最後の将軍

おくん血•タケルfrom八鶴な書店

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第20話 「羅刹、裁かれる夜」

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長崎県警本部・取調室。
白い蛍光灯の光が、鷹田羅刹の横顔を無慈悲に照らしていた。
手錠の鎖がわずかに鳴る。
その正面に座るのは、県警捜査一課の切り込み隊長・内田聡。
あの思案橋で感動していた老人・巌の息子である。



聡「…鷹田羅刹。お前が“義”を貫いたことは知っている。
だが、俺たちは“法”を守る者だ。
どれほど筋を通そうが、あの一件は立派な殺人だ。」

羅刹(静かに笑みを浮かべ)
「お前の父さんも、似たようなこと言ってたな。
“義と法は紙一重だ”ってな。」

聡(目を細め)
「父のことを知っているのか…?」

羅刹「ああ。昔、巌さんに一度だけ助けられた。
あの人は本物の“昭和の警察官”だった。
命懸けで街を守る覚悟があった。
…お前もそうなれるのか?」

聡は言葉を失う。
目の前の羅刹は、たしかに悪ではない。
だが正義でもない。
その存在は、まるで時代の“継ぎ目”に取り残されたサムライだった。



その頃──
取調室のモニターを見つめる県警幹部たち。
中には、内田巌の元部下であり、今や警務部長となった北条の姿もあった。

北条部長「…あの男は、聡を鍛えるには最高の相手だ。
警察が腐ってきた今、あいつが“羅刹”と向き合うことに意味がある。」

若手刑事たちは顔を見合わせる。
その眼光には“熱”が宿っていた。
羅刹という存在が、いつの間にか長崎の男たちの“魂”を揺さぶっていたのだ。



夜──
聴取を終え、静かに立ち上がる羅刹。
取調室の扉の前で、聡が言った。

聡「……あなたのような男が、なぜ裏街道を歩いたんですか?」

羅刹「簡単なことだ。
“表”が腐れば、“裏”が正しくなる時代もある。」

その言葉に、聡の拳が震える。
しかし、その震えは怒りではなく、
胸の奥から溢れる“敬意”だった。



夜風が吹く警察署の屋上。
羅刹は護送車に乗る前、空を見上げて呟く。

羅刹「…巌さん、見てるか。
あんたの息子、なかなか骨があるぜ。」

長崎の夜は静かだった。
だがその沈黙の奥で、
“昭和の義”が令和の時代に再び息を吹き返そうとしていた──。





夜の長崎県警本部。
分厚い鋼鉄の扉の奥では、いつもより重い空気が漂っていた。
葉巻の香りが充満する部屋の中央に、米軍将校──リチャード・X・ブラックバーンが悠然と座っていた。
月明かりに照らされたその頭皮は、異様なまでに光を放ち、まるで威圧そのもののようだった。

リチャード「我々は“秩序”を守るために来ている。
あの“鷹田一族”を野放しにするな。特にあの少年……玄鬼とか言ったか。」

彼の低く響く声が、まるで金属音のように室内を支配した。
机の周りに並ぶ県警幹部たちは一様に顔を引きつらせ、誰ひとりとして言葉を発せなかった。
その中で、ただ一人だけ──
拳を固く握り、リチャードの視線を真っすぐに受け止める男がいた。

内田聡、県警警備部の幹部であり、かつて長崎を護った元警官・内田巌の息子。



内田聡「……リチャード殿。あまり子供にまで手を出すのは、筋が違うと思います。」

リチャード「ハッ! 日本の警察はいつから“情”で動くようになった?
我々は秩序を維持する。それが任務だ。」

室内が凍りつく。
幹部たちは息を潜め、机上の書類を見つめるふりをした。
誰もリチャードの怒気に逆らう勇気は持たなかった。
だが、聡の拳は震えたまま離れなかった。

内田聡「……“秩序”の名を借りて、恐怖を振りまくだけなら、それは正義じゃない。」

その瞬間、リチャードの表情が変わった。
笑っていた口角がゆっくりと下がり、まるで冷たい機械のように顔が無表情になった。

リチャード「君の父──内田巌。
あの男は優秀だった。だが、敗戦後に武士道などという時代遅れの思想に縋り、無様に消えた。
まさか息子まで同じ血とはな。」

聡のこめかみに青筋が浮かぶ。
しかし、彼は耐えた。
父の名を侮辱されても、拳を下ろさず、ただ静かに睨みつけた。



数秒の沈黙の後、リチャードは再び椅子にもたれ、葉巻をくゆらせながら鼻で笑った。

リチャード「日本人はいつも“義”だの“誇り”だの言う。
だが、結局は上から命令されなければ動けない。
それが“敗者の血”というやつだ。」

その時、内田の背後から声が響いた。
北条部長だった。

北条部長「……その“敗者の血”が、戦後の長崎を守ってきたんだ。
あんたらが捨てた“魂”を、俺たちはまだ信じている。」

一瞬、部屋の空気が爆ぜた。
リチャードの葉巻の火が、パチッと音を立てて弾ける。



リチャード「面白い。いいだろう。
その“魂”とやらが、どこまで持つか……試してやる。」

彼はゆっくりと立ち上がった。
スキンヘッドの光が蛍光灯を反射し、室内に不気味な光を散らす。

リチャード「鷹田羅刹を拘束しろ。
拒めば──この街の秩序ごと、焼き払う。」

ドンッ‼️
机を叩く音が響く。
内田聡の中で、何かが切れた。

内田聡(心の声)
──父さん、あんたが守りたかったこの街を、今度は俺が守る。
たとえ相手が異国の軍でも、俺は下がらない。



リチャードが去った後の会議室には、焦げた葉巻の匂いと、静かな決意だけが残った。
その夜、長崎の風は不気味に唸り、嵐の前の静けさが街を包み込んでいた──

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