魔竜を封じる部室にて!!

秋月 銀

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六章

その43 木の葉

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 翌日から俺達は、六つ目の不思議である『玄関を見守る天使』の解明調査に乗り出していった。
 まあ、今までの不思議同様に一筋縄ではいかなかった。今回も色んなことを試して、ハルにどつかれたり、フユカと悪ノリで遊んだり、ナツキにいじられたりしていた。まともな調査をしていなかった。

 それでも、時間をかけて六つ目の不思議も解明することができたのだった。七つ目の不思議へ至る文字もしっかりと入手することもできた。最後の文字は『ん』。これで六つの文字が揃ったわけなのだが。


 この時、暦は十月に突入していた。


 先週衣替えを終えて、生徒達は皆冬服となった。九月の時点ではまだまだ夏の名残りのように気温が高かったものなのだが、それも今ではすっかり肌寒くなってしまった。それでも夏に比べれば格段に過ごしやすくはある。
 ただこれからもっと寒くなるのかと思えば、少しばかり憂鬱ゆううつになってしまう。

 毎年毎年、秋は気がつけば終わってしまっている。暑くなくなったかと思えば直ぐに寒くなってしまうのが季節ってものだ。
 もう少し秋が長くってもいいじゃない。過ごしやすいんだもの。

 それに俺の名前は秋と書いてシュウと読む。そのおかげもあって、秋という季節にはなんだか好感が持てる。

 学園までの通学路を歩いていた足を止めて、ふと周りに視線を寄越した。

 木々達は、いきいきと生命の強さを感じさせた緑色から段々と装いを変えていた。今度は美しく、色鮮やかな情緒のある黄色や赤色へと。それは自らが変えているのだろうか。はたまた、変わらなければならないのだろうか。

 いくら木々に問いかけても、答えが返ってくること叶わず。
 ただ、これから枯れゆく未来を想像すると、物悲しさがふと湧き上がって。

 俺は再び、通学路を歩み始めた。

◆◆◆

 そして放課後。

 そそくさと帰り支度を整えて教室から飛び出して行く。部室棟へと繋がる渡り廊下へと向かい、そのまま三階へと一気に階段を駆け上がって行った。

 部室棟三階の一番隅にある部室へと向かって歩いていく。文芸部室と書かれた古びた看板をチラリと一瞥して、スライド型の扉に手をかけた。そして扉を開く。

 ガラガラと音を立てながら扉は開かれて、文芸部室の様子があらわになった。

 「誰もいない、のか?」

 どうやら俺が一番早く辿り着いたようだ。
 珍しい、というより初めてだ。いつもは誰かしら、主にハルかフユカが部室に来ているものなのだが。

 一人で文芸部室にいること自体は別段初めてではない。それでも新鮮な気分だった。

 夏が過ぎて秋となり、日が落ちる時刻も早まった。そのせいで、窓から射し込む日の光も微かに赤みを帯びている。日に照らされて長机が、パイプ椅子が細長い影を作っていた。
 それを見て、三つ目の不思議を思い出した。

 『文芸部室に封印された魔竜』

 あれもまた、影を用いて解明したんだった。あの時を思い出して、ふと笑みが浮かんだ。なんだかやけに、懐かしく感じてしまったからか。まだ三つ目の不思議を解明してから二ヶ月しか経っていないというのに。

 「………いや、もう二ヶ月も経ったんだな」

 木々は、時が流れるにつれてその色を変えていく。それぞれの季節で花は芽吹くが、木の葉はそうもいかない。春に芽吹いて、夏に緑に覆い茂り、秋には鮮やかな色となって、そして冬には枯れて、散る。

 唐突に頭をよぎった考えが、なぜだか文芸部と重なった。

 想像してしまう。七不思議を全て解明した後、文芸部はどうなるのだろうかと。
 それは文芸部の俺達が、というわけではない。文芸部そのものの話だ。

 七不思議を解明するために集まった俺達は、喧嘩をして、それを乗り越えて、お互いの重要性を理解した。それでも、七不思議を解明した後でも、俺達が文芸部室に集う理由はあるのだろうか。
 集まるだけならどこだっていい。別にここにこだわる必要なんてない。それに、そもそも活動内容は七不思議の解明であったわけだし、初めから期限付きの部活動だったようなものだ。

 解散、したりするのだろうか。

 それは、寂しすぎるな。

 その時ガラガラと文芸部室の扉が開かれた。

 「おや?シュウ、もう来ていたのですか。まぁ今日に限って私のクラス、ホームルームがやけに長引いたので誰か来ているとは思っていたのですが……」

 やってきたのはフユカだった。勿論フユカも冬服へと変わっている。小柄な体格のせいでダボダボの制服。似合ってはいるのだろうが、やはり服に着られている感じが強い。フユカらしいと言えばフユカらしいのだが。

 扉を開けた後、フユカは不思議そうな表情で俺の顔を覗き込んでくる。

 「どうかしたのですか?」
 「………いや」

 俺は、フッとフユカに笑いかけた。

 「なんでもない」
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