上 下
64 / 68

好きとか嫌いとか2

しおりを挟む
お兄様は次の日で終了した。

雑用で働いてた分の給金を貰ったけど、ものすごい額!!

「あの、こんなに貰うのはちょっと…、遠慮したいんですが…」 
「これでも少ないくらいです。ファビアン王の雑務をこなしていたのですから……。」

書類片付けただけなんだけどな…。
それにしても、見送りに来てくれた皆のようすが少し変な気が…

「どうかしましたか?」
「あの……ここに残っては頂けないでしょうか!」
「え…なんで?」
「いや…その…」
「…ああ…さみしいし…」

目が泳いでる…。王様と仕事をするのが怖いんだ…。さては私の役目を引き継ぎたくないんだな。


「アリス」
「はい。」

マアサ様が私に寂しそうに言った。

「貴女がお姉様になる…そんな日は来そうにありませんわね。」
「はい…。マアサ様、今日までありがとうございました。」
「…『様』を付けずには呼ばないのね。」
「庶民ですから。では、失礼します!」

そう、私はもともとお兄様じゃない。城下の娘だ。住む世界は違う。


カタカタと馬車が揺れる。

「あの…王様、馬車に乗ってまで送ってくれなくても大丈夫ですが…。」

何故か王様は馬車にいて、2人きりだったりする。護衛はいらないのかな…。まさか、最後のお仕事!!

「アリス…1つ、言い残した事があった。」
「…何でしょうか。」
「俺は変人だ。」
「ん…?変な人じゃないですよ。何を言ってるんですか。」
「…解らないままでいい。」
「そうですか…」

そんな風には見えないけど。
何だか寂しそうだし。

「そういえば、宿題。答えはなんだったんですか?」

マアサ様の宿題の答えも忘れてた。

「答え…、そうだな。もし今度会えたとしたら答え合わせでもするか。」
「今度…」

もうそんなのないのに…。

「わかりました!考えておきます!」

カタカタと揺れていた馬車が止まった。

「王様っ!これからも王様を頑張って下さい!」
「王様を頑張る…。」
「王妃探しも、世継ぎ問題も、政も、まぁ色々やるのが王様です。買い食い出来ない職業。」
「買い食いは出来ないな…。」
「…食べたかったなら、私と出掛けた時に食べればよかったんですよ。最後のチャンスだったんです。」
「……」

何でそんな寂しそうな顔をするんだろ。

「来年の祭の日はトウモロコシ食べながら手を振ります!じゃあ、今日までありがとうございました。」
ゴンッ
「イタっ!」

…ドアで頭を打ってしまった。最後にかっこよく帰るはずが…。

「…はは…っさようならっ!!」
「アリスっ!!」

王様に呼ばれたけど、止まらなかった。

いつもの買い食いコースを駆け抜けて、まっすぐ家に帰った。

お金だっていっぱいもらったし、帰る時は何を買おうか決めてたのに、何も買わずに帰ってきた。

「はは…頭強く打ったのかな、涙が…。これくらいで、変なの。」
しおりを挟む

処理中です...