アルケミア・オンライン

メビウス

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第1章 錬金術の世界

第5話 恩返し、そして…

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ーーー付与強化に成功しました。『初心者の木刀』は『銘刀アルバノ』に強化されました。

ーーー職業レベルがアップしました。(Lv.3→4)

「おお、見た目変化ないけど名前が大きく変わった!」

「確かに、さっきのとは大差ないように見えるけど…見て、刀身が少し太くなっているよ。それに柄の部分にアルバノの銘が彫られている」

本当だ、いつの間にか銘が刻まれていた。刀身が太くなったと春風は言うが…うん、素人目にはさっぱり分からない。こういうのはずっと刀と接してきた人ならではの感性なのかもしれない。と、見た目じゃなくて性能を見ないと。

『銘刀アルバノ』☆3 ATK+5 DEX+5 地属性錬金術ダメージ5%増
売却不可。『初心者の木刀』に『アルバノの木の若枝』を重ね刀身を強化した刀。物打ちで攻撃した時、必ず会心攻撃になる。大地の恵みが刀身に行き渡っており、地属性との親和性が高い。『初心者の木刀』を元にしているため、何回使っても壊れない。

……なんか、色々と凄い武器が出来上がってしまった。レア素材のおかげか、武器のレア度は2を通り越して3まで上がった。威力は精々上がれば良いや程度だったのがまさかの確定会心攻撃とは。会心攻撃は通常のATKの2倍のダメージを、相手のDEF守備力を無視して与える。威力補正なんてレベルじゃない、正真正銘のぶっ壊れ武器だ。

因みにATKは自身のSTRと武器のATKの合計。DEFは自身のVITと防具のDEFの合計である。そして通常のダメージ計算は、乱数は置いといて単純にATK-DEFなのだが、会心攻撃では相手のDEFを参照しないためATK×2-0という計算になる。本来会心率はDEX÷2で算出されるが、春風がこの武器を使えばPSプレイヤースキルでほぼ100%なので何の関係もない。

「ありがとう!まさかこんなに良い物を作ってもらえるなんて…!ずっと大切にするよ!本当にありがとう!」

そう言って刀を大事そうに抱えて、何度も頭を下げる春風。余程嬉しかったのだろうか。売却不可に加え耐久力無限なので倉庫の隅でも大切に保管されるだろうが、声色的に違うだろう。こんなに喜んで貰えると職人冥利に尽きるな。

「あの、プレアデス殿…。借りに借りを重ねるみたいで申し訳ないんだけど、もし良かったらその…これからもボクの武器を、こうして強化してくれないかな…?」

何と、春風は今後も僕の付与強化を御所望のようだ。まあ確かにこのスキルは僕だけのものだし、大々的にスキルで売り出したら何が起こるか分からない。1日の使用制限も考えれば、僕の腕を頼ってくれる大切な人のために使うのが得策だよね?じゃあ、断る理由もないかな…。

「顔を上げて、春風。むしろ僕の方からお願いしたいくらいだったし、勿論承るよ。流石にお互いやることもあるだろうし、ずっと一緒にプレイするのは難しいかもだけど、良ければ装備の強化以外でも、一緒にプレイできたらいいなって…」

「勿論!だってボク達、友達でしょ?」

恐らくゲーム内のフレンドという関係などではなく、真の意味での友達。そういう意味で言ってくれているんだろう。思えば、春風は会って短い僕にリアルの事情を教えてくれたり、やったこともない鍛治の腕を信じてくれたりした。友達を作るのが上手いと言えばそれまでなんだろうが、僕だからこその行動だったならば嬉しいな。

なんて、独りよがりな願望を抱きながら眺める春風の笑顔は、この世界で見た何よりも綺麗だった。

………

あの後、お互い一度ログアウトし、現実での用事を済ませた後再集合することになった。VR機を頭から外した昴は、暫く胸の高鳴りが抑えられずにいた。楽しみにしていた『アルケミア・オンライン』への初ログイン。勿論それが一番大きいのだが。

「……友達、か」

しかも、真の意味で友達と暗に示してくれた。元より引っ込み思案で友達がそう多くなかったため、こうして友達関係が認められたことに人一倍嬉しいと感じてしまうのだった。

逸る気持ちを胸にしまいつつ、昼食を食べるために部屋を出て階段を降りる。現在の時刻は12:00。ゲーム開始から3時間経過。あの世界では現実時間の3倍の速さで時間が流れる。再ログインする頃には向こうは朝かな。ゲーム内とはいえ8時間も一緒にいれば、友達と言えるくらいに気を許せるのも納得がいく。

因みに、最近のVR機は3倍加速と同時に連続ログイン時間の上限がリアル4時間なのが一般的だ。時間の加速もそうだが、元よりVRというものは脳への負担が大きい。まだVR機が一家に一台レベルで普及する前、こういった制度も何もなかった時、VRゲームのやり過ぎによる依存症や脳の病気を発症することがよくあったのだそう。

特に、フルダイブ技術が確立されて以降、その傾向は加速した。中には四六時中、食事も睡眠も忘れプレイし続けた結果、リアルの身体が衰弱し死亡したという事件もあったという。そこで最大ログイン時間というものをVR機に設け、その上限に近づくと警告、超えた場合は強制ログアウトをさせる機能を搭載することになったのだ。

最初は12時間だったのだが、脳ではないリアルの身体への負担を考えた結果、加速技術の確立と共に制限時間も短縮されていった。因みに、制限時間を設定する構想を提唱し、初めて時間加速技術を確立させたのがIG社なんだとか。それでライセンス料だけで莫大な富を得ることができているのだ。

食事と今日やる夏休みの宿題を済ませ、自室に戻る。現在時刻は13:45、ゲーム内で5時間強経過したところだ。ログアウトした時のゲーム内時間が21:00だったため向こうはまだ早朝。あのゲームのプレイヤーにとっての1日周期は朝7:00でカウントされるようなので、まだ使っていない残り1回分の【付与強化】が間に合う。僕はベッドに横になると、再び電脳世界に意識を飛ばした。
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