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第5章 失われたもの、大切なもの
第9話 当たり前を疑う
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~~side プレアデス~~
「……行ったか」
ホッとため息をつきながら、スキルを解除し影から身を戻す。間一髪だったな。危うく敵の監視システムに見つかるところだった。僕は影の中からそっと覗いたそれを思い出す。……ロボットのような見た目をしていた。それも人型。
どういうことだ?あまりにも文明が進み過ぎている。この世界の文明レベルは、錬金術が発達していること、現実世界にはないマナの影響があることを除けば、精々中世ヨーロッパに毛が生えた程度だろう。所謂普通のファンタジーゲームのそれであって、工業が発達していたり、ましてや機械化が進んでいるわけではない。
しかし、ここはどうだ。この研究所は遥か昔から使われていて、何十年も前に廃棄されたんじゃなかったのか?むしろ表の世界よりずっと、近代化が進んでいると言って良い。初めは何者かが管理しているんだろう程度に思っていたが、いくら何でもこれは異常だ。何かこう、世界の裏側を見せられているような気分に陥る。
「……そういえば、これまで潜ったダンジョンも」
ふと、過去に戦った敵達を思い出す。道中にはその環境に生息しているモンスターがたむろしていたが、ボスはどうだ?平原で戦った変異種は良いとして、王都周辺で、ダンジョンという特定の施設のボスとして君臨していたのは、どれもこれも人工物だったじゃないか。しかも、相当巨大で動かすのも難しそうなものばかりだ。
レイドボスとして戦った錬金巨人はまだ分かる。あれはスロウという明確な開発者がいるし、彼の天才ぶりは僕が一番よく知っている。だが、その前に戦ったロックギガースはどうだ?あれはホムンクルスではなくゴーレムで、スロウは関わっていなかったらしい。
もっと言えば、あの大きさと完成度はスロウの技術でも作れない。彼が手がけたゴーレムの最高傑作はグレンだ。ユノンさん曰く、知能はあったがそこまで巨大というわけでもなかったそう。その点、ロックギガースはグレンの数倍大きいし、各部にみられた内部パーツはどう見てもゴーレムというより、ロボットのそれだった。
スロウに聞いた話では、ホムンクルスは錬成によって核を生み出し、そこにエネルギーを流し続けることで誕生するらしい。つまりヒトや他の動物と同様、核に全ての情報が詰まっていて、そこからエネルギーによって自ら成長するというのだ。そして核さえあれば何度でも再生する。あの時スロウが消滅したのは、その核を破壊したからだった。
一方、ゴーレムは違う。彼らは核を錬成するのではなく、核として用意された器にエネルギーを貯蔵し、それを中心に様々なパーツそれぞれを錬成して付属させていく。だから核に貯蔵できるエネルギー量的にも、制御可能なパーツの重さ的にも、どうしても限界が生じるらしい。スロウの軍勢の中に巨人級のゴーレムが存在しなかったのはそういう理由だった。
ということを鑑みて今思うと、ロックギガースは岩の装甲を身に着けているだけで、その中身は巨大なロボットだったのではないか?と考えられる。何故なら、セイスさんの関節への攻撃で動きが鈍っていたからだ。
ゴーレムやホムンクルスという生命体は、核のエネルギーだけで自由に動ける。しかし、ロボットは各パーツが連動して動かない限りまともな挙動がとれない。だからこそ、駆動部への攻撃はロボットにとっては致命傷になりうるし、逆に核という明確な弱点がない分、完全に動きを停止させるのも難しい。ロボットにはロボットの特徴があるのだ。
実際、この世界におけるダンジョンは、大多数が遺跡や古い施設の跡地だ。そして、その最深部で待ち構えていたボスは、王都周辺の場合半分近くがロックギガースのように巨大なゴーレムだったという情報が出回っている。
スロウですら実現できなかった技術、その結晶が決まって遺跡などに配置されている。勿論、メタ的な視点で運営の好みだと考えるのは簡単だ。しかし、敢えてこの世界の住人の視点に立って考えてみる。この世界の文明は、地形情報とIG社の累積データを基に、高度なAIを搭載したNPC数人にシミュレーションさせて誕生したとされているからだ。
その立場で考えると、今僕達プレイヤーが体感している時間軸よりも遥か昔に、その高度なAIを持つオリジナルのNPCによって直接築かれた古代文明が存在したという可能性が考えられる。そして、今遺跡やこの研究所で稼働しているロボットは、その古代文明において普及していた技術の産物である、と。
勿論、反対に錬金術こそが昔から続いており、一方で秘密裏にロボット工学が発展してきたという線もあり得る。実際こっちの方が、錬金術を主体としたゲームとしては健全な世界観だろう。だが既にスロウという、普通はただのボスとして終わるはずの存在の、メグル・ドリアスという素顔を知ってしまった僕は、見たままの世界を愚直に信じ込むことは出来なくなっていた。
これは蒼粒石と出会い、宝石技術を色々進めていく中で行き着いた僕の自論だが、この世界には「当たり前を疑う」というコンセプトが根底にあると思う。マナに錬金術、今ではめっきり見られなくなった中世ヨーロッパ風の景色など、今僕達プレイヤーが目にしているのは非日常的なものばかりだ。誰もが、その体験を楽しんでいる。
だからこそ、その中に唐突にリアルの日常が紛れ込むと、そこに違和感を覚えてしまう。今がまさにそうだ。VRMMOという革新的なゲームの浸透に呼応するように、リアルでは機械化が進み、自律型ロボットが我が物顔で人間に混じって道を闊歩するようになった。しかし、そのような日常的に当たり前の光景は、この世界ではむしろイレギュラーとなる。
そして僕達人間は、そんなイレギュラーな存在に鋭敏に反応し、時にそれを排斥しようとすることすら厭わない。こういう人間の根底にある一種の共通認識のようなものを、この世界は体現しているんだろう。古代文明という、摩訶不思議である程度秘匿性の高い容れ物にリアルでの日常を封じ込めることで。考えすぎだろうか?
「まあ、どうであれここから先に進まないことには、何も分からないよね」
1人ボソっと呟きながら、動かしていた手を止めて立ち上がる。僕は何も、敵地のど真ん中でただ考え事をしていたわけではない。それを頭の中にBGM的に流しながら、この扉の攻略法を模索していたのだ。そして分かったことがある。それは、生物でなくともこの警備システムは反応するということだ。
これが何を意味するのか。それは、監視カメラによる作動ではないということだ。もしカメラを通してシステムが動くなら、ダミーとして投げた石には反応しないはずだ。しかし、何回か石を色々な角度で投げたところ、いくつかの石がシステムに引っかかり、警備ロボットが動いていた。影の中から石を投げていたので、幸い僕がロボットに見つかることはなかった。
となれば、ロボットを作動させているのは何らかのセンサーによる自動感知システム。そして当然のように、そのセンサーは見た目ではどこにあるか分からない。……厄介だ。センサーの探知する範囲が分からない限りは、例え影の中でも安全とは限らない。それこそ、影と同化した状態の僕ですら探知できるほどの性能があるかもしれない。
だが、今からそれを石投げだけで判断している時間はない。まだカメラによる監視がないとも言い切れないし、いずれロボットがこの一帯を常に屯ろする状態になる可能性だってある。そうなれば探索を断念せざるを得ない。だから、僕も対策になるアイテムを作らせてもらった。
『簡易感光ゴーグル』☆4 DEF+20 光感知(弱)
売価5000G。目に見えないほどの微弱な光を感知し着用者にのみ可視化する。暗闇の中で真価を発揮する。
急ごしらえで作ったためグレードは低く、機能も単純だ。だが、今は肉眼では見えない光さえ感知できれば良いので問題はない。素材には暗闇に棲むモンスターのレアドロップの一つ、眼を使っている。今回も例の如く、ダークスパイダーのドロップ品。本当に、僕の作品はダークスパイダーに支えられていると言っても過言ではない。それくらい汎用性が高いのだ。
ゴーグルとあるが、特殊装備品ではなく頭防具だ。本来はスロットを空ける必要があるため不便なんだろうが、僕は何故か今まで頭防具を使って来なかったうえ、地味に僕の持つどの防具よりもDEFが高いのでむしろアドバンテージだ。
ここの攻略が済んだら、そろそろ全身防具を完成させないとな……と心に思いながら、装着。着け心地悪いな……使わない時は外しておこう。と、そんなことより。僕はこのゴーグルの成果を確かめるため、扉の方を見る。
「……ビンゴだ」
昔スパイ映画を観た時の記憶が活きた。この手のセンサーもカメラも見えない扉の警備システムというのは、大体肉眼では見えないレーザー光が張り巡らされているのが鉄板なのだ。なるほど、横ばいに数本照射されていたのか。これなら普通に通ろうとすれば確実に引っかかるわけだ。
だが、仕掛けが分かってしまえばこっちのものだ。床の表面がお留守だったので、僕はそこの影にダイブ。なるほど、目に見えないような光で作られた微細な影も、潜れる対象になっているらしい。移動を終え、潜影を解除……よし、探知はされてなさそうだ。
「ふぅ、突破完了」
この扉を通るだけで時間を費やしてしまったが……ともかく、これで漸く足を踏み入れることができた。かつて人をホムンクルスに変える悪魔の実験が行われていた、旧王立研究所の地下研究棟第四研究地区。今日、50年以上の時を経て、僕がそのベールを剥がす。ただ、真実を知るために。
「待ってて、スロウ……」
プレアデス Lv.44
種族:ホムンクルス/職業:宝石技師Lv.36
HP:800(+250)
MP:170(+360)
STR:100(+50)
VIT:80(+50)
AGI:0(+50)
INT:50(+120)
RES:0
DEX:30
LUK:30
SP:0
頭…簡易感光ゴーグル
胸…バトラースーツ
右手…噴炎する竜骨牙の戦槌
左手…-
脚…バトラートラウザーズ
足…執事の革靴
特殊…蒼穹のタリスマン
特殊…聖炎筒イフリート
特殊…闇霊のローブ
所持金:197800G
満腹度:40%
装備効果:物質特効(200%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) 付加(火炎) 《火傷》付与(高) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒) 対魔特効 《火傷》無効 発見率70%減 光感知(弱)
称号:《試行錯誤》《伝説を導く者》《読書好き》《宝石採集者》《伝説を錬成する者》《岩砕き》《破壊者》《無慈悲なる一撃》《石工職人見習い》《木工職人の一番弟子》《宝石技師》《禁忌の扉》《炎纏いし者》《運命の赤い糸》《昨日の敵は今日の友》《精霊を宿す者》《神域に至る者》
生産スキルセット(12/12)
【統合強化】【金属探知】【分解】【精錬】【拡大鏡】【簡易調整】【宝石融合】【宝石分解】【宝石変換】【交渉術】【覚醒強化】【宝石加工】
戦闘スキルセット(12/12)(装備中)
【硬化】【宝石片弾】【ジェットファングⅡ】【付加:陽炎柱】【脆弱化】【ジェノサイド】【精霊喚起】【付加:炎獄】【ドラゴンフレイム】【宝石爆烈弾】【退魔の神炎】【幻影化】
チェインスキル:【連鎖爆破】【バーストスマッシュ】【桜花壊塵撃】【ヴォルカニック・ゲイザー】
進行中のクエスト:『王都に眠る蒼い石』『錬金術と歴史の裏側』
「……行ったか」
ホッとため息をつきながら、スキルを解除し影から身を戻す。間一髪だったな。危うく敵の監視システムに見つかるところだった。僕は影の中からそっと覗いたそれを思い出す。……ロボットのような見た目をしていた。それも人型。
どういうことだ?あまりにも文明が進み過ぎている。この世界の文明レベルは、錬金術が発達していること、現実世界にはないマナの影響があることを除けば、精々中世ヨーロッパに毛が生えた程度だろう。所謂普通のファンタジーゲームのそれであって、工業が発達していたり、ましてや機械化が進んでいるわけではない。
しかし、ここはどうだ。この研究所は遥か昔から使われていて、何十年も前に廃棄されたんじゃなかったのか?むしろ表の世界よりずっと、近代化が進んでいると言って良い。初めは何者かが管理しているんだろう程度に思っていたが、いくら何でもこれは異常だ。何かこう、世界の裏側を見せられているような気分に陥る。
「……そういえば、これまで潜ったダンジョンも」
ふと、過去に戦った敵達を思い出す。道中にはその環境に生息しているモンスターがたむろしていたが、ボスはどうだ?平原で戦った変異種は良いとして、王都周辺で、ダンジョンという特定の施設のボスとして君臨していたのは、どれもこれも人工物だったじゃないか。しかも、相当巨大で動かすのも難しそうなものばかりだ。
レイドボスとして戦った錬金巨人はまだ分かる。あれはスロウという明確な開発者がいるし、彼の天才ぶりは僕が一番よく知っている。だが、その前に戦ったロックギガースはどうだ?あれはホムンクルスではなくゴーレムで、スロウは関わっていなかったらしい。
もっと言えば、あの大きさと完成度はスロウの技術でも作れない。彼が手がけたゴーレムの最高傑作はグレンだ。ユノンさん曰く、知能はあったがそこまで巨大というわけでもなかったそう。その点、ロックギガースはグレンの数倍大きいし、各部にみられた内部パーツはどう見てもゴーレムというより、ロボットのそれだった。
スロウに聞いた話では、ホムンクルスは錬成によって核を生み出し、そこにエネルギーを流し続けることで誕生するらしい。つまりヒトや他の動物と同様、核に全ての情報が詰まっていて、そこからエネルギーによって自ら成長するというのだ。そして核さえあれば何度でも再生する。あの時スロウが消滅したのは、その核を破壊したからだった。
一方、ゴーレムは違う。彼らは核を錬成するのではなく、核として用意された器にエネルギーを貯蔵し、それを中心に様々なパーツそれぞれを錬成して付属させていく。だから核に貯蔵できるエネルギー量的にも、制御可能なパーツの重さ的にも、どうしても限界が生じるらしい。スロウの軍勢の中に巨人級のゴーレムが存在しなかったのはそういう理由だった。
ということを鑑みて今思うと、ロックギガースは岩の装甲を身に着けているだけで、その中身は巨大なロボットだったのではないか?と考えられる。何故なら、セイスさんの関節への攻撃で動きが鈍っていたからだ。
ゴーレムやホムンクルスという生命体は、核のエネルギーだけで自由に動ける。しかし、ロボットは各パーツが連動して動かない限りまともな挙動がとれない。だからこそ、駆動部への攻撃はロボットにとっては致命傷になりうるし、逆に核という明確な弱点がない分、完全に動きを停止させるのも難しい。ロボットにはロボットの特徴があるのだ。
実際、この世界におけるダンジョンは、大多数が遺跡や古い施設の跡地だ。そして、その最深部で待ち構えていたボスは、王都周辺の場合半分近くがロックギガースのように巨大なゴーレムだったという情報が出回っている。
スロウですら実現できなかった技術、その結晶が決まって遺跡などに配置されている。勿論、メタ的な視点で運営の好みだと考えるのは簡単だ。しかし、敢えてこの世界の住人の視点に立って考えてみる。この世界の文明は、地形情報とIG社の累積データを基に、高度なAIを搭載したNPC数人にシミュレーションさせて誕生したとされているからだ。
その立場で考えると、今僕達プレイヤーが体感している時間軸よりも遥か昔に、その高度なAIを持つオリジナルのNPCによって直接築かれた古代文明が存在したという可能性が考えられる。そして、今遺跡やこの研究所で稼働しているロボットは、その古代文明において普及していた技術の産物である、と。
勿論、反対に錬金術こそが昔から続いており、一方で秘密裏にロボット工学が発展してきたという線もあり得る。実際こっちの方が、錬金術を主体としたゲームとしては健全な世界観だろう。だが既にスロウという、普通はただのボスとして終わるはずの存在の、メグル・ドリアスという素顔を知ってしまった僕は、見たままの世界を愚直に信じ込むことは出来なくなっていた。
これは蒼粒石と出会い、宝石技術を色々進めていく中で行き着いた僕の自論だが、この世界には「当たり前を疑う」というコンセプトが根底にあると思う。マナに錬金術、今ではめっきり見られなくなった中世ヨーロッパ風の景色など、今僕達プレイヤーが目にしているのは非日常的なものばかりだ。誰もが、その体験を楽しんでいる。
だからこそ、その中に唐突にリアルの日常が紛れ込むと、そこに違和感を覚えてしまう。今がまさにそうだ。VRMMOという革新的なゲームの浸透に呼応するように、リアルでは機械化が進み、自律型ロボットが我が物顔で人間に混じって道を闊歩するようになった。しかし、そのような日常的に当たり前の光景は、この世界ではむしろイレギュラーとなる。
そして僕達人間は、そんなイレギュラーな存在に鋭敏に反応し、時にそれを排斥しようとすることすら厭わない。こういう人間の根底にある一種の共通認識のようなものを、この世界は体現しているんだろう。古代文明という、摩訶不思議である程度秘匿性の高い容れ物にリアルでの日常を封じ込めることで。考えすぎだろうか?
「まあ、どうであれここから先に進まないことには、何も分からないよね」
1人ボソっと呟きながら、動かしていた手を止めて立ち上がる。僕は何も、敵地のど真ん中でただ考え事をしていたわけではない。それを頭の中にBGM的に流しながら、この扉の攻略法を模索していたのだ。そして分かったことがある。それは、生物でなくともこの警備システムは反応するということだ。
これが何を意味するのか。それは、監視カメラによる作動ではないということだ。もしカメラを通してシステムが動くなら、ダミーとして投げた石には反応しないはずだ。しかし、何回か石を色々な角度で投げたところ、いくつかの石がシステムに引っかかり、警備ロボットが動いていた。影の中から石を投げていたので、幸い僕がロボットに見つかることはなかった。
となれば、ロボットを作動させているのは何らかのセンサーによる自動感知システム。そして当然のように、そのセンサーは見た目ではどこにあるか分からない。……厄介だ。センサーの探知する範囲が分からない限りは、例え影の中でも安全とは限らない。それこそ、影と同化した状態の僕ですら探知できるほどの性能があるかもしれない。
だが、今からそれを石投げだけで判断している時間はない。まだカメラによる監視がないとも言い切れないし、いずれロボットがこの一帯を常に屯ろする状態になる可能性だってある。そうなれば探索を断念せざるを得ない。だから、僕も対策になるアイテムを作らせてもらった。
『簡易感光ゴーグル』☆4 DEF+20 光感知(弱)
売価5000G。目に見えないほどの微弱な光を感知し着用者にのみ可視化する。暗闇の中で真価を発揮する。
急ごしらえで作ったためグレードは低く、機能も単純だ。だが、今は肉眼では見えない光さえ感知できれば良いので問題はない。素材には暗闇に棲むモンスターのレアドロップの一つ、眼を使っている。今回も例の如く、ダークスパイダーのドロップ品。本当に、僕の作品はダークスパイダーに支えられていると言っても過言ではない。それくらい汎用性が高いのだ。
ゴーグルとあるが、特殊装備品ではなく頭防具だ。本来はスロットを空ける必要があるため不便なんだろうが、僕は何故か今まで頭防具を使って来なかったうえ、地味に僕の持つどの防具よりもDEFが高いのでむしろアドバンテージだ。
ここの攻略が済んだら、そろそろ全身防具を完成させないとな……と心に思いながら、装着。着け心地悪いな……使わない時は外しておこう。と、そんなことより。僕はこのゴーグルの成果を確かめるため、扉の方を見る。
「……ビンゴだ」
昔スパイ映画を観た時の記憶が活きた。この手のセンサーもカメラも見えない扉の警備システムというのは、大体肉眼では見えないレーザー光が張り巡らされているのが鉄板なのだ。なるほど、横ばいに数本照射されていたのか。これなら普通に通ろうとすれば確実に引っかかるわけだ。
だが、仕掛けが分かってしまえばこっちのものだ。床の表面がお留守だったので、僕はそこの影にダイブ。なるほど、目に見えないような光で作られた微細な影も、潜れる対象になっているらしい。移動を終え、潜影を解除……よし、探知はされてなさそうだ。
「ふぅ、突破完了」
この扉を通るだけで時間を費やしてしまったが……ともかく、これで漸く足を踏み入れることができた。かつて人をホムンクルスに変える悪魔の実験が行われていた、旧王立研究所の地下研究棟第四研究地区。今日、50年以上の時を経て、僕がそのベールを剥がす。ただ、真実を知るために。
「待ってて、スロウ……」
プレアデス Lv.44
種族:ホムンクルス/職業:宝石技師Lv.36
HP:800(+250)
MP:170(+360)
STR:100(+50)
VIT:80(+50)
AGI:0(+50)
INT:50(+120)
RES:0
DEX:30
LUK:30
SP:0
頭…簡易感光ゴーグル
胸…バトラースーツ
右手…噴炎する竜骨牙の戦槌
左手…-
脚…バトラートラウザーズ
足…執事の革靴
特殊…蒼穹のタリスマン
特殊…聖炎筒イフリート
特殊…闇霊のローブ
所持金:197800G
満腹度:40%
装備効果:物質特効(200%) 《出血》付与(高) 【吸血】攻撃(低) 付加(火炎) 《火傷》付与(高) HP回復(5/秒) MP回復(1/秒) 対魔特効 《火傷》無効 発見率70%減 光感知(弱)
称号:《試行錯誤》《伝説を導く者》《読書好き》《宝石採集者》《伝説を錬成する者》《岩砕き》《破壊者》《無慈悲なる一撃》《石工職人見習い》《木工職人の一番弟子》《宝石技師》《禁忌の扉》《炎纏いし者》《運命の赤い糸》《昨日の敵は今日の友》《精霊を宿す者》《神域に至る者》
生産スキルセット(12/12)
【統合強化】【金属探知】【分解】【精錬】【拡大鏡】【簡易調整】【宝石融合】【宝石分解】【宝石変換】【交渉術】【覚醒強化】【宝石加工】
戦闘スキルセット(12/12)(装備中)
【硬化】【宝石片弾】【ジェットファングⅡ】【付加:陽炎柱】【脆弱化】【ジェノサイド】【精霊喚起】【付加:炎獄】【ドラゴンフレイム】【宝石爆烈弾】【退魔の神炎】【幻影化】
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