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第一章
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翌朝
俺は彩香より早く目覚めた。ベットで気持ちよさそうに眠る彩香を横目に朝のシャワーを浴びる。
髪の毛を乾かし小さい窓から外を見ると朝日が差し込んできた。
明日が豪雨とは思えない快晴だった。
嵐の前の静けさなのだろう。俺はバスローブから自分の服へ着替えた。
時刻は8時。
今日の目的地へ向かうなら9時には出発したかった。
俺は彩香を起こそうとベットへ近づく。
彩香は気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「彩香、そろそろ起きないと」
俺は彩香の肩を揺らす。
「あ、総司さん、、おはようございます」
今にも寝てしまいそうな様子で彼女は身を起こした。
彼女は顔に垂れた長い髪の毛を鬱陶しそうに
している
「私朝弱いんです、、ふあ、、」
彩香は小さく欠伸をするとシャワー室に向かって歩いて行く。
俺は昨夜同様にシャワー室を背にベットに座って彩香を待った。
ベットの上に座りながら昨日の夜書いたメモ帳を読んでいると後ろから金木犀の香りが漂ってくる。振り向くと半袖の白いブラウスに青色のロングスカートを履いた彩香が立っていた。長い髪の毛をポニーテールでまとめている。
俺は一瞬見惚れてしまい言葉が出なかった。
「昨夜は本当に申し訳ありませんでした」
彩香は深々と頭を下げている。俺は何のことか分からず困惑した。
「総司さん床で寝たんですよね、、?」
なるほど。彼女はベットを占領してしまったことを気にしていたのか。
「私、総司さんとなら同じベットでも良かったのですが総司さんは嫌でしたよね」
「いや!そんなことないです!ただ彩香の隣で寝ていて理性を保てるか自信か無かったから」
俺は手を顔の前で振りながら全力で弁解した。必死な俺を見て彩香は小さく笑った。
「冗談です。総司さん紳士ですね。ベット譲ってくれてありがとうございます」
彩香は微笑みながらベットに座る俺の手を取った。
彩香は微笑みながらもどこか寂しそうな横顔だった。
ホテルで精算を終えた俺たちは駅に向かう。
10分程度歩いて山代駅という小さな駅に着いた。無人駅であまり利用者が多そうには見えない駅だ。
彩香が時刻表を確認しに行ってくれたので俺は自販機で飲み物を買ってくることにした。俺は麦茶で彩香には冷たい紅茶を買った。
「総司さん時間わかりました。10時5分の電車に乗ります」
俺は買った飲み物を渡すと彩香は嬉しそうに頭をぺこぺこさせた。
彩香が言うには胡桃町に直接行ける電車は無いそうだ。一番近い駅に降りてそこからバスに乗り換える。一番近い駅は山中駅という。この駅から20分程度で到着するらしい。
電車に乗り込むと俺はドアに近いところに座った。彩香も続いて俺の隣に座る。
電車に揺られながら俺たちは無言だった。
彩香の記憶の世界で助けられなかった母を救う。
それが終わったらどうするのだろうか。
彩香は母と話して今まで言えなかったことを伝えるのだろうか。
隣を見ると彼女は真っ直ぐ外の景色を見ていた。
山中駅は周りに建物は少なく自然に囲まれた小さな駅だ。俺と彩香はバス乗り場を探した。
「バスの時間見てきますね」
彩香はトテトテ走ってバスの時刻表へ向かった。
俺は駅の周りを歩いてみた。蝉の声がやかましいくらい響いている。佐々木の実家のある咲良町も田舎だったがこの山中駅はそれ以上の田舎だった。
駅の横に小さな祠を見つけた。祠の周りは木が伐採されていて整備されていた。
「あ、こんなところにいたのですね。探しちゃいましたよ」
俺が祠を眺めていると彩香が手を振りながら近づいてきた。
「ごめんなさい。周りを散策してたら祠があって何か見惚れてしまいました」
「こういう歴史的なもの好きなんですか?」
彩香は俺の顔を覗き込むように聞いてきた。
距離が近くドキドキしてしまう。
「いや、、俺の住んでるところでは見たこと無かったから珍しくて」
「何か懐かしいような感じがしますよね」
彩香はそう言うと祠に向かい手を合わせた。
俺もそれに習い手を合わせた。
彩香が調べてくれたバスの時間は11時だった。しばらくバス停止場の前で待っているとバスが到着した。
乗客は俺と彩香の2人だけだった。
バスは15分くらい山道を進むと胡桃町に到着した。山道のバス停で降りて町に向かい歩いて行く。途中に町の子供やお年寄りが集まりそうな広場があった。俺たちは広場にあるテーブルに向かった。
「これから胡桃町にいる彩香のお母さんの元へ向かうわけですが」
テーブルの対面に座った彩香は頷いている。
「この後二人で彩香のお母さんの家に行って避難をお願いするんですよね?」
彩香は少し考えるように顎に手を当てた。
そして少し顔を曇らせた。
「総司くんには申し訳ないのですが私は母に会えません」
「母は私のことを覚えてないかもしれません。仮に覚えていたら会ってくれないかもしれないです」
彩香は悲しそうに顔を伏せた。
「でもここは彩香の記憶の世界なんですよ?きっと彩香とお母さんが話せるようにって神様がくれたチャンスなんじゃないですか?」
俺は顔を伏せたままの彩香に語りかける。
しかし彩香は顔を伏せたままだ。
「確かにこの世界は私の記憶の世界です。でも私が母と話すことが目的じゃない」
彩香は今までと違い確信あるような言い方だった。
「この世界の目標は母と母の家族が亡くならない世界線を作ることです。だからその可能性を高めるために私は合わない方が良いのです」
ここが彩香の記憶の世界なら目的は彩香がやり残したことを行うことだろう。
「総司くんには負担をかけてしまい申し訳ありません。ただ母の説得は総司くんにお願いしたいのです」
俺は小さく頷いた。
この世界の彩香の目的が彩香の母を救うことなら俺の目的はなんなのだろうか。
それはきっと彩香と彩香のお母さんを合わせてあげることなのだろうと思った。
俺は彩香より早く目覚めた。ベットで気持ちよさそうに眠る彩香を横目に朝のシャワーを浴びる。
髪の毛を乾かし小さい窓から外を見ると朝日が差し込んできた。
明日が豪雨とは思えない快晴だった。
嵐の前の静けさなのだろう。俺はバスローブから自分の服へ着替えた。
時刻は8時。
今日の目的地へ向かうなら9時には出発したかった。
俺は彩香を起こそうとベットへ近づく。
彩香は気持ちよさそうに寝息を立てていた。
「彩香、そろそろ起きないと」
俺は彩香の肩を揺らす。
「あ、総司さん、、おはようございます」
今にも寝てしまいそうな様子で彼女は身を起こした。
彼女は顔に垂れた長い髪の毛を鬱陶しそうに
している
「私朝弱いんです、、ふあ、、」
彩香は小さく欠伸をするとシャワー室に向かって歩いて行く。
俺は昨夜同様にシャワー室を背にベットに座って彩香を待った。
ベットの上に座りながら昨日の夜書いたメモ帳を読んでいると後ろから金木犀の香りが漂ってくる。振り向くと半袖の白いブラウスに青色のロングスカートを履いた彩香が立っていた。長い髪の毛をポニーテールでまとめている。
俺は一瞬見惚れてしまい言葉が出なかった。
「昨夜は本当に申し訳ありませんでした」
彩香は深々と頭を下げている。俺は何のことか分からず困惑した。
「総司さん床で寝たんですよね、、?」
なるほど。彼女はベットを占領してしまったことを気にしていたのか。
「私、総司さんとなら同じベットでも良かったのですが総司さんは嫌でしたよね」
「いや!そんなことないです!ただ彩香の隣で寝ていて理性を保てるか自信か無かったから」
俺は手を顔の前で振りながら全力で弁解した。必死な俺を見て彩香は小さく笑った。
「冗談です。総司さん紳士ですね。ベット譲ってくれてありがとうございます」
彩香は微笑みながらベットに座る俺の手を取った。
彩香は微笑みながらもどこか寂しそうな横顔だった。
ホテルで精算を終えた俺たちは駅に向かう。
10分程度歩いて山代駅という小さな駅に着いた。無人駅であまり利用者が多そうには見えない駅だ。
彩香が時刻表を確認しに行ってくれたので俺は自販機で飲み物を買ってくることにした。俺は麦茶で彩香には冷たい紅茶を買った。
「総司さん時間わかりました。10時5分の電車に乗ります」
俺は買った飲み物を渡すと彩香は嬉しそうに頭をぺこぺこさせた。
彩香が言うには胡桃町に直接行ける電車は無いそうだ。一番近い駅に降りてそこからバスに乗り換える。一番近い駅は山中駅という。この駅から20分程度で到着するらしい。
電車に乗り込むと俺はドアに近いところに座った。彩香も続いて俺の隣に座る。
電車に揺られながら俺たちは無言だった。
彩香の記憶の世界で助けられなかった母を救う。
それが終わったらどうするのだろうか。
彩香は母と話して今まで言えなかったことを伝えるのだろうか。
隣を見ると彼女は真っ直ぐ外の景色を見ていた。
山中駅は周りに建物は少なく自然に囲まれた小さな駅だ。俺と彩香はバス乗り場を探した。
「バスの時間見てきますね」
彩香はトテトテ走ってバスの時刻表へ向かった。
俺は駅の周りを歩いてみた。蝉の声がやかましいくらい響いている。佐々木の実家のある咲良町も田舎だったがこの山中駅はそれ以上の田舎だった。
駅の横に小さな祠を見つけた。祠の周りは木が伐採されていて整備されていた。
「あ、こんなところにいたのですね。探しちゃいましたよ」
俺が祠を眺めていると彩香が手を振りながら近づいてきた。
「ごめんなさい。周りを散策してたら祠があって何か見惚れてしまいました」
「こういう歴史的なもの好きなんですか?」
彩香は俺の顔を覗き込むように聞いてきた。
距離が近くドキドキしてしまう。
「いや、、俺の住んでるところでは見たこと無かったから珍しくて」
「何か懐かしいような感じがしますよね」
彩香はそう言うと祠に向かい手を合わせた。
俺もそれに習い手を合わせた。
彩香が調べてくれたバスの時間は11時だった。しばらくバス停止場の前で待っているとバスが到着した。
乗客は俺と彩香の2人だけだった。
バスは15分くらい山道を進むと胡桃町に到着した。山道のバス停で降りて町に向かい歩いて行く。途中に町の子供やお年寄りが集まりそうな広場があった。俺たちは広場にあるテーブルに向かった。
「これから胡桃町にいる彩香のお母さんの元へ向かうわけですが」
テーブルの対面に座った彩香は頷いている。
「この後二人で彩香のお母さんの家に行って避難をお願いするんですよね?」
彩香は少し考えるように顎に手を当てた。
そして少し顔を曇らせた。
「総司くんには申し訳ないのですが私は母に会えません」
「母は私のことを覚えてないかもしれません。仮に覚えていたら会ってくれないかもしれないです」
彩香は悲しそうに顔を伏せた。
「でもここは彩香の記憶の世界なんですよ?きっと彩香とお母さんが話せるようにって神様がくれたチャンスなんじゃないですか?」
俺は顔を伏せたままの彩香に語りかける。
しかし彩香は顔を伏せたままだ。
「確かにこの世界は私の記憶の世界です。でも私が母と話すことが目的じゃない」
彩香は今までと違い確信あるような言い方だった。
「この世界の目標は母と母の家族が亡くならない世界線を作ることです。だからその可能性を高めるために私は合わない方が良いのです」
ここが彩香の記憶の世界なら目的は彩香がやり残したことを行うことだろう。
「総司くんには負担をかけてしまい申し訳ありません。ただ母の説得は総司くんにお願いしたいのです」
俺は小さく頷いた。
この世界の彩香の目的が彩香の母を救うことなら俺の目的はなんなのだろうか。
それはきっと彩香と彩香のお母さんを合わせてあげることなのだろうと思った。
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