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六章
その46 青春
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「『永遠の愛』。それが、キキョウの花言葉なんですって」
フユカはそう言って、暖かな視線でキキョウを見つめていた。
また、風が吹いた。
そよ風を浴びて、星の形の花はゆらゆらと揺れている。
「………………そうか」
俺はポツリと呟いた。そして、頭上を仰ぐ。
視界いっぱいに飛び込んできたのは、茜色に染まった空。浮かぶ雲も、その白い図体にほんのりオレンジをまとっていた。
「そう、なんだな」
口にした言葉は、自分でも意外だったが落ち着いていた。
気持ちも不思議なくらいに穏やかだった。
自分が求めていた『永遠の愛』ではなかった。恋人なんかではなかった。出会えたのは、花壇いっぱいに咲き誇る花。俺達よりも遥かに小さくて、もろくて、それでも力強く咲いている。そんな花だった。
期待外れに怒りを覚えたりだとか、落胆したりなんてことはなかった。空虚な気持ちになったり、呆然と立ち尽くしたりするわけでもなく。ただ自分達が追い求めてきたその正体を前にして、俺の心は満たされていくみたいに暖かったんだ。
ああ、それもそうか。そうだろうな。だって━━━━
「七不思議は、本当だったんだなぁ」
しみじみと、俺は声に出した。
自分達が夢中になって、解明し続けてきたもの。その終着点。
『永遠の愛』などという抽象的なものに文芸部は、その活動時間のほとんどを注いできた。放課後にも毎日のように集まって。夏休み中でも変わらずに活動してきて。
七不思議に、俺達は多くの時間をかけてきた。
「出会えたのね、私達」
「良かったねぇ」
ハルとナツキも優しい口調だった。
視線を動かせば、アメも朗らかな顔を浮かべている。フユカもそうだし、俺もきっと同じ表情を浮かべているはずだろう。
そこには一切の負の感情は含まれてなんかいない。純粋な喜びが、そこにはある。
七不思議に関して、期待はしていたけれど信用できていたかどうかはわからない。
それでも俺達は『永遠の愛』という響きに心揺さぶられて、何時間何十時間も費やしてきた。
それは他人から見れば、きっと無駄な時間だったのだろう。有意義などでは決してない。存在しないかも知れないものを必死に追い続けるだけの日々。光の見えない先を目指して、綱渡りを続けていくようなものだ。
『永遠の愛』その存在が偽りであった時、俺達の今までは全て無意味となる。無に費やしてきただけの無益な時間になってしまう。けれど。
けれど、そうじゃなかった。そうならなかった。
だって、『永遠の愛』は確かにここにあるのだから
俺達の、文芸部としての活動は何一つ間違っていなかったのだ。
それが、今はたまらなく嬉しい。
夕焼けが俺達をオレンジに染め上げる。陽の光の眩しさに思わず目を細めて、俺は花壇を見やる。
紫色の花弁を風に踊らせて、キキョウが揺れる。目の前に広がるキキョウの花畑は、いつかの夜空を連想させた。夕日が沈めば、今度は夜になる。その空はきっと、キキョウのように美しい夜空なのだろう。
俺達の間を風が通り抜けていく。爽やかな風が通り抜けていく。俺達は揺れる星空を、ただ眺めていた。
今の俺は間違いなく断言できる。恥ずかしがることもなく、胸を張って言うことができる。
最高の青春なんて、もう既に手に入れていたんだ━━━━と。
フユカはそう言って、暖かな視線でキキョウを見つめていた。
また、風が吹いた。
そよ風を浴びて、星の形の花はゆらゆらと揺れている。
「………………そうか」
俺はポツリと呟いた。そして、頭上を仰ぐ。
視界いっぱいに飛び込んできたのは、茜色に染まった空。浮かぶ雲も、その白い図体にほんのりオレンジをまとっていた。
「そう、なんだな」
口にした言葉は、自分でも意外だったが落ち着いていた。
気持ちも不思議なくらいに穏やかだった。
自分が求めていた『永遠の愛』ではなかった。恋人なんかではなかった。出会えたのは、花壇いっぱいに咲き誇る花。俺達よりも遥かに小さくて、もろくて、それでも力強く咲いている。そんな花だった。
期待外れに怒りを覚えたりだとか、落胆したりなんてことはなかった。空虚な気持ちになったり、呆然と立ち尽くしたりするわけでもなく。ただ自分達が追い求めてきたその正体を前にして、俺の心は満たされていくみたいに暖かったんだ。
ああ、それもそうか。そうだろうな。だって━━━━
「七不思議は、本当だったんだなぁ」
しみじみと、俺は声に出した。
自分達が夢中になって、解明し続けてきたもの。その終着点。
『永遠の愛』などという抽象的なものに文芸部は、その活動時間のほとんどを注いできた。放課後にも毎日のように集まって。夏休み中でも変わらずに活動してきて。
七不思議に、俺達は多くの時間をかけてきた。
「出会えたのね、私達」
「良かったねぇ」
ハルとナツキも優しい口調だった。
視線を動かせば、アメも朗らかな顔を浮かべている。フユカもそうだし、俺もきっと同じ表情を浮かべているはずだろう。
そこには一切の負の感情は含まれてなんかいない。純粋な喜びが、そこにはある。
七不思議に関して、期待はしていたけれど信用できていたかどうかはわからない。
それでも俺達は『永遠の愛』という響きに心揺さぶられて、何時間何十時間も費やしてきた。
それは他人から見れば、きっと無駄な時間だったのだろう。有意義などでは決してない。存在しないかも知れないものを必死に追い続けるだけの日々。光の見えない先を目指して、綱渡りを続けていくようなものだ。
『永遠の愛』その存在が偽りであった時、俺達の今までは全て無意味となる。無に費やしてきただけの無益な時間になってしまう。けれど。
けれど、そうじゃなかった。そうならなかった。
だって、『永遠の愛』は確かにここにあるのだから
俺達の、文芸部としての活動は何一つ間違っていなかったのだ。
それが、今はたまらなく嬉しい。
夕焼けが俺達をオレンジに染め上げる。陽の光の眩しさに思わず目を細めて、俺は花壇を見やる。
紫色の花弁を風に踊らせて、キキョウが揺れる。目の前に広がるキキョウの花畑は、いつかの夜空を連想させた。夕日が沈めば、今度は夜になる。その空はきっと、キキョウのように美しい夜空なのだろう。
俺達の間を風が通り抜けていく。爽やかな風が通り抜けていく。俺達は揺れる星空を、ただ眺めていた。
今の俺は間違いなく断言できる。恥ずかしがることもなく、胸を張って言うことができる。
最高の青春なんて、もう既に手に入れていたんだ━━━━と。
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