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第4話 金持ちはメイドの複数持ちを許可されているようです
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やがて運ばれてきた食事は真新しい銀の食器に乗せられていた。まるでホテルのルームサービスのように白い布のか掛かった手押し車が部屋に入って来た時には思わず顔が引き吊ってしまう。金持ちとは縁遠い生活を送っていた暦は当然テレビでしか見たことがない。目の前でドームカバーが持ち上げられると、食欲をそそられる美味しそうな匂いと白い湯気立ち上る。
「これ本当に頂いてしまっていんですか? お金なんて持ってませんよ」
転生してから持ち物を漁ったが武器と防具以外持ち合わせてはいなかった。
料理を運んできたのはメルさんとは違うメイドで、どうやら新米らしく多少が言葉を詰まらせた。
「心配ない、かと思います。見ての通りこの屋敷の持ち主であるホダスティルモ様はお金持ちですから、今更客人から代金をいただくことはないんじゃないでしょうか?」
そのホダスティルモとかいう人とは全く面識がないのですけど……僕は客人に該当するのでしょうか? 乾いた笑みを浮かべる暦と困った顔で回答に窮するメイドの少女、時間が止まったように妙な空気が続く。料理から立ち込める白い湯気徐々にその色を失い始めた頃、赤毛の少女は思い出したように自分の名前を告げた。
「あっ、私シノといいます。あなたとは長い付き合いになるだろうからとメルヴィー先輩が話してくれました。えっと、お名前は何とおっしゃるんですか?」
「こ、暦といいます。なんだかすごい場違いな人に拾われちゃったみたいで、あんまし今の状況よくわかっていないんですけど……」
「コヨミさんですね。よろしくお願いします」ぱっと華やいだ笑顔を見ているとまだ幼い無垢な一面が見て取れた「私も詳しくは聞けてないのですいません。でもホダスティルモ様はあなたのことを悪くは思っていないはずですよ
」
「それはどういうことですか?」
「ここは元々亡くなられたクルティナ様の御部屋だったと聞いています。ですからそんな大事な御部屋を使わせていただけているということが、ホダスティルモ様のご厚意だと思います」
本当に顔を合したことないんですけどねその伯爵様とは……やっぱり何かの間違いじゃないですか? と、問い詰めたい気持ちでいっぱいだった。
「それにしても、コヨミさんて本当に美人ですよね、なにか秘訣とかあるんですか?」
気が付くとシノはうっとりとした表情でコヨミの顔を見つめていた。
そういえば今の僕って〝ブラックリゾート〟のキャラメイクエディで作った女キャラのまんまなんだっけ……。
「あの、あんまり見つめないでください、その……恥ずかしいですから」
女の子に見つめられることにも慣れていないが、それに加えて自分で作った美少女のリアルコスプレ(女装)をしているかと思うとこの状況は紳士の僕には恥ずかし過ぎる。
「どうしですか? 顔を赤らめたコヨミさんとっても可愛いです」シノはクスリと笑うと「そうだ。コヨミさんお風呂入りましょう。汚れていた服は着替えさせましたけど身体はちゃんと拭けていないんです」
服? たしか転生した時はコルシェットとスカートを履いていたはずだが……。言われてみると胸の圧迫感はないし、下に来ていたブラウスよりも肌触りが良い、これはシルクか? 若干ピンクがかっているが上等な寝着に違いわ……って、
「これネグリージュじゃねぇかぁっ!! 僕は男なんだぞ、どうして女物の服を着ないといけないんだ!」
掛け布団を全力引っぺがし自分の格好を確認したコヨミに、シノはそれがどうしたの? と、言わんばかりに小動物のような可愛らしいしぐさで首を傾げた。こいつまじで僕が男だと思っているのか? 服脱がすと気づくだろ普通。
「コヨミびっくりするじゃないですか、恥ずかしがらなくていいですよ。わかってますから」
なるほど、コヨミは僕が男だと気づいていて、寝着も男物がなかったから仕方なく着せたのだろう。まぁもともとこの身体は女性型のキャラだし、ここは僕が大人になってあどけない少女の小さないたずらを堪忍してやろうじゃないか。
「胸が小さいことを気にされているんですね、わかります。私も昔は結構悩んでいたことですから……でも大丈夫です。毎日揉んでいれば少しずつですが成長しますから。きっとコヨミさんも今からやれば間に合います!」
「全然わかってねぇじゃねぇかっぁぁぁ~! ちげぇよ下だよ下」
「下!?」
「あっ……いえ、なんでもないです」
まさかこんな純情な少女に男の下半身を見せつけるわけにもいくまい。
「どうしたんですかコヨミさん顔赤いですよ、熱でもあるんですか?」そう言ってシノは神を書き上げると額に額をくっつけた。「熱はないみたいですね……」
「はっ、はっ、はわわわぁ」
生まれて初めて至近距離で見る女の子の顔にコヨミは軽くパニックを起こした。彼女いない歴=年齢。女性に喧嘩を売るときは「乳揉むぞっ!」などと強がってはいるものの、そのメンタルは思春期の学生並みに脆い。
「あれ? どうしちゃったんですかコヨミさん? コヨミさんてば、し、しっかりしてくださいっ!」
やばい、女の子の顔がこんなに近くにある……。
やかんが沸騰したかのように顔を赤く染めたコヨミが後ろに倒れそうになり、あわてたシノが自身の腕をクッションがわりに滑り込ませると二人そろってベットに倒れ込んだ。
フリルがふんだんにあしらわれたメイド服の隙間から小ぶりな胸がのぞく。息が掛かりそうな程の距離に迫った二つの膨らみから目が離せない。やがてシノがもどかしそうに体をよじるとその距離は一層縮まっていった。
「痛た、いきなりどうしちゃったんですかコヨミさん?」
背中から腕が引き抜かれると同時に二人の距離は再び広がったがコヨミは言葉を交わすための思考力も持ち合わせてはいなかった。
「これ本当に頂いてしまっていんですか? お金なんて持ってませんよ」
転生してから持ち物を漁ったが武器と防具以外持ち合わせてはいなかった。
料理を運んできたのはメルさんとは違うメイドで、どうやら新米らしく多少が言葉を詰まらせた。
「心配ない、かと思います。見ての通りこの屋敷の持ち主であるホダスティルモ様はお金持ちですから、今更客人から代金をいただくことはないんじゃないでしょうか?」
そのホダスティルモとかいう人とは全く面識がないのですけど……僕は客人に該当するのでしょうか? 乾いた笑みを浮かべる暦と困った顔で回答に窮するメイドの少女、時間が止まったように妙な空気が続く。料理から立ち込める白い湯気徐々にその色を失い始めた頃、赤毛の少女は思い出したように自分の名前を告げた。
「あっ、私シノといいます。あなたとは長い付き合いになるだろうからとメルヴィー先輩が話してくれました。えっと、お名前は何とおっしゃるんですか?」
「こ、暦といいます。なんだかすごい場違いな人に拾われちゃったみたいで、あんまし今の状況よくわかっていないんですけど……」
「コヨミさんですね。よろしくお願いします」ぱっと華やいだ笑顔を見ているとまだ幼い無垢な一面が見て取れた「私も詳しくは聞けてないのですいません。でもホダスティルモ様はあなたのことを悪くは思っていないはずですよ
」
「それはどういうことですか?」
「ここは元々亡くなられたクルティナ様の御部屋だったと聞いています。ですからそんな大事な御部屋を使わせていただけているということが、ホダスティルモ様のご厚意だと思います」
本当に顔を合したことないんですけどねその伯爵様とは……やっぱり何かの間違いじゃないですか? と、問い詰めたい気持ちでいっぱいだった。
「それにしても、コヨミさんて本当に美人ですよね、なにか秘訣とかあるんですか?」
気が付くとシノはうっとりとした表情でコヨミの顔を見つめていた。
そういえば今の僕って〝ブラックリゾート〟のキャラメイクエディで作った女キャラのまんまなんだっけ……。
「あの、あんまり見つめないでください、その……恥ずかしいですから」
女の子に見つめられることにも慣れていないが、それに加えて自分で作った美少女のリアルコスプレ(女装)をしているかと思うとこの状況は紳士の僕には恥ずかし過ぎる。
「どうしですか? 顔を赤らめたコヨミさんとっても可愛いです」シノはクスリと笑うと「そうだ。コヨミさんお風呂入りましょう。汚れていた服は着替えさせましたけど身体はちゃんと拭けていないんです」
服? たしか転生した時はコルシェットとスカートを履いていたはずだが……。言われてみると胸の圧迫感はないし、下に来ていたブラウスよりも肌触りが良い、これはシルクか? 若干ピンクがかっているが上等な寝着に違いわ……って、
「これネグリージュじゃねぇかぁっ!! 僕は男なんだぞ、どうして女物の服を着ないといけないんだ!」
掛け布団を全力引っぺがし自分の格好を確認したコヨミに、シノはそれがどうしたの? と、言わんばかりに小動物のような可愛らしいしぐさで首を傾げた。こいつまじで僕が男だと思っているのか? 服脱がすと気づくだろ普通。
「コヨミびっくりするじゃないですか、恥ずかしがらなくていいですよ。わかってますから」
なるほど、コヨミは僕が男だと気づいていて、寝着も男物がなかったから仕方なく着せたのだろう。まぁもともとこの身体は女性型のキャラだし、ここは僕が大人になってあどけない少女の小さないたずらを堪忍してやろうじゃないか。
「胸が小さいことを気にされているんですね、わかります。私も昔は結構悩んでいたことですから……でも大丈夫です。毎日揉んでいれば少しずつですが成長しますから。きっとコヨミさんも今からやれば間に合います!」
「全然わかってねぇじゃねぇかっぁぁぁ~! ちげぇよ下だよ下」
「下!?」
「あっ……いえ、なんでもないです」
まさかこんな純情な少女に男の下半身を見せつけるわけにもいくまい。
「どうしたんですかコヨミさん顔赤いですよ、熱でもあるんですか?」そう言ってシノは神を書き上げると額に額をくっつけた。「熱はないみたいですね……」
「はっ、はっ、はわわわぁ」
生まれて初めて至近距離で見る女の子の顔にコヨミは軽くパニックを起こした。彼女いない歴=年齢。女性に喧嘩を売るときは「乳揉むぞっ!」などと強がってはいるものの、そのメンタルは思春期の学生並みに脆い。
「あれ? どうしちゃったんですかコヨミさん? コヨミさんてば、し、しっかりしてくださいっ!」
やばい、女の子の顔がこんなに近くにある……。
やかんが沸騰したかのように顔を赤く染めたコヨミが後ろに倒れそうになり、あわてたシノが自身の腕をクッションがわりに滑り込ませると二人そろってベットに倒れ込んだ。
フリルがふんだんにあしらわれたメイド服の隙間から小ぶりな胸がのぞく。息が掛かりそうな程の距離に迫った二つの膨らみから目が離せない。やがてシノがもどかしそうに体をよじるとその距離は一層縮まっていった。
「痛た、いきなりどうしちゃったんですかコヨミさん?」
背中から腕が引き抜かれると同時に二人の距離は再び広がったがコヨミは言葉を交わすための思考力も持ち合わせてはいなかった。
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