上 下
32 / 68

アラン

しおりを挟む
「今まで何も思われなかった訳ですし…意外と正体も気がつかれてないですし、王様でも問題ない…気が…」

「これから気がつかれるかもしれないだろう。その時どうするんだ。」

「確かにそうなんですけど…」

それを私に聞くのは間違ってると思う。

「名前で呼べ。」

「…その方が気がつかれると思います。」

何で急に名前だなんて…。

「…ではアランではいかがでしょうか。」

「わかった、俺は城に帰るまでアランだ。」

「ではアラン様、」

「何故『様』をつける?」

「王様で…す……いえ、アラン!!」

アランという偽名だけど、呼び捨てにするなんて重大な問題な気もする。

「何を真っ青な顔をしている。俺はここでは皆と同じだ。」

どうやっても無理でございます。
輝きが違います。

「王さ……アランは何かやりたい事とか無いんですか?案内しますよ。」

「ならアランに会いに…」
ヒャーーー!!ついに来た!
「…アランは旅立ちました。もういません!」
1人2役がバレる!

「顔が青いぞ?」

「ちょっと久しぶりの城下の空気に、気持ちが高ぶってしまったので…」

「ならば、どちらかというと赤くならないか?」

王様がアランに会いたいなんて言うからっ!
そもそも、何で今になってアラン…

「この騒動が落ち着いたら、しばらく家で休養を…とらせてもらえますか?」

「休んでも3日だ。」

なぜ…

「アランの時は休ませてました。」

「あれは病気だ。話が違う。」

違っても何でも!

「…自分の家のベッドでないと安眠できません。ので家に…」

「城へ運ばせる」

そうじゃない!
あの王宮から離れたいの!なんなら永遠におさらばしたい!!
なぜ気がつかないの、この王様。

「私の年齢だと、だいたい結婚相手を見つけてるんです。だから私もいつまでも働けません。」

「一生結婚出来ないと言っていた。ならそんな機会もないだろう。」

言ったけども!!

「奇跡的に誰かと結婚出来るかもしれないじゃないですか。」

「結婚できる相手なら誰でもいい…と、そういう事か?」

「…変態とかは無理ですけど。」

「ならば、俺が相手になってやる。」

ん?

「何を変な顔をしてる。」

「そりゃするでしょっ!!バカなのっ!?」

あ…バカとか言ってしまった…。

夢見る謎計画とは違うけど、『お姉さま』になる…。終着点が同じになってしまう。

謎計画を回避しても、こんな妥協結婚…

「返事は?」

「しばらく実家に帰らせて頂きます。」
しおりを挟む

処理中です...