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256 杖

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 狂乱化したゴブリンの中に無茶な! とかはならない。少しずつ眠りの魔法を展開しているようで、三メートル内に入ると、電池が切れたように倒れていく。

「本当にエゲつない魔法だ」

 これがゲームなら金返せってレベルのクソゲーだぞ。

 ミリエルに触れることなくゴブリンは眠らされていき、百メートルほど進むと、杖を掲げて広範囲に眠りを放った。

 波紋が広がるように倒れていくゴブリン。一種、感動すら覚える光景である。確実に三百匹は眠らされただろう。

「タカト。砦は頼む。マリエンズ! しばらくしたらゴブリンを拘束しろ! まだ眠りの魔法が漂っているから注意しろ」

 そう叫ぶと壁から飛び降り、眠らなかったゴブリンに向かって駆けていった。

「タカト、わしもいってくる」

「わたしもだ」

 カインゼルさんとミシニー、そして、ビシャまで降りていってしまった。なんだがな~。

 まあ、今回は捕獲が目的であり、支援に回る気でいたから構わないのだが、我先に突っ込んでいく皆を見てるとなんだがな~って思いは出てくるぜ。

「ん? ラダリオンがいないな?」

 気配がないところをみるとホームに入ったか。昼飯か?

 頼むと言われた以上、ここを離れるわけにもいかないので、缶コーヒーを取り寄せ、飲みながら皆を見守った。

 請負員は皆才能溢れる者ばかりだから眠りの魔法から逃れたゴブリンを次々と駆除していき、三時前には粗方駆除し終えた。

「タカト、終わった?」

 と、巨人なラダリオンがやってきた。なんか寝てたっぽいな。

「ああ。粗方な。あとは眠らせたゴブリンの拘束だな。暗くなる前に終わるかどうかだな」

 兵士は五十人くらい連れてきたみたいだが、三百匹を拘束するとなればかなりの時間を費やすだろう。てか、三百匹すべてを城に運ぶんだろうか? 片付けも大変だろうに。

「明日、領主代理の代理がくるって言ってた」

「代理の代理?」

 なんじゃそりゃ?

「まあ、それはサイルスさんに訊くよ。ラダリオン、悪いがラザニア村に戻ってくれるか? 暗くなったらホームに戻っていいから」

 もう駆除員がここにいても仕方がない。ラザニア村で待機しててもらったほうが万が一のときに備えられるってものだ。

「わかった」

 一旦小さくなり、砦を出ると巨人になって駆けていった。

 一仕事終えたサイルスさんたちと疲れ果てたミリエルが帰ってきた。

「ミリエル、ご苦労様な。ホームに戻って休んでこい。あとはオレが引き継ぐから」

「……はい。お願いします……」

 相当疲れているんだろう。オレの言葉に素直に従い、ホームへ入ってしまった。

「皆もご苦労様な。ゆっくり休んでくれ」

 ビニールプールに水を溜めていたようなので、まずは汗を流してもらい、酒飲みには冷えたビールを。甘党にはよく冷えたジュースを出してやった。
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