焼きたてフィーリング

５章 夏休みの休息お出掛け！～前編～

３３話 社畜？

キーンコーンカーンコーン
聞き慣れたチャイムの音で智登は目を覚ました。

「もーっ、ご主人様また寝ていらしたんですかー？」
流卵がノートを持ってやってきた。

「だって昨日結構お客さん来たじゃん？疲れたー」
昨日は久々に混んだ日で忙しかった。
「ははは…まぁこちらも七夕ケーキとか出しましたからね…」
理由は七夕だったこと。
あまり七夕にケーキを食べるのは無いかもしれないが、智登の店では出している。

「…でも昨日が忙しかった事は分かりますが、忙しく無い日だって寝てるじゃないですか！」
最近、智登の授業中に寝ているのが気になる流卵。
面倒くさそうな顔を向ける智登。

「僕は流卵が綺麗にノートを書いてくれるからこうやって遠回しに頼んでいるだけなんだよ？」
「うぐっ…でっ…でも成績に影響されますので睡眠は控えてください！」
智登の言葉に翻弄されそうになった流卵、しかし持ちこたえた。
恐らく模子なら許してしまいそうだ。

「ケチー」
「そんな事言わないでくださいよぉ…」
正論を言っているのは確かに流卵なのだが、少し罪悪感を持ってしまう。

「次、寝ないでくださいね、これ、さっきの授業のです。」
「thanks。」
流卵はノートの切れ端とのりを渡して別の席に向かった。

「すー…すー…」
向かった席では、チャイムにも動じず秋花が健やかに寝ていた。

「秋花様、秋花様！」
「ひゃいっ！？」
流卵の声に驚いた秋花、妙な声をあげた。

「あぁ流卵…ってあたし寝てた！？しまった…！」
今、自分の現状に気付いた秋花。
秋花も昨日は仕事に参加しており、忙しい日を過ごしたのでさぞ疲れていたのであろう。

「私の良ければどうぞっ。」
「さっきの授業のノート…？書いてくれたんだ！ありがとっ！」
もしものために流卵は秋花用のノートも書いていた。
…つまり、流卵は結構大変な事をしていることになる。

「ありがたいけど…流卵のノートは大丈夫なの？」
「えぇ、大丈夫ですよ。」
「それでこのノートの見やすさとはね…」
つまり、3回もノートを書いていることになる。
それでもこの秋花用のノート、見ただけでも分かるこの見やすさときたらない。
しかも見やすさに関してはもうクラス1と言ってもいいほどのもの。
それを３回も書くという…流卵、恐ろしい子…！

「では失礼しますね。」
「うん、ありがとね。」
流卵は秋花の元を離れ、また智登の席にやってきた。
しかし、席を離した隙に…
「ぐがー」
すでに智登は寝ていた。
「って…すぐ寝ようとしないでくださーい！！」

その大声は教室内に響いた。

…ちなみに、林檎台学園は梨山高校より偏差値が高い。
流卵は基本校内に張り出される順位表に必ず一回は乗る身なのだが、他の二人は全然出ていない。
智登の順位に関しては200人中150位くらいである。

「流卵さんまた100点ですか…！」
「頑張りました！」
流卵の点数は先生にも驚かれるほど。

そんな彼女、智登によると以前よりスケジュールに自由がなさすぎるらしい…