焼きたてフィーリング

プロローグ

４話 輝く新店員！

「さっきは…ありがとね。」
意識を取り戻した秋花は起き上がった。
「どうされたんですか？」
早速流卵は事情を聞いた。
「うん、あたしって…紫躍しやく財閥の娘なんだけど…さ。」
「紫躍財閥…！？」
紫躍財閥、世界的にも有名な財閥。
その名を聞いて流卵は驚いた。
紫躍財閥、その娘、となるとかなりのセレブである。
「こいつを囮に金を盗ろうぜって…」
「それはそれは…！許せないですね…！」
軽いようで重い事情に流卵はいきりたった。
「じゃ、警察にでも連絡しとくよ。」
そういって智登は携帯電話を取りだし、連絡を入れた。

「そういえば、さっき友達って…？」
秋花はさっきの事を少し覚えていたよう。
違和感を感じたのか、智登に尋ねる。
「うん、友達だね。で、どうしたの？」
「えっ…？いや…」
不思議そうに見つめる智登の目には戸惑う秋花の姿があった。
「そう…ね。」
そう呟いた秋花の顔はとても嬉しそうにしていた。

その後話をまとめ、外に放り出された男の山は警察に引き取られた。
「じゃ…またねっ。」
秋花は荷物をまとめた。
「うん、いつでも来ていいよ。」
「ふふっ、いつ来ようかしら。」
表情は見えずとも、智登は優しい顔をしている。
秋花は店を去っていった。

「良かったですね。秋花様。」
「だね。仲良くしていこう。」
「勿論心得ておりますっ。」

そんな騒動があった日の夜…
『私の友達に手荒な真似しないで下さい。』
秋花からはこの言葉が離れなかった。

「お、おはよう。」
「おはよー。」
「おはようございます！」
秋花は二人に声をかけた。
「秋花様聞いて下さいよ、この前ご主人様が私の用意した靴下の色を一足だけ変えたんですよ！大恥かきましたよー…！」
「気付けない分、流卵が悪い。」
「変える必要は無いじゃないですか！」
「でも、智登に同感するわ。そのくらい気付けないと駄目ね。」
「秋花様までぇ…」
三人の会話は教室内に響き渡った。

秋花は智登の家の店によく来るようになった。
「はい、フレンチトースト。」
「いつもながら美味しそうね！」
彼女はよくフレンチトーストを頼んだ。

そして。時間の流れるままに会話を楽しむ。

ある日、こんな事を言い出した。
「あたしも扶蓮の店で働こうかなー」
「えっ！？いいんですか！？」
驚きつつも、親に許可を貰って…

「いらっしゃいませー！」
眩しい笑顔が評判の彼女。
彼女は店の看板娘となった。

「お店の雰囲気がガラット変わりましたね！」
「そうだね。助かる。」
表情の無い智登に、堅苦しい流卵とは違って、明るい接客の秋花。
智登の家の店に、綺麗な花が咲いたようだ。

「評判もよくなってきたので、そろそろ店内の掃除をしましょう。」
ある日、流卵は朝早く店内を掃除し始めた。
汚ない所も多く、掃除して良かったと思った。
その時…
流卵はなぜかロッカーの中が気になり始めた。
服とかが入っているロッカーだが、滅多に使われていない物である。

流卵はロッカーの扉を開けた…