めつくす着信履歴。ほとんどが圭人だけれど、楓や智にぃの名前もある。
思ったよりも遅くなって、心配かけてるよな、ととりあえず楓に電話しようと、スマホの画面に触れた。
その瞬間、電話がかかってきて。指を置いていた俺は、うっかり出てしまう。
『樹?!無事なのか?!』
「え、ぶ、無事、って」
『メールの返事もねーし電話にも出ねーし!楓や智にぃに聞いてもわかんねーし、あの二人からの電話にも』
「わ、わかった、わかったから、そんな大きな声出さなくても聞こえるから!」
案の定、その相手は俺が通話したくないと思っていた圭人で。
一方的に大きな声で捲し立ててくるから、なんとかその言葉を遮った。
『無事、なんだな?』
「う、うん……ごめん、心配かけて」
『何もねーならいいんだよ。どこにいんのお前』
「えっと、サークル棟――」
『サークル棟な、わかった』
言って、これまた一方的に電話が切れる。
少しの間呆然としていた俺は、自分が今居場所を言ってしまったことに気づくまで時間が必要だった。
はっとして立ち上がったけれどもう遅い。無遠慮に扉が開けられて、その向こうには携帯電話を手にした圭人が立っている。
「樹」
「あ、っと、そ、その」
戸惑う俺の顔に、圭人の両手が触れた。
あちこち確かめるように触れてから、ぎゅう、と抱きしめられる。
「ご、ごめん、俺、その」
「いいから。何かあったわけじゃないんだよな?無事なんだろ?」
その声は、なんだか泣き出しそうに聞こえて。
うん、と頷くと、肩の方で深く息を吐く音が聞こえた。
「ったく……あんま心配かけんな。ちょっと楓に電話だけする」
「え?」
「あーもしもし?おう、いたわ。悪い、智にぃにも言っといてくれよ」
俺から体を離し、電話をかけて。どうせ一緒にいんだろ、なんて笑う声をどこか他人事のように聞く。
「おう、送ってく。じゃあな」
「……圭人」
「ん?どうした、ほら帰ろうぜ。家まで送るから」
電話を切って、振り向いて。
俺と目が合った圭人が、ぎょっとして固まった。
「ちょ、な、なんだよ、どしたの、なあ」
「な、にが」
「なんでお前泣いてんの?ごめん、俺?俺のせいか?」
あわあわと両手を上下に動かしながら、焦った顔で俺をなだめようとするから、なんだかおかしくなってしまう。
笑ったつもりがたぶんあまり笑えてなくて、圭人が余計に眉を八の字に下げた。
「圭人の、せいじゃない……俺が、悪いだけ」
「馬鹿なこというなよ。お前の何が悪いって言うんだ」
それには答えず、静かに首を横に振る。
「……あの、さぁ……」
「なに、なんでも言って。なんでも聞くから」
「これから、おまえんち、いってもいい?」
きゅ、と。
圭人の胸辺りの服を弱々しく掴んで、つぶやくように言った。
伝わってくるのは、戸惑いと困ったような空気で。嫌が応にも俺はそれを感じ取ってしまって、またぼろりと涙が落ちる。
「……ご、ごめん。忙しい、んだもんな」
「いやそれは――」
「ほんと、ごめん。大丈夫、俺、ひとりで帰るし」
「――っ、樹!」
鞄を持っていたほうの手首を捕まえられ、僅かに痛みが走った。
「ごめん、違う、そうじゃない。大丈夫だから、うち来て」
「で、も」
「ちゃんと話すから。お前も言いたいことあんなら言って。お願い」
ぐい、と引き寄せられて体が圭人の腕の中に入り込む。
いいのかな、なんて。頭のどこかで後ろ向きなことを考えながらも、俺は小さく頷きを返した。
とあるマンションの一室。
このマンション自体が親の持ち物らしいけれど、深くは聞いていない。ちょっと聞くのは怖いし。
その一室が、圭人の部屋だ。到底、学生が一人暮らしするようなマンションではないのだけれど、そこはまぁ、親心なんだろう。
「お邪魔、します」
小さく言って、靴を脱ぐ。当然のようにオートロックで、俺の背中側から鍵のかかる音がした。
こっち、と。手首を掴まれたまま、廊下を抜けて広いリビングへ誘導される。大学からずっとそのままで、何度か離してとは言ってみたものの、誰に見られることもなく部屋まで帰り着いてしまった。
所在無く、促されるままソファーに腰を下す。
「なんか飲むか」
「う、ううん、大丈夫」
若干低い気がする声音に、首を横に振って答えた。そうか、と返ってきて、少しのあと俺の横に圭人が座る。肩が触れそうな距離に、そんな場合じゃないけれどどきりとした。
「――ごめん」
先にそう言ったのは圭人の方だ。
「傷つけるつもりじゃなかった……何言っても言い訳にしかならないけど」
「ど、どういう、こと?」
「気づいてたかどうか、わかんねーけど。ここしばらく、お前のこと避けてた」
疑問よりも納得が勝って、こくりと頷く。
「忙しかったのも本当だけど。会えないほどじゃなかった」
「……なんで、避けてたんだよ?」
「そ、それは」
ぐ、と言葉を詰まらせ言い淀むから、ああやっぱり、と俺のネガティブな部分が顔を覗かせた。
「俺と、いるの……恥ずかしい?」
「樹?」
「友達とかに、俺といんの見られるのとか嫌なんだろ?だから」
「待て、待てって。なんでそんな方向に話が行くんだよ」
「今日……あの、人、佐倉?って人といたとき……お前、笑ってなかった」
俺の言葉に、圭人が深く息を吐く。
言葉を探しているみたいだったから、いいよ、と小さくつぶやいた。
「いいよ、言い訳探さなくて。俺は、慣れてるから」
「違う!」
「っ」
突然の大きな声に、びくりとソファーから跳ね上がる。
「そうじゃ、なくて……ああもう、くそ」
がしがしと乱暴に頭を掻いて、また息を吐き出して。それから天井を見上げ、違うんだと繰り返した。
「し、っと、した」
「は?」
「だから!お前が!佐倉と話してんの見て、その、佐倉に、めちゃくちゃ嫉妬したの!」
きょとんとした俺に手を伸ばし、ぎゅうぎゅうに抱きしめて。
「あーもう、かっこ悪……必死に我慢してたっつーのに」
「我慢?何を?」
「あ、いや、だから態度にだな」
明らかな嘘だとわかるほどに声に動揺が滲み出ているから、つい笑ってしまう。
「なんだよ」
「嘘が下手だなと思って。ちゃんと話すって言ったのも嘘?」
「……違う」
言いながら、俺から腕をゆっくりと離した。
「お前に触るの、我慢してた」
「……だから、避けてたってこと?」
「そう」
なんで、と問う俺の唇は、少し震えていたかもしれない。
圭人の手が頬に触れて、柔く耳を撫でる。ぴく、とわずかに肩が跳ねた。
「会えば、触りたくなる」
「さ、さわる、って」
「今だってそうだ。押し倒して服脱がして、身体中触って鳴かせたい」
「な、なな、な、っ」
「体の内側触って気持ちよくしてやって、受け入れて欲しい。そんなことばっか考えてる」
懺悔のようにこぼす圭人の言葉に、顔が熱くなる。
「……でも、さあ。やっぱり、キツいだろ?」
「え、えっ、と」
「ちょくちょくお前、意識飛ばしてるし。俺としてはまだ足りないくらいなんだけど」
ぼそりとつぶやいた言葉に、頭を抱えたくなった。
今までを散々絶倫だと言ってきたけれど、それでもまだ足りない、なんて。
だけど同時に、鳩尾のあたりが温かくなるような感覚があって。嬉しい、確かにそんな感情がそこに存在する。
「やっぱ、どう考えてもお前の負担が大きいわけだし。だったら少しぐらい我慢しなきゃなって」
「……三週間が、少し?」
「あ、いや、その。ここまで長引く予定じゃなかった」
忙しいのは半分本当だったらしく、違うと首を横に振った。
でも、俺はもはやそんなことはどうでもよくて、ただただ、嬉しい。
圭人が俺がしんどいんじゃないかってちゃんと考えてくれていたこと。それでも足りないと思っていたこと。足りないくせに、俺のために我慢しようとしてくれていたこと。全部が嬉しくなって、今度は俺から抱きついた。
「い、樹」
「ありがと、嬉しい」
「いや……悪い。お前に変な誤解させて。ちゃんと否定させてくれよ、な?」
もうわかったから大丈夫だよ、と答えると、ちゅ、と音を立てて唇が俺のそれに触れた。
水音が広い寝室に響く。
「っ、は……どしたの、お前」
俺の中を抉る、凶器みたいなそれがずるりと引き抜かれて。ひく、と勝手に動く後孔を、指先でなぞられて震えた。
なにが、と覚束ない声で問う。体を起こされ、向かい合わせに乗せられて、かぷりと首筋に噛みつかれた。
「なんか、いつもより感じてる」
「わ、わかん、な……あ、っ!」
人が話している最中に腰を持ち上げられて、さっき抜かれたそれがまた入ってくるから、背筋を反らす。
後ろに倒れそうになる体を圭人の手が支えて、前に押された。
「ん、っ……も、そんな、きゅう、に」
「ごめんって。ほら腕、こっち回して」
「あ、ぅ……ん、っ、あ、ふぁ」
しがみつくように肩から背中へと腕を誘導され、軽い引っ掻き傷を作ってしまう。
けれど、圭人はその瞬間、なぜだかすごく嬉しそうに笑った。
「ん、いいな、それ」
俺を揺さぶっていた動きを止めて、頬に唇で触れながら言う。
「もっと跡つけて」
「な、だ、だめ、だろ」
「駄目じゃない。お前が俺にくれるもんなら、なんでも嬉しい」
「ばか、っ、あ、ああぁ、あうっ」
馬鹿、という言葉に合わせるように腰を動かされて、俺の声はまた融けていってしまって。
がり、と爪を立てれば痛みに眉を顰めるものの、それも一瞬だ。
「樹……すき」
「ん、うっ、あ、あぁ、お、れも……っ」
「すき。すきだよ、どうしようもなく」
まるで耳から甘いはちみつを流し込まれているみたいな気分になりながら、俺はまた圭人の背中に傷を作った。
どく、と。俺の中の圭人が脈打つ。ぞくぞくとしたものが背中を這い上がって、ほとんど同時に俺も達した。だけど、その感覚はいつもと違って。
「……樹?」
「ん……?な、に……?」
「でてない」
圭人の指が俺自身に触れる。固く上を向いたままのそこが、ひくりと震えた。
「腰あげて」
「……ん……」
どこかふわふわしたまま、言われた通りにする。
「あ、ふぁ……っ」
体の中から出て行くその感覚に、勝手に声が零れた。
「出さないでイけんの?」
「しら、なっ、あ、だめ、っ」
悪戯するみたいに柔く撫でられて、それだけでも体は跳ねて。
ぎゅう、と回したままの腕に力をこめて抱きつけば、背中をそっと叩かれた。
「……大丈夫か?」
「へい、き……圭人は……?」
「俺?俺は、えっと」
なんだかはっきりしないので、少し体をずらす。
気になってしまったら見てみたくて、そのまま圭人自身に触れた。こら、という声は無視して、よいしょ、とゴムを外す。
「うわ、すごい量」
「ちょ、おま、な、っ、んで、そういう、こと言うかな」
「事実じゃん……こぼれそう」
とぷ、と音を立てそうなほどの量に、思わず率直な感想が漏れた。
すかさず取り上げられて、ティッシュと共にゴミ箱へ放られるのを見送っていると、圭人が俺の頭をくしゃりと撫でる。
「とりあえずシャワーと……樹はどーする、泊まってくか?帰るなら送ってくけど」
「え?」
「え?」
思わず聞き返すと、まったく同じ声を返された。
「え、なに?」
「なに、って……」
一回しかしてないのに、と言いかけて止まる。
圭人が俺の顔を覗き込んできて、それからゆっくりと口角を上げた。
今、俺はどんな顔をしてるんだろうか。あんなに絶倫だと責め立てて、なんなら楓にも泣きついて。
そのぐらい、困っていたはずなのに。
「……樹」
「っ、け、いと」
伸ばされる手。頬から唇へ、確かめるようになぞる。
正面から見つめる圭人の両目に映る色は、圭人のものなのか、それとも、俺のものなのか。
なんだか頭の中まで浸されていくような感覚の中で、ああそうかと一人納得した。
明日帰ったら、ちゃんと楓に説明しよう。呆れられることは絶対だけど。
結局俺だって、圭人が欲しがってくれることが嬉しくて仕方ないんだ、って。
「馬鹿じゃないの」
「ごめんって」
「俺もう樹の心配なんかしてやんない」
「ごめんね」
「うううう……圭人から連絡つかないって電話きたとき本当に焦ったんだからな」
「うん」
「智にぃにも連絡してさぁ、ほんと、ほんとに……こわかった……」
「……心配ばっかかけて、駄目な兄貴でごめんな」
「ばか。おれ、は、樹が、しあわせじゃないとだめ、なんだからな」
「うん、ありがと。ほら楓、もう泣くなよ」
「……ん」
「完全に俺ら蚊帳の外じゃん」
「あはは、まぁ仕方ないよねぇ」
「……あの二人っていつもあんな感じ?」
「わりと。妬けるでしょ」
「めちゃくちゃ妬ける」
「何馬鹿なこと言ってんの二人とも。ほら智にぃ、楓のことよろしく」
必死に息を吸って酸素を取り込んでいるのに、まだ解放してくれる気はないらしい。
「っ、ま、って……やすま、せて……っ」
「んー?じゃあこっち向いて」
俯せになっていた肩を引かれて、されるがまま仰向けになる。くしゃ、と軽く俺の頭を撫でた手が離れて、そこでやっと深呼吸をした。
「ほら、口開けて」
「じ、自分で、飲むってば」
離れた手が、ペットボトルの蓋を開ける。
貸して、と言ってみるけど俺の意見は通らない。おもむろにその中身を口に含んだかと思うと、整った顔が近づいてくる。
つう、と指先が俺の唇をなぞって。ほとんど反射的に開いた口に、薄く笑った唇が重なった。
「ん、う」
口腔の体温でぬるくなった水が流れてくる。こぼさないように飲み下すと、満足そうに口は離れた。
「あ、ありがと」
「ん」
笑う横顔を追いかけるように見つめる。
やっぱり恰好いいなぁなんて考えていると、蓋を閉めたペットボトルをサイドテーブルに置いて。何やらその引き出しを探り始めた。
「ど、したの?」
「ちょっとな……あ、よかったあったわ」
「なにが?」
少しばかり嫌な予感はしたけれど、とりあえず聞いてみる。すると、彼は振り返ってとてもいい笑顔で言った。
「ゴム。まだもうひと箱あった」
「……え?」
「つーわけで、まだできるよな?樹」
にやり、と口角が上がる。
それを目にして、ひ、と俺の口から引きつった声がこぼれた。
うううう、と唸る俺の肩を、双子の弟が優しく叩いてくれる。
「なんなの?!なんなのあいつ!絶倫なの?!」
「樹、声でかいって。落ち着け」
「だってさぁ、ほんと、なんなの……無理って言ったって聞いてくんないし、意識飛ばしたのだって一回や二回じゃねぇし、なのに手加減もしてくれないし」
「よしよし」
言ってるうちに涙が浮いてきて、ぎゅう、と楓に抱き着いた。
「それでか、何回か圭人が代わりに電話よこしたの」
「うう……俺が気絶してる間に泊まらせるって連絡入れてたっぽい」
「別に無断外泊しようが、もう二十歳過ぎてんだしそんな気にされないのにな。変なとこ律儀だなあいつ」
笑いながら言うけど、笑いごとじゃない。
楓と智にぃの仲が無事に進展したらしい今日この頃。それに反して、俺の悩みの種は。
「いやでもまさか、圭人がそんなに絶倫だとは」
ぽそりと楓がつぶやく。
そう、俺の悩みの種は、恋人である圭人のその絶倫さにあった。
「確かにされるほうはけっこうしんどいよなそれじゃ」
「べ、べつに、別に痛いとか、嫌だとか、そういうわけじゃないんだけど。だけどさぁ、その、ヤり過ぎなんじゃないかって」
「俺らと比べてもしょうがないけど、まぁ、うん、なんだ」
なんでもはっきりきっぱり言う性格の楓が、珍しく言いよどむ。
「もうちょっと気遣ってくれてもいいよなぁ」
「そうそれ!」
よしよし、と俺の頭を撫でる楓の手が、背中に移動した。ぽんぽんと落ち着かせるみたいに優しく叩いてくれる。
その仕草がまるで智にぃみたいだなと感じて、微笑ましく思えた。だけど。
「まぁ、あれだよ。何よりさぁ、それ目的だけみたいじゃん」
「……ちがう、と、おもい、たいけど」
「違うとは思うよ?俺も。ごめん、泣かないでよ樹」
「ないて、ない」
「……うん」
泣いてない。そう言いながら、楓の肩にくっつけた額を上げることもできず。
「俺から言おうか?」
そんな言葉に、少し考えて。いい、と首を横に振った。
「じぶん、で、言う」
「そっか。無理すんなよ、しんどいなら俺も付いてくから」
「……ありがと、楓」
いえいえ、と冗談めかして言ってくれる弟の存在が、本当にありがたい。
だから、抱きついたままの腕にもう一度力をこめる。
「強いって、樹」
「感謝の気持ち」
「まあ、俺の大事な兄貴を泣かせるようなやつは許せねぇし?」
「頼むから智にぃには言うなよ」
「言わねぇよ……その足で乗り込むだろあの人。殺しかねない」
「言えてる」
今頃智にぃがくしゃみしてるんじゃないかな、なんて考えながら。
たぶん同じことを考えた楓と、同時に小さく笑った。
だけど、せっかく人がちゃんと話をしようと決意したその後から、なかなか俺と圭人は会うことができなくなっていた。
いつも通り大学へ通って、空いている教室で弾くよとメールしてみても、ごめん行けない、という返事がくるだけだ。
理由はいろいろだった。レポートが終わらないとか、ゼミの教授に手伝いを頼まれただとか。
「……別に、仕方ない、けど」
ぽそ、と。一曲弾き終わって、独り言が漏れる。
もう、三週間ぐらい顔を見ていない。話がどうとかより、単純に寂しさのほうが強くなってしまう。
俺がため息をつくのに合わせたように、携帯電話がメッセージの到着を告げるから、もそもそと移動してそれを確認した。
『悪い、明日も会えそうにない。本当にごめん』
「……そっか」
いいよ、がんばって、と心にもない返事をして、椅子に深く座り直した。
学部もキャンパスも、同じ敷地内とはいえ異なる俺たちは、会おうと思わなければ会うことすらできないんだという事実を改めて噛みしめる。
いつもは、圭人の方が来てくれていたから。そんなことを実感する暇もなかったけれど、当たり前のことだ。
「――よし」
いつまでもこうしてても何も変わらない。椅子から立ち上がり、戸締りをして空き教室を出る。
途中で圭人の好きなコーヒーを買って、俺は工学部のキャンパスへ向かうことにした。
歩いて数分の距離だけれど、ずいぶん長く感じる。何しろ、入学してから他の建物のほうへ行くことなんてなくて。
そもそも臆病で引っ込み思案で人見知りの俺には、知らない場所というだけでハードルが高すぎるのだ。
「ううう」
軽く頭を振り、いつの間にか止まってしまっていた足を踏み出す。
圭人に、会いたかった。
話だとか、そういうものはとりあえず全部横に放り投げて、ただ、会いたいという気持ちのほうが大きくなっていた。
「ひっろ、いな……どこって言ってたっけ」
少し急ぎ足できたせいで、軽く上がった息を整える。
確か、と以前聞いたおぼろげな記憶を頼りに、圭人が普段いるだろう建物の方へと足を向けた。
こっちにもカフェテラスがあるんだな、と周囲を見回しながら、奥にある目的の建物を目指す。
中に入るのは少し気が引けたので、本当にここにいるのか辺りの人に聞いてみようか、なんて考えた。
「あれ?あんた、うちの学部じゃねえよな?」
不意にかけられた声に振り向く。俺より頭ひとつ分ぐらい低い位置から、その声はした。
「どっかで見た気はすっけど。一応そこの建物、部外者立ち入り禁止なんだわ」
「あ、え、えっと、すみませ、ん」
「いいって、入ってないんだから。で、部外者がこんなとこでどうした?」
「あの、えっと、人を、探し、てて」
にか、と笑ってくれたので少し安心して聞いてみる。
まあ座れよと近くのベンチを指され、大人しく従った。
「誰探してんの?俺の知ってる奴なら、呼んできてやるよ」
「い、いや、悪い、し」
「大した手間じゃねえし、ちょうど今暇してたとこなんだ。気にすんなって」
それなら、という思いと、いやでもやっぱり自分で、という思いが混ざり合う。
結局断ろうとしたところで、俺の横に座った彼は、あ、と声を上げた。
「よう!今終わりか?」
「ったく、まだあるっつの。お前も手伝えよ」
聞き慣れた声に、思わず振り向く。驚いた目が、俺を見た。
「樹?!なんでここに」
「あ、それは、その」
うまく言葉を紡げなくて、眉が下がる。こういうときの自分が、本当に嫌だ。
「なんだ探してたのって圭人のことかよ」
「は、はい」
「探してた?おい佐倉どーいうことだよ」
「どうもこうも。こいつがそっちの研究棟行こうとしてたから止めたら、誰か探してるって言うからさ」
圭人が佐倉、と呼んだ彼を見て。それからまた、その視線が俺に戻った。
眉を顰めて、口元は笑っているけれど目が笑っていない。そんな初めて見る顔に、びくりと体がすくむ。
来ちゃいけなかったんだろうか。やっぱり、俺なんかを友達と会わせてしまったことに後悔しているんだろうか、とぐるぐると嫌な考えが頭の中を巡った。
「樹、せっかく来てくれたのに悪い。さっきメールした通りで」
「う、うん。いいよ、俺が勝手に近くまできちゃっただけだから。はいこれ、差し入れ、頑張ってね」
幸か不幸か、こういう時に取り繕うのは得意だ。
にこ、と笑って手の中のコーヒーを押し付けるように渡してやる。
「樹、あとで連絡するから」
「いいって、無理しなくて。お前にはお前のやることがあるんだろ?俺なら大丈夫だから」
「連絡する」
真剣な目と声。だけど、俺の唇は嘘ばかりつく。
「……わかったよ。それじゃ」
「ああ」
ひらりと手を振って踵を返し、自分のキャンパスに戻ろうと、気づけば震えていた膝を叱咤し、何とか逃げるようにしてその場から立ち去った。
ぼたぼたと落ちる涙が鬱陶しいけれど、なかなか止まってくれない。
どうしよう、と考えた。こんな状態じゃ、楓にも会えないし智にぃにはもっと会えない。
二人とも、圭人に何するかわかったもんじゃない、と思えば少しだけ笑いが零れた。
とりあえず、楓にだけメールを送っておく。少し遅くなる、とだけ。
がんばれよ、なんて優しい返事が届いて、俺は抱えた膝に顔を埋めた。
結局、俺は何も変われてない。見た目だけ変えても、中身は俺のままで。楓みたいにはできない。
「……がんばったよなぁ……」
あの場で泣き出したり取り乱したりせず、表面だけでも普通にできた自分を褒めてやりたくて、そんな言葉が零れた。
俺のスマホが光って、今度は着信を知らせた。楓かな、と思って画面を見てみると、そこに表示されたのは圭人の名前だ。
嫌だ、と思った。何を言われても、変なことを口走ってしまいそうで。
気づかないふりをして、その着信には出ずにスマホをひっくり返す。
「かえら、ないと」
ぼそりとつぶやいてはみるけれど、体がひどく重かった。
サークル棟の、その一室。あまり顔は出せてないし活動頻度も低いけれど、一応俺が所属しているカードゲームのサークルが利用している部屋で、ごろりと横になる。
そのままうとうとしてしまい、気づけばとっくに日は暮れて、あたりは真っ暗になっていた。
さすがにまずいと起き上がり、鞄を手に取る。電気を消して、とにかく帰ろう、と放りっぱなしのスマホを掴んだ。
「――うわ」
画面を埋めつくす着信履歴。ほとんどが圭人だけれど、楓や智にぃの名前もある。
思ったよりも遅くなって、心配かけてるよな、ととりあえず楓に電話しようと、スマホの画面に触れた。
その瞬間、電話がかかってきて。指を置いていた俺は、うっかり出てしまう。
『樹?!無事なのか?!』
「え、ぶ、無事、って」
『メールの返事もねーし電話にも出ねーし!楓や智にぃに聞いてもわかんねーし、あの二人からの電話にも』
「わ、わかった、わかったから、そんな大きな声出さなくても聞こえるから!」
案の定、その相手は俺が通話したくないと思っていた圭人で。
一方的に大きな声で捲し立ててくるから、なんとかその言葉を遮った。
『無事、なんだな?』
「う、うん……ごめん、心配かけて」
『何もねーならいいんだよ。どこにいんのお前』
「えっと、サークル棟――」
『サークル棟な、わかった』
言って、これまた一方的に電話が切れる。
少しの間呆然としていた俺は、自分が今居場所を言ってしまったことに気づくまで時間が必要だった。
はっとして立ち上がったけれどもう遅い。無遠慮に扉が開けられて、その向こうには携帯電話を手にした圭人が立っている。
「樹」
「あ、っと、そ、その」
戸惑う俺の顔に、圭人の両手が触れた。
あちこち確かめるように触れてから、ぎゅう、と抱きしめられる。
「ご、ごめん、俺、その」
「いいから。何かあったわけじゃないんだよな?無事なんだろ?」
その声は、なんだか泣き出しそうに聞こえて。
うん、と頷くと、肩の方で深く息を吐く音が聞こえた。
「ったく……あんま心配かけんな。ちょっと楓に電話だけする」
「え?」
「あーもしもし?おう、いたわ。悪い、智にぃにも言っといてくれよ」
俺から体を離し、電話をかけて。どうせ一緒にいんだろ、なんて笑う声をどこか他人事のように聞く。
「おう、送ってく。じゃあな」
「……圭人」
「ん?どうした、ほら帰ろうぜ。家まで送るから」
電話を切って、振り向いて。
俺と目が合った圭人が、ぎょっとして固まった。
「ちょ、な、なんだよ、どしたの、なあ」
「な、にが」
「なんでお前泣いてんの?ごめん、俺?俺のせいか?」
あわあわと両手を上下に動かしながら、焦った顔で俺をなだめようとするから、なんだかおかしくなってしまう。
笑ったつもりがたぶんあまり笑えてなくて、圭人が余計に眉を八の字に下げた。
「圭人の、せいじゃない……俺が、悪いだけ」
「馬鹿なこというなよ。お前の何が悪いって言うんだ」
それには答えず、静かに首を横に振る。
「……あの、さぁ……」
「なに、なんでも言って。なんでも聞くから」
「これから、おまえんち、いってもいい?」
きゅ、と。
圭人の胸辺りの服を弱々しく掴んで、つぶやくように言った。
伝わってくるのは、戸惑いと困ったような空気で。嫌が応にも俺はそれを感じ取ってしまって、またぼろりと涙が落ちる。
「……ご、ごめん。忙しい、んだもんな」
「いやそれは――」
「ほんと、ごめん。大丈夫、俺、ひとりで帰るし」
「――っ、樹!」
鞄を持っていたほうの手首を捕まえられ、僅かに痛みが走った。
「ごめん、違う、そうじゃない。大丈夫だから、うち来て」
「で、も」
「ちゃんと話すから。お前も言いたいことあんなら言って。お願い」
ぐい、と引き寄せられて体が圭人の腕の中に入り込む。
いいのかな、なんて。頭のどこかで後ろ向きなことを考えながらも、俺は小さく頷きを返した。
とあるマンションの一室。
このマンション自体が親の持ち物らしいけれど、深くは聞いていない。ちょっと聞くのは怖いし。
その一室が、圭人の部屋だ。到底、学生が一人暮らしするようなマンションではないのだけれど、そこはまぁ、親心なんだろう。
「お邪魔、します」
小さく言って、靴を脱ぐ。当然のようにオートロックで、俺の背中側から鍵のかかる音がした。
こっち、と。手首を掴まれたまま、廊下を抜けて広いリビングへ誘導される。大学からずっとそのままで、何度か離してとは言ってみたものの、誰に見られることもなく部屋まで帰り着いてしまった。
所在無く、促されるままソファーに腰を下す。
「なんか飲むか」
「う、ううん、大丈夫」
若干低い気がする声音に、首を横に振って答えた。そうか、と返ってきて、少しのあと俺の横に圭人が座る。肩が触れそうな距離に、そんな場合じゃないけれどどきりとした。
「――ごめん」
先にそう言ったのは圭人の方だ。
「傷つけるつもりじゃなかった……何言っても言い訳にしかならないけど」
「ど、どういう、こと?」
「気づいてたかどうか、わかんねーけど。ここしばらく、お前のこと避けてた」
疑問よりも納得が勝って、こくりと頷く。
「忙しかったのも本当だけど。会えないほどじゃなかった」
「……なんで、避けてたんだよ?」
「そ、それは」
ぐ、と言葉を詰まらせ言い淀むから、ああやっぱり、と俺のネガティブな部分が顔を覗かせた。
「俺と、いるの……恥ずかしい?」
「樹?」
「友達とかに、俺といんの見られるのとか嫌なんだろ?だから」
「待て、待てって。なんでそんな方向に話が行くんだよ」
「今日……あの、人、佐倉?って人といたとき……お前、笑ってなかった」
俺の言葉に、圭人が深く息を吐く。
言葉を探しているみたいだったから、いいよ、と小さくつぶやいた。
「いいよ、言い訳探さなくて。俺は、慣れてるから」
「違う!」
「っ」
突然の大きな声に、びくりとソファーから跳ね上がる。
「そうじゃ、なくて……ああもう、くそ」
がしがしと乱暴に頭を掻いて、また息を吐き出して。それから天井を見上げ、違うんだと繰り返した。
「し、っと、した」
「は?」
「だから!お前が!佐倉と話してんの見て、その、佐倉に、めちゃくちゃ嫉妬したの!」
きょとんとした俺に手を伸ばし、ぎゅうぎゅうに抱きしめて。
「あーもう、かっこ悪……必死に我慢してたっつーのに」
「我慢?何を?」
「あ、いや、だから態度にだな」
明らかな嘘だとわかるほどに声に動揺が滲み出ているから、つい笑ってしまう。
「なんだよ」
「嘘が下手だなと思って。ちゃんと話すって言ったのも嘘?」
「……違う」
言いながら、俺から腕をゆっくりと離した。
「お前に触るの、我慢してた」
「……だから、避けてたってこと?」
「そう」
なんで、と問う俺の唇は、少し震えていたかもしれない。
圭人の手が頬に触れて、柔く耳を撫でる。ぴく、とわずかに肩が跳ねた。
「会えば、触りたくなる」
「さ、さわる、って」
「今だってそうだ。押し倒して服脱がして、身体中触って鳴かせたい」
「な、なな、な、っ」
「体の内側触って気持ちよくしてやって、受け入れて欲しい。そんなことばっか考えてる」
懺悔のようにこぼす圭人の言葉に、顔が熱くなる。
「……でも、さあ。やっぱり、キツいだろ?」
「え、えっ、と」
「ちょくちょくお前、意識飛ばしてるし。俺としてはまだ足りないくらいなんだけど」
ぼそりとつぶやいた言葉に、頭を抱えたくなった。
今までを散々絶倫だと言ってきたけれど、それでもまだ足りない、なんて。
だけど同時に、鳩尾のあたりが温かくなるような感覚があって。嬉しい、確かにそんな感情がそこに存在する。
「やっぱ、どう考えてもお前の負担が大きいわけだし。だったら少しぐらい我慢しなきゃなって」
「……三週間が、少し?」
「あ、いや、その。ここまで長引く予定じゃなかった」
忙しいのは半分本当だったらしく、違うと首を横に振った。
でも、俺はもはやそんなことはどうでもよくて、ただただ、嬉しい。
圭人が俺がしんどいんじゃないかってちゃんと考えてくれていたこと。それでも足りないと思っていたこと。足りないくせに、俺のために我慢しようとしてくれていたこと。全部が嬉しくなって、今度は俺から抱きついた。
「い、樹」
「ありがと、嬉しい」
「いや……悪い。お前に変な誤解させて。ちゃんと否定させてくれよ、な?」
もうわかったから大丈夫だよ、と答えると、ちゅ、と音を立てて唇が俺のそれに触れた。
水音が広い寝室に響く。
「っ、は……どしたの、お前」
俺の中を抉る、凶器みたいなそれがずるりと引き抜かれて。ひく、と勝手に動く後孔を、指先でなぞられて震えた。
なにが、と覚束ない声で問う。体を起こされ、向かい合わせに乗せられて、かぷりと首筋に噛みつかれた。
「なんか、いつもより感じてる」
「わ、わかん、な……あ、っ!」
人が話している最中に腰を持ち上げられて、さっき抜かれたそれがまた入ってくるから、背筋を反らす。
後ろに倒れそうになる体を圭人の手が支えて、前に押された。
「ん、っ……も、そんな、きゅう、に」
「ごめんって。ほら腕、こっち回して」
「あ、ぅ……ん、っ、あ、ふぁ」
しがみつくように肩から背中へと腕を誘導され、軽い引っ掻き傷を作ってしまう。
けれど、圭人はその瞬間、なぜだかすごく嬉しそうに笑った。
「ん、いいな、それ」
俺を揺さぶっていた動きを止めて、頬に唇で触れながら言う。
「もっと跡つけて」
「な、だ、だめ、だろ」
「駄目じゃない。お前が俺にくれるもんなら、なんでも嬉しい」
「ばか、っ、あ、ああぁ、あうっ」
馬鹿、という言葉に合わせるように腰を動かされて、俺の声はまた融けていってしまって。
がり、と爪を立てれば痛みに眉を顰めるものの、それも一瞬だ。
「樹……すき」
「ん、うっ、あ、あぁ、お、れも……っ」
「すき。すきだよ、どうしようもなく」
まるで耳から甘いはちみつを流し込まれているみたいな気分になりながら、俺はまた圭人の背中に傷を作った。
どく、と。俺の中の圭人が脈打つ。ぞくぞくとしたものが背中を這い上がって、ほとんど同時に俺も達した。だけど、その感覚はいつもと違って。
「……樹?」
「ん……?な、に……?」
「でてない」
圭人の指が俺自身に触れる。固く上を向いたままのそこが、ひくりと震えた。
「腰あげて」
「……ん……」
どこかふわふわしたまま、言われた通りにする。
「あ、ふぁ……っ」
体の中から出て行くその感覚に、勝手に声が零れた。
「出さないでイけんの?」
「しら、なっ、あ、だめ、っ」
悪戯するみたいに柔く撫でられて、それだけでも体は跳ねて。
ぎゅう、と回したままの腕に力をこめて抱きつけば、背中をそっと叩かれた。
「……大丈夫か?」
「へい、き……圭人は……?」
「俺?俺は、えっと」
なんだかはっきりしないので、少し体をずらす。
気になってしまったら見てみたくて、そのまま圭人自身に触れた。こら、という声は無視して、よいしょ、とゴムを外す。
「うわ、すごい量」
「ちょ、おま、な、っ、んで、そういう、こと言うかな」
「事実じゃん……こぼれそう」
とぷ、と音を立てそうなほどの量に、思わず率直な感想が漏れた。
すかさず取り上げられて、ティッシュと共にゴミ箱へ放られるのを見送っていると、圭人が俺の頭をくしゃりと撫でる。
「とりあえずシャワーと……樹はどーする、泊まってくか?帰るなら送ってくけど」
「え?」
「え?」
思わず聞き返すと、まったく同じ声を返された。
「え、なに?」
「なに、って……」
一回しかしてないのに、と言いかけて止まる。
圭人が俺の顔を覗き込んできて、それからゆっくりと口角を上げた。
今、俺はどんな顔をしてるんだろうか。あんなに絶倫だと責め立てて、なんなら楓にも泣きついて。
そのぐらい、困っていたはずなのに。
「……樹」
「っ、け、いと」
伸ばされる手。頬から唇へ、確かめるようになぞる。
正面から見つめる圭人の両目に映る色は、圭人のものなのか、それとも、俺のものなのか。
なんだか頭の中まで浸されていくような感覚の中で、ああそうかと一人納得した。
明日帰ったら、ちゃんと楓に説明しよう。呆れられることは絶対だけど。
結局俺だって、圭人が欲しがってくれることが嬉しくて仕方ないんだ、って。
「馬鹿じゃないの」
「ごめんって」
「俺もう樹の心配なんかしてやんない」
「ごめんね」
「うううう……圭人から連絡つかないって電話きたとき本当に焦ったんだからな」
「うん」
「智にぃにも連絡してさぁ、ほんと、ほんとに……こわかった……」
「……心配ばっかかけて、駄目な兄貴でごめんな」
「ばか。おれ、は、樹が、しあわせじゃないとだめ、なんだからな」
「うん、ありがと。ほら楓、もう泣くなよ」
「……ん」
「完全に俺ら蚊帳の外じゃん」
「あはは、まぁ仕方ないよねぇ」
「……あの二人っていつもあんな感じ?」
「わりと。妬けるでしょ」
「めちゃくちゃ妬ける」
「何馬鹿なこと言ってんの二人とも。ほら智にぃ、楓のことよろしく」
0
あなたにおすすめの小説
人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました
よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、
前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。
獣人が支配する貴族社会。
魔力こそが価値とされ、
「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、
レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。
そんな彼を拾ったのは、
辺境を治める獣人公爵アルト。
寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。
溺愛され、守られ、育てられる日々。
だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。
学院での出会い。
貴族社会に潜む差別と陰謀。
そして「番」という、深く重い絆。
レオンは学び、考え、
自分にしかできない魔法理論を武器に、
少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。
獣人と人族。
価値観も、立場も、すべてが違う二人が、
それでも選び合い、家族になるまでの物語。
溺愛×成長×異世界BL。
読後に残るのは、
「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。
僕の、しあわせ辺境暮らし
* ゆるゆ
BL
雪のなか僕を、ひろってくれたのは、やさしい男の子でした。
ふたりの、しあわせな辺境暮らし、はじまります!
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
番に見つからない街で、子供を育てている
はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。
異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。
現世の記憶は失われているが、
この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。
街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、
ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。
だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。
再会は望まない。
今はただ、この子との生活を守りたい。
これは、番から逃げたオメガが、
選び直すまでの物語。
*不定期連載です。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
Take On Me
マン太
BL
親父の借金を返済するため、ヤクザの若頭、岳(たける)の元でハウスキーパーとして働く事になった大和(やまと)。
初めは乗り気でなかったが、持ち前の前向きな性格により、次第に力を発揮していく。
岳とも次第に打ち解ける様になり…。
軽いノリのお話しを目指しています。
※BLに分類していますが軽めです。
※他サイトへも掲載しています。
過去のやらかしと野営飯
琉斗六
BL
◎あらすじ
かつて「指導官ランスロット」は、冒険者見習いだった少年に言った。
「一級になったら、また一緒に冒険しような」
──その約束を、九年後に本当に果たしに来るやつがいるとは思わなかった。
美形・高スペック・最強格の一級冒険者ユーリイは、かつて教えを受けたランスに執着し、今や完全に「推しのために人生を捧げるモード」突入済み。
それなのに、肝心のランスは四十目前のとほほおっさん。
昔より体力も腰もガタガタで、今は新人指導や野営飯を作る生活に満足していたのに──。
「討伐依頼? サポート指名? 俺、三級なんだが??」
寝床、飯、パンツ、ついでに心まで脱がされる、
執着わんこ攻め × おっさん受けの野営BLファンタジー!
◎その他
この物語は、複数のサイトに投稿されています。
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる