アルケミア・オンライン

メビウス

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第2章 その石、危険につき

第1話 お揃いの

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「…よし、こんなもんかな?」

時刻は現在11時。今更寝ている人などもう殆どいないであろうこの時間。あっゲーム内時間だけどね。リアルはもう朝の8時。朝食も摂って準備は万端なのだ。さて、今僕は何をしているのかと言うと。

ーーー統合強化に成功しました。『輝晶石×2』『丈夫な糸×2』『蒼粒石×8』は『蒼穹のタリスマン×2』に統合強化されました。

ーーー職業レベルがアップしました。(Lv.11→13)

ーーー称号《宝石使い》を獲得しました。

そう!サプライズプレゼントの準備だ!何か後ろ2つの通知に水を差されたようだけど。まあいいや、称号の効果は後で見ておこう。それよりも今はプレゼントだ。上手く出来ただろうか?

『蒼穹のタリスマン』☆7 INT+50 毎秒HP5回復 毎秒MP1回復
売価100000G。蒼粒石に含まれるエネルギーを、輝晶石を土台に繋ぎ止めることで安定化させている。エネルギーを活性化させる力を持っている。その輝きは見る者の心を癒す効果があると言われている。

「し、知らねえぇぇぇ……」

僕、知らない。こんな強すぎるアクセサリーなんて知りません。僕はただ、綺麗な組み合わせだと思って作っただけなのに。まさか蒼粒石がそんな凄い石だったなんて知らなかった。《伝説を導く者》の効果で伝説級レジェンダリーアイテムの錬成確率に補正がかかっているからとはいえ、こんな超性能アイテム、そうポンポンと作れるものじゃないよね?それとも、これが普通だったり?それはそれでインフレヤバいけど。

因みに後から知ったことだが、この『蒼粒石』という小さな石の粒々は、元々『蒼龍石』という一つの大きな石だったそう。それから生み出される莫大なエネルギーは、当時の人々の生活を支えていた。ところがある時災いが訪れ、その結果としてバラバラに砕けてしまった。それで残った小さな破片一つ一つが、今の『蒼粒石』なんだとか。

ともかく、見た目以上の性能を持っていることが分かってしまった。見た目自体はダイヤモンドと水晶の中間みたいな石の上に、4つの小さな青い宝石…ラピスラズリのようなものが乗っているという、現実でも高値で売れそうなもの。こういうのは大体見た目重視性能度外視が普通なのだが…どうやら僕が生み出したのは両方重視の欲張り型だったようで。

「これ、凄すぎて受け取れないなんて言われたりしないかな…?いや、刀の件もあるし今更か」

そう1人で勝手に納得すると、僕は今就寝中でNPC扱いになっているハルの隣に潜り込んだ。これでログインしてきたら驚かせてやろう。と、彼女がログインしてくるまで暇なので、僕が昨日作った武器を眺めることに。

『恐牙の破城槌』☆4 ATK+20 対物質系ダメージ100%増
売却不可。石のスパイクに金属をコーティングし、更に硬度と威力が上昇している。また、ミュータントバークウルフの恐牙を新たに追加、刺突攻撃も可能になった。攻撃時に高確率で《出血》を与え、低確率で【吸血】を行う。『初心者の槌』を元にしているため、何回使っても壊れない。

と、こんな感じだ。『ミュータントバークウルフの恐牙』とは、あの時ハルが数秒で2本へし折ってしまったあの牙である。あれをスパイクを付けていなかった側のヘッド部分に付けたのだ。おかげですっかり形が変わり、『初心者の槌』など見る影もない。それだけ牙の部分が大きいのだ。

あ、因みに職業レベルが上がったのは、あの時ハルが変異種を倒した時に入った経験値とサブクエストの達成報酬でプレイヤーレベルが15まで上がったからだ。パーティを組んでいると経験値は全員に分配される。1人1人の取り分が減るというわけでもないので大変お得だ。

もちろん、だからといってスパイクが死んだわけでもない。ペンダントの素材を採った洞窟で取れた金属の破片を、精錬せずにスパイクをコーティングした。本当は絶対に精錬した方が良いのだが、あいにくその手の道具が手元になかったため諦めた。それでも十分すぎる効果を見せてくれたようだが。50%→100%は大きい。

ATKが上がったのは当然として、目玉なのは《出血》と【吸血】だ。まず前者だが、確率が中確率から高確率に上昇。さらに、今までスパイク部分限定だったのがどの部分で攻撃しても《出血》を与えられるようになったのだ。今まで片側でしか攻撃できてなかったのでこれは大きい。そして【吸血】だが、これはスキル説明を見た方が早い。

【吸血】消費MP:10 クールタイム:30秒
攻撃後、与えたダメージの半分HPを回復する。対象が《出血》状態の場合、与えるダメージが2倍になる。

と、普通に吸血を使うとこうなる。しかし、これは僕が獲得したスキルというわけではなく、武器の攻撃の一部として組み込まれた効果。となれば当然、その性質も変化する。実際にスキル説明が出るわけではないがそれっぽく表すと…。

【吸血】消費MP:0 クールタイム:なし
攻撃時、低確率で与えたダメージの半分HPを回復する。対象が《出血》状態の場合、与えるダメージが2倍になる。

ということだ。要するに、能動的に確実に発動することができず運頼みな代わりに、クールタイムもなくMPの消費もなくなった。それでいて効果は変わらず。はっきり言えばぶっ壊れだ。あの精霊刀ですら錬金術の行使に通常の2倍MPを消費しなくてはならないというのに。

とはいえ、それでもあの刀には遠く及ばない。そもそもの出来ることの幅が違いすぎるし、武器の特性上、ハルのようなリアルチーターでなくてはその真価を発揮させられない。まあ、あの武器は完全にハル専用のカスタムをしたからそれで良いのだが。

せめて僕の武器くらいは、堅実な進化を重ねていきたいなと思ったところで、ログイン時特有の光の演出が目に入る。リアルでの朝稽古が終わったようだ。出した武器はしまってと。僕は眩しい演出に耐えながら、ログインしてくるハルの目を真っ直ぐ見据えた。

「うぅん…ふぇ?」

「おはよ」

「うわぁぁぁぁっ!?ど、どうしたの、プレア殿!?」

「あっはは、やっぱ反応いいね。そうだ、ハルにプレゼント」

そう言ってベッドの上に起き上がると、既に驚きのせいか起き上がっているハルに、例のペンダントを手渡した。

「…これって?」

「ほら、この前言ってたじゃん?特殊装備品が付けられるから作るって話」

「あぁ、言ってたね…それで、これがその?」

「うん。気に入ってもらえると良いけど…」

ハルは手の上のそれを、様々な角度から眺めていた。光の当て方を変えて楽しんでいるのだろうか?その目は、光を反射してとてもキラキラと輝いていた。

「いいの!?こんな綺麗なアクセサリー貰っちゃって?」

「勿論、約束だったからね。僕も同じの付けてるからペアルックになっちゃうけど」

「えぇ!?あっ…そうなんだ…ありがと」

僕が2人でお揃いのセットであることを明かすと、ハルは目を逸らしてそう言った。心なしか声のトーンがうわずっていたような気がしたが、気のせいだろうか?まあ、友達とはいえいきなりペアルックはやっぱり恥ずかしいか。僕だって多分そうなるし。

「ほんとにありがと…大切にするね?」

まあ、こんなに喜んでくれてるんだし、いいか。でもそういえば、最近僕ハルの装備品を作っていることが多い気がする。まあ、あの刀なら当分、いや下手したら最後まで強化しなくていいかもだし、次は僕の防具でも育てようかな。【硬化】と【再生】使って似非タンクやるなら、一応防具のDEFを底上げした方が良さそうだし。

ハルの防具は…その後でもいいかな。彼女も【レイジ】でヘイトは取れるけど、彼女の場合攻撃を受けるんじゃなくて受け流したり躱したりするのがメインだから…そう考えればAGI重視の方が良さそうだ。と、このように求められる性質が変わってくるから同時進行では作れないのだ。

「へー、INT上げてくれるんだ。これはありがたいなぁ…え、リジェネ持続回復!?……強くない?これ」

うん、まあーそういう反応になりますよねぇ。僕だって狙ってやったわけじゃないんだけどな。僕ってこのゲームじゃ意外と、この道の才能あるのかな?え、調子乗るなって?……すいません。



プレアデス Lv.14
種族:ホムンクルス/職業:鍛治職人Lv.13
HP:350
MP:95→110(+150)
STR:35
VIT:10
AGI:0
INT:25→30(+50)
RES:0
DEX:30
LUK:25

SP:5→0

頭:なし
胸:初心者の服(上)
右手:恐牙の破城槌
左手:-
脚:初心者の服(下)
足:初心者の靴
特殊:蒼穹のタリスマン

所持金:17400G

満腹度:60%

装備効果:物質特効(100%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒)

称号:《試行錯誤》《木工職人見習い》《伝説を導く者》《宝石使い》

スキル:【統合強化】【硬化】【金属探知】【宝石片弾ジェム・ブラスト
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