焼きたてフィーリング

プロローグ

１０話 仲たがいの危機

「もう大丈夫、大丈夫なんだよ流卵。」
「……」
模子は流卵を安心させようとする。

「だから聞いて下さい模子…ご主人様は…」
「…」
模子は黙って流卵の頭を撫でる。
「…安心して、もう流卵を危険な目には合わせたりしないから…！」
話を中断され、言い返そうと思った流卵だが…
こんなに心配してくれてるのに申し訳ない気がしてなかなか言い出せない。

「じゃ、私もういかなきゃ…流卵、何かあったらすぐ言ってよ。」
「あっ…」
模子は手を降りながら学校に向かった。

「友達思いのいい子じゃない。」
「多々先輩…」
すると多々がやってきた。
「はい…いい子なんですが…でも…どうすれば…」
その優しさが仇となるとはこの事かもしれない。
「そーねぇー…」
これには深く頭を悩ます多々。
「扶蓮君は…場の展開流しとしては正しい判断かもしれないけど…後が厳しいわね…」
「うぅ…」
本気で悩む流卵。
多々の一言でさらに悩む事となる。
「あとあの子、真に受けやすいから、もしかしたらもう話してくれないかもしれないわ。」
「えぇ…っ！？」
真に受ける、というよりはすねやすいのである。
昔馴染みの菜羅ですら、喧嘩したら2週間くらいも口をきかなかったんだとか。
菜羅の必死の声かけにより関係は戻ったが、少々面倒である。
その事実を知った流卵は深く頭を抱えた。
「まぁ…とりあえず学校に行って話してみたら？」
「…分かりました。」
気を落としながら重い足取りで学校に向かった。

教室に入る。
智登の席に、智登は居た。
「あっあの…ご主人様…？」
恐る恐る声をかける流卵。
智登は見向きもしない。
「申し訳ありませんっ！あの子にも悪気は無いんですが…！ちゃんと私が説得していれば…！」
必死に頭を下げる流卵。
智登はまるで聞いていないかのように教材を取り出した。
そしておもむろに勉強をし始めた。
多々の言っていた事は本当だった。
しかし、流卵もここまでだとは思っていなかった。
「…申し訳ありませんっ！」
必死で謝るが、智登の反応は無い。
だんだん不安になってくる。
流卵の目からは自然と涙が出てきた。

「…もういいです！知りませんっ！」
不意に吐いてしまった。
どうしようも出来ず、教室を出ていった。
言った時と同時に後悔が出てきた。

「…いくらなんでも酷いんじゃない？」
「…」
遠くから見ていた秋花は智登に話しかけに行った。
「すねたくなるのは分かるけど…貴方らしくないわよ？」
秋花は流卵と一緒にいない智登に違和感を持ち、話しかけて事情を知っている。
「…でも……」
「…子供ね。」
秋花もちょっと呆れてしまった。
「『男』なんでしょ？シャキっとしてっ！」
「…そうだな…！」
秋花に一押しされた智登。

智登は流卵の走っていた方向へ駆けた。

「やっぱり…ライバルはいないとね。」
秋花は走っていく智登を見ながら呟いた。