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コロコロ

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何で黙るの。なんかえげつない事させられるとか?

「我がコロコロ王国の王子と結婚してもらおうと思ってな。」

「けっこん?」

何を言ってるんだろう…この丸眼鏡は。

「コロコロの王子は、マアサ様と結婚する事になってる。何で私が必要なんだ。」
「それを断ってきた。王子は怒り心頭。『ファビアンの婚約者と結婚するから連れてこい』っとなった訳だ。」

とんだとばっちり!!

「私は婚約者じゃないよ。婚約者がこんな安物の服着て歩いてるはずないでしょ。しかも庶民が!」
「……」

黙ってるってことは、丸眼鏡もそれは思ってたのか…。

「何も君を正妃にという訳じゃない。」
「まさか、妾になれと…?」
「そうだ。」

冗談はよせ。

…妾って、お部屋で毎日コロコロ王子待ちですか。
きもっ!!
王子とかいってるけど、王様が死んでから王位交代とかだったら…既にオッサンの可能性もある。

だから、マアサ様の縁談を断ったとか…。

いいんだよ。別に、それは妹思いの素晴らしい兄です。
その結果、男みたいと言われ続けて17年と11ヶ月…庶民の私は妾ですけどね。


「ねぇ、コロコロ王子って何才なの?」

せめてオッサンじゃない事を祈る。

「10才です。」

「……」

「10才です。」

「じゅ…じゅっさい…」

その妾なれと…。道徳的にどうなの?でもオッサンじゃないだけマシですね…。

「せめて、お父さんとお母さんに手紙を書かせてほしい。べつにどこに行くとか、何しに行くとかは書かないし。」

「まぁいいだろう。」

綺麗な便箋を貰って2人に向けて最後の手紙。
『先立つ不幸をお許しください。アリスより』

「これでいいのか?」

「これで、自らお亡くなりになったのだと思うでしょう。泣くけれど、死んだと解れば、年月がなんとかする。中途半端に助けてとか書いたら辛いだろうし。」

はぁ…。

もうすぐ18才、今度は何を言われてもお兄様を卒業すると決めていたのに…。

・・・・


「何か手がかりは?」

「ここ数日、コロコロ王国の馬車を見かけた者がおりまして、もしかしたら…」

「そうだな。その可能性は高い。」

「ただ、誘拐にその馬車を使うはずもないので。国境警備に重点を置いています。」

「あぁ、それで頼む。」

「承知しました。それでは、私は引き続き捜索を。失礼します。」

パタンとドアが閉まったかと思うと、今度はマアサが俺の部屋に飛び込んできた。

「アリスは!?アリスはどうしましたのっ!!」

嘘をついても仕方がないな…

「何者かに誘拐された。」

俺が言うと、マアサがその場にへたりこんだ。
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