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お祭り2

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「お兄様。ちょっとキョロキョロしすぎではなくて?」
「……」
「ずっとアリスを探してますけど、来てないという事もありえますからね。」

…その通りではあるが。

「お前は、酷い事しか言わないな。」
「アリスの事に関してだけですわ。会いに行けばいいものを。おまけに想いも告げてないだなんて。年齢を考えて下さい。ここでアリスを見つけられなければ、他の女性と結婚ですわ。」
「…もうお前が王になってもいいと思うぞ。その性格。」

アリスはいるだろうか。
焼きトウモロコシというのを食べていたとしても、俺を見に来ているかだなんて解らない。
俺もいつまでも女々しい男だ。
マアサが言うとおり、会いに行く事は出来たが、そうしなかった。

『嫌だ』
と、本心で返事が出来るだろうか。城にいる時と状況は違う。
王と城下の娘、まわりがそれを見ている。断ったとなれば、それはそれで居心地が悪いはずだ。

「私…見つけましたわ。」
「っどこだ!!」
「あの木の上、アリスですわ。」
「…木の上?」
「私達が見つけ易いうえに、私達を長い間見ていられる位置ですわね。」
「…あの女の子がアリスか?」
「お兄様、あれから1年もたっているのですよ。18才の女の子は好きな人に見てもらう為に可愛くなりたいのです。」
「…俺か?」
「…本当にポンコツですわね。でなければ、友も連れずに1人で見ている訳がないでしょう。」
「………」
「何をしてるのですか。アリスを見て手を振りなさい。お兄様、こちらが動かなければ、向こうからは気がついてくれてるかなんてハッキリ見分けなんてつきませんわよ。このまま馬車に乗るおつもりですか。」
「そうだな。」

俺は振り返ってアリスにわかるように手を振った。


・・・・


う~ん、気がついてくれるかなぁ。
王様とマアサ様、2人とも目が悪かったら気がついてもらえない…って、…気がつくわけないし、探そうともしないか。

パレードが始まる。
沢山の護衛の中でも、2人が笑って手を振ってる。
沿道で皆も手を振ってる。私もあの中にいた方が良かったかもしれない。でも、高い所からなら長い間2人をみていられる。気が付いてもらわなくてもいい。

もともと王様とお姫様は、遠い存在なんだ。

城にいた時と同じような服を来てくればよかったかな…。そうすれば、見つけてもらえたかもしれない。
やっぱり、気が付いてもらいたかったかな。

好きとか嫌いとか、よくわからない。

でも、女の子って言われたいのは、王様になんだ。

もうすぐ、馬車にのる。乗ったらもう見えない。

もう来年はこの木の上には来ない。

王様の事を見たらきっと考える。

「奇跡的に結婚してくれる人、それが王様だったら本当に奇跡だよ…」

あの時、馬車で別れる時、何で聞かなかったんだろう。
『変人て何?』って。
宿題だって、答え合わせは2度と出来ないんだって解ってたのに、何でもっと聞かなかったんだろう。

自分を好きな人に対して失礼だ。
その通り。

私は頑張ってなかったんだ。女の子である事を。


「……?」

目があった気がした。
振り返って手をふってくれた気がした。

そんな気がした。

王様が大声で誰かに言った。

「明日、散歩するっ!!」

…おさんぽ

「俺達しか知らない場所だ!!」

これは私に言ってるのかな…?

「これは命令じゃない。」


そう言って馬車に乗ってしまった。


まわりの人は「散歩って、なんだ?」「俺たちしか知らないって」「誰にいってたんだ?」…そういって、ザワザワしてる。


何でもいい、明日行ってみよう!
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