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EpisodeⅡ
2-14 少女、迎撃準備はする
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堅牢な壁を造る時間などなく、ラ・セブルとこの村を結ぶ線以外の周囲をできる限りの堀を空け壁を造る。
◇◆◇
エクリーは〖模倣者〗を使い『鑑定』に似た物が使えるような物ができていた。鑑定に劣るということで『解析閲覧』と呼んでいた。ダラントには『姫眼』と呼ばれていたりする。
それは一応ステータスを視ることができるのだが、自分自身のや一部の者――村にいる大半――のステータスは視ることができなかった。
が、エクリーの影たる『モラン』のステータスは視ることができていた。
名称:モラン
種族:悪魔(階級:小智)
職業:影法師(0A)
状態:(精神崩壊)
技能:〖影魔法:01〗 〖影喰:LV0〗
〖暗殺:01〗 〖並列意思:01〗
〖技能供給:01〗 〖忍耐〗
奇跡:〖殺人者〗
称号:影の悪魔 影に潜む者
※『状態』精神崩壊により、獲得した職業、技能、称号が消失
〖影魔法〗
『影空間…影に空間を作る』
『影潜…影空間に入ることができる』
『影纏…影を纏う』
『影拡…影を拡大する』
『影濃…影を濃くする』
『分離…本体から離れる』
『統影…影と統合する』
『影移動…別の影から出ることもできる』
『現影…影を現し続ける』
etc
〖影喰〗
影を喰らうことにより、それを力に変えることができる。
『LV0…影を喰らうことができる』
〖技能供給〗
魂の繋がりがあるものと技能を供給することができる。
〖忍耐〗
肉体的な死を迎えても精神的な死を迎えない限り活動することができる。
〖殺人者〗
殺すと決めたものを殺す際、能力が上昇する。運命レベルで殺人が成功する。
「なんで、『奇跡』なんて持ってるんだろ……そもそも、なんか私より強くない?」
エクリーは知らないが、モランが『奇跡』を獲得した理由はしっかりとある。
精神崩壊により消失した空白がひとつとなり『奇跡』として顕現した。ただ、それだけだ。悪魔という元来の性質故か殺人特攻能力となっている。
「殺すと決めれば殺せるんだよね……それも、運命レベルで……」
その異常な性能を見てふと、思った。
「これなら、神でも殺せるんじゃ……」
「にゃ? それはむりにゃ」
「なんで?」
「それはこの世界の法則――システムで通用する能力にゃ。ジネにゃんみたいにシステムと半ば混じり合っていれば別にゃけど、他の神々はシステム外にいるにゃ」
「そうなんだ」
「でも、どうしたにゃ。急に神殺しにでもやってみる気になったにゃ!?」
「ん? ああ、別に、ただ、パパの理想がどうあれ、至高の神様方と対立するでしょ? まあ、その前準備」
「にゃらいいにゃー……もしもの時はにゃーに任せるにゃ! 大神じゃにゃい限りにゃーならわんぱんにゃ」
「あ、じゃあ、その時は任せるよ。シャロをおと――置いて逃げるから」
「……」
胸元で暴れていた猫が顔を上げてエクリーを見る。
「ウソって言うにゃ! 囮にしたり、置いていかにゃいにゃ? ――見捨てるにゃんてしにゃいにゃ?」
エクリーはサッと視線を外す。
「にゃ!? にゃさか! ほんきにゃ?!」
「まさか、そんなことしないよ」と言った後に小さく「たぶん」と付け加える。
「にゃ!? マスターにゃん、それはにゃいにゃ! 契約違反にゃー」
喚くシャロ=プスを思考から外し、そのもふもふを堪能しながら魔法の勉強と眼下での戦闘を〖模倣者〗で技術として獲得していく。
◇◆◇
それは準備を開始してからしばらく経った日のことだった。正確にはエクリーがこの世界に来てから1年と少しの年月が過ぎた。
「人間の群れが森に入ってきました!」
来るのがわかっていたからと言って混乱しない訳ではない。
人間。
それは大罪系技能のひとつである〖傲慢〗をほとんどの者が獲得条件を満たしている種族。
傲慢の権化。傲慢の象徴。
最も世界に爪痕と逸話を遺し残し続ける災禍。
「その数!」少し間を空けてから腹の底から声を振り絞る。「――1万! 騎士と思われる者は200! 上級が300! 中級が200! 下級が800! 残りは雑兵です!」
騎士は幼少の頃より鍛えられた対人戦闘のエキスパート。
上級、中級、下級は傭兵のことである。上級はコナラ級。中級は守備隊の平均。下級はそれ以下。
雑兵は徴兵されてきた武装が粗末すぎる者たち。
偵察の言葉を聞き、皆混乱する。
それはそうだ。勝ち目がない。
逃げよう。逃げるしかない。と皆が思った時、彼の声が轟いた。
「大丈夫だ!! 俺たちは準備をしてきた! 逃げる道理などない! 何故なら俺たちは負けないからだ!! 敗北する理由などどこにある!!」
《条件を満たしました》
《特殊技能〖希望〗を獲得しました》
(負ける可能性なんてない。だって、ジネとアヴィがいるんだしな。神や『竜王』が控えてる負ける道義なんて――ない)
《『神技の卵』が開放されました!》
《『奇跡』〖希望者〗を獲得しました!》
他力本願なのは致し方ない。騎士との一騎打ちであるのなら、まだ勝ち目はあるが、魔物相手に卑怯は無いと豪語する輩が相手。
こちらも非道な手を取るのは当たり前。
◇◆◇
「――遂に完成した!」
満面の笑みを浮かべるのはエクリー。
シャロ=プスを大空に投げては受け止め、また投げる。それを何度か繰り返す。
「おめでとうございます」
何処から現れたかはわからないが、ダラントがそこにいた。
「ありがとう」
「闇属性魔法――その深淵たる御業を習得なさるとは流石でございます」
「ありがとう」
「して、この戦争――いえ、争いでその術を使うおつもりで?」
「そのつもりだけど、なにか問題でも?」
「いえ、問題などございません。その御業をこの目で見る。それは光栄な事でございます」
目がないのになにを言っているのか、などと野暮なことは言わない。
それほどまでにエクリーの心の中は嬉しさで満たされていた。状態が『冷静』に強制されていてもそれは変わりない。
「生贄のその数はおよそ1万でございます」
「? あれ? もう、軍勢来てる感じ?」
「はい」
「完成したはしたけど、最終調整がまだなんだよね」
「そうなのですか?」
「うん、さっきそこらで乱獲してきた魂をパパにぶち込んでみたけど、どうなってるか見てみないとね」
「それでしたら、吉報が。ファーリ様が新たな『神技の卵』を開放させました」
「え!? もう?!」
「はい。おそらく、開放の条件を満たしていましたが開放する『神技の卵』がなかったからかと」
「ああ、なるほど。それならすぐ開放もありえるね。で、どんな『奇跡』なの?」
「〖希望者〗です。それは、願う者であり、望む者。その性能はどれほどなのかはわかりかねますが、今の心境が作用したものかと」
「? ああ、ママとアヴィスに縋ろうと思ってるからか……今までもそんなことが?」
「はい」
「なるほどねー。開放先については大体予想できてきたよ。っと、パパの所にそろそろ向かわなくちゃね。パパの補佐をがんばるよ」
空間移動で何処かへ去っていくダラント。
エクリーはのんびりとファーリの許へと向かう。
空魔法の〈空間移動〉でも使おうとすれば、術式構築に30分、術式行使に10分掛かり、移動するまでに1時間少々掛かってしまう。
そのため、徒歩で向かう。
※
名称:エクリプス
種族:真祖吸血鬼(階級:小智)(17歳(1歳+16歳))
職業:勇者(10)
状態:不老 冷静(強制)
技能:〖剣術:01〗 〖回避:01〗
〖不可知:01〗 〖猫魔法:09〗
〖影魔法:01〗
特殊:〖真祖〗(〖超再生〗+〖吸血〗+〖魔眼:魅了〗)
〖魔神〗(〖魔力操作〗+〖全属性魔法適正〗+〖魔力増大〗+〖魔法無効〗+〖魔法耐性:絶対〗+〖魔才〗)
〖異常無効〗(〖精神耐性〗+〖飢餓耐性〗+〖日光耐性〗)
〖才能の塊〗〖魂掌握〗〖分別〗〖憤怒〗
奇跡:〖模倣者〗〖救済者〗
称号:来訪者 死した者 創造神の使徒 魂を司りしもの
従属:猫聖霊 悪魔
〖真祖〗
真なる祖。
〖魔神〗
魔法の神髄。
〖異常無効〗
異常を無効する。
〖魂掌握〗
魂に干渉する。
〖分別〗
美徳系技能のひとつ。あらゆる状況の中で精神に変化が訪れない。
〖憤怒〗
大罪系技能のひとつ。怒り以外の感情を力に変換する。
◇◆◇
エクリーは〖模倣者〗を使い『鑑定』に似た物が使えるような物ができていた。鑑定に劣るということで『解析閲覧』と呼んでいた。ダラントには『姫眼』と呼ばれていたりする。
それは一応ステータスを視ることができるのだが、自分自身のや一部の者――村にいる大半――のステータスは視ることができなかった。
が、エクリーの影たる『モラン』のステータスは視ることができていた。
名称:モラン
種族:悪魔(階級:小智)
職業:影法師(0A)
状態:(精神崩壊)
技能:〖影魔法:01〗 〖影喰:LV0〗
〖暗殺:01〗 〖並列意思:01〗
〖技能供給:01〗 〖忍耐〗
奇跡:〖殺人者〗
称号:影の悪魔 影に潜む者
※『状態』精神崩壊により、獲得した職業、技能、称号が消失
〖影魔法〗
『影空間…影に空間を作る』
『影潜…影空間に入ることができる』
『影纏…影を纏う』
『影拡…影を拡大する』
『影濃…影を濃くする』
『分離…本体から離れる』
『統影…影と統合する』
『影移動…別の影から出ることもできる』
『現影…影を現し続ける』
etc
〖影喰〗
影を喰らうことにより、それを力に変えることができる。
『LV0…影を喰らうことができる』
〖技能供給〗
魂の繋がりがあるものと技能を供給することができる。
〖忍耐〗
肉体的な死を迎えても精神的な死を迎えない限り活動することができる。
〖殺人者〗
殺すと決めたものを殺す際、能力が上昇する。運命レベルで殺人が成功する。
「なんで、『奇跡』なんて持ってるんだろ……そもそも、なんか私より強くない?」
エクリーは知らないが、モランが『奇跡』を獲得した理由はしっかりとある。
精神崩壊により消失した空白がひとつとなり『奇跡』として顕現した。ただ、それだけだ。悪魔という元来の性質故か殺人特攻能力となっている。
「殺すと決めれば殺せるんだよね……それも、運命レベルで……」
その異常な性能を見てふと、思った。
「これなら、神でも殺せるんじゃ……」
「にゃ? それはむりにゃ」
「なんで?」
「それはこの世界の法則――システムで通用する能力にゃ。ジネにゃんみたいにシステムと半ば混じり合っていれば別にゃけど、他の神々はシステム外にいるにゃ」
「そうなんだ」
「でも、どうしたにゃ。急に神殺しにでもやってみる気になったにゃ!?」
「ん? ああ、別に、ただ、パパの理想がどうあれ、至高の神様方と対立するでしょ? まあ、その前準備」
「にゃらいいにゃー……もしもの時はにゃーに任せるにゃ! 大神じゃにゃい限りにゃーならわんぱんにゃ」
「あ、じゃあ、その時は任せるよ。シャロをおと――置いて逃げるから」
「……」
胸元で暴れていた猫が顔を上げてエクリーを見る。
「ウソって言うにゃ! 囮にしたり、置いていかにゃいにゃ? ――見捨てるにゃんてしにゃいにゃ?」
エクリーはサッと視線を外す。
「にゃ!? にゃさか! ほんきにゃ?!」
「まさか、そんなことしないよ」と言った後に小さく「たぶん」と付け加える。
「にゃ!? マスターにゃん、それはにゃいにゃ! 契約違反にゃー」
喚くシャロ=プスを思考から外し、そのもふもふを堪能しながら魔法の勉強と眼下での戦闘を〖模倣者〗で技術として獲得していく。
◇◆◇
それは準備を開始してからしばらく経った日のことだった。正確にはエクリーがこの世界に来てから1年と少しの年月が過ぎた。
「人間の群れが森に入ってきました!」
来るのがわかっていたからと言って混乱しない訳ではない。
人間。
それは大罪系技能のひとつである〖傲慢〗をほとんどの者が獲得条件を満たしている種族。
傲慢の権化。傲慢の象徴。
最も世界に爪痕と逸話を遺し残し続ける災禍。
「その数!」少し間を空けてから腹の底から声を振り絞る。「――1万! 騎士と思われる者は200! 上級が300! 中級が200! 下級が800! 残りは雑兵です!」
騎士は幼少の頃より鍛えられた対人戦闘のエキスパート。
上級、中級、下級は傭兵のことである。上級はコナラ級。中級は守備隊の平均。下級はそれ以下。
雑兵は徴兵されてきた武装が粗末すぎる者たち。
偵察の言葉を聞き、皆混乱する。
それはそうだ。勝ち目がない。
逃げよう。逃げるしかない。と皆が思った時、彼の声が轟いた。
「大丈夫だ!! 俺たちは準備をしてきた! 逃げる道理などない! 何故なら俺たちは負けないからだ!! 敗北する理由などどこにある!!」
《条件を満たしました》
《特殊技能〖希望〗を獲得しました》
(負ける可能性なんてない。だって、ジネとアヴィがいるんだしな。神や『竜王』が控えてる負ける道義なんて――ない)
《『神技の卵』が開放されました!》
《『奇跡』〖希望者〗を獲得しました!》
他力本願なのは致し方ない。騎士との一騎打ちであるのなら、まだ勝ち目はあるが、魔物相手に卑怯は無いと豪語する輩が相手。
こちらも非道な手を取るのは当たり前。
◇◆◇
「――遂に完成した!」
満面の笑みを浮かべるのはエクリー。
シャロ=プスを大空に投げては受け止め、また投げる。それを何度か繰り返す。
「おめでとうございます」
何処から現れたかはわからないが、ダラントがそこにいた。
「ありがとう」
「闇属性魔法――その深淵たる御業を習得なさるとは流石でございます」
「ありがとう」
「して、この戦争――いえ、争いでその術を使うおつもりで?」
「そのつもりだけど、なにか問題でも?」
「いえ、問題などございません。その御業をこの目で見る。それは光栄な事でございます」
目がないのになにを言っているのか、などと野暮なことは言わない。
それほどまでにエクリーの心の中は嬉しさで満たされていた。状態が『冷静』に強制されていてもそれは変わりない。
「生贄のその数はおよそ1万でございます」
「? あれ? もう、軍勢来てる感じ?」
「はい」
「完成したはしたけど、最終調整がまだなんだよね」
「そうなのですか?」
「うん、さっきそこらで乱獲してきた魂をパパにぶち込んでみたけど、どうなってるか見てみないとね」
「それでしたら、吉報が。ファーリ様が新たな『神技の卵』を開放させました」
「え!? もう?!」
「はい。おそらく、開放の条件を満たしていましたが開放する『神技の卵』がなかったからかと」
「ああ、なるほど。それならすぐ開放もありえるね。で、どんな『奇跡』なの?」
「〖希望者〗です。それは、願う者であり、望む者。その性能はどれほどなのかはわかりかねますが、今の心境が作用したものかと」
「? ああ、ママとアヴィスに縋ろうと思ってるからか……今までもそんなことが?」
「はい」
「なるほどねー。開放先については大体予想できてきたよ。っと、パパの所にそろそろ向かわなくちゃね。パパの補佐をがんばるよ」
空間移動で何処かへ去っていくダラント。
エクリーはのんびりとファーリの許へと向かう。
空魔法の〈空間移動〉でも使おうとすれば、術式構築に30分、術式行使に10分掛かり、移動するまでに1時間少々掛かってしまう。
そのため、徒歩で向かう。
※
名称:エクリプス
種族:真祖吸血鬼(階級:小智)(17歳(1歳+16歳))
職業:勇者(10)
状態:不老 冷静(強制)
技能:〖剣術:01〗 〖回避:01〗
〖不可知:01〗 〖猫魔法:09〗
〖影魔法:01〗
特殊:〖真祖〗(〖超再生〗+〖吸血〗+〖魔眼:魅了〗)
〖魔神〗(〖魔力操作〗+〖全属性魔法適正〗+〖魔力増大〗+〖魔法無効〗+〖魔法耐性:絶対〗+〖魔才〗)
〖異常無効〗(〖精神耐性〗+〖飢餓耐性〗+〖日光耐性〗)
〖才能の塊〗〖魂掌握〗〖分別〗〖憤怒〗
奇跡:〖模倣者〗〖救済者〗
称号:来訪者 死した者 創造神の使徒 魂を司りしもの
従属:猫聖霊 悪魔
〖真祖〗
真なる祖。
〖魔神〗
魔法の神髄。
〖異常無効〗
異常を無効する。
〖魂掌握〗
魂に干渉する。
〖分別〗
美徳系技能のひとつ。あらゆる状況の中で精神に変化が訪れない。
〖憤怒〗
大罪系技能のひとつ。怒り以外の感情を力に変換する。
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