263 / 459
263 行商奴隷団
しおりを挟む
異世界の道、ナメてました。
ミシニーが馬車で五日と言うから道があると思うじゃん。だが、マイヤー男爵領を出たら馬車が通れそうな幅はそうなく、川には橋がない。まだ獣道がマシと言う状態。二日目は二十キロも進めなかったよ。
「昔はもっとよかったんだがな?」
昔っていつだよ? 十年や二十でこうはならんだろう! と言う叫びを飲み込んだ。たぶん、言ったらダメなヤツだとオレの本能が悟ったから。
三日目も同じで、幅がないところや川ではパイオニアとウルヴァリンを交互にホームに仕舞い、道だと思いたい道を進んだ。
「交代でくるのも一苦労な感じだな」
「巨人に道を造ってもらいたいところですが、さすがに他領ですからね」
そうなんだよな。コラウスだから巨人は生きられている。他領に出たら大騒ぎなるのが目に見えるよ。
「とりあえず、進むしかないか。ミシニー。本当にこの道でいいのか?」
「ああ。人が歩いた形跡や馬の蹄らもある。定期的に往来している」
オレにはさっぱりだが、銀印の冒険者が言うんだからそうなんだろう。なんて思っていたらミシニーの表情が強張った。ま、魔物か!?
「いや、人だ。それもかなりの数だ。もしかすると行商奴隷団かもしれないな」
行商奴隷団? なんじゃそりゃ?
「この国独自な罰だな」
「犯罪者や戦争犯罪者を奴隷にして行商──まあ、奴隷に荷物を持たせて辺境を回る行商だな」
「……そんなのがあるんだ……」
さすが異世界。工場作業員だったオレには理解できないことをやっているよ。
「わたしも一、二度と見たくらいだから本当に行商奴隷団かはわからない。タカト、笛を持ってたな。長く吹いてこちらの存在を示せ。あいつらは奴隷紋を施されている。一度命令が下されれば死ぬまで戦わされるんだ」
なにそれ!? 魔法ってそんなこともできるの?! だったら魔法の道具も作り出せよ! なんでそっちのほうにいくんだよ!
それはともかく人間との戦いなんて御免である。笛を出して長く吹いた。
十秒くらい吹く。と、笛の音が返ってきた。意外と近いぞ。
「あちらも無駄な殺し合いはしたくないからな。敵意がないことを示したんだろう」
「笛を持っているの知っていたのか?」
「笛は笛でも魔笛だがな」
魔笛? ミサロが持っていたようなものか?
「わたしはよくは知らないが、音を操る魔法がある。人を惑わせたり魔物を追い払ったりする魔法がな。行商奴隷団には奴隷紋と音魔法が使える一族とかの噂もある」
秘密結社な感じか?
しばらくして前方から異様な集団が現れた。
「冒険者か?」
「ああ。アッシカ伯爵領に接するマイセンズの森と呼ばれる場所に向かっている。そちらは行商奴隷団か?」
あまり関わりたくないが、この一団のリーダーはオレ。前に出ないわけにはいかないのだから諦めろ、だ。
「そうだ。黒の二団だ」
それは行商奴隷団が複数あるってことか?
「オレはセフティーブレットのタカト。ゴブリンを駆除することを生業としている。もし、ゴブリンの情報を持っているなら売って欲しい。代金として金か食料で支払おう」
行商と言うからには商売人のほうが強いはず。売買を持ちかけたら断らないはずだ。
「水はあるか?」
あると答えて水を入れたポリタンクを取り寄せた。
「アッシカ伯爵領ではゴブリンが大量に発生している。農作物を食い荒らされ、今年の冬を乗り越えられるかわからないそうだ」
ほんと、どこにでもいる害獣だよ。
「いい情報をもらった。水を足しておこう」
もう一つ取り寄せてリーダーらしき男に渡した。
十八リットルの水を奴隷たちに飲ませ、余ったものは手持ちの革袋(水筒か?)に入れた。
「この先、水がないのか?」
「ああ。飲める川がなくなる」
それはまた厳しい土地のようだ。そんなところに転移させられなくてよかった。いや、ホームの水か買った水しか飲んだことないけど。
「では、我らはいく」
奴隷を連れて陽気にはなれんだろうが、客商売してんならもっとフレンドリーになれよ。よくそれで商売できてるもんだ。
通りすぎていく奴隷の顔はどいつも生気がなく、生きる人形だ。よくこれで生きているものだ。見るに堪えられないぜ。
「……モリスの民だな……」
行商奴隷団が消えると、カインゼルさんがぽつりと呟いた。
モリスの民? なんかどこかで……あ、ミリエルもモリスの民だった!
「戦争に負けると奴隷になるんですか?」
「すべてが、とはならんが、戦後賠償金の変わりとして何千人と奴隷になったと聞いているよ」
「……戦争に負けたら人権も未来もなにもかも奪われるのか……」
元の世界の無知な平和主義者に見せてやりたいよ。お前が望む平和はこれかってな。
「あまり気に病むなよ」
「ええ。オレはオレの大切なものを守ることに全力を注ぎますよ」
オレはそこまで正義感は強くないし、他人のために人生を捧げるほど奇特でもない。利己的と罵られようが凡人なオレにはそんな罵り馬耳東風だ。つーか、利己的に生きることも厳しいわ。
「さあ、今日の遅れを取り返しましょう」
今はアッシカ伯爵領に到着することに集中だ。本番はマイセンズに着いてからなんだからな。
ミシニーが馬車で五日と言うから道があると思うじゃん。だが、マイヤー男爵領を出たら馬車が通れそうな幅はそうなく、川には橋がない。まだ獣道がマシと言う状態。二日目は二十キロも進めなかったよ。
「昔はもっとよかったんだがな?」
昔っていつだよ? 十年や二十でこうはならんだろう! と言う叫びを飲み込んだ。たぶん、言ったらダメなヤツだとオレの本能が悟ったから。
三日目も同じで、幅がないところや川ではパイオニアとウルヴァリンを交互にホームに仕舞い、道だと思いたい道を進んだ。
「交代でくるのも一苦労な感じだな」
「巨人に道を造ってもらいたいところですが、さすがに他領ですからね」
そうなんだよな。コラウスだから巨人は生きられている。他領に出たら大騒ぎなるのが目に見えるよ。
「とりあえず、進むしかないか。ミシニー。本当にこの道でいいのか?」
「ああ。人が歩いた形跡や馬の蹄らもある。定期的に往来している」
オレにはさっぱりだが、銀印の冒険者が言うんだからそうなんだろう。なんて思っていたらミシニーの表情が強張った。ま、魔物か!?
「いや、人だ。それもかなりの数だ。もしかすると行商奴隷団かもしれないな」
行商奴隷団? なんじゃそりゃ?
「この国独自な罰だな」
「犯罪者や戦争犯罪者を奴隷にして行商──まあ、奴隷に荷物を持たせて辺境を回る行商だな」
「……そんなのがあるんだ……」
さすが異世界。工場作業員だったオレには理解できないことをやっているよ。
「わたしも一、二度と見たくらいだから本当に行商奴隷団かはわからない。タカト、笛を持ってたな。長く吹いてこちらの存在を示せ。あいつらは奴隷紋を施されている。一度命令が下されれば死ぬまで戦わされるんだ」
なにそれ!? 魔法ってそんなこともできるの?! だったら魔法の道具も作り出せよ! なんでそっちのほうにいくんだよ!
それはともかく人間との戦いなんて御免である。笛を出して長く吹いた。
十秒くらい吹く。と、笛の音が返ってきた。意外と近いぞ。
「あちらも無駄な殺し合いはしたくないからな。敵意がないことを示したんだろう」
「笛を持っているの知っていたのか?」
「笛は笛でも魔笛だがな」
魔笛? ミサロが持っていたようなものか?
「わたしはよくは知らないが、音を操る魔法がある。人を惑わせたり魔物を追い払ったりする魔法がな。行商奴隷団には奴隷紋と音魔法が使える一族とかの噂もある」
秘密結社な感じか?
しばらくして前方から異様な集団が現れた。
「冒険者か?」
「ああ。アッシカ伯爵領に接するマイセンズの森と呼ばれる場所に向かっている。そちらは行商奴隷団か?」
あまり関わりたくないが、この一団のリーダーはオレ。前に出ないわけにはいかないのだから諦めろ、だ。
「そうだ。黒の二団だ」
それは行商奴隷団が複数あるってことか?
「オレはセフティーブレットのタカト。ゴブリンを駆除することを生業としている。もし、ゴブリンの情報を持っているなら売って欲しい。代金として金か食料で支払おう」
行商と言うからには商売人のほうが強いはず。売買を持ちかけたら断らないはずだ。
「水はあるか?」
あると答えて水を入れたポリタンクを取り寄せた。
「アッシカ伯爵領ではゴブリンが大量に発生している。農作物を食い荒らされ、今年の冬を乗り越えられるかわからないそうだ」
ほんと、どこにでもいる害獣だよ。
「いい情報をもらった。水を足しておこう」
もう一つ取り寄せてリーダーらしき男に渡した。
十八リットルの水を奴隷たちに飲ませ、余ったものは手持ちの革袋(水筒か?)に入れた。
「この先、水がないのか?」
「ああ。飲める川がなくなる」
それはまた厳しい土地のようだ。そんなところに転移させられなくてよかった。いや、ホームの水か買った水しか飲んだことないけど。
「では、我らはいく」
奴隷を連れて陽気にはなれんだろうが、客商売してんならもっとフレンドリーになれよ。よくそれで商売できてるもんだ。
通りすぎていく奴隷の顔はどいつも生気がなく、生きる人形だ。よくこれで生きているものだ。見るに堪えられないぜ。
「……モリスの民だな……」
行商奴隷団が消えると、カインゼルさんがぽつりと呟いた。
モリスの民? なんかどこかで……あ、ミリエルもモリスの民だった!
「戦争に負けると奴隷になるんですか?」
「すべてが、とはならんが、戦後賠償金の変わりとして何千人と奴隷になったと聞いているよ」
「……戦争に負けたら人権も未来もなにもかも奪われるのか……」
元の世界の無知な平和主義者に見せてやりたいよ。お前が望む平和はこれかってな。
「あまり気に病むなよ」
「ええ。オレはオレの大切なものを守ることに全力を注ぎますよ」
オレはそこまで正義感は強くないし、他人のために人生を捧げるほど奇特でもない。利己的と罵られようが凡人なオレにはそんな罵り馬耳東風だ。つーか、利己的に生きることも厳しいわ。
「さあ、今日の遅れを取り返しましょう」
今はアッシカ伯爵領に到着することに集中だ。本番はマイセンズに着いてからなんだからな。
0
あなたにおすすめの小説
レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収
ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。
彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。
だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。
自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。
「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」
契約解除。返還されたレベルは9999。
一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。
対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。
静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。
「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」
これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。
(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
リストラされた42歳、確率の向こう側へ。~なぜか俺の選択肢がすべて正解になる件~
RIU
ファンタジー
「君には今月いっぱいで席を空けてもらいたい」 42歳、独身、社畜。会社のために尽くしてきた柏木誠は、理不尽な理由でリストラされた。 絶望の中、雨の神社で野良猫を助けた彼は、不思議な光と共に【確率固定】という異能――「無意識に正解を選び続ける豪運」を手に入れる。
試しに買った宝くじは10億円当選。 復讐心に燃える元上司を袖にし、元天才投資家の美女をパートナーに迎えた柏木は、その豪運で現代社会を無双していく。
「俺の選択に間違いはない。なぜなら、確率の方が俺に合わせるからだ」
枯れたおじさんが資産と余裕を手に入れ、美女たちに頼られながら、第2の人生を謳歌する痛快サクセスストーリー!
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
ウルティメイド〜クビになった『元』究極メイドは、素材があれば何でも作れるクラフト系スキルで魔物の大陸を生き抜いていく〜
西館亮太
ファンタジー
「お前は今日でクビだ。」
主に突然そう宣告された究極と称されるメイドの『アミナ』。
生まれてこの方、主人の世話しかした事の無かった彼女はクビを言い渡された後、自分を陥れたメイドに魔物の巣食う島に転送されてしまう。
その大陸は、街の外に出れば魔物に襲われる危険性を伴う非常に危険な土地だった。
だがそのまま死ぬ訳にもいかず、彼女は己の必要のないスキルだと思い込んでいた、素材と知識とイメージがあればどんな物でも作れる『究極創造』を使い、『物作り屋』として冒険者や街の住人相手に商売することにした。
しかし街に到着するなり、外の世界を知らない彼女のコミュ障が露呈したり、意外と知らない事もあったりと、悩みながら自身は究極なんかでは無かったと自覚する。
そこから始まる、依頼者達とのいざこざや、素材収集の中で起こる騒動に彼女は次々と巻き込まれていく事になる。
これは、彼女が本当の究極になるまでのお話である。
※かなり冗長です。
説明口調も多いのでそれを加味した上でお楽しみ頂けたら幸いです
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
MP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
悪役令息、前世の記憶により悪評が嵩んで死ぬことを悟り教会に出家しに行った結果、最強の聖騎士になり伝説になる
竜頭蛇
ファンタジー
ある日、前世の記憶を思い出したシド・カマッセイはこの世界がギャルゲー「ヒロイックキングダム」の世界であり、自分がギャルゲの悪役令息であると理解する。
評判が悪すぎて破滅する運命にあるが父親が毒親でシドの悪評を広げたり、関係を作ったものには危害を加えるので現状では何をやっても悪評に繋がるを悟り、家との関係を断って出家をすることを決意する。
身を寄せた教会で働くうちに評判が上がりすぎて、聖女や信者から崇められたり、女神から一目置かれ、やがて最強の聖騎士となり、伝説となる物語。
魔法が使えない落ちこぼれ貴族の三男は、天才錬金術師のたまごでした
茜カナコ
ファンタジー
魔法使いよりも錬金術士の方が少ない世界。
貴族は生まれつき魔力を持っていることが多いが錬金術を使えるものは、ほとんどいない。
母も魔力が弱く、父から「できそこないの妻」と馬鹿にされ、こき使われている。
バレット男爵家の三男として生まれた僕は、魔力がなく、家でおちこぼれとしてぞんざいに扱われている。
しかし、僕には錬金術の才能があることに気づき、この家を出ると決めた。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる