箱の中身はなんだろな？

５．箱の中身はなんだろな？

しかしどんなに理不尽であろうと、今はピエロの定めるルールの中で戦うしかない。

悠馬は気を取り直して箱におそるおそる手を入れようとするが、またも踏み留まった。

（待てよ…。今回こそ、箱の中身が例えば蛇やムカデだったら…。）

悠馬は蛇やムカデの生の味を想像して、吐き気を催した。

空気を吸い息を整える。手を入れるまでには、さすがに時間が必要だった。
先程よりも強い覚悟を決め、悠馬は慎重に箱の中に手を入れる。

悠馬の手は暫くの間、空間を彷徨う。冷や汗が顔を伝うが拭うことはできない。
手を下へと降ろした時、触れたであろう部分から、茶色く白い肌が脳に視覚として飛び込んでくる。
触っている感覚は全くなく、局所局所をファイバースコープで探っている感覚に近い。

慎重にスライドさせて、物体の色と形状を確認していく。この赤というよりは、茶色く白みがかった独特の皮、この足の吸盤。物体の局部を観察すると少しグロテスクだ。そして味を同時に感じる。
この味…。

ある程度確認すると、念のため物体を手の平で掴んで、より多くの部分を視覚で捉える。口の中は物体の味でいっぱいだ。気持ち悪い。

簡単だ。

間違えようがない。


「タコ。」

僕は箱から手を抜くと、すぐに答えた。

「それが答えかい？」

「うん。」

「ピンポン！正解！」

ピエロは嬉しそうに、手で頭の上に丸印をつくった。


１問目は意味不明だが、２問目はメチャクチャ簡単だった。
問題の傾向が読めない。悠馬は３問目に備えて頭を巡らす。

「さあ最終問題！第３問！箱の中身はなんだろな？」

「第３問は触覚だけだよ！」

最終問題で手に視覚がつかなかったのは残念だが、余計な味覚を感じることがないので、悠馬は内心ホッとした。これなら蛇やムカデが箱の中に入っていたとしても、我慢すれば耐えられる。

（絶対にここから出るんだ…。）

悠馬は再び気合を入れ直すと、箱の中に手を入れた。