魔竜を封じる部室にて!!

秋月 銀

文字の大きさ
27 / 53
四章

その27 屋上で吠える人狼

しおりを挟む
 そして作戦会議の翌日。

 俺達文芸部は校舎の屋上に集まっていた。

 「屋上って意外とすんなり入れるものなんだな」
 「まぁ特に立ち入り禁止とかではないからねー。念の為に許可は取っておいたけどー」

 漫画やアニメなんかではよく屋上のシーンが出てくるが、実際の学校で屋上に立ち入れるとは思ってもみなかった。中学の時はそもそも屋上に続く道が存在していなかったので、屋上には行けないものだと勝手に思っていた。こういう機会でもないと屋上に立ち入るという発送すら浮かばなかっただろう。

 時刻は午前十一時過ぎ。八月の日差しがさんさんと照らしつける屋上は、暑いのは勿論なのだが、それ以上に爽快な風が吹いていた。

 「結構風が吹いてるわね。涼しくていい感じだけど」
 「あまり風が強すぎたらスカートが捲り上がってしまいますからね。このくらいが丁度良いですよ」

 ハルとフユカの会話が耳に入る。ナツキとは違って、ハルもフユカも校則通りの格好ではなく、二人共スカートの丈はそれなりに短くしている。そんな二人のスカートに、俺の視線は思わず動いてしまった。

 そよそよと動くだけのスカート。うん。何も期待しちゃいなかったさ。

 「それにしても、ここからだと街が一望できるんだね。とってもいい眺めじゃん」

 アメが右手を額付近に当てながら、屋上からぐるりと辺りを見回した。

 街の中心にある日ノ宮学園の屋上からは、学園を取り巻く街の風景を見下ろすことができた。絶景、とは言えないだろうが、良い景色であることは疑いようもなかった。住宅街や商店街、大型のスーパーマーケットなんかもよく見える。
 自分が過ごしている街を、まるでジオラマか何かのように見ることができて、少しばかり興奮した。ついでと思って自分の家も探してけれど、それは見つけることができなかった。ちょっと落ち込んだ。

 「それじゃあ四つ目の不思議調査を開始しまーす」
 「「「「はーい」」」」

 ナツキの掛け声で、俺達は屋上の中央に集合した。

 「とりあえずは、屋上で音の鳴る場所を探していくのよね?」
 「そうだねー。と言っても体育館よりは狭い範囲だと思うから、そんなに時間はかからないんじゃないかなー」

 L字型の校舎で、俺達が今いるのはLの短い方の棒のところだ。屋上という屋上はここしかなく、ここ以外は単なる屋根にしか見えない。大きさは、通常の教室の二つ分程。これといった障害物もなく、端から端まで容易に見渡すことができる。

 「それじゃあ調べよっかー。あ、あと危ないから鉄柵付近にはなるべく近づかないようにねー」
 「了解だ」

 ナツキの忠告に全員が頷く。

 この屋上には、落下防止用の鉄柵が設置されている。その高さは、俺達の身長の倍はあろうかという程に高いが、それに安心して油断してはいけない。万が一があってからでは遅いのだ。まぁ、そんな危険なところに七不思議があるとは考えづらい。鉄柵付近は除外しても構わないだろう。

 俺達は調査を開始した。

 今回は体育館の時とは違い、調査範囲もそこまで広くはないので手分けせずに皆でゆっくり探すことにした。ただ━━━━

 「調査と言っても、何もないんですよね」
 「そうだね…」

 フユカの言葉にアメが苦笑する。

 先程も述べた通りに、屋上には障害物が全くない。あるのは俺達が屋上に来た出入り口と、今歩いているタイル状の床だけである。後、鉄柵。これだと、探そうにも目に見えるものはすぐに調べ終えてしまう。とりあえず出入り口のところに向った。
 出入り口の扉のドアノブを握って、ドアを開ける。ギィィと音を立てて開かれる扉。しかし、それだけだった。

 「流石にドアの開閉音が『人狼』なわけはないわね」
 「さっき出入りした時も特におかしい感じはしなかったからな。出入り口は、七不思議とは関係なさそうだ」
 「では、残るはこのタイルくらいなものですが……目に見えておかしいところはありませんね」
 「じゃあ、やっぱり体育館の時みたいに隠れているんだろうねー」
 「それならまずは軍手でも試してみようか」

 二つ目の不思議を踏まえて今回は色々な道具を持参してきたのだ。その中の一つである軍手をナツキが装着する。ナツキは装着した両手をにぎにぎと開閉する。

 「よーし調べるぞー」

 そう言って、ナツキは四つん這いになった。軍手をはめた両手をタイルに当てて、『人狼』の吠える声に似た音を探し始める。

 こちらに背を向けているので、必然的にナツキのスカートが俺達の目の前にくるわけなのだが………。よいしょよいしょと言いながらタイルを調べるナツキの腰の動きに合わせてスカートがひらりひらりと舞っている。

 ナツキが一生懸命なのはわかるが、何かイケナイものを見ている様な気分になってきた。女の子を四つん這いにさせて眺めるって相当な絵面だぞ。
 こういうことなら俺も軍手を持ってきて、ナツキと一緒に作業するべきだった。残念ながら、ナツキが軍手を持ってくると言ったので俺達は誰一人として軍手を持ってきていない。

 ナツキを眺める文芸部員達は皆、何とも言えない微妙な表情を浮かべてしまっていた。

 これは、このままやらせてはいかん!

 「な、なぁナツキ。その体勢だと結構キツイだろ?」
 「んー?そんなことないよー」
 「いや今はキツくなくとも、いずれキツくなるはずだ。そんな作業を女の子にだけは任せておけない。だから、俺に任せてくれないか?」

 ナツキは振り返って俺のことをしばらく見つめていたが、ニコリと笑って立ち上がった。

 「ありがとー。優しいねー」
 「気にするなって」

 軍手をナツキから預かることに成功した。これであのイケナイな光景を見らずに済むな………。

 アメとハルが安堵の表情を浮かべ、俺も安堵で胸を撫で下ろす中、なぜだかフユカが拗ねた様な表情をしていた。なんでそんな顔をしているのかしらん?その理由は少し気になったが。だけど俺は、その理由を特に追求することもなく、タイルに軍手を当てて調べ始めた。

 そうして屋上の全てのタイルを調べたが、結果は芳しくなかった。
 軍手以外にも持参してきた道具を試してみたのだが、どれも結果は空振り。途方に暮れた俺達は、タイルに腰を下ろして空を眺めていた。

 「何の反応もありませんでしたね……」
 「そうだねー。駄目だったねー」

 流石のナツキも披露しているのか、気の抜けた様な声をもらした。
 
 実際には何の反応もなかったわけではないのだが、『人狼の吠える声』に近い音は一切出なかった。おかげで今は青空を見ることしかやることがない。

 しばらくそうしていただろうか。ふと今の時間が気になった。十二時のサイレンが鳴っていないから、まだ午前中ではあると思うんだが。
 
 「そういえば今何時なんだ?」
 「ん?もう十二━━━━」

 ナツキがスマホで時間を確認して、教えてくれようとしたその時。


 ワォォォォォン、と。


 どこか『人狼』めいた、そんな音を俺達は聴いた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元暗殺者の俺だけが、クラスの地味系美少女が地下アイドルなことを知っている

甘酢ニノ
恋愛
クラス一の美少女・強羅ひまりには、誰にも言えない秘密がある。 実は“売れない地下アイドル”として活動しているのだ。 偶然その正体を知ってしまったのは、無愛想で怖がられがちな同級生・兎山類。 けれど彼は、泣いていたひまりをそっと励ましたことも忘れていて……。 不器用な彼女の願いを胸に、類はひまりの“支え役”になっていく。 真面目で不器用なアイドルと、寡黙だけど優しい少年が紡ぐ、 少し切なくて甘い青春ラブコメ。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

むっつり金持ち高校生、巨乳美少女たちに囲まれて学園ハーレム

ピコサイクス
青春
顔は普通、性格も地味。 けれど実は金持ちな高校一年生――俺、朝倉健斗。 学校では埋もれキャラのはずなのに、なぜか周りは巨乳美女ばかり!? 大学生の家庭教師、年上メイド、同級生ギャルに清楚系美少女……。 真面目な御曹司を演じつつ、内心はむっつりスケベ。

天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】

田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。 俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。 「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」 そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。 「あの...相手の人の名前は?」 「...汐崎真凛様...という方ですね」 その名前には心当たりがあった。 天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。 こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。

キャバ嬢(ハイスペック)との同棲が、僕の高校生活を色々と変えていく。

たかなしポン太
青春
   僕のアパートの前で、巨乳美人のお姉さんが倒れていた。  助けたそのお姉さんは一流大卒だが内定取り消しとなり、就職浪人中のキャバ嬢だった。  でもまさかそのお姉さんと、同棲することになるとは…。 「今日のパンツってどんなんだっけ? ああ、これか。」 「ちょっと、確認しなくていいですから!」 「これ、可愛いでしょ? 色違いでピンクもあるんだけどね。綿なんだけど生地がサラサラで、この上の部分のリボンが」 「もういいです! いいですから、パンツの説明は!」    天然高学歴キャバ嬢と、心優しいDT高校生。  異色の2人が繰り広げる、水色パンツから始まる日常系ラブコメディー! ※小説家になろうとカクヨムにも同時掲載中です。 ※本作品はフィクションであり、実在の人物や団体、製品とは一切関係ありません。

詠唱? それ、気合を入れるためのおまじないですよね? ~勘違い貴族の規格外魔法譚~

Gaku
ファンタジー
「次の人生は、自由に走り回れる丈夫な体が欲しい」 病室で短い生涯を終えた僕、ガクの切実な願いは、神様のちょっとした(?)サービスで、とんでもなく盛大な形で叶えられた。 気がつけば、そこは剣と魔法が息づく異世界。貴族の三男として、念願の健康な体と、ついでに規格外の魔力を手に入れていた! これでようやく、平和で自堕落なスローライフが送れる――はずだった。 だが、僕には一つ、致命的な欠点があった。それは、この世界の魔法に関する常識が、綺麗さっぱりゼロだったこと。 皆が必死に唱える「詠唱」を、僕は「気合を入れるためのおまじない」だと勘違い。僕の魔法理論は、いつだって「体内のエネルギーを、ぐわーっと集めて、どーん!」。 その結果、 うっかり放った火の玉で、屋敷の壁に風穴を開けてしまう。 慌てて土魔法で修復すれば、なぜか元の壁より遥かに豪華絢爛な『匠の壁』が爆誕し、屋敷の新たな観光名所に。 「友達が欲しいな」と軽い気持ちで召喚魔法を使えば、天変地異の末に伝説の魔獣フェンリル(ただし、手のひらサイズの超絶可愛い子犬)を呼び出してしまう始末。 僕はただ、健康な体でのんびり暮らしたいだけなのに! 行く先々で無自覚に「やりすぎ」てしまい、気づけば周囲からは「無詠唱の暴君」「歩く災害」など、実に不名誉なあだ名で呼ばれるようになっていた……。 そんな僕が、ついに魔法学園へ入学! 当然のように入学試験では的を“消滅”させて試験官を絶句させ、「関わってはいけないヤバい奴」として輝かしい孤立生活をスタート! しかし、そんな規格外な僕に興味を持つ、二人の変わり者が現れた。 魔法の真理を探求する理論オタクの「レオ」と、強者との戦いを求める猪突猛進な武闘派女子の「アンナ」。 この二人との出会いが、モノクロだった僕の世界を、一気に鮮やかな色に変えていく――! 勘違いと無自覚チートで、知らず知らずのうちに世界を震撼させる! 腹筋崩壊のドタバタコメディを軸に、個性的な仲間たちとの友情、そして、世界の謎に迫る大冒険が、今、始まる!

クラスで3番目に可愛い無口なあの子が実は手話で話しているのを俺だけが知っている

夏見ナイ
恋愛
俺のクラスにいる月宮雫は、誰も寄せ付けないクールな美少女。そのミステリアスな雰囲気から『クラスで3番目に可愛い子』と呼ばれているが、いつも一人で、誰とも話さない。 ある放課後、俺は彼女が指先で言葉を紡ぐ――手話で話している姿を目撃してしまう。好奇心から手話を覚えた俺が、勇気を出して話しかけた瞬間、二人だけの秘密の世界が始まった。 無口でクール? とんでもない。本当の彼女は、よく笑い、よく拗ねる、最高に可愛いおしゃべりな女の子だったのだ。 クールな君の本当の姿と甘える仕草は、俺だけが知っている。これは、世界一甘くて尊い、静かな恋の物語。

ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話

桜井正宗
青春
 ――結婚しています!  それは二人だけの秘密。  高校二年の遙と遥は結婚した。  近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。  キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。  ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。 *結婚要素あり *ヤンデレ要素あり

処理中です...