焼きたてフィーリング

４章 家庭

３１話 兄弟

「あぁっ兄さん達！ごめんなさい…！Gが…！」
「cockroach？」
「素直にゴキ○リって言えよ…」
どうやらキッチンにあの黒いくて速い存在が現れたそうだ。

「スミマセン…！私虫は本当に苦手で…！」
流卵はその場にある椅子に正座して避難している。
「cockroachどこー」
智登は周りを見渡し例の虫を探している。

「頑張って智登君達！」
「ふっ…ふれー」
部屋の入り口で覗くかのように模子と秋花が見ていた。

その後、智登によって黒ブツは捕獲された。
そして何事もなかったようにして夕食が出来上がり、６人は夕食にした。

「それにしても綺麗な妹さんだねー、教えてくれても良かったのに。」
模子は菜羅に妹がいることを今日はじめて知った。
「まー昔は黙ってしつこくついてくるやつだったからなー…」
「っ…兄さん…」
「なにそれかわいい。」
昔の家庭事情に話が盛り上がる。

「そういやさ、皆兄弟いるの？」
途中で疑問に思った菜羅が言った。

元からの知り合いもいるが、まだ知り合ったばっかの5人。
せっかくなので聞いてみた。

「私一人っ子です。」
「私もー」
流卵と模子は一人っ子だった。
「流卵とはもう姉妹感覚だったねー」
それぞれ兄弟もいない二人、流卵が弱虫で模子がそれを支えるいい姉妹関係的な何かがあった。

「私はお兄ちゃんが一人いるわ。」
秋花は兄がいるようだ。

「私は日本人寄りだけど、お兄ちゃんはママに似た外人っぽい。」
「へー、って外人？」
智登は流れそうになった言葉に違和感を感じた。

「うん、ママはイギリス出身だし。」
「えっ！？」
初めて知った意外な事実に驚かない者はいなかった。

「どおりで金髪なわけだね…」
文音が秋花の髪を眺めた。
「皆染めてるっていうんだもん、地毛なのに…」
秋花が昔を振り替える。


『…染めてんの？カッコワルッ、独り身がなんかでしゃばってるー』
「っ…！？」
『何見てんのサ？何かいいたいならもうちょっとちゃんとした格好で言ってよね。』


「…秋花ちゃん？」
「あっ…」
隣にいた模子に言葉をかけられて意識を戻った秋花。
「ごめんなさい…ちょっと…ね。」
少し冷や汗をかいているようにも見えた。

「何でアイツのことなんて思い出したのかしら…」
その言葉は誰にも聞こえない小声だった。


「…一旦シーちゃんは落ち着かせて、智登はどうだ？」
切りを見て菜羅は智登に話を振った。
「んー？兄弟じゃないけどいとこはいるよー。」
「そうなん？」
智登の家庭事情は菜羅も聞いたことがなかった。

「何人もいるけど一番関わったのは一つ上の姉ちゃん。」
智登の家系はいとこどうしに知り合いが多い。
そのため智登はいとこを何人も把握している。
その一人が一人上のお姉さん、智登と同じで早くして両親を失った。

「いまどこにいるん？」
「星野さんとこー。なんだけど…」
星野とは智登の知り合っている警察の人だ。

「今会っとる？」
「なんかねー、去年姿を消した。」
「何それ。」
昔馴染みで智登も最近まで関わっていたが、ある日突然と姿を消したそうだ。いわゆる行方不明だ。
その事情は星野にも分かっていない。

「見つかるといいな。」
「だね。」
智登達の話が終わりそうな頃にまわりは夕食を食べ終わっていた。

「よしっ！じゃぁ片付けますねー！」

流卵は全員の食器を持ってキッチンへ向かった。