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320 ヘテアの宿
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ざっと百七十万円也。ってこは三百匹以上いたってことか。毎回こうだといいんだがな。
出費も二十万円に届いていない。一時間ちょっとで百五十万円のプラスだ。アシッカでのマイナスを十二分に取り戻せたぜ。
……まあ、すぐに減るんだけどね……!
周囲に人もいないので、二百メートルほど離れたらホームに戻り、その日は終了。ゆっくり休んで次の日は七時出発とした。
外に出ると昨日と同じ数の気配を感じたが、それは帰りの楽しみとしよう。
「南はあっちか。よし。ラダリオン。いくぞ」
もう雪はないし、雑草も枯れているのでオレも歩きで進んだ。ラダリオンは元のサイズで先行してもらいます。
一時間ほど下ると川に出た。
雪解け水で川は増水し、川幅もあって渡るのは困難のようだ。チートタイムがなければな。
チートタイムを使ってサクッと渡り、百メートルも進まないうちに道に出た。
道幅は馬車が二台並んでも余裕があり、よく踏み固められている。方角からしてアシッカに続く街道だろうよ。
「雪で通れないからか、最近通った跡もないな」
てか、そんなに往来があったのか? アシッカ、ゴブリンに襲われる前は豊かだったと伯爵が言ってたが。
「せっかく道があるんだからパイオニアでいくとしよう」
あとどのくらいかわからんし、都(街ではなく都と呼ばれているんだってさ)まで歩くのも時間が惜しい。昼前まで着けたらいいな。
パイオニア二号を出してきて出発。木々を抜けると視界すべてが畑だった。
「凄いものだ」
穀物地帯とは言ってたが、ここまでは想像できなかった。公爵領ってのは伊達じゃないな。
道もよく整備され、川には石の橋がかけられている。畑には人がいて種蒔きをしているようだった。
時速三十キロくらいで走っているのに、四十分くらいて正面に壁が見えてきた。
これだけの都でも外敵から守る壁が必要なのか。まあ、数年前にも他国と戦争してるんだから壁の一つもないと安心して暮らせないんだろうよ。
さらに近づくと、壁の周りにも家が建ち並んでいるのが見えた。
「ここから歩いていくか」
人の往来はないが、時刻は十時四十分。歩いても昼前には入れる。わざわざ騒ぎを起こす必要もないだろうよ。
パイオニアをホームに仕舞い、冒険者スタイルに着替えた。
どうやらこちらは農業に従事する者たちが住むところらしく、馬や牛の臭いがする。
ゴブリンの臭いになれたせいか、馬や牛の臭いくらいでは鼻をつまむほどではない。まあ、臭いのは臭いんだけどね。
この道は街道なので都に近づくにつれて広くなり、壁の周りには倉庫がたくさん並んでいた。
「豊かそうだな」
冬だというのに行き交う人は痩せておらず、着ているものもコラウスよりいい。浮浪者も見当たらず、子供も笑顔で走っていた。
都に入るには入都税《にゅうとぜい》なるものがかかる。
こんだけ人がいて、儲けている感じなのに金を取るとか、ミヤマラン、悪どすぎんだろう。
とは言え、入都税は一人銅貨二枚。さしたる金額じゃないし、面倒な検問があるわけでもない。冒険者なら符を見せればタダで入れるそうだ。
「銀印の冒険者ですか。こちらには依頼で?」
「はい。買い物の依頼でアシッカからきました」
検問というほど厳しくないが、世間話的なことを交わして都に入った。
門を潜ったそこは商店街っぽく、外にいた農民とは違った装いで、清潔度も少し上がっている感じだった。
「ラダリオン、臭くないか?」
「ちょっとだけ。マスクすれば気にならない」
鼻のいいラダリオンがマスクだけで堪えられるんだから相当綺麗なようだ。
埃っぽくないのでオレはマスクはしない。気温も十二度もある。山脈を越えただけでこれほど気候が変わるとはな。ここに転移させて欲しかったよ。
「さて。まずは都を歩いて地図を作るぞ」
問題を起こす気はないが、どうも巻き込まれ型なオレ。なら、巻き込まれる前に逃走経路を探っておきましょう、だ。
歩けば自動で作成されていくオートマップさんをリュックサックに入れて都探索。夕方までちょっとしか塗り潰せなかった。
「うん。オレ、見込み甘すぎ~」
そして、都広すぎ~。すべてを作成しようとしたら軽く五日はかかるわ!
「ラダリオン。宿屋にいくぞ」
今日は終わり。地図作成も終わり。いざってときは押し通らせていただきます。
都の地図は伯爵に描いてもらった。まあ、伯爵の身分で都の隅々まで探索、なんてできないから大まかなものだが、二年もいれば行政区、商業区、繁華街、住宅地くらいはわかるもの。
どこになにかあるかわかれば宿屋を探すことくらい難しくはないし、冒険者の格好をした者を探してあとをついていったら酒場に到着したよ。
そこの通りを歩き、ちょっと高級そうな宿屋を発見した。
わかりやすくベッドが掛かれた看板は掲げられてないが、高級な宿屋はドアが開いていて中が見えるようになっているとミシニーが言っていた。
「失礼。ここは宿屋で?」
中に入り、カウンターに立つ中年の女性に尋ねた。
「はい。ヘテアの宿ですよ。お泊まりですか?」
「ええ。二人部屋を一泊。食事はいりません。大丈夫でしょうか?」
「はい。大丈夫ですよ」
と言うことで、今日の宿はここに決めた。
代金は前払いで大銅貨五枚。二人で十枚。やはり辺境の高級宿より高かった。と言っても五千円で一泊できたら安いもんか。現地の人にしたらどうかわからんけどな。
「銀貨でもよろしいですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
銀貨を一枚出したら大銅貨四枚と銅貨九枚、そして、小銅貨が五枚が返ってきた。
どういう計算だ? と思ったが、ぼったくりではないだろうからそのまま受け取って革袋に入れた。
「部屋は三階。ミズドの部屋をお使いください」
と、なにか花の絵が描かれた木札を渡された。
「申し訳ない。ここのやり方がわからないので教えていただけますか?」
「外の人ですか?」
「はい。コラウス辺境伯領にある冒険者ギルドに所属していて、ミヤマランには今日初めてきました」
「そうでしたか。マサラ。お客様を案内して」
と、女性が奥に向かって声をかけると、若い女性が出てきた。
「いらっしゃいませ。では、ご案内します」
若い女性に案内されて三階へ。
「ここがミズドの部屋です。お泊まりの際は、この木札をここに差してください。ここを使っている印になります。お帰りの際は、これを持って降りてください。部屋を汚したり破損させたら追加料金がかかるのでご注意ください」
トイレは一階。お湯が欲しいときは声をかけたら別途料金。サウナに入りたいときは二軒先にサウナ屋があるそうだ。
若い女性から説明を受けてから部屋へ入った。
出費も二十万円に届いていない。一時間ちょっとで百五十万円のプラスだ。アシッカでのマイナスを十二分に取り戻せたぜ。
……まあ、すぐに減るんだけどね……!
周囲に人もいないので、二百メートルほど離れたらホームに戻り、その日は終了。ゆっくり休んで次の日は七時出発とした。
外に出ると昨日と同じ数の気配を感じたが、それは帰りの楽しみとしよう。
「南はあっちか。よし。ラダリオン。いくぞ」
もう雪はないし、雑草も枯れているのでオレも歩きで進んだ。ラダリオンは元のサイズで先行してもらいます。
一時間ほど下ると川に出た。
雪解け水で川は増水し、川幅もあって渡るのは困難のようだ。チートタイムがなければな。
チートタイムを使ってサクッと渡り、百メートルも進まないうちに道に出た。
道幅は馬車が二台並んでも余裕があり、よく踏み固められている。方角からしてアシッカに続く街道だろうよ。
「雪で通れないからか、最近通った跡もないな」
てか、そんなに往来があったのか? アシッカ、ゴブリンに襲われる前は豊かだったと伯爵が言ってたが。
「せっかく道があるんだからパイオニアでいくとしよう」
あとどのくらいかわからんし、都(街ではなく都と呼ばれているんだってさ)まで歩くのも時間が惜しい。昼前まで着けたらいいな。
パイオニア二号を出してきて出発。木々を抜けると視界すべてが畑だった。
「凄いものだ」
穀物地帯とは言ってたが、ここまでは想像できなかった。公爵領ってのは伊達じゃないな。
道もよく整備され、川には石の橋がかけられている。畑には人がいて種蒔きをしているようだった。
時速三十キロくらいで走っているのに、四十分くらいて正面に壁が見えてきた。
これだけの都でも外敵から守る壁が必要なのか。まあ、数年前にも他国と戦争してるんだから壁の一つもないと安心して暮らせないんだろうよ。
さらに近づくと、壁の周りにも家が建ち並んでいるのが見えた。
「ここから歩いていくか」
人の往来はないが、時刻は十時四十分。歩いても昼前には入れる。わざわざ騒ぎを起こす必要もないだろうよ。
パイオニアをホームに仕舞い、冒険者スタイルに着替えた。
どうやらこちらは農業に従事する者たちが住むところらしく、馬や牛の臭いがする。
ゴブリンの臭いになれたせいか、馬や牛の臭いくらいでは鼻をつまむほどではない。まあ、臭いのは臭いんだけどね。
この道は街道なので都に近づくにつれて広くなり、壁の周りには倉庫がたくさん並んでいた。
「豊かそうだな」
冬だというのに行き交う人は痩せておらず、着ているものもコラウスよりいい。浮浪者も見当たらず、子供も笑顔で走っていた。
都に入るには入都税《にゅうとぜい》なるものがかかる。
こんだけ人がいて、儲けている感じなのに金を取るとか、ミヤマラン、悪どすぎんだろう。
とは言え、入都税は一人銅貨二枚。さしたる金額じゃないし、面倒な検問があるわけでもない。冒険者なら符を見せればタダで入れるそうだ。
「銀印の冒険者ですか。こちらには依頼で?」
「はい。買い物の依頼でアシッカからきました」
検問というほど厳しくないが、世間話的なことを交わして都に入った。
門を潜ったそこは商店街っぽく、外にいた農民とは違った装いで、清潔度も少し上がっている感じだった。
「ラダリオン、臭くないか?」
「ちょっとだけ。マスクすれば気にならない」
鼻のいいラダリオンがマスクだけで堪えられるんだから相当綺麗なようだ。
埃っぽくないのでオレはマスクはしない。気温も十二度もある。山脈を越えただけでこれほど気候が変わるとはな。ここに転移させて欲しかったよ。
「さて。まずは都を歩いて地図を作るぞ」
問題を起こす気はないが、どうも巻き込まれ型なオレ。なら、巻き込まれる前に逃走経路を探っておきましょう、だ。
歩けば自動で作成されていくオートマップさんをリュックサックに入れて都探索。夕方までちょっとしか塗り潰せなかった。
「うん。オレ、見込み甘すぎ~」
そして、都広すぎ~。すべてを作成しようとしたら軽く五日はかかるわ!
「ラダリオン。宿屋にいくぞ」
今日は終わり。地図作成も終わり。いざってときは押し通らせていただきます。
都の地図は伯爵に描いてもらった。まあ、伯爵の身分で都の隅々まで探索、なんてできないから大まかなものだが、二年もいれば行政区、商業区、繁華街、住宅地くらいはわかるもの。
どこになにかあるかわかれば宿屋を探すことくらい難しくはないし、冒険者の格好をした者を探してあとをついていったら酒場に到着したよ。
そこの通りを歩き、ちょっと高級そうな宿屋を発見した。
わかりやすくベッドが掛かれた看板は掲げられてないが、高級な宿屋はドアが開いていて中が見えるようになっているとミシニーが言っていた。
「失礼。ここは宿屋で?」
中に入り、カウンターに立つ中年の女性に尋ねた。
「はい。ヘテアの宿ですよ。お泊まりですか?」
「ええ。二人部屋を一泊。食事はいりません。大丈夫でしょうか?」
「はい。大丈夫ですよ」
と言うことで、今日の宿はここに決めた。
代金は前払いで大銅貨五枚。二人で十枚。やはり辺境の高級宿より高かった。と言っても五千円で一泊できたら安いもんか。現地の人にしたらどうかわからんけどな。
「銀貨でもよろしいですか?」
「はい。大丈夫ですよ」
銀貨を一枚出したら大銅貨四枚と銅貨九枚、そして、小銅貨が五枚が返ってきた。
どういう計算だ? と思ったが、ぼったくりではないだろうからそのまま受け取って革袋に入れた。
「部屋は三階。ミズドの部屋をお使いください」
と、なにか花の絵が描かれた木札を渡された。
「申し訳ない。ここのやり方がわからないので教えていただけますか?」
「外の人ですか?」
「はい。コラウス辺境伯領にある冒険者ギルドに所属していて、ミヤマランには今日初めてきました」
「そうでしたか。マサラ。お客様を案内して」
と、女性が奥に向かって声をかけると、若い女性が出てきた。
「いらっしゃいませ。では、ご案内します」
若い女性に案内されて三階へ。
「ここがミズドの部屋です。お泊まりの際は、この木札をここに差してください。ここを使っている印になります。お帰りの際は、これを持って降りてください。部屋を汚したり破損させたら追加料金がかかるのでご注意ください」
トイレは一階。お湯が欲しいときは声をかけたら別途料金。サウナに入りたいときは二軒先にサウナ屋があるそうだ。
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