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二匹の子猫
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空から小さな石が降ってきた。
表面は黒く焦げ、亀裂の入った部分が赤く燃えている。
間をおいてポツポツと、森のいたるところに噴石が落ちる音がする。
全身汗でびっしょりになりながら走っている私。
ふと、このまま山を下りていいのかと疑問に思った。
家に両親はいないし、車もない。
下山する前に地表は火砕流でおおわれるかもしれないし、木の陰に隠れて噴石をやり過ごしたほうがいいんじゃないか?
一度足を止める。
と、どこからか猫の鳴き声がした。右手側の茂みから黒毛の子猫が現れる。にゃあにゃあと繰り返し鳴いている。
「おいで、一緒に隠れよう」
落ちてくる石に怖がっているのだと思い、腰を落とし両手を広げる。
しかし、子猫は後ずさりし、しきりに鳴きだした。おびえているのではなく何かを訴えているようだった。
そこで茂みの奥で、何か白いものが動いていることに気づく。
傾斜に生えた草木をかき分けると、それが白い毛並みの子猫が倒れていた。
「ひどい怪我!」
子猫の腹部から血が流れ、小さな後ろ足まで真っ赤に染め上げていた。
急いで救急道具を取り出し、止血する。手を器の形にして水を与えると、横たわったまま、小指ほどの舌で飲んでくれた。
息が浅い。このままではこの子は死んでしまうかもしれない。
わずかに体を震わす子猫に、黒猫が心配そうに近寄る。
私は覚悟を決めた。この子たちと共に降りようと。
中身をすべて放ったリュックに、二匹の猫を入れる。一瞬親猫のことを考えたが、よく見ると白猫と黒猫の種が違っていた。
おそらく最近捨てられたのだろう。黒猫に虫を与えようとしたがそっぽを向かれたし。
ズボンのポケットに救急セットをねじ込み、再び歩を進める。
急がなければならないが、転倒しないよう十分注意をする必要がある。
獣道を抜け、広い山道に出た。あともう少しだ。
開いたチャックから、中をのぞくと黒猫が白猫の顔をなめていた。少し回復したのか、白猫は鬱陶しそうに前足をもぞもぞと動かしている。
尊い光景に、自宅でじゃれあう二匹の姿を妄想した。名前は何にしよう。
(クロとシロ?そのまんますぎるか?いや、シンプルイズザベストとも言う。決まりだ。)
そしてついに、出口が見え…。
突如、足に電流が走った。立つことができず、膝から崩れ落ちる。
咄嗟にリュックを体の上に乗せ、猫は地面との衝突を免れた。
「うぅ…ああぁ!がああぁ!!」
意識が飛ぶほどの痛みが、下半身を襲う。
右の太ももに大きな穴が開いていた。血がどくどくと流れ出している。
必死に包帯を巻くが、止まる気配がない。
そばには、握りこぶし大の噴石が転がっていた。
手に力が入らない、視界がぼやけ出す。
ここで…倒れちゃ…だめだ。みんな…
何とか正気を保とうとするが、もはや限界だった。
濡れた頬に灰色の雪が舞い落ちる。それを、クロがそっと舐めた。
表面は黒く焦げ、亀裂の入った部分が赤く燃えている。
間をおいてポツポツと、森のいたるところに噴石が落ちる音がする。
全身汗でびっしょりになりながら走っている私。
ふと、このまま山を下りていいのかと疑問に思った。
家に両親はいないし、車もない。
下山する前に地表は火砕流でおおわれるかもしれないし、木の陰に隠れて噴石をやり過ごしたほうがいいんじゃないか?
一度足を止める。
と、どこからか猫の鳴き声がした。右手側の茂みから黒毛の子猫が現れる。にゃあにゃあと繰り返し鳴いている。
「おいで、一緒に隠れよう」
落ちてくる石に怖がっているのだと思い、腰を落とし両手を広げる。
しかし、子猫は後ずさりし、しきりに鳴きだした。おびえているのではなく何かを訴えているようだった。
そこで茂みの奥で、何か白いものが動いていることに気づく。
傾斜に生えた草木をかき分けると、それが白い毛並みの子猫が倒れていた。
「ひどい怪我!」
子猫の腹部から血が流れ、小さな後ろ足まで真っ赤に染め上げていた。
急いで救急道具を取り出し、止血する。手を器の形にして水を与えると、横たわったまま、小指ほどの舌で飲んでくれた。
息が浅い。このままではこの子は死んでしまうかもしれない。
わずかに体を震わす子猫に、黒猫が心配そうに近寄る。
私は覚悟を決めた。この子たちと共に降りようと。
中身をすべて放ったリュックに、二匹の猫を入れる。一瞬親猫のことを考えたが、よく見ると白猫と黒猫の種が違っていた。
おそらく最近捨てられたのだろう。黒猫に虫を与えようとしたがそっぽを向かれたし。
ズボンのポケットに救急セットをねじ込み、再び歩を進める。
急がなければならないが、転倒しないよう十分注意をする必要がある。
獣道を抜け、広い山道に出た。あともう少しだ。
開いたチャックから、中をのぞくと黒猫が白猫の顔をなめていた。少し回復したのか、白猫は鬱陶しそうに前足をもぞもぞと動かしている。
尊い光景に、自宅でじゃれあう二匹の姿を妄想した。名前は何にしよう。
(クロとシロ?そのまんますぎるか?いや、シンプルイズザベストとも言う。決まりだ。)
そしてついに、出口が見え…。
突如、足に電流が走った。立つことができず、膝から崩れ落ちる。
咄嗟にリュックを体の上に乗せ、猫は地面との衝突を免れた。
「うぅ…ああぁ!がああぁ!!」
意識が飛ぶほどの痛みが、下半身を襲う。
右の太ももに大きな穴が開いていた。血がどくどくと流れ出している。
必死に包帯を巻くが、止まる気配がない。
そばには、握りこぶし大の噴石が転がっていた。
手に力が入らない、視界がぼやけ出す。
ここで…倒れちゃ…だめだ。みんな…
何とか正気を保とうとするが、もはや限界だった。
濡れた頬に灰色の雪が舞い落ちる。それを、クロがそっと舐めた。
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