セクシャルメイド!~女装は彼女攻略の第一歩!?~

ふり

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1章

07 努力の結果

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6



 それからさらに数日後の正午になる数分前。
 この日、豪篤は大寝坊をしていた。
 演技の練習を夜通ししていたのだろう。音楽プレーヤーから延びたイヤホンが、豪篤の両耳に突き刺さっている。
 ついでに何を思ったか、寝る前にカツラをつけて眠ってしまったらしい。
 音楽プレーヤーのバッテリー残量が、画面上で点滅している。充電しないと何も聴けなくなってしまうサインなのだが、持ち主が寝ていればそんなことに気づくはずもない。
 ろうそくの火が消えるように、とうとう音楽プレーヤーの電源が落ちた。同時に再生されていた音源の供給が遮断され、聴こえなくなった。
 数秒後、目覚まし時計の長針と短針が合わさる。正午になった瞬間に豪篤の目がぱっちり開かれた。
 体勢をうつぶせにして枕元の目覚まし時計を一瞥する。

「あちゃあ、もう昼か……久々にやっちゃったなぁ。……ん?」

 自分の発した声に違和感を感じ、

「あ、あ、あ……」

 おそるおそる言葉を途切れさせながら、声を出してみる。

(マジか、マジかよッ!)

 何かを確信した豪篤は、ふとんを蹴り飛ばしてすばやく跳ね起きた。

「あいうえお。かきくけこ。あめんぼあかいなあいうえお。隣の客はよかく」

 最後は噛んでしまったが、そんな些細なことは気にならなかった。
 おととい苦労して覚えた声とほとんど同じだった。キャピキャピしているわけでもなく、ハスキーでもない。それこそ、女らしい言葉遣いかつ明るい感じで、ときには誘惑したり、でもふだん甘えた感じで接するキャラ――ができそうな声でもあった。
 豪篤は安定して女声を出せることに、小躍りしたいぐらいの気持ちが湧き上がる。

「よっしゃあ! やっとできた―――ッ!」

 カツラを脱ぎ捨て勝利の雄たけびを上げる。しばらく喜んでいたが、あることに気づいた。

「あれ、声が元通りになってる? いつからだ……?」

 頭の中で起こった過程をたどってみる。ひとつのシーンが思い浮かんできた。

「カツラを脱ぎ捨てた瞬間からパッと戻ったような……」

 ポン、と拳で手のひらをたたく。

「そうか、カツラを着ければ……!」

 急いでカツラを装着する。

「あ、あ、あー。テストテストー」

 そこまで言ってカツラをはずす。

「あ、あ、あー。テストテストー。……元通りだ。なーんだ、最初からこうすればよかったんだ」

 一気に気が楽になった豪篤は、安堵の息をついた。

「よし、今度はカツラをつけてるときとつけてないときのスイッチの切り替えと、演技の練習をするか!」

 豪篤の女装時のキャラが、着々と完成に近づきつつあった。



 * * *



 帰ってきた彩乃に、女装姿――といってもメイクとカツラだけで、上下ジャージ姿――で演技を見せている豪篤。
 豪篤の飲み込みの早さに、彩乃はびっくりしながらも感心していた。
 演技は主に喜怒哀楽を軸とするものであったが、見事に言葉と動きが高いレベルで合わさっていたのである。
 カツラをはずした豪篤は、目が点になっている彩乃に終わりを告げる。

「姉貴、どうだった?」
「ただただすごいとしか言いようがないね。けど……けどね、これに浮かれてちゃ、まだまだダメなんだから。もっともーっと、高いレベルに挑戦していかないと! 驕りは最大の敵だよ! わかった?」

 彩乃は、豪篤が天狗にならないように釘を刺す。

「うん、そうだな! 気をつけるよ。あー、それとな、姉貴」

 豪篤が神妙な表情をして彩乃を見つめる。

「参考にためにと、姉貴の部屋に入って見させてもらったんだけど、ああいう薄くて面積が狭くて派手な色はちょっとな……」
「ひ、人の部屋に入って下着見て、しかもアドバイスまでくれるなんていい根性してるねぇ……!」

 彩乃の双眸が怒りで燃え上がっている。指を鳴らし、不届き者への攻撃態勢にすぐにでも移れそうだ。

「いや、そうじゃない! まあ、待って! とにかく、俺はふんどしを穿くことにした!」

 攻撃を加えられる前に、豪篤は早口で簡潔に言い切った。

「ふんどし? ふんどしってあの……?」

 怒りの感情が吹き飛び、彩乃は確認するようにゆっくり問いかける。

「あのふんどし! 祭りのときに野郎が締めてるあれ!」
「メイド服の下に着けるの?」
「ネットで調べたら、締め付け感がなくて簡単につけられるものがあったんだ! それがこれ!」

 豪篤はポケットからふんどしを取り出して彩乃に手渡す。
 彩乃は顔が引きつらせ、完全に気後れしていた。が、男の長方形で尻に食い込ませるものでないことがわかった。男物と違って丸みを帯びたデザインに、関心を寄せながら感想を述べた。

「これならアンタの言うとおり、締め付け感もなくて普通の下着として着けられそう……」
「そうだろ、そうだろ! 俺が穿いててよかったら、姉貴も穿けばいいさ!」
「嫌」
「即答かよ」
「と・も・か・く!」

 ソファから体を前に投げるようにして立ち上がり、彩乃はふんどしを豪篤に返しながら顔を近づけた。

「これから電話して、明日面接してくれるかどうか訊いてみな。今のアンタならいけるからっ」
「わかった、してくる!」

 豪篤は以前に行った『メイドォール』に電話をかけるためリビングから出るが、三分もしないうちに戻ってきた。

「早いね。いいって?」

 ニヤニヤしている豪篤に、軽い調子で彩乃は訊く。

「明日の午前10時に面接をするってさ。格好は普段着でいいけど、化粧品は持参してほしいんだと」
「いよいよね」
「ああ、俺の全力をぶつけてくる!」
「よし、よく言ったっ。それでこそ男だ! 今夜はアンタの好きなカレーにしてあげる!」
「ありがとう! 俺も手伝うよ。……あ、先に化粧を落としてくるわ!」

 この日、決戦――面接――の日程が決まり、熱意を燃やす豪篤だった。

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