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四章
その27 屋上で吠える人狼
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そして作戦会議の翌日。
俺達文芸部は校舎の屋上に集まっていた。
「屋上って意外とすんなり入れるものなんだな」
「まぁ特に立ち入り禁止とかではないからねー。念の為に許可は取っておいたけどー」
漫画やアニメなんかではよく屋上のシーンが出てくるが、実際の学校で屋上に立ち入れるとは思ってもみなかった。中学の時はそもそも屋上に続く道が存在していなかったので、屋上には行けないものだと勝手に思っていた。こういう機会でもないと屋上に立ち入るという発送すら浮かばなかっただろう。
時刻は午前十一時過ぎ。八月の日差しがさんさんと照らしつける屋上は、暑いのは勿論なのだが、それ以上に爽快な風が吹いていた。
「結構風が吹いてるわね。涼しくていい感じだけど」
「あまり風が強すぎたらスカートが捲り上がってしまいますからね。このくらいが丁度良いですよ」
ハルとフユカの会話が耳に入る。ナツキとは違って、ハルもフユカも校則通りの格好ではなく、二人共スカートの丈はそれなりに短くしている。そんな二人のスカートに、俺の視線は思わず動いてしまった。
そよそよと動くだけのスカート。うん。何も期待しちゃいなかったさ。
「それにしても、ここからだと街が一望できるんだね。とってもいい眺めじゃん」
アメが右手を額付近に当てながら、屋上からぐるりと辺りを見回した。
街の中心にある日ノ宮学園の屋上からは、学園を取り巻く街の風景を見下ろすことができた。絶景、とは言えないだろうが、良い景色であることは疑いようもなかった。住宅街や商店街、大型のスーパーマーケットなんかもよく見える。
自分が過ごしている街を、まるでジオラマか何かのように見ることができて、少しばかり興奮した。ついでと思って自分の家も探してけれど、それは見つけることができなかった。ちょっと落ち込んだ。
「それじゃあ四つ目の不思議調査を開始しまーす」
「「「「はーい」」」」
ナツキの掛け声で、俺達は屋上の中央に集合した。
「とりあえずは、屋上で音の鳴る場所を探していくのよね?」
「そうだねー。と言っても体育館よりは狭い範囲だと思うから、そんなに時間はかからないんじゃないかなー」
L字型の校舎で、俺達が今いるのはLの短い方の棒のところだ。屋上という屋上はここしかなく、ここ以外は単なる屋根にしか見えない。大きさは、通常の教室の二つ分程。これといった障害物もなく、端から端まで容易に見渡すことができる。
「それじゃあ調べよっかー。あ、あと危ないから鉄柵付近にはなるべく近づかないようにねー」
「了解だ」
ナツキの忠告に全員が頷く。
この屋上には、落下防止用の鉄柵が設置されている。その高さは、俺達の身長の倍はあろうかという程に高いが、それに安心して油断してはいけない。万が一があってからでは遅いのだ。まぁ、そんな危険なところに七不思議があるとは考えづらい。鉄柵付近は除外しても構わないだろう。
俺達は調査を開始した。
今回は体育館の時とは違い、調査範囲もそこまで広くはないので手分けせずに皆でゆっくり探すことにした。ただ━━━━
「調査と言っても、何もないんですよね」
「そうだね…」
フユカの言葉にアメが苦笑する。
先程も述べた通りに、屋上には障害物が全くない。あるのは俺達が屋上に来た出入り口と、今歩いているタイル状の床だけである。後、鉄柵。これだと、探そうにも目に見えるものはすぐに調べ終えてしまう。とりあえず出入り口のところに向った。
出入り口の扉のドアノブを握って、ドアを開ける。ギィィと音を立てて開かれる扉。しかし、それだけだった。
「流石にドアの開閉音が『人狼』なわけはないわね」
「さっき出入りした時も特におかしい感じはしなかったからな。出入り口は、七不思議とは関係なさそうだ」
「では、残るはこのタイルくらいなものですが……目に見えておかしいところはありませんね」
「じゃあ、やっぱり体育館の時みたいに隠れているんだろうねー」
「それならまずは軍手でも試してみようか」
二つ目の不思議を踏まえて今回は色々な道具を持参してきたのだ。その中の一つである軍手をナツキが装着する。ナツキは装着した両手をにぎにぎと開閉する。
「よーし調べるぞー」
そう言って、ナツキは四つん這いになった。軍手をはめた両手をタイルに当てて、『人狼』の吠える声に似た音を探し始める。
こちらに背を向けているので、必然的にナツキのスカートが俺達の目の前にくるわけなのだが………。よいしょよいしょと言いながらタイルを調べるナツキの腰の動きに合わせてスカートがひらりひらりと舞っている。
ナツキが一生懸命なのはわかるが、何かイケナイものを見ている様な気分になってきた。女の子を四つん這いにさせて眺めるって相当な絵面だぞ。
こういうことなら俺も軍手を持ってきて、ナツキと一緒に作業するべきだった。残念ながら、ナツキが軍手を持ってくると言ったので俺達は誰一人として軍手を持ってきていない。
ナツキを眺める文芸部員達は皆、何とも言えない微妙な表情を浮かべてしまっていた。
これは、このままやらせてはいかん!
「な、なぁナツキ。その体勢だと結構キツイだろ?」
「んー?そんなことないよー」
「いや今はキツくなくとも、いずれキツくなるはずだ。そんな作業を女の子にだけは任せておけない。だから、俺に任せてくれないか?」
ナツキは振り返って俺のことをしばらく見つめていたが、ニコリと笑って立ち上がった。
「ありがとー。優しいねー」
「気にするなって」
軍手をナツキから預かることに成功した。これであのイケナイな光景を見らずに済むな………。
アメとハルが安堵の表情を浮かべ、俺も安堵で胸を撫で下ろす中、なぜだかフユカが拗ねた様な表情をしていた。なんでそんな顔をしているのかしらん?その理由は少し気になったが。だけど俺は、その理由を特に追求することもなく、タイルに軍手を当てて調べ始めた。
そうして屋上の全てのタイルを調べたが、結果は芳しくなかった。
軍手以外にも持参してきた道具を試してみたのだが、どれも結果は空振り。途方に暮れた俺達は、タイルに腰を下ろして空を眺めていた。
「何の反応もありませんでしたね……」
「そうだねー。駄目だったねー」
流石のナツキも披露しているのか、気の抜けた様な声をもらした。
実際には何の反応もなかったわけではないのだが、『人狼の吠える声』に近い音は一切出なかった。おかげで今は青空を見ることしかやることがない。
しばらくそうしていただろうか。ふと今の時間が気になった。十二時のサイレンが鳴っていないから、まだ午前中ではあると思うんだが。
「そういえば今何時なんだ?」
「ん?もう十二━━━━」
ナツキがスマホで時間を確認して、教えてくれようとしたその時。
ワォォォォォン、と。
どこか『人狼』めいた、そんな音を俺達は聴いた。
俺達文芸部は校舎の屋上に集まっていた。
「屋上って意外とすんなり入れるものなんだな」
「まぁ特に立ち入り禁止とかではないからねー。念の為に許可は取っておいたけどー」
漫画やアニメなんかではよく屋上のシーンが出てくるが、実際の学校で屋上に立ち入れるとは思ってもみなかった。中学の時はそもそも屋上に続く道が存在していなかったので、屋上には行けないものだと勝手に思っていた。こういう機会でもないと屋上に立ち入るという発送すら浮かばなかっただろう。
時刻は午前十一時過ぎ。八月の日差しがさんさんと照らしつける屋上は、暑いのは勿論なのだが、それ以上に爽快な風が吹いていた。
「結構風が吹いてるわね。涼しくていい感じだけど」
「あまり風が強すぎたらスカートが捲り上がってしまいますからね。このくらいが丁度良いですよ」
ハルとフユカの会話が耳に入る。ナツキとは違って、ハルもフユカも校則通りの格好ではなく、二人共スカートの丈はそれなりに短くしている。そんな二人のスカートに、俺の視線は思わず動いてしまった。
そよそよと動くだけのスカート。うん。何も期待しちゃいなかったさ。
「それにしても、ここからだと街が一望できるんだね。とってもいい眺めじゃん」
アメが右手を額付近に当てながら、屋上からぐるりと辺りを見回した。
街の中心にある日ノ宮学園の屋上からは、学園を取り巻く街の風景を見下ろすことができた。絶景、とは言えないだろうが、良い景色であることは疑いようもなかった。住宅街や商店街、大型のスーパーマーケットなんかもよく見える。
自分が過ごしている街を、まるでジオラマか何かのように見ることができて、少しばかり興奮した。ついでと思って自分の家も探してけれど、それは見つけることができなかった。ちょっと落ち込んだ。
「それじゃあ四つ目の不思議調査を開始しまーす」
「「「「はーい」」」」
ナツキの掛け声で、俺達は屋上の中央に集合した。
「とりあえずは、屋上で音の鳴る場所を探していくのよね?」
「そうだねー。と言っても体育館よりは狭い範囲だと思うから、そんなに時間はかからないんじゃないかなー」
L字型の校舎で、俺達が今いるのはLの短い方の棒のところだ。屋上という屋上はここしかなく、ここ以外は単なる屋根にしか見えない。大きさは、通常の教室の二つ分程。これといった障害物もなく、端から端まで容易に見渡すことができる。
「それじゃあ調べよっかー。あ、あと危ないから鉄柵付近にはなるべく近づかないようにねー」
「了解だ」
ナツキの忠告に全員が頷く。
この屋上には、落下防止用の鉄柵が設置されている。その高さは、俺達の身長の倍はあろうかという程に高いが、それに安心して油断してはいけない。万が一があってからでは遅いのだ。まぁ、そんな危険なところに七不思議があるとは考えづらい。鉄柵付近は除外しても構わないだろう。
俺達は調査を開始した。
今回は体育館の時とは違い、調査範囲もそこまで広くはないので手分けせずに皆でゆっくり探すことにした。ただ━━━━
「調査と言っても、何もないんですよね」
「そうだね…」
フユカの言葉にアメが苦笑する。
先程も述べた通りに、屋上には障害物が全くない。あるのは俺達が屋上に来た出入り口と、今歩いているタイル状の床だけである。後、鉄柵。これだと、探そうにも目に見えるものはすぐに調べ終えてしまう。とりあえず出入り口のところに向った。
出入り口の扉のドアノブを握って、ドアを開ける。ギィィと音を立てて開かれる扉。しかし、それだけだった。
「流石にドアの開閉音が『人狼』なわけはないわね」
「さっき出入りした時も特におかしい感じはしなかったからな。出入り口は、七不思議とは関係なさそうだ」
「では、残るはこのタイルくらいなものですが……目に見えておかしいところはありませんね」
「じゃあ、やっぱり体育館の時みたいに隠れているんだろうねー」
「それならまずは軍手でも試してみようか」
二つ目の不思議を踏まえて今回は色々な道具を持参してきたのだ。その中の一つである軍手をナツキが装着する。ナツキは装着した両手をにぎにぎと開閉する。
「よーし調べるぞー」
そう言って、ナツキは四つん這いになった。軍手をはめた両手をタイルに当てて、『人狼』の吠える声に似た音を探し始める。
こちらに背を向けているので、必然的にナツキのスカートが俺達の目の前にくるわけなのだが………。よいしょよいしょと言いながらタイルを調べるナツキの腰の動きに合わせてスカートがひらりひらりと舞っている。
ナツキが一生懸命なのはわかるが、何かイケナイものを見ている様な気分になってきた。女の子を四つん這いにさせて眺めるって相当な絵面だぞ。
こういうことなら俺も軍手を持ってきて、ナツキと一緒に作業するべきだった。残念ながら、ナツキが軍手を持ってくると言ったので俺達は誰一人として軍手を持ってきていない。
ナツキを眺める文芸部員達は皆、何とも言えない微妙な表情を浮かべてしまっていた。
これは、このままやらせてはいかん!
「な、なぁナツキ。その体勢だと結構キツイだろ?」
「んー?そんなことないよー」
「いや今はキツくなくとも、いずれキツくなるはずだ。そんな作業を女の子にだけは任せておけない。だから、俺に任せてくれないか?」
ナツキは振り返って俺のことをしばらく見つめていたが、ニコリと笑って立ち上がった。
「ありがとー。優しいねー」
「気にするなって」
軍手をナツキから預かることに成功した。これであのイケナイな光景を見らずに済むな………。
アメとハルが安堵の表情を浮かべ、俺も安堵で胸を撫で下ろす中、なぜだかフユカが拗ねた様な表情をしていた。なんでそんな顔をしているのかしらん?その理由は少し気になったが。だけど俺は、その理由を特に追求することもなく、タイルに軍手を当てて調べ始めた。
そうして屋上の全てのタイルを調べたが、結果は芳しくなかった。
軍手以外にも持参してきた道具を試してみたのだが、どれも結果は空振り。途方に暮れた俺達は、タイルに腰を下ろして空を眺めていた。
「何の反応もありませんでしたね……」
「そうだねー。駄目だったねー」
流石のナツキも披露しているのか、気の抜けた様な声をもらした。
実際には何の反応もなかったわけではないのだが、『人狼の吠える声』に近い音は一切出なかった。おかげで今は青空を見ることしかやることがない。
しばらくそうしていただろうか。ふと今の時間が気になった。十二時のサイレンが鳴っていないから、まだ午前中ではあると思うんだが。
「そういえば今何時なんだ?」
「ん?もう十二━━━━」
ナツキがスマホで時間を確認して、教えてくれようとしたその時。
ワォォォォォン、と。
どこか『人狼』めいた、そんな音を俺達は聴いた。
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