焼きたてフィーリング

作者チョロまつ

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プロローグ

2話 動じない主人

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彼は色々な事を流卵に助けられているため、さぞ楽な暮らしをしているだろう。
そう思っているが、意外とそうでもない。

「ほうきはこう使って、隙間も掃除できるように。もっと細かければ雑巾を使えばいい。それから…」
流卵であるが、最初からメイド業が達者なわけではない。
大体は智登に教わっている。

学校の空いた時間を使って流卵に必要な力を教えている。

そんな彼にも欠点は存在する。
「智登ー!こちょこちょー!」
「…」
「駄目か。」
彼は笑えない。
「うわっ!?ビックリしたぁー…」
「この映像こっわ!」
「…」
「…横で見てたけど、智登は微動だにしなかったな。」
彼は驚かない。
「おいっ!そんな事したらだめだろ!」
「智登も何か言ってやれよ!」
「駄目だよー。」
「ゆるいな!」
彼は怒れない。

彼には表情が無い。
それも彼の過去によるものらしい…

…そんな彼が家に帰ったら意外な事をしている。
実は、彼の家はパン屋さんなのである。
しかも絶品で評判!
1日に何人も訪れる知る人ぞ知る店の店員さん。

彼は接客にもまわる。しかし表情がなく少し不気味なため、基本は会計役としてレジに居座る。
メイドさんを雇っていても楽はあまりしていないんですね。





「何書いているんですか…?」
智登は店に訪れた客のノートを見ながら質問を投げ掛けた。
「貴方達が私の考える漫画のキャラクターにピッタリだったから紹介文を書いていたのよ。」
「内容に驚きましたよ。どこで情報を得たんですか。」
智登は客の女性に呆れている。
書かれいる内容は、智登達の事を正確に記している。
「貴方の親から結構聞いちゃった。」
「そうですか。でも学校の事は…」
「あなた達のクラスまで観察してるのよ。一階下なんだしすぐ行けるわ。」
多々たた先輩、よくそんな勇気ありますよね。」
その客は智登の学校の1つ上の上級生だった。
「このパン屋に来て、貴方と会ってすぐにビビっときちゃったもの。」
「はあ。」
伊達眼鏡を外した彼女はスッと椅子から立ち上がった。
「いい作品が出来そうだわ。」
机に代金を置いてそのまま出口へ向かった。
「ありがとうございました。」
「またねー、いつもながら美味しかったわ。」
多々はその場をスキップしながら去っていった。

「気を付けたほうがいいかも…」
小声で呟いた智登は場に戻った。
「ご主人様っ!」
「あー?」
カウンターの奥、家の中へと通じる廊下から流卵が出てきた。
彼女は見た感じ嬉しそうにしている。
「時間が空きましたので、私も接客を致しますね!」
「Thanks、頼むよ。」
「はいっ!」
流卵の加わったパン屋は明るい雰囲気を手に入れた。
場についた二人に一人のお客が訪れた…

「あ…」
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