ヒーロー再誕 ~ヒーロー諦めた俺がもう一度ヒーローを目指す話~

秋月 銀

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星叶美弥編

2話 学園七不思議 体育館のステージで踊る人体模型

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 俺は初めて実感した。時が止まる感覚を。意識も停止して、体は別世界に置いて行かれた様に動かない。それでも、心臓は確かな鼓動を漏らす。ドクンドクンと俺の時が止まっていない事を主張してくれる。

 ふぅーと長い息を吐く。気が付けば額や手に汗が浮かんでおり、自分で自分が焦っていることに驚いた。

 汗が目に入る前に袖で乱雑に拭う。その時、視界の隅で同じ様な状況の佐藤先生がいたので汗を拭ってやった(佐藤先生が握りしめていたハンカチでな)。

 佐藤先生はそれに気が付いていなかったのか、俺の行動に少々驚いた後、微笑み「済まない」と呟く。

 そしてすぐに表情は固くなる。俺も視線を元に戻す。今まで固唾を飲んでの意味が分からなかったが、悲しいかなこの状況で理解出来てしまった。

 唾を飲み込もうとするが、何故か喉が受け付けない。それでも無理矢理押し込むとゴキュリ………と鈍い音が響いた。それを聴いた佐藤先生が無言でこちらを小突いてくる。俺は視線だけで謝罪した。

 だが時を止めた原因の2人はこちらに気付いていないらしい。星叶ほしかなえはモジモジと手を動かしているだけだし、カズミネは顔に?を「良いよ。じゃ、場所変えよっか」浮かべてるだけ…っておいいいいいいいいいいいい!!

 カズミネは星叶の手をとって、2人が今来た道を引き返して行く。おいカズミネ、場所変えて何するつもりだコノヤロウ。爽やか笑顔の裏には下心丸出しじゃねーか。

 「大変ですよ佐藤先生、カズミネが転入初日の星叶と大人の階段を登りそうになってます」
 「その表現から田中がピュアということが伺えた。しかしよもや私の目の前で実行を仄めかす様な言動を取るとは、見過ごせんな。行くぞ、付いてこい」
 「先生主体で尾行はどうかと思いますが、無論ですよ」

 こうして俺達はどこかへ行こうとする2人の後を追った。

◆◆◆

 「なぁ田中、2人して体育館に入った訳だがどうしよう。見過ごせんなどと言ったが、扉を開けたら行為中とか私は嫌だぞ」
 「その言葉から先生がピュアだという事が分かりました。つっても入ったのは数分前でしょ?大丈夫ですって」

 俺達は現在、体育館の出入口で立ち尽くしていた。

 「さっきまで私位焦っていたというのに冷静だな」

 確かにアレには大変驚かされたが時間も経てば幾らか落ち着きを取り戻す。というのも良く良く考えてみたら出会って数分で告白させるとかどんなテクニシャン何だという話だ。神級フラグ建築士の称号をくれてやってもいい。

 星叶が一目惚れした可能性?
 ああ、ナイナイ。
 絶対にナイ。

 「あの時は俺もテンパりましたが、アレは多分俺達の聞き逃しですよ」
 「聞き逃し?私には『付き合って下さい』としっかり聞こえたがね」
 「星叶は『━━━━付き合って下さい』って言ったんですよ。俺達が聞き逃したのは大切な、付き合って下さいの前部分だったんです」
 「ふむ、そういえばその様な気もする。しかし星叶は春日原に何を付き合って欲しかったんだ?」

 そこが謎だ。幾らか可能性を模索してみたが、どれもイマイチピンとこない。

 ベタに買い物に付き合って欲しいという展開も考えた。転入初日でポイントもロクに持っておらず、店の場所も知らないであろう。

 しかし、さっき頼んで直ぐに実行に移せる事となるとこの線は怪しくない。という訳でとりあえず佐藤先生には一番納得した考えてを伝えてみる。

 「例えば………星叶がバスケの実力者で、不用意に『僕もやってるよ~』とかほざいたカズミネに自分のシュート練習に付き合って下さいとお願いしたのかもしれませんね」
 「一瞬で設定を創り出して現実味を持たせるその才能は誇るべきだと私は思うぞ」
 「駄目ですかね………」
 「星叶はこの学園に転入する前、偏差値そこそこの進学校で新聞部に入っていたらしいぞ」

 全然違った。

 ハキハキとしていたからてっきり運動部かと思い込んでいたが、やはり見た目で判断するものじゃない。

 「因みに偏差値そこそこって良い方ですか?」
 「悪い方だな」

 良かった、あのアホ毛は飾りじゃなかった。

 しかし新聞部か………。思いついたのがあったので佐藤先生に話してみる。

 「もしかしたら星叶は月陰学園七不思議の1つ、体育館のステージで踊る人体模型を調べるのに付き合って欲しいと言ったかもしれませんよ」
 「この学園に七不思議が存在していた事にも驚きだが、何故人体模型が体育館で踊る。踊るなら化学室だろう。一体人体模型に何があった」
 「違うっぽいですね」
 「待て田中。気になる、凄く気になるのだが」
 「新聞部なら七不思議に食いつくと思ったんですが………………特にココと双璧を成す1-Aでサンバを踊る人体模型とか」
 「私達の教室でそんな事が起こっているのか。後その人体模型は体育館の奴と同一なのか?おい、田中」

 言い忘れのようだが、俺達は1ーAだ。クラス分けとかに特に意味はない、あしからず。

 「でもまあ、佐藤先生が心配している様な事にはなってませんよ」

 そう言って俺は、体育館の扉に手を掛ける。

 「………………信用していいのか?」
 「はい、なんたってカズミネアイツは主人公ですからね」
 「主人公?どういう物語のだ?」
 「なんて事ない、学園異能系小説のですよ」

 『早く、早くいれてください!春日原さんっ!』
 『焦らない焦らない。直ぐにいれてあげるから………………』

 違った、エロゲの主人公だった。

 先程までの考えを吹き飛ばされた様な衝撃波に襲われつつも、体は直ぐに行動する。力強く扉を押し開けて、状況を把握しようとした俺の目に映ったモノは、防護陣プロテクトを展開するカズミネとそれに縋り付く様にする星叶だった。

 状況が分からず動きが止まる。止まってしまった俺達に気が付いた星叶が顔を赤くして防護陣を離れた。
  
 それを見てハッとなりカズミネに問いかける。

 「………………何してんの?」
 
 カズミネはやれやれといった風に肩を竦める。

 「模擬戦の模擬戦」
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