セクシャルメイド!~女装は彼女攻略の第一歩!?~

ふり

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5章

06 優美の乙女心

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 修助のふわりとした笑顔が広がる。豪篤は何かに憑りつかれたかのごとく、見入ってしまった。

 ――ちょっと、早く目をそらしなさい!
(は!?)

 不自然さが残らないよう、一度微笑み返してからどんぶりを持つと、一気に天丼の残りを口に掻き込んだ。

(あぶねえ、あぶねえ。俺まで修にぞっこんになるところだったぜ)
 ――べつに、お礼なんか言わなくていいわよ! その代わり、抹茶パフェを食べたいわ。
(わかったよ。ありがとうな)
 ――ふんっ!

 豪篤は空になったどんぶりを置くと、ウェイトレスを呼んだ。

「すいません、抹茶パフェを追加で」
「ああでも、デートコースはどうしようか」

 修助は肝心なことに気づく。

「美喜ちゃん、本物の女の子としてはどこに行きたい?」
「そうですねぇ……スタンダードに喫茶店なんかいいかもしれません」
「あれ、犬のデートの話は?」

 抹茶パフェに夢中だった豪篤の間の抜けた声である。察しが悪い奴だなと言わんばかりに、浩介が舌打ちをした。

「バカ、それはもういいんだよ」
「おおー、いいねーいいねー」

 茂勝が、フライドポテトをつまみながら賛成する。浩介は豪篤が食べている抹茶パフェを一瞥した。

「抹茶パフェがうまい店を知ってるぞ。そこに行ってくればいい」
「え? いや、俺はとくに好きでもなんでもないんですが……抹茶って苦いし」
「バーカ、なんでおまえが食うんだよ」
「あ、なるほど」
「ったく」
「とりあえず、喫茶店と。さすがに同じ店はまずいから、あとで本番デート用に、もう一軒教えてね、浩さん」
「ああ」
「さて美喜さん、次はどこに行きたい?」
「んー、正直どこでもいいんですけど……映画とかはどうです?」
「いやー、ここは修ちゃんの劇団でしょ!」

 茂勝の何気ないひと言に、豪篤が乗っかる。

「お、いいですね。どんな劇をやってるか気になってたんだ」
「気にしてくれてるのはうれしいんだけど、今は今度やるやつの稽古が真っ盛りでね。ちょうどやってないんだよね」
「そうか。それは残念だ」
「でも、知り合いの劇団が今公演中なんだよ。いらないのにチケットを押し付けられちゃったし、本番の渚さんとのデートのときに、行ってくればいいよ」
「擬似デートのときは行かないのか?」
「渚さんといっしょに観たほうがいい内容なんだよ」
「ほうほう。じゃ、そこは当日適当に決めることにするか」
「わかった。さてと、最後に行く所はどうしよう。美喜さんならどこに行きたい?」
「豪篤くんがフラれたという土手なんかどうです? 渚だって何か感じ取ってくれると思いますし」
「ああ、いいですね。ということで豪(たけ)ちゃん」

 修助の手が伸びてきて豪篤の肩に置かれる。

「わかったよわかった。擬似でも本番でも行けばいいんだろ!」

 本人の中で強いトラウマとして残っているのだろう。豪篤は半ばヤケ気味に反応するのだった。
 


 時間は現在に戻る。

「お待たせしましたー、抹茶パフェです」

 ウェイトレスが抹茶パフェを修助、優美の順に置いていく。
 修助は微笑んで頭を下げた。

「ありがとうございますー」

 優美は何も言わず頭をぺこりと下げた。ウェイトレスが営業スマイルをくずさず去っていく。

「たまには普通の喫茶店もいいもんだね」
「……」
 ――おいおい、反応してやれよ。
(うっさい)
「さ、食べよう? アイス溶けちゃうよ」
 ――いつまでも恥ずかしがってんじゃねえよ。中学生かっつーの。
「うっさい! ……あっ」

 優美がハッとして顔を上げる。困ったように笑みを広げている修助がそこにはいた。

「……さっきはごめんね。ああするしか方法がないと思ったから」

 気恥ずかしくなって目をそらす。体をもじもじさせながら、首をふるふると振る。

「修は謝らなくていいのよ。私も大人気ないこと言ってしまって……ごめんなさい」
「ううん、気にしないで。それより食べようよ。豪ちゃんも僕が付いてるから、心配しないで」
 ――すまんな。頼む。

 修助には伝わらないと思ったが、謝らないといけないと豪篤は思った。しかし、それが気に食わないといったように優美は、ふんっと鼻を鳴らす。

「豪ちゃんはなんて?」
「『すまんな。頼む』だって」
「アハハハ、頼まれました」

 声を挙げて笑う修助に、優美の胸がひと際大きく高鳴った。そのことを隠すよう、抹茶パフェのアイスを口に押し込めた。
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