僕にだけツンツンしている義妹と同居生活をしたらヤンデレ化しました

うまむ

文字の大きさ
3 / 3

モテるって大変そう

しおりを挟む
春休みが終わり、僕たちは三年生になった。
愛菜は少し離れた場所からこの地域に引っ越してきたため、僕と同じ高校に転校することになった。ただし登校は別々である。

新しい学年、新しいクラス。僕は自分の名前を確認しながら、教室の前で足を止めた。
そのとき、後ろから元気な声が飛んできた。

「みなとぉぉぉ!」

振り向くと、笑顔で走って近づいてくる少女がいた。柊紗奈――幼馴染の女の子だ。
茶色の髪を背中まで伸ばし、底抜けに明るい性格。顔も整っていて、誰が見ても好印象だろう。

「おはよう、紗奈」
僕は笑顔で挨拶を返す。

「湊はもうクラスの確認した?」
「ちょうど今来たばかりだから、これからだよ」
「そうなんだ、じゃあ一緒に探そうよ!」

僕たちは名簿を確認しながら自分の名前を探した。

「あ、僕は3のBだ」
「おぉ!えーっと私は……」
「あっ!私も3のBだ!今年も湊と同じだね!」

紗奈は飛び跳ねて喜んでいる。
2年連続で同じクラスになるのは珍しい。僕も、唯一気軽に会話できる女子が同じクラスで嬉しかった。

そのとき、紗奈が不思議そうに顔をしかめた。

「ねぇ湊、あの名取愛菜って名前、初めて見たよね?」

3-Bクラスの名簿に、確かに「名取愛菜」と書かれていた。
名字は千歳に変わったが、旧姓のままで登録されている。僕と同じ苗字だと周りが混乱する可能性もあるから、それを避けるためかもしれない。
クラスが同じなのはおそらく、僕がいる方が少しは安心できるだろう――学校側の配慮だと思う。

周りの生徒もザワザワし始めた。

「名取愛菜って誰?」
「もしかして転校生?」

僕は愛菜のことを知っていたが、知らないフリをして答えた。

「あぁ、そうだね。聞いたことないな」

その時、視界の端を黒髪の少女が通り過ぎた。愛菜だった――



朝のホームルーム。

「気づいてるやつもいるかもしれないが、うちのクラスに転校生が来るので紹介する。名取さん、入ってどうぞ」
担任の佐藤先生が言うと、教室内は少しざわめいた。

ガラガラとドアが開き、綺麗な黒髪の少女が教壇の近くまで歩いてきた。

「では名取さん、挨拶をお願いします」

愛菜はにっこりと笑顔をこぼす。

「みなさんこんにちは。名取愛菜と申します。皆さんと仲良くできると嬉しいです。よろしくお願いします」

丁寧で真面目な口調に、完璧な笑顔。教室内の男子たちがヒソヒソと囁く。

「なあ、めっちゃ可愛くね?」
「それな、めっちゃタイプ」

確かに、外見もスタイルも抜群だ。愛嬌もある――だからこそ、なので愛菜はとてもモテるだろう。
それで変な事件に巻き込まれければいいのだが…
それはもう祈るしかない。



休み時間、案の定愛菜は男女に囲まれていた。
笑顔で一人ひとりに応対している。
(ほんとに、何で僕にだけ冷たいんだろ……)
僕にだけ冷たい理由を考えたが、やはり分からない。

そして放課後、紗奈と途中まで一緒に帰ることになった。

「転校生の愛菜ちゃん、とっても可愛い子だったね!」
「うん、確かにそうだな」
「湊は話しかけなくてよかったの?全然興味なさそうだったけど?」

その言葉に、胸がドキッとした。
幼馴染とはいえ、親の再婚のことはまだ話していない。

「いやぁ…みんなに囲まれてて大変そうだったからな。まあ、また今度でいいかなって」
そう誤魔化す僕の心の中には、
(紗奈には今度説明した方がいいのかな…)
という考えがよぎる。

解散地点に着き、紗奈を見送った。

「じゃあ私こっちだから、また明日ね!」
「おう、じゃあな」

小さくなる背中を見送り、僕は反対方向へ歩き出す。

人気のない道をぼーっと歩いていると、前方で女子高生らしき人が男二人に絡まれているのが見えた。

(んー、あんまり巻き込まれたくないけど、無視もできない……でも声かけたら逆に危ないかもしれないし……)

そんなことを考えているうちに、僕は彼女たちの近くまで来てしまった。

「だからさぁ、俺たちと遊ぼうよ!少しだけでいいからさ」
「いやです、もう諦めてください」

ナンパされている女子高生――見覚えがある。

「あ、愛菜?」

僕は思わず声をかけた。

「あの、困っているのでやめてあげたらどうです?」

「あ?誰だお前」
「お前には関係ねぇだろ、邪魔すんなよ」

喧嘩腰の男たち、このままだと事態は悪化しそうだった。
でも僕は格闘経験や喧嘩経験は無い。
僕は最後の手段を使った。

「ここに!ナンパしてる人がいますー!!!」

大きな声を出すと、男たちは顔をしかめながら立ち去った。
僕の男としてのプライドはどこかへ消え去ったが、愛菜を守れたことに少しだけ安心した。

「愛菜、大丈夫か?じ、じゃあ僕は先に行くから!」

恥ずかしさのあまり、愛菜の顔を見ることもできず、走り去った。
後ろから「ちょっと待って!」という声が聞こえた気もしたが、無視して逃げるように家へ向かった。



家に着き、手を洗い、制服を脱いで部屋着に着替える。
ベッドに横になりながら、頭の中で繰り返し言葉を呟く。

「絶対嫌われた」

顔は見れなかったが、ゴミを見るような目でこちらを見ていた愛菜の姿が頭に浮かぶ。(妄想)
次に会うとき、どんな顔をすればいいのか――考えるだけで緊張した。

しばらくしてドアがノックされ、足音が近づいてくるのに気づいた。
(なんか嫌味でも言われるのだろうか……)
僕は覚悟を決めて返事をした。

「はい」

ドアが開くと、愛菜が少し恥ずかしそうに立っていた。

「さっきは、ありがとう……」

最後の言葉は聞き取れなかったけれど、冷たかった愛菜が初めて優しい言葉をかけてくれた――その事実だけで、僕の胸は熱くなった。

「お、おう、無事で何よりだよ」

そう答える前に、愛菜はそそくさと部屋を出て行った。

状況を整理しつつ、僕は思った。
これからは、――『普通の兄弟』として仲良くやっていければいいな、と。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

冗談のつもりでいたら本気だったらしい

下菊みこと
恋愛
やばいタイプのヤンデレに捕まってしまったお話。 めちゃくちゃご都合主義のSS。 小説家になろう様でも投稿しています。

俺を振ったはずの腐れ縁幼馴染が、俺に告白してきました。

true177
恋愛
一年前、伊藤 健介(いとう けんすけ)は幼馴染の多田 悠奈(ただ ゆうな)に振られた。それも、心無い手紙を下駄箱に入れられて。 それ以来悠奈を避けるようになっていた健介だが、二年生に進級した春になって悠奈がいきなり告白を仕掛けてきた。 これはハニートラップか、一年前の出来事を忘れてしまっているのか……。ともかく、健介は断った。 日常が一変したのは、それからである。やたらと悠奈が絡んでくるようになったのだ。 彼女の狙いは、いったい何なのだろうか……。 ※小説家になろう、ハーメルンにも同一作品を投稿しています。 ※内部進行完結済みです。毎日連載です。

ホストな彼と別れようとしたお話

下菊みこと
恋愛
ヤンデレ男子に捕まるお話です。 あるいは最終的にお互いに溺れていくお話です。 御都合主義のハッピーエンドのSSです。 小説家になろう様でも投稿しています。

幼馴染みのメッセージに打ち間違い返信したらとんでもないことに

家紋武範
恋愛
 となりに住む、幼馴染みの夕夏のことが好きだが、その思いを伝えられずにいた。  ある日、夕夏のメッセージに返信しようとしたら、間違ってとんでもない言葉を送ってしまったのだった。

小さい頃「お嫁さんになる!」と妹系の幼馴染みに言われて、彼女は今もその気でいる!

竜ヶ崎彰
恋愛
「いい加減大人の階段上ってくれ!!」 俺、天道涼太には1つ年下の可愛い幼馴染みがいる。 彼女の名前は下野ルカ。 幼少の頃から俺にベッタリでかつては将来"俺のお嫁さんになる!"なんて事も言っていた。 俺ももう高校生になったと同時にルカは中学3年生。 だけど、ルカはまだ俺のお嫁さんになる!と言っている! 堅物真面目少年と妹系ゆるふわ天然少女による拗らせ系ラブコメ開幕!!

黒瀬部長は部下を溺愛したい

桐生桜
恋愛
イケメン上司の黒瀬部長は営業部のエース。 人にも自分にも厳しくちょっぴり怖い……けど! 好きな人にはとことん尽くして甘やかしたい、愛でたい……の溺愛体質。 部下である白石莉央はその溺愛を一心に受け、とことん愛される。 スパダリ鬼上司×新人OLのイチャラブストーリーを一話ショートに。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

勇者のハーレムパーティー抜けさせてもらいます!〜やけになってワンナイトしたら溺愛されました〜

犬の下僕
恋愛
勇者に裏切られた主人公がワンナイトしたら溺愛される話です。

処理中です...