焼きたてフィーリング

作者チョロまつ

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プロローグ

7話 今残せるもの

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辛いだろうが事実を話さなければならない。
智登は、その気にはなっていなかったが彼女に身に起こった出来事を話した。
「やっぱり…そうなんですね…」
彼女は思い出せないといいつつも、夢のように覚えていた。
というより…事実にしたくなかったのだろう。
「夢じゃ…ないのかな…」
「…」
家、家族を失った彼女の顔に、光は無かった。
「物心ついてるからかな…」
ふと、智登は言葉をもらした。
その言葉に流卵は食いついた。
「…と、言いうと…?」
「僕は、小さい頃に両親を失った。」
「…!」
実は、智登は寿命の早い二人の子供。
両親は早々と亡くなってしまった。
その歳は、20歳近くだったらしい。
物心のついていない智登には大きな悲しみは無かった。
しかし…
「そこからかな、笑わなくなったのは。おまけに怒りも、泣いたりもせずにいたら、表情を忘れた。」
彼が無表情である理由。
人生にやる気を感じなくなった智登は表情を失った。
表情を失った彼の人生は、表情がある彼の人生とは大違い。
プレゼントを貰って嬉しいのに、伝わらない。
相手を注意しているのに、伝わらない。
面白くて、笑っているはずなのに、伝わらない。
伝わらない辛さは酷く心を痛める。
智登は昔の事を語った。
「よく生きていけましたね…私なら死んでいるかもです…」
「僕は男だ。そんな簡単に心は折れない。」

そういって智登は流卵に近付いた。
「でも…」
「…っ!?ふふふふっ…ははははっ…!やめてっ…ください…っ…ははは!」
智登は流卵の体を思う存分にくすぐった。
「貴女はいい顔ができる。その顔を忘れないでいてよ。」
「……はいっ…!」
光の無い彼女に、再び光が戻った。
それはただ体をくすぐったからじゃないのが、流卵にも分かった。

真っ暗な森にいる二人は、どことなくまわりよりも明るく見えた。
「あの…家はここから近いんですか…?」
「うん、すぐ近くだよ。」
流卵は智登の家の場所を聞いた。
「今夜、泊めてもらえないですか…?」
現状、頼めるのが智登しかいない流卵。
「いいよ、ちょっとじっとしてて…」
「えっ…ちょっ…!」
YESと答えた智登は流卵を抱えあげた。
お姫様抱っこで。
「……っ!!」
照れて顔が真っ赤になる流卵。
それを気にせず家へと戻る智登。

「遅かったねー…って…あらぁ!?」
智登の…義理の母は流卵を見て当然驚いた。
「道で倒れてた、もう今日は遅いし、明日警察へ行こうと思う。今日はここで休む。」
「そっか。じゃぁ部屋へ案内してあげて。」
母親も許可をくれたので、智登は流卵を抱き抱えたまま自分の部屋へ向かった。

「えと…後回しでいいんですか…?」
「警察?…いいんじゃない?」
と、余裕で智登がいうのも、智登が警察のお偉いさんと知り合いだからである。
なぜ知り合いなのかは、彼の両親によるものらしい。

二人は一度休み、明日が来るのを待った…
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