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序章
その3 日ノ宮学園文芸部
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「うぃーす……って、うおっ。なんか寒くない?この部室。いや、季節的には冷房効いてるのは大助かりなんだけどさ」
「おお、来たかアメ。今、人工冷房の開発に成功した所なんだ。お前も味わっていけよ」
「冷房って殆ど人工じゃないの?まぁ涼しいならいいや」
俺がフユカに無言の圧力をかけられ始めて数分後。文芸部の扉は再び開かれ、また部員が一人入ってきた。
彼の名前は梅崎雨。運動部にも負けない筋肉量と長身を誇る、爽やか星人である。高校生の男子には珍しい、僕が主語で物腰の柔らかい口調。俺以上に日に焼けた肌は、快活そうな印象を見る者に与える。そして実際快活である。
アメの短く切り揃えられた頭髪付近からは、玉の様な汗が吹き出していた。どうやら部室の外はまた温度が上がっているらしい。
涼しさを全身で浴びる為か、両腕を広げて俺の方へと寄ってきた。
「それで?人工の冷房ってなんなのさ」
「まぁ魔法の言葉を唱えると発動するんだなこれが」
「魔法の言葉?」
疑う様な目で俺を見てくるアメに、俺は自信をもって深々と頷いてやった。
「ああそうだ。いいか?出来るだけ爽やかな声で『友達いないって悲しいナァー!!』と叫ぶんだ。するとあら不思議、段々身体が冷えるというカラクリよ」
「さっぱり仕組みはわからないけど……まぁいいや」
そう言うと、アメは開け放たれた窓に向かって叫んだ。
「友達いないって悲しいナァーーーー!!」
おお、冷えた冷えた。面白い様に温度が下がってきたな。気温自体に変化はないのだろうが、身体の芯から冷えるこの感覚。悪くはない。
しかし、叫んだアメは首を傾げるばかり。
「……別に冷えてはないよね」
「そうか?俺の身体はキンッキンに冷えてやがるぜ」
「そりゃそうですよ。あなたにしか圧をかけていませんからね」
ヒエッ。
いつの間にか、フユカが後ろに立っていた。その視線はもはや絶対零度。ゴミムシを見るかの様なレベルまで落ちている。いや、実際にフユカの手にはハエたたきと殺虫スプレーが握られていた。
「さぁ、人をコケにした覚悟は出来ているでしょうね」
「あぁ……そういう仕組みで冷えてたのね」
「何を納得している被告。裁判長、ヤツです。ヤツが全ての犯行を行っていました。私はしかとこの目で確認しましたよ」
「うわっ濡れ衣です裁判長!僕は唆されただけなんだ!」
「確かに梅崎被告にも罪はあるが、黒幕は貴様だ」
「くく……バレちゃあしょうがないな。だが一体どうすると言うのかね」
「簡単だ」
そう言うとフユカはフユカはハエたたきと殺虫スプレーを高く掲げて、俺に襲い掛かってきた!
「害虫は駆除!」
「だぁぁ!本当に人を襲うヤツがあるか!しまえしまえ!せめて殺虫スプレーはしまえ!」
一瞬にして元の温度を取り戻した部室。ぎゃあぎゃあと叫びながら、俺とフユカの追いかけっこが始まった。白熱する追いかけっこ。長机をぐるぐる回るだけだが、緊張感で肌がヒリヒリと痛い。クソっ、そろそろ部室の外に逃げ出す必要がありそうだな……。そう考えていると、
すると再び、ガラガラと扉を開けて部室に入る人物がいた。
「わお。これどういう状況?」
対して驚いてもいない表情で、彼女は唯一の出入り口で固まった。
彼女の名は秋田夏希。同年代の男子と同じ位の高身長。校則をきっちり守った制服姿。間延びした喋り方で聴く人に安心感を与えるアルトボイス。耳より下の位置で結んだポニーテールを揺らしながら、俺とフユカを交互に見やる。殆ど瞑っているかの様な細い糸目をさらに細めて首を傾げた。
咄嗟に状況説明をしよう立ち止まったとした俺だったが、それはハエたたきを振りかぶったフユカによって中断せざるを得なかった。
「うおいっ!隙を狙うなんて卑怯だろが!」
「害虫駆除において隙を狙うのは当たり前です!」
逃げ道をナツキに封じられた俺は、無限ループとも言えるフユカとの追いかけっこを再開した。
「いやーいつ見てもこの部は楽しそうだねー」
「見てないで助けてくれよ!」
「流石に今回はシュウの自業自得よね」
「結局涼しくなくなったしね」
「いざ成敗!!」
ナツキがカラカラと笑い、俺が悲痛の叫びを上げる。その叫びはバッサリとハルに断ち切られて、アメは他人事みたいに呑気に俺達を眺めている。フユカの怒りに心底ビビリながら俺は部室を駆け回り続けていた。
この五人が、日ノ宮学園文芸部のメンバーであり総員だ。目的を同じとして集った仲間達。その日々は、今日も忙しなく過ぎていった。
「おお、来たかアメ。今、人工冷房の開発に成功した所なんだ。お前も味わっていけよ」
「冷房って殆ど人工じゃないの?まぁ涼しいならいいや」
俺がフユカに無言の圧力をかけられ始めて数分後。文芸部の扉は再び開かれ、また部員が一人入ってきた。
彼の名前は梅崎雨。運動部にも負けない筋肉量と長身を誇る、爽やか星人である。高校生の男子には珍しい、僕が主語で物腰の柔らかい口調。俺以上に日に焼けた肌は、快活そうな印象を見る者に与える。そして実際快活である。
アメの短く切り揃えられた頭髪付近からは、玉の様な汗が吹き出していた。どうやら部室の外はまた温度が上がっているらしい。
涼しさを全身で浴びる為か、両腕を広げて俺の方へと寄ってきた。
「それで?人工の冷房ってなんなのさ」
「まぁ魔法の言葉を唱えると発動するんだなこれが」
「魔法の言葉?」
疑う様な目で俺を見てくるアメに、俺は自信をもって深々と頷いてやった。
「ああそうだ。いいか?出来るだけ爽やかな声で『友達いないって悲しいナァー!!』と叫ぶんだ。するとあら不思議、段々身体が冷えるというカラクリよ」
「さっぱり仕組みはわからないけど……まぁいいや」
そう言うと、アメは開け放たれた窓に向かって叫んだ。
「友達いないって悲しいナァーーーー!!」
おお、冷えた冷えた。面白い様に温度が下がってきたな。気温自体に変化はないのだろうが、身体の芯から冷えるこの感覚。悪くはない。
しかし、叫んだアメは首を傾げるばかり。
「……別に冷えてはないよね」
「そうか?俺の身体はキンッキンに冷えてやがるぜ」
「そりゃそうですよ。あなたにしか圧をかけていませんからね」
ヒエッ。
いつの間にか、フユカが後ろに立っていた。その視線はもはや絶対零度。ゴミムシを見るかの様なレベルまで落ちている。いや、実際にフユカの手にはハエたたきと殺虫スプレーが握られていた。
「さぁ、人をコケにした覚悟は出来ているでしょうね」
「あぁ……そういう仕組みで冷えてたのね」
「何を納得している被告。裁判長、ヤツです。ヤツが全ての犯行を行っていました。私はしかとこの目で確認しましたよ」
「うわっ濡れ衣です裁判長!僕は唆されただけなんだ!」
「確かに梅崎被告にも罪はあるが、黒幕は貴様だ」
「くく……バレちゃあしょうがないな。だが一体どうすると言うのかね」
「簡単だ」
そう言うとフユカはフユカはハエたたきと殺虫スプレーを高く掲げて、俺に襲い掛かってきた!
「害虫は駆除!」
「だぁぁ!本当に人を襲うヤツがあるか!しまえしまえ!せめて殺虫スプレーはしまえ!」
一瞬にして元の温度を取り戻した部室。ぎゃあぎゃあと叫びながら、俺とフユカの追いかけっこが始まった。白熱する追いかけっこ。長机をぐるぐる回るだけだが、緊張感で肌がヒリヒリと痛い。クソっ、そろそろ部室の外に逃げ出す必要がありそうだな……。そう考えていると、
すると再び、ガラガラと扉を開けて部室に入る人物がいた。
「わお。これどういう状況?」
対して驚いてもいない表情で、彼女は唯一の出入り口で固まった。
彼女の名は秋田夏希。同年代の男子と同じ位の高身長。校則をきっちり守った制服姿。間延びした喋り方で聴く人に安心感を与えるアルトボイス。耳より下の位置で結んだポニーテールを揺らしながら、俺とフユカを交互に見やる。殆ど瞑っているかの様な細い糸目をさらに細めて首を傾げた。
咄嗟に状況説明をしよう立ち止まったとした俺だったが、それはハエたたきを振りかぶったフユカによって中断せざるを得なかった。
「うおいっ!隙を狙うなんて卑怯だろが!」
「害虫駆除において隙を狙うのは当たり前です!」
逃げ道をナツキに封じられた俺は、無限ループとも言えるフユカとの追いかけっこを再開した。
「いやーいつ見てもこの部は楽しそうだねー」
「見てないで助けてくれよ!」
「流石に今回はシュウの自業自得よね」
「結局涼しくなくなったしね」
「いざ成敗!!」
ナツキがカラカラと笑い、俺が悲痛の叫びを上げる。その叫びはバッサリとハルに断ち切られて、アメは他人事みたいに呑気に俺達を眺めている。フユカの怒りに心底ビビリながら俺は部室を駆け回り続けていた。
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