魔竜を封じる部室にて!!

秋月 銀

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終章

その47 それはきっと

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 季節は巡って冬となった。
 暦は既に十ニ月へと切り替わり、気温は一段と寒くなる一方だ。冬の制服すらも貫通してくる寒さに眉をしかめつつ、俺はてくてくと通学路を歩いていた。

 「はぁー……」

 吐き出される息は白く、空気中に広がって消えていく。大きく息を吸えば、少しばかり肺が痛くなってしまうかもしれないほど寒い。一体日本の冬ってどうなっているのかしらん。
 生まれ育ったこの街の冬しか俺は知らないが、ここ以上に寒い地方があるのだと考えると身が震える。まだまだこれでも暖かい方なのだ。実感は湧いてこないけど。

 「寒すぎるな」

 いつか眺めていた木々からは、既に葉が消えていた。葉は、その鮮やかな紅色を落として散っていく。カラカラに乾燥して道に溢れる枯れ葉を踏みしめて歩く。

 空を見上げて見れば呆れるほどに青い。澄み渡る空とはこういうことなのだろうか。太陽もしっかりと姿を見せているくせに、あまり暖かさは感じられなかった。
 ため息一つついて、視線を前に戻した。

 さくさくさくと枯れ葉を踏んづける音が鳴る。

 その音を聞きながら、俺は通学路を進んでいった。

◆◆◆

 七不思議の全てを解明して、俺達文芸部は『永遠の愛』と出会うことができた。

 文芸部全員の望み。目標。
 そして、文芸部が存在していた目的。
 俺達は、それらを達成し終えたのだった。


 それでも、文芸部は解散していない。


 七不思議の解明という活動をなくしてしまって、もしかしたら解散してしまうのではないのだろうかと考えたりもしていたのだが、放課後になれば結局皆はあの部室に集まっていた。
 文芸部室も俺達にとって欠かせないピースの一つであったということなのだろう。文芸部室とは俺達にとって、全員が全員気兼ねなく遊びに行ける場所だ。それを手放すという選択は、どうやら俺達には存在していなかったらしい。


 それに、今の文芸部には新たな目標がある。


 そのためにも、今後も文芸部室にはお世話になるだろうな。

 「…………ということなんですが。シュウ?ちゃんと聞いているのですか?」

 そう呼びかけられて、意識を現状に戻した。目の前には頬を軽く膨らませたフユカが立っている。

 今はもう放課後だ。時刻は既に四時を回っており、空は既に夕焼け色に染まっている。冬になって日が沈むのが随分早くなってきたのがわかる。
 今日は、いつものように文芸部室に全員で集まって、何か話し合いをしていたらしいが………。俺はさっぱり聴いていなかった。普通にモノローグ入れてたから。

 こちらをしかめっ面で見つめてくるフユカに、苦笑しながら謝った。

 「すまん。全く聴いてなかった」
 「だろうと思いましたよ。どこか遠い目をしていましたからね。相当なアホみたいな顔でしたよ」
 「俺そんな顔してたの?嘘だろ?」

 視線を周りに動かして、他の部員にも尋ねてみる。

 すると、一番最初に目が合ったナツキが笑顔で頷いた。

 「本当だよー」
 「私に文句言えないくらいだったわよ」

 追い打ちのようにハルも肯定してきた。
 えぇ…マジでぇ……?ハルはともかく、ナツキの言うことには説得力があるからなぁ。信憑性があるぶん、結構大きなダメージを受けてしまう。俺は長机に肘をついて、両手で顔を覆った。

 「まさか部室でアホヅラを晒してしまうとは……」
 「普段もあまり変わらない顔じゃないですか」
 「うるさいな」

 俺の落ち込んだ態度を見て、女子達がカラカラと笑い声を上げた。なんという奴らだろう。

 そんな様子を眺めて、あからさまに仏頂面の俺の肩にポンと手が置かれる。

 「からかってるだけだよ、そんなに気にしなくても大丈夫さ。シュウが浮かべてたのは、そんなにひどくないから」
 「うん、アメ。それ地味にフォローになってないからな。むしろ俺の心がちょっと傷ついたからな」

 そうかな?と首を傾げてアメも笑った。
 初めは不機嫌な表情を貫いていたのだが、そのうち俺も耐えきれなくなって笑い声を上げる。

 そうして全員で、しばらく笑いあっていた。
 

 そこでふと、俺の視線が彼女に動いた。意識はしていなかった。ただ、なんとなくといった感じで。
 向こうは俺に気がつくことなく笑っている。高校に入学してから見慣れたはずの表情なのに、その笑顔を見ていると不思議と心が癒やされていくのを感じた。

 心臓が大きめに跳ねる。ドクンと血液が体中を巡る。

 少し前から彼女を見ると同じような症状が起こっていた。目を合わせると心臓が高鳴って、話していると心がふわふわと浮きだつような感覚を覚えた。

 でも、決して嫌な感覚ではない。むしろ幸福感さえある。
 今までに体験したことがないような感覚。それでも俺は、その正体になんとなく気がついていた。


 そうだな。この感覚に名前があるのだとしたら、それはきっと━━━━


 好き、っていうことなんだろうな。
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