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430 いい訓練
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「タカト様。お久しぶりです」
オレがくることがわかっていたのか、使用人頭のモーリスさんが出迎えてくれた。
「ええ。お久しぶりです。長いことこれなくてすみませんでした」
「生きて戻っていただけたのならそれで充分でございます」
モーリスさんとは大した絡みはないのだが、柔らかく微笑まれると、生きて帰れたことを実感させてくれるから不思議だよ……。
「食料の減りはどうですか? なにか人が増えているみたいですが」
「はい。日に日に増えていて食料の減りは激しいです。それに、ミヤマランに向かった商人たちが奴隷を買って大量の麦や芋を背負わせて帰ってきましたが、それも切れそうな状況です」
ダインさんたち、戻ってきたんだ。
「ロースランを大量に狩りました。奴隷傭兵団の一隊をマイセンズの砦に向かわせてください。足しにはなるでしょう」
腕輪の力で食料は足りているみたいで、ロースランの肉が余っているみたいだ。奴隷傭兵団に運ばせるとしよう。
「わかりました。すぐに手配します」
「調味料とかは消えてませんか?」
ミリエルが館から移動して十五日以上は過ぎているはずだ。
「ギルドからきていただいているので大丈夫です」
ちゃんと連携は取れているようでなによりだ。職員たちにはボーナスを出してやらんとな。
「治安はどうです? 騒ぎは起きてませんか?」
「多少騒ぐ者はおりますが、奴隷傭兵団から治安部隊を組織して巡回させております。マレアット様も出て領民に声をかけております」
伯爵もがんばっているようだ。
「ダバン。ヨシュアがどこにいるかわかるか?」
「団長なら館にいます」
館に?
「奴隷傭兵団の本拠地は館にしました。マレアット様の命令を下すには近くにいるほうがよいので」
まあ、確かにそうだが、男爵たちがよく許したな? 自分たちの領地が忙しくて口出しできないのか?
「エビル男爵は領地に?」
あの人を軍事担当にする話はしておいたんだがな。
「はい。雪も解けてきたので農作業の準備もあります。それに、ロースランがまた出たので離れることはできないのでしょう」
大変なところの領主とかご苦労様だよ。
「モーリスさん。オレがきたことをマレアット様に伝えてください」
「畏まりました」
勝手知ったる伯爵の館とは言え、「ただいま~」と言って伯爵の部屋にはいけんでしょう。親しき仲にも礼儀あり、だからな。
しばくしてモーリスさんが戻ってきて、伯爵の部屋に向かった。
「マレアット様。戻りました」
軍人なら敬礼の一つでもするんだろうが、しがないゴブリン駆除員。軽く一礼だけしておいた。
「よく戻ってきた。心配したぞ」
席で待っていられなかったんだろう。わざわざ扉の近くまで出てきていたよ。
「申し訳ありません。急転に次ぐ急転でなかなか帰ってくることができませんでした」
「ゆっくり聞きたいところだが、ロースランが現れた。その対策をしたい」
本当に成長したものだ。すっかり領主としての責任を優先させているよ。
「どのような状況ですか?」
オレも茶化したりはせず、状況を尋ねた。
壁にかけられたアシッカ領の地図の前に立ち、ロースランの目撃情報や被害を聞いた。
「臆病なロースランのようで人を襲うことはないのだが、夜中に忍び込んで食糧庫を襲っている。追いかけても森はまだ雪が深くて逃げられているそうだ」
「おそらく地下に巣くっていたロースランが地上に逃げてきたのでしょう」
「ロースランが逃げるのか?」
「地下にはロースラン以上の存在がたくさんいました。詳しい報告はあとでします」
自分が住んでいる下にローダーやグロゴールと言ったものがいると知ったら絶望するだろうからな。
「この地は呪われているのか?」
「なんとも言えませんが、逃げ出せないのですから豊かな地にするしかありませんよ」
ここまで調えたのだ、無理ですと言って放り投げるなんてできんでしょう。
「そうだな。豊かな地にするしかないな」
「失礼します。ヨシュアです」
奴隷だった頃の影はなくなり、体格もよくなっている。言われなければ二ヶ月前まで奴隷だったとはわからないだろうよ。
「ヨシュア。長いこと留守にして悪かった。アシッカを守ってくれてありがとうな」
「はっ! お褒めいただきありがとうございます!」
すっかり兵士、いや、軍人になっているな。
「ヨシュアには助けられているよ。わたしではアシッカを維持できなかっただろう」
「下が正しく動けるのは上が正しく指揮をしているからです。マレアット様は伯爵として上手くやれていると言うことですよ」
それはヨシュアの言動を見ればわかる。命令を聞くに相応しい人物と認めているのだろうよ。
「ヨシュア。新しくきた奴隷は何人だ?」
「三十三人です。契約主はマスターにしてあるそうです」
へー。そんなことできるんだ。魔法ってふっしぎー!
「ヨシュア。アシッカにはオレが残るから十名くらい連れてってロースランを退治してこい。いい訓練相手になるだろう」
アシッカを守るためにも戦力強化は大切だ。ロースランにはその糧となってもらおうじゃないか。
「はっ! お任せください! しっかり訓練して参ります!」
やる気があってよし。がんばってきてちょうだいな。
第9章 終わり
オレがくることがわかっていたのか、使用人頭のモーリスさんが出迎えてくれた。
「ええ。お久しぶりです。長いことこれなくてすみませんでした」
「生きて戻っていただけたのならそれで充分でございます」
モーリスさんとは大した絡みはないのだが、柔らかく微笑まれると、生きて帰れたことを実感させてくれるから不思議だよ……。
「食料の減りはどうですか? なにか人が増えているみたいですが」
「はい。日に日に増えていて食料の減りは激しいです。それに、ミヤマランに向かった商人たちが奴隷を買って大量の麦や芋を背負わせて帰ってきましたが、それも切れそうな状況です」
ダインさんたち、戻ってきたんだ。
「ロースランを大量に狩りました。奴隷傭兵団の一隊をマイセンズの砦に向かわせてください。足しにはなるでしょう」
腕輪の力で食料は足りているみたいで、ロースランの肉が余っているみたいだ。奴隷傭兵団に運ばせるとしよう。
「わかりました。すぐに手配します」
「調味料とかは消えてませんか?」
ミリエルが館から移動して十五日以上は過ぎているはずだ。
「ギルドからきていただいているので大丈夫です」
ちゃんと連携は取れているようでなによりだ。職員たちにはボーナスを出してやらんとな。
「治安はどうです? 騒ぎは起きてませんか?」
「多少騒ぐ者はおりますが、奴隷傭兵団から治安部隊を組織して巡回させております。マレアット様も出て領民に声をかけております」
伯爵もがんばっているようだ。
「ダバン。ヨシュアがどこにいるかわかるか?」
「団長なら館にいます」
館に?
「奴隷傭兵団の本拠地は館にしました。マレアット様の命令を下すには近くにいるほうがよいので」
まあ、確かにそうだが、男爵たちがよく許したな? 自分たちの領地が忙しくて口出しできないのか?
「エビル男爵は領地に?」
あの人を軍事担当にする話はしておいたんだがな。
「はい。雪も解けてきたので農作業の準備もあります。それに、ロースランがまた出たので離れることはできないのでしょう」
大変なところの領主とかご苦労様だよ。
「モーリスさん。オレがきたことをマレアット様に伝えてください」
「畏まりました」
勝手知ったる伯爵の館とは言え、「ただいま~」と言って伯爵の部屋にはいけんでしょう。親しき仲にも礼儀あり、だからな。
しばくしてモーリスさんが戻ってきて、伯爵の部屋に向かった。
「マレアット様。戻りました」
軍人なら敬礼の一つでもするんだろうが、しがないゴブリン駆除員。軽く一礼だけしておいた。
「よく戻ってきた。心配したぞ」
席で待っていられなかったんだろう。わざわざ扉の近くまで出てきていたよ。
「申し訳ありません。急転に次ぐ急転でなかなか帰ってくることができませんでした」
「ゆっくり聞きたいところだが、ロースランが現れた。その対策をしたい」
本当に成長したものだ。すっかり領主としての責任を優先させているよ。
「どのような状況ですか?」
オレも茶化したりはせず、状況を尋ねた。
壁にかけられたアシッカ領の地図の前に立ち、ロースランの目撃情報や被害を聞いた。
「臆病なロースランのようで人を襲うことはないのだが、夜中に忍び込んで食糧庫を襲っている。追いかけても森はまだ雪が深くて逃げられているそうだ」
「おそらく地下に巣くっていたロースランが地上に逃げてきたのでしょう」
「ロースランが逃げるのか?」
「地下にはロースラン以上の存在がたくさんいました。詳しい報告はあとでします」
自分が住んでいる下にローダーやグロゴールと言ったものがいると知ったら絶望するだろうからな。
「この地は呪われているのか?」
「なんとも言えませんが、逃げ出せないのですから豊かな地にするしかありませんよ」
ここまで調えたのだ、無理ですと言って放り投げるなんてできんでしょう。
「そうだな。豊かな地にするしかないな」
「失礼します。ヨシュアです」
奴隷だった頃の影はなくなり、体格もよくなっている。言われなければ二ヶ月前まで奴隷だったとはわからないだろうよ。
「ヨシュア。長いこと留守にして悪かった。アシッカを守ってくれてありがとうな」
「はっ! お褒めいただきありがとうございます!」
すっかり兵士、いや、軍人になっているな。
「ヨシュアには助けられているよ。わたしではアシッカを維持できなかっただろう」
「下が正しく動けるのは上が正しく指揮をしているからです。マレアット様は伯爵として上手くやれていると言うことですよ」
それはヨシュアの言動を見ればわかる。命令を聞くに相応しい人物と認めているのだろうよ。
「ヨシュア。新しくきた奴隷は何人だ?」
「三十三人です。契約主はマスターにしてあるそうです」
へー。そんなことできるんだ。魔法ってふっしぎー!
「ヨシュア。アシッカにはオレが残るから十名くらい連れてってロースランを退治してこい。いい訓練相手になるだろう」
アシッカを守るためにも戦力強化は大切だ。ロースランにはその糧となってもらおうじゃないか。
「はっ! お任せください! しっかり訓練して参ります!」
やる気があってよし。がんばってきてちょうだいな。
第9章 終わり
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