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56 弟子入り
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次の日、少し早めにセフティーホームから出ると、うちの中にゴルグがいた。
「随分と早いな?」
「お前の出すワインが飲みたい野郎どもにせっつかれてな。朝食を食う暇も与えてもらえなかったよ」
まあ、街で飲んだワインがあれだ。さらに大量に飲むだろう巨人に回ってくるころにはさらに薄くなってるはず。消費期限が切れたワインでも最上級の味に感じるだろうよ。
「なんか罪なことしてしまったな」
イヴにリンゴを食わせたヘビのようだな、オレ。
「ふふ。そうだな。女たちはお茶。ガキどもは菓子。罪つくりな男だよ」
罪になるなら女を惚れさせることで罪つくりになりたいもんだ。いや、モテない男の戯れ言です。忘れてください。
「オレもいつまでいられるかわからんし、ゴブリンを駆除して果樹園でも作るんだな」
「お前がいつまでもいてくれると助かるんだがな」
「オレも定住したいが、ゴブリンを駆除しないと生きられない身だ。いなくなれば別のところに移動しなくちゃならないんだよ」
いたらいたで、いないならいないでオレたちの暮らし(命か?)は成り立たない。ゴブリン駆除がオレたちの人生である(泣)。
「まあ、先のことより今だ。昨日話した通り、穴は二ヶ所。うちから離れたところだ。深さはゴルグが上がれないくらい。広さは任せる。道具は昨日のうちに出しておいたから自由に使ってくれて構わない。休憩時の水と菓子は用意してあるから遠慮なく食ってくれ」
「至れり尽くせりだな」
「そうか? まあ、ゴブリンを大量に駆除したら元は取れる。しっかり罠を作ってくれ」
水はセフティーホームの蛇口から。菓子は一袋百五十円のを十袋。報酬のワインは輸入品の安いやつを二十本。一万円もかかってない。ゴブリン七匹も駆除できたら元は取り返せるよ。
「指揮はゴルグに任せる。何度も言うが、ゴブリンはゴルグが殺さないと金は入らない。お前以外が殺したら入らないから注意しろよ」
請負員のことは昨日説明はしたが、大事なことなので再度言っておく。
「まったく、ゴブリン駆除は面倒だよ」
その面倒なことをやらされてるオレの苦労を思い知るがよい。
「おはよう」
と、ラダリオンが自分の部屋から出てきた。まあ、ほぼ荷物置場と化してる部屋だけどな。
「ああ、おはよう。駆除にいくのか?」
「うん。昨日サボちゃったから稼がないと」
昨日の分を取り返す勢いを見せるラダリオン。まあ、ゴルグの分まで駆除するなよ。
「タカト。これマグルのオヤツ」
と、大袋入りの飴をテーブルに置き、ゴブリン駆除へと出かけた。いってらっしゃい。
「いい子だな」
「ああ。オレがもしものときは頼むよ」
「バカが。そんなこと言うな」
と、指で突っ突かれる。手加減してるだろうが痛いから止めろや。
「まあ、そんときは任せろ。じゃあ、穴を掘ってくるよ」
そう言うと家を出ていくゴルグ。ツンデレか。
オレも外に出てゴルグたちを見送ると、ロミーさんとマグルに目を向けた。
「おはようさん。まあ、うちに入ってくれ」
巨人と話すには同じ高さにならんと大声を出さないといかんのですよ。
家に入り、まずはお茶でも飲む。あ、うちはセルフです。
「てか、なんでマグルは緊張してるんだ?」
いつもの騒がしさはどこへやら。借りてきた猫のように静かである。
「そりゃ、あんたんところに弟子入りするからね」
「弟子入り?」
なに言ってんのこの奥様は?
「ゴブリンを狩るためにタカトから教わる。生業としてる者から技術を学ぶのは師弟関係になるんだよ」
いやまあ、そうだと言われたらそうなのかもしれないが、オレ的には近所の子供に遊びを教える感覚なんだが……。
「こ、ここでは六歳でも弟子入りとかするのか?」
「まあ、八歳くらいから家の手伝いから始めて、十歳で弟子入りが普通かね。家業を継ぐなら六歳からでも始めるけど、うちは代々やってる家業じゃないし、やりたいことがあるならやれ、って感じだね」
「自由だな」
職業選択の自由があってなによりと言っていいのかわからんが、それはそれで厳しいよな。この時代ではやりたいことなんてそう見つけられるもんじゃないだろうし。
「おれ、冒険者になりたい。いろんな場所にいってみたい」
おずおずと夢を語るマグル。六歳の憧れと笑うことはしない。夢を見るのも夢に敗れるのも人生に必要なものだ。オレだって子供の頃はハンター×2になるとか言っちゃってたからな。
「そうか。冒険者になるんならいろいろできないとダメだぞ。冒険者で食っていこうとしたら読み書き計算ができなくちゃならないし、体力がないのもダメだ。面倒なことをしないとならないときもある。それでもマグルは冒険者になりたいか?」
子供に理解できるかわからんが、やると言うなら自分で決断しなくちゃならない。冒険者になれば決断の連続だろうからな。
「……う、うん。なりたい……」
「うん。よく自分で決めたな。偉いぞ」
頭を撫でてやれんので笑ってマルグの決めたことを肯定してやると、照れ臭そうに笑ってロミーの後ろに隠れてしまった。
「ロミー。マグルにナイフを持たせていいか?」
「構わないが、子供にそんな高価なものを持たすのかい?」
「そんな高いものは持たせないよ。ゴブリン一匹にもならない安物さ。まあ、刃物は刃物だから危ないがな。ナイフで悪さしたら報告するから拳骨食らわすなり食事抜きにしてくれ」
オレじゃ叱ることしかできんからよ。
「ああ。そうしておくれ。拳骨食らわして食事抜きにして軒先に吊るしてやるからさ」
マグルを見れば経験があるのか青くなっている。虐待と言う概念がない時代。その時代に生まれなくて本当によかった。あと、元の世界にいる母上様。優しく育てていただきありがとうございました。親孝行できないバカ息子をお許しくださいませ……。
「随分と早いな?」
「お前の出すワインが飲みたい野郎どもにせっつかれてな。朝食を食う暇も与えてもらえなかったよ」
まあ、街で飲んだワインがあれだ。さらに大量に飲むだろう巨人に回ってくるころにはさらに薄くなってるはず。消費期限が切れたワインでも最上級の味に感じるだろうよ。
「なんか罪なことしてしまったな」
イヴにリンゴを食わせたヘビのようだな、オレ。
「ふふ。そうだな。女たちはお茶。ガキどもは菓子。罪つくりな男だよ」
罪になるなら女を惚れさせることで罪つくりになりたいもんだ。いや、モテない男の戯れ言です。忘れてください。
「オレもいつまでいられるかわからんし、ゴブリンを駆除して果樹園でも作るんだな」
「お前がいつまでもいてくれると助かるんだがな」
「オレも定住したいが、ゴブリンを駆除しないと生きられない身だ。いなくなれば別のところに移動しなくちゃならないんだよ」
いたらいたで、いないならいないでオレたちの暮らし(命か?)は成り立たない。ゴブリン駆除がオレたちの人生である(泣)。
「まあ、先のことより今だ。昨日話した通り、穴は二ヶ所。うちから離れたところだ。深さはゴルグが上がれないくらい。広さは任せる。道具は昨日のうちに出しておいたから自由に使ってくれて構わない。休憩時の水と菓子は用意してあるから遠慮なく食ってくれ」
「至れり尽くせりだな」
「そうか? まあ、ゴブリンを大量に駆除したら元は取れる。しっかり罠を作ってくれ」
水はセフティーホームの蛇口から。菓子は一袋百五十円のを十袋。報酬のワインは輸入品の安いやつを二十本。一万円もかかってない。ゴブリン七匹も駆除できたら元は取り返せるよ。
「指揮はゴルグに任せる。何度も言うが、ゴブリンはゴルグが殺さないと金は入らない。お前以外が殺したら入らないから注意しろよ」
請負員のことは昨日説明はしたが、大事なことなので再度言っておく。
「まったく、ゴブリン駆除は面倒だよ」
その面倒なことをやらされてるオレの苦労を思い知るがよい。
「おはよう」
と、ラダリオンが自分の部屋から出てきた。まあ、ほぼ荷物置場と化してる部屋だけどな。
「ああ、おはよう。駆除にいくのか?」
「うん。昨日サボちゃったから稼がないと」
昨日の分を取り返す勢いを見せるラダリオン。まあ、ゴルグの分まで駆除するなよ。
「タカト。これマグルのオヤツ」
と、大袋入りの飴をテーブルに置き、ゴブリン駆除へと出かけた。いってらっしゃい。
「いい子だな」
「ああ。オレがもしものときは頼むよ」
「バカが。そんなこと言うな」
と、指で突っ突かれる。手加減してるだろうが痛いから止めろや。
「まあ、そんときは任せろ。じゃあ、穴を掘ってくるよ」
そう言うと家を出ていくゴルグ。ツンデレか。
オレも外に出てゴルグたちを見送ると、ロミーさんとマグルに目を向けた。
「おはようさん。まあ、うちに入ってくれ」
巨人と話すには同じ高さにならんと大声を出さないといかんのですよ。
家に入り、まずはお茶でも飲む。あ、うちはセルフです。
「てか、なんでマグルは緊張してるんだ?」
いつもの騒がしさはどこへやら。借りてきた猫のように静かである。
「そりゃ、あんたんところに弟子入りするからね」
「弟子入り?」
なに言ってんのこの奥様は?
「ゴブリンを狩るためにタカトから教わる。生業としてる者から技術を学ぶのは師弟関係になるんだよ」
いやまあ、そうだと言われたらそうなのかもしれないが、オレ的には近所の子供に遊びを教える感覚なんだが……。
「こ、ここでは六歳でも弟子入りとかするのか?」
「まあ、八歳くらいから家の手伝いから始めて、十歳で弟子入りが普通かね。家業を継ぐなら六歳からでも始めるけど、うちは代々やってる家業じゃないし、やりたいことがあるならやれ、って感じだね」
「自由だな」
職業選択の自由があってなによりと言っていいのかわからんが、それはそれで厳しいよな。この時代ではやりたいことなんてそう見つけられるもんじゃないだろうし。
「おれ、冒険者になりたい。いろんな場所にいってみたい」
おずおずと夢を語るマグル。六歳の憧れと笑うことはしない。夢を見るのも夢に敗れるのも人生に必要なものだ。オレだって子供の頃はハンター×2になるとか言っちゃってたからな。
「そうか。冒険者になるんならいろいろできないとダメだぞ。冒険者で食っていこうとしたら読み書き計算ができなくちゃならないし、体力がないのもダメだ。面倒なことをしないとならないときもある。それでもマグルは冒険者になりたいか?」
子供に理解できるかわからんが、やると言うなら自分で決断しなくちゃならない。冒険者になれば決断の連続だろうからな。
「……う、うん。なりたい……」
「うん。よく自分で決めたな。偉いぞ」
頭を撫でてやれんので笑ってマルグの決めたことを肯定してやると、照れ臭そうに笑ってロミーの後ろに隠れてしまった。
「ロミー。マグルにナイフを持たせていいか?」
「構わないが、子供にそんな高価なものを持たすのかい?」
「そんな高いものは持たせないよ。ゴブリン一匹にもならない安物さ。まあ、刃物は刃物だから危ないがな。ナイフで悪さしたら報告するから拳骨食らわすなり食事抜きにしてくれ」
オレじゃ叱ることしかできんからよ。
「ああ。そうしておくれ。拳骨食らわして食事抜きにして軒先に吊るしてやるからさ」
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