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第3章 蒼粒石の秘密
第2話 ギルドマスターからの依頼
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「私はこのギルドを管理している、ガラムウェル・ギルバートだ」
「「よ、よろしくお願いします…」」
言いながら、のっそのっそと歩いて近づいてくる男を前に、僕達は緊張のあまりそれしか言えないのだった。それにしても、ギルドマスター…つまり、このギルドにおける最高権力者ともあろうお方が、僕達なんかに何のご用事だろうか?
「まあ、座りたまえ」
そう言われてちょこんと座る。何だ何だ、これから取り調べでも始まるのだろうか?正直、それくらいのプレッシャーを感じる。僕達、何か悪いことをしただろうか…?
「あ、あの…」
「む?どうした?」
ハルがこの空気に耐えられなくなったのか、つい口走ってしまった。本人はしまったという顔をしながら、ギルドマスターを待たせるわけにもいかず、おずおずと僕達の思いの丈を話すほかなかった。
「ぎ、ギルドマスター様が、何故ボクたちのような一般人に…?」
「ふむ、説明していなかったか。すまんな」
ギルドマスターは、立派な顎髭に手を添えて考える素振りを見せると、側付きに何か耳打ちをした後、膝に手を当て、僕達に向かって話し始めるのだった。
「ここへは、クエストを受注しに来たのだろう?ならば、私から直々に依頼をしようじゃないか」
「僕達のクエストをギルドマスター様が直々に、ですか…?」
「そうだ。何せこのクエストは、其方らがよく知る宝石についてのものだからな」
「…え」
僕は愕然としてしまう。何故、僕達が宝石に精通していると知っているんだ?確かに、今僕の装備品には宝石が含まれるものが2つもある。だが、それだけでは僕達が宝石について詳しいことにはならない。
「ギルドマスター様、失礼ながら、その情報をどこでお聞きしたのでしょうか?」
「はて、それも知らぬか。其方らがあの洞窟で宝石を発掘したことは、私を含むギルド職員の間では有名な噂になっているぞ」
「「ええっ!?」」
ハモった。いやしかし、これは少しマズいかもしれない。多分王都のギルドだし大丈夫だろうが、念のため聞いてみる。
「あの、その情報はプレイヤー…ああ、僕達来訪者の誰にも…?」
「当然だ。秘匿情報だからな。それも、国家機密に匹敵するほどの」
少し、身を乗り出して耳打ちするようにそう告げられる。何てことだ。どうやら、僕がアクセサリー用にと何気なく拾ったこの『蒼粒石』含む宝石達は、国家を揺るがすほどの影響力を持っている代物らしい。今僕達が首にぶら下げているこれが、売価100000Gもする所以がようやく分かった。
僕達がやりすぎだったのは、何も会心攻撃だけに留まらなかったようだ。
「まあ、事態は理解してもらえただろう。そういうわけで、この調査依頼は誰にも任せるわけにはいかんのだよ。唯一、宝石についての詳細な情報を掴んでいる其方ら以外には、な」
そう言って、少し疲れたような表情をしながら、厳重に封をされた大きな封筒を机の上に置いた。恐らく、この中に入っているのが、僕達にしか頼めないメインクエストの内容なのだろう。
「開けてみても?」
「構わん。ここには誰も入ってこない上、使い魔も入れぬよう結界も張っている」
え、使い魔とかいるんだ…まあ、プレイヤーの初期職業にも『テイマー』とかあったし不思議ではないか。そういう使い魔を通して、敵の情報を偵察したりとかするのかな?そもそも、今のこの世界に戦争が起こっているのか分からないし、多分起きてないんだろうけど。
僕達は微かに震える手を抑えて、丁寧に封を開けた。中に入っていたのは、1枚の厚めの紙。その質感から、普通の紙ともかけ離れている。間違いない、めちゃくちゃ良い紙だ。そしてわざわざそんな紙に書いて寄越すということは、中身もそれ相応にヤバい代物なのだろう。読み落としのないよう、注意深く読んでいく。
「……ギルドマスター様、あの…本当にこんな大仕事をボクたちに…?」
「ああ、理由は先程説明した通りだが。無論、我らギルドも最大限手を貸そう。施設は基本自由に使ってもらって構わない。私も、なるべく其方らとの面会を優先する」
「そ、そこまでして頂けるんですね…」
「恐縮する必要はないぞ、プレアデス殿。私としても難しい依頼であることは重々承知しているつもりだ。…それでも、其方ら以外にこの役目を頼むことはできない」
そこまで言うと、ギルドマスターは膝に手を置き、項垂れるように少し頭を下げた。
「すまないが、頼まれてくれないか…?」
まさか、そこまでされるとは。さっきの威圧感は勿論失われてはいないが、それでもそのギャップには驚かされた。流石に、そこまでされて断るほど僕達も意地悪ではない。まあ、元々あんまり断る気は無かったんだけどね。
「勿論です。僕達にお任せ下さい」
「時間はかかるかもしれませんが、必ず完遂してみせます」
「そうか!かたじけない!」
先程よりも勢いよく頭を下げ一礼されると、報酬についての詳細な交渉や人員の確保など、具体的な計画について話し合うことになった。あれ、僕達は普通にクエスト受けに来ただけなんだけど…。
「どうしてこうなったーーッ!!?」
なんて、大声で叫んでみたいものだった。
ーーーレガシークエスト『王都に眠る蒼い石』を受注しました。進捗状況や報酬などの情報はマップ下のウィンドウより確認できます。
ーーーフレンドチャットにガラムウェル・ギルバートが追加されました。
「「よ、よろしくお願いします…」」
言いながら、のっそのっそと歩いて近づいてくる男を前に、僕達は緊張のあまりそれしか言えないのだった。それにしても、ギルドマスター…つまり、このギルドにおける最高権力者ともあろうお方が、僕達なんかに何のご用事だろうか?
「まあ、座りたまえ」
そう言われてちょこんと座る。何だ何だ、これから取り調べでも始まるのだろうか?正直、それくらいのプレッシャーを感じる。僕達、何か悪いことをしただろうか…?
「あ、あの…」
「む?どうした?」
ハルがこの空気に耐えられなくなったのか、つい口走ってしまった。本人はしまったという顔をしながら、ギルドマスターを待たせるわけにもいかず、おずおずと僕達の思いの丈を話すほかなかった。
「ぎ、ギルドマスター様が、何故ボクたちのような一般人に…?」
「ふむ、説明していなかったか。すまんな」
ギルドマスターは、立派な顎髭に手を添えて考える素振りを見せると、側付きに何か耳打ちをした後、膝に手を当て、僕達に向かって話し始めるのだった。
「ここへは、クエストを受注しに来たのだろう?ならば、私から直々に依頼をしようじゃないか」
「僕達のクエストをギルドマスター様が直々に、ですか…?」
「そうだ。何せこのクエストは、其方らがよく知る宝石についてのものだからな」
「…え」
僕は愕然としてしまう。何故、僕達が宝石に精通していると知っているんだ?確かに、今僕の装備品には宝石が含まれるものが2つもある。だが、それだけでは僕達が宝石について詳しいことにはならない。
「ギルドマスター様、失礼ながら、その情報をどこでお聞きしたのでしょうか?」
「はて、それも知らぬか。其方らがあの洞窟で宝石を発掘したことは、私を含むギルド職員の間では有名な噂になっているぞ」
「「ええっ!?」」
ハモった。いやしかし、これは少しマズいかもしれない。多分王都のギルドだし大丈夫だろうが、念のため聞いてみる。
「あの、その情報はプレイヤー…ああ、僕達来訪者の誰にも…?」
「当然だ。秘匿情報だからな。それも、国家機密に匹敵するほどの」
少し、身を乗り出して耳打ちするようにそう告げられる。何てことだ。どうやら、僕がアクセサリー用にと何気なく拾ったこの『蒼粒石』含む宝石達は、国家を揺るがすほどの影響力を持っている代物らしい。今僕達が首にぶら下げているこれが、売価100000Gもする所以がようやく分かった。
僕達がやりすぎだったのは、何も会心攻撃だけに留まらなかったようだ。
「まあ、事態は理解してもらえただろう。そういうわけで、この調査依頼は誰にも任せるわけにはいかんのだよ。唯一、宝石についての詳細な情報を掴んでいる其方ら以外には、な」
そう言って、少し疲れたような表情をしながら、厳重に封をされた大きな封筒を机の上に置いた。恐らく、この中に入っているのが、僕達にしか頼めないメインクエストの内容なのだろう。
「開けてみても?」
「構わん。ここには誰も入ってこない上、使い魔も入れぬよう結界も張っている」
え、使い魔とかいるんだ…まあ、プレイヤーの初期職業にも『テイマー』とかあったし不思議ではないか。そういう使い魔を通して、敵の情報を偵察したりとかするのかな?そもそも、今のこの世界に戦争が起こっているのか分からないし、多分起きてないんだろうけど。
僕達は微かに震える手を抑えて、丁寧に封を開けた。中に入っていたのは、1枚の厚めの紙。その質感から、普通の紙ともかけ離れている。間違いない、めちゃくちゃ良い紙だ。そしてわざわざそんな紙に書いて寄越すということは、中身もそれ相応にヤバい代物なのだろう。読み落としのないよう、注意深く読んでいく。
「……ギルドマスター様、あの…本当にこんな大仕事をボクたちに…?」
「ああ、理由は先程説明した通りだが。無論、我らギルドも最大限手を貸そう。施設は基本自由に使ってもらって構わない。私も、なるべく其方らとの面会を優先する」
「そ、そこまでして頂けるんですね…」
「恐縮する必要はないぞ、プレアデス殿。私としても難しい依頼であることは重々承知しているつもりだ。…それでも、其方ら以外にこの役目を頼むことはできない」
そこまで言うと、ギルドマスターは膝に手を置き、項垂れるように少し頭を下げた。
「すまないが、頼まれてくれないか…?」
まさか、そこまでされるとは。さっきの威圧感は勿論失われてはいないが、それでもそのギャップには驚かされた。流石に、そこまでされて断るほど僕達も意地悪ではない。まあ、元々あんまり断る気は無かったんだけどね。
「勿論です。僕達にお任せ下さい」
「時間はかかるかもしれませんが、必ず完遂してみせます」
「そうか!かたじけない!」
先程よりも勢いよく頭を下げ一礼されると、報酬についての詳細な交渉や人員の確保など、具体的な計画について話し合うことになった。あれ、僕達は普通にクエスト受けに来ただけなんだけど…。
「どうしてこうなったーーッ!!?」
なんて、大声で叫んでみたいものだった。
ーーーレガシークエスト『王都に眠る蒼い石』を受注しました。進捗状況や報酬などの情報はマップ下のウィンドウより確認できます。
ーーーフレンドチャットにガラムウェル・ギルバートが追加されました。
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