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プロローグ
6話 生き残った少女
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「はぁ~…眠い…」
中学校の卒業式、そして打ち上げが終わり、辺りはすっかり夜になっていた。
真っ暗な帰り道を照らすのは家々のカーテンからはみ出る光。
薄暗い蛍光灯。ちょっと不気味な感じが智登は好きだった。
「…はぁ…っはぁ…」
夜道を歩く智登の耳に女性が息を切らしている声が聞こえた。
その声はとても辛そうだった。
しかし、家の中から聞こえてくる感じはしない。
むしろ、誰もいなさそうな真っ暗な森の中から聞こえた。
森、とは言っても道をほんの少し外れた部分である。
ちょっと確認してみようと、声のした方向へ向かう。
見ると、女性が倒れていた。
女性、いや、子供…?幼い女の子だった。
何の遊びだろうか、と横目で見ながら通り過ぎようとした。
その時、
ぎゅるるぅぅ…
大きな腹の音が聞こえた。
当然、倒れていた女の子の音だ。
お金以外持っていない智登はその場を去った。
数分後、智登はビニール袋片手に女の子のいる場所へ戻った。
食料、飲料、電灯を買ってきた。
電灯をつけ、彼女を照らす。
「はぅっ…」
ちょっと呻き声をあげたが、智登は彼女の気を無視して見回る。
どこの学校の子だろうか。中学校の制服を着ている。
その服装は、所々破れていれば、泥で汚れている。
よく見たら、妙な黒い部分もある…
「あ…あなたはっ…!?」
何か言おうとしていた彼女の口に、飲みやすいハンディパックの飲料を押しあて、飲ませた。
大体いいな、と思った智登は買ってきたあんぱんを取り出した。
「食べて。」
「ぁ…ぇっと…はい…」
彼女は戸惑いつつもあんぱんを口にした。
「んじゃ、頑張って!」
「ぅえぇっ!?待って下さい!」
敬礼をして智登はその場を去ろうとした。
すぐに彼女は智登を止めた。
「何?」
「あ…あの…」
智登は彼女の近くに寄った。
寝ていた姿勢を起こし、彼女は座り込んだ。
「色々と…ありがとうございます。どうして…助けてくれたんですか…?」
うずくまって彼女が問う。
「腹減りの苦痛は異常だからね。前に君と似たような状態なったけど死ぬかと思ったよ。」
あまり予想だにしていなかった返答に彼女は固まった。
「あんぱんって結構腹もつから大丈夫!じゃ、頑張って!」
親指を立て、無情だが勢い付いた言葉をかけ、智登は再び去ろうとする。
「すぐに立ち去ろうとしないで下さい…!」
手を伸ばして智登を止める彼女。
しょうがなく、智登はまだ居座る事にした。
「私は、掬羅流卵って言います…」
「丁寧にどうも、僕は扶蓮智登です。」
「ぇ!?…あ…宜しくです…」
すぐに返答が帰ってきたせいかなのか、流卵は驚いた。
ひたすらに不意を衝かれる流卵の会話があまり進まない。
「西瓜斬中学校…遠いね。」
智登は彼女の胸元にあるワッペンを見た。
「ここらへんは桃流中学校があるよ。」
「桃流中…!?」
彼女は驚いた、あまりの遠さに。
西瓜斬中学校と桃流中学校へは10kmも差がある。
「車で来たとか?」
「歩いて来ました…」
「あじゃぱー」
彼女は10kmという距離を歩いてきたのだという。
理由は残酷だった。
「家に帰って休んでたら…大変な事が起きて…逃げていたら…ここに倒れていました。」
「大変な事?」
「思い出せないんです…」
智登には予想がある。
彼女の服には黒い部分がある。
…どう見ても焼け跡なのだ。
恐らく、家が火事になったのだろう。
さらに智登は確信を得る情報を思い出した。
打ち上げの時、お店にテレビがあったのだが、こんなニュースをやっていた。
西瓜斬地区のある家が火事にあい、消化活動が行われている映像。
補足ではこうあった。
その家の家族、親二人の遺体が見つかり、その子供の遺体が見つからず行方不明だと。
その家族の苗字は…掬羅。
それが分かると智登は流卵の頭を撫でた。
「頑張ったね。」
「……はぃ…」
すると、彼女は泣き出した。
実際どんな気持ちなのか具体的には分からないが、辛いのは分かる。
そう思うと自然と体が動いた智登。
とりあえず今は流卵が落ち着くのを待った…
中学校の卒業式、そして打ち上げが終わり、辺りはすっかり夜になっていた。
真っ暗な帰り道を照らすのは家々のカーテンからはみ出る光。
薄暗い蛍光灯。ちょっと不気味な感じが智登は好きだった。
「…はぁ…っはぁ…」
夜道を歩く智登の耳に女性が息を切らしている声が聞こえた。
その声はとても辛そうだった。
しかし、家の中から聞こえてくる感じはしない。
むしろ、誰もいなさそうな真っ暗な森の中から聞こえた。
森、とは言っても道をほんの少し外れた部分である。
ちょっと確認してみようと、声のした方向へ向かう。
見ると、女性が倒れていた。
女性、いや、子供…?幼い女の子だった。
何の遊びだろうか、と横目で見ながら通り過ぎようとした。
その時、
ぎゅるるぅぅ…
大きな腹の音が聞こえた。
当然、倒れていた女の子の音だ。
お金以外持っていない智登はその場を去った。
数分後、智登はビニール袋片手に女の子のいる場所へ戻った。
食料、飲料、電灯を買ってきた。
電灯をつけ、彼女を照らす。
「はぅっ…」
ちょっと呻き声をあげたが、智登は彼女の気を無視して見回る。
どこの学校の子だろうか。中学校の制服を着ている。
その服装は、所々破れていれば、泥で汚れている。
よく見たら、妙な黒い部分もある…
「あ…あなたはっ…!?」
何か言おうとしていた彼女の口に、飲みやすいハンディパックの飲料を押しあて、飲ませた。
大体いいな、と思った智登は買ってきたあんぱんを取り出した。
「食べて。」
「ぁ…ぇっと…はい…」
彼女は戸惑いつつもあんぱんを口にした。
「んじゃ、頑張って!」
「ぅえぇっ!?待って下さい!」
敬礼をして智登はその場を去ろうとした。
すぐに彼女は智登を止めた。
「何?」
「あ…あの…」
智登は彼女の近くに寄った。
寝ていた姿勢を起こし、彼女は座り込んだ。
「色々と…ありがとうございます。どうして…助けてくれたんですか…?」
うずくまって彼女が問う。
「腹減りの苦痛は異常だからね。前に君と似たような状態なったけど死ぬかと思ったよ。」
あまり予想だにしていなかった返答に彼女は固まった。
「あんぱんって結構腹もつから大丈夫!じゃ、頑張って!」
親指を立て、無情だが勢い付いた言葉をかけ、智登は再び去ろうとする。
「すぐに立ち去ろうとしないで下さい…!」
手を伸ばして智登を止める彼女。
しょうがなく、智登はまだ居座る事にした。
「私は、掬羅流卵って言います…」
「丁寧にどうも、僕は扶蓮智登です。」
「ぇ!?…あ…宜しくです…」
すぐに返答が帰ってきたせいかなのか、流卵は驚いた。
ひたすらに不意を衝かれる流卵の会話があまり進まない。
「西瓜斬中学校…遠いね。」
智登は彼女の胸元にあるワッペンを見た。
「ここらへんは桃流中学校があるよ。」
「桃流中…!?」
彼女は驚いた、あまりの遠さに。
西瓜斬中学校と桃流中学校へは10kmも差がある。
「車で来たとか?」
「歩いて来ました…」
「あじゃぱー」
彼女は10kmという距離を歩いてきたのだという。
理由は残酷だった。
「家に帰って休んでたら…大変な事が起きて…逃げていたら…ここに倒れていました。」
「大変な事?」
「思い出せないんです…」
智登には予想がある。
彼女の服には黒い部分がある。
…どう見ても焼け跡なのだ。
恐らく、家が火事になったのだろう。
さらに智登は確信を得る情報を思い出した。
打ち上げの時、お店にテレビがあったのだが、こんなニュースをやっていた。
西瓜斬地区のある家が火事にあい、消化活動が行われている映像。
補足ではこうあった。
その家の家族、親二人の遺体が見つかり、その子供の遺体が見つからず行方不明だと。
その家族の苗字は…掬羅。
それが分かると智登は流卵の頭を撫でた。
「頑張ったね。」
「……はぃ…」
すると、彼女は泣き出した。
実際どんな気持ちなのか具体的には分からないが、辛いのは分かる。
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