魔竜を封じる部室にて!!

秋月 銀

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五章

その41 歯車は復活し、回りだす

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 俺とアメは二人で文芸部室へと向かって行った。その間にも、俺達に話題は尽きることはない。どんなに他愛もない話であろうと、良かった。それだけで楽しかった。やはり俺にとってアメは大切な人だったのだと実感する。
 いや、大切な人ってそういうのじゃなくてね?友愛ね?友情としてのだからね?勘違いしないでよね!これ本当に。お願いします。

 上履きのままで屋外に出てしまっていたので、上履きの裏が相当に汚れていた。その汚れを玄関マットでしっかりと落としてから、部室棟へと向かっていく。三階の文芸部室に辿り着き、扉に手をかける。

 「あっ……」
 「…………ハル」

 すると中には既に他の部員が帰ってきていた。

 久しぶりに顔を合わせたハルに、なんて言えばいいのかわからなくなって言葉に詰まった。アメの時と同じく謝ればいいだけなのだが、流石にアメと同じくセリフは使えない。女子相手に突然の親友宣言はかなりの勇気を必要とするからだ。

 どうやらハルも戸惑っているらしく、両手をアワアワと忙しく空中で動かしていた。しばらくこのまま、アワアワし続けるのだろうかと思った時、フユカが動いた。

 俺達の前、正確にはアメの前まで来てから小さな体をキレイに折る。

 「すみませんでした、アメ。あの時はこちらの言いたいことだけ一方的に言ってしまい、二人の意見を聴こうともせずに……」
 「いや、いいんだよ。こちらこそごめん。僕も、フユカやシュウの気持ちをわかってやれなかったから………。でも、やっぱり僕は文芸部ここが好きなんだ。フユカが許してくれればだけど、また僕もここにいていいかい?」
 「それは勿論。私も同じ気持ちですよ」

 どうやら、アメやフユカの方が俺達よりも何倍も大人らしい。二人はすんなりと謝り合って、笑い合った。

 何を恥ずかしがる必要があったのだろうか。悪いことをしてごめんと謝る、ただそれだけのこと。
 しかし、いざハルと向き合うとやはり恥ずかしくなってきた。謝罪の言葉に軽口を混ぜるわけにはいかない。けれどもハルは、真正面から向き合うだけで直ぐに顔が赤くなってしまうのだ。

 妥協案、というか何というか。結局俺は顔を明後日の方向に反らして謝ることにした。

 「あー……まぁ、その……ごめん、なさい」

 ずいぶんぶっきらぼうな謝り方になってしまった。

 もしかして気を悪くしてはいないだろうか。そう思ってハルを横目に見てみると、口元に手を当てて笑っていた。

 「ふふっ、こんな時でも恥ずかしくなってるの?シュウらしいと言えばシュウらしいけど」
 「やめてくれ。軽口を言うつもりはないから、こんな謝り方になってるだけだ」
 「わかってるわよ」

 ハルはひとしきり笑った後、一歩俺に近づいた。

 「私も、ごめんなさい。…………でも結局、私も文芸部が好きだったのよね。だから、また一緒にいてくれる?」
 「…………当たり前だろ」

 こちらを見つめるハルの瞳がなんだか眩しく感じてしまった。そしてこんな至近距離で微笑まれるのは本当にやばい。否が応でもハルの顔が、表情が視界に入ってきてしまう。そのせいでハルの顔がよく見える。

 バクバクと心臓がやけにうるさい。飛び跳ねすぎで痛いくらいだ。正直もう耐えられない、そう思った時━━━━

 「少し距離が近すぎではありませんか?」
 「え?…………わわっ」

 フユカがジト目で俺達を見ていた。

 その言葉に、慌ててハルも俺との距離を空けた。フユカのおかげで助かった……。ちょうどいいタイミングで空気を切り替えることができたからな。もしあのままだったのなら俺の心臓は爆発してしまっていたことだろう。それぐらい、恥ずかしかった。

 ただ、これで仲直りは済んだ。

 皆も同じ気持ちなんだと確認することができた。

 「うんうん、やっぱり皆がいてこその文芸部だよねー」

 一人、傍観者に徹していたナツキが緩やかな口調でそう言った。
 先程、俺達に発破をかけたようなオーラも既になくてすっかり元のナツキに戻ってしまっている。こちらの方が安心するので全然構わないのだが。

 「なんだかナツキの手のひらの上で転がされていたような気がしてきましたよ……」
 「まぁそれは、わからんでもない」

 謝ったのは間違いなく自分達の意思ではあるが、そう仕向けたのはナツキだ。ナツキの思い通りに動かされている気がして、俺もフユカも少しばかりため息をもらす。

 「なんというか……やっぱりナツキって私達の保護者って感じよね」
 「そうだね。今回も僕達を見守ってくれていたようなものだし」

 ハルの言葉にアメも続く。流石は我らが部長といったところか。

 ナツキはカラカラと笑い声を上げて言った。

 「最初から言ってたでしょー?私はさー、ただ文芸部でありたいだけなんだってさー」
 「…………あ」

 それを聴いて、思わず声がもれた。そしていつかの会話が思い出される。

 『良かったのですよ……。それとも、ナツキは私達と残ったことを後悔しているのですか…?』
 『ううん、違うよー。私はただ文芸部・・・でありたい、そう思ってるだけだからー』
 『……?そう、なんですか?』

 あれは、ただ文芸部に所属できていればそれで良いという意味なんかじゃなかったのだ。あの言葉が指していた本当の文芸部とは、俺達五人が揃っている文芸部のことだったわけだ。

 本当に、ナツキには敵わない。
 ナツキは喧嘩別れをした俺達を、初めっから仲直りさせる気でいたのだから。俺達の気持ちを理解した上で、その後押しまでしてくれた。見守ってくれていた。本当に、ナツキには敵わないな。

 我らが文芸部の部長は朗らかな笑顔を浮かべる。

 「じゃあこれで、文芸部完全復活!だねー」

 それに俺達四人も力強く頷いた。


 こうしてひび割れた歯車は復活した。

 以前よりも強固になって。

 もう壊れることなんてないと、そんな確信すらも抱ける程に。

 歯車は快調に回りだす。

 日ノ宮学園文芸部は、ここに完全復活を果たしたのだった。
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