この婚約、白紙に戻させていただきます

シンさん

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王城3

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 目を覚ますと夜だった。

 今日あった事は夢なんじゃないかって、夜空だけ見ていたら、そう思う。

 けど、手首を見たらブレスが着いていて、現実なのだと思い知らされる。



 ガスパールが死んだ……。

 例え生きていたって別の女と結婚してたんだし、どっちでもいいけど。

「……っ」

 でも、好きだった人が死んだって聞かされるのは、やっぱり辛いかな。
『好きだった』って過去形にしてるけど、今日の朝まで結婚するのを楽しみにしてたのに、気持ちの整理がつかない。最悪な誕生日よ。

 ガスパールの事で泣くなんて悔しいけど、涙が溢れてくる。


 裏切られたのを知って、頭に血が上った。
 もし逢魔が刻の森で、レナード本人が転移魔法を使っていたら、ブレスの力があっても王城に連れて来れなかったはずなのに。私の方が魔力が強いんだから、レナード程度の魔法に引っ張られることは無かった。
 今、魔力も体力も少ない私は、どこにも行けない。


 ……ブレスを外して1人になりたい。


 ベッドの縁に座って月を眺めていると、レナードが部屋に入ってきた。

「良かった!目を覚ましたんですね。体の具合はどうですか?痛むところはありませんか?」
「問題ないわ」

 私の顔を覗き込むレナードは、心配してるような表情はしてるけど、本心はどうだか解らない。

「……リュシル、泣いていたんですか?」
「だったら?」
「……」

 暗闇で見ると、ガスパールと見分けがつかないくらいソックリ。そんな男と結婚しろだなんて、どれだけ私を侮辱すれば気が済むの。

「貴方のお兄様の所へ連れて行って。治してあげるわ」
「魔力が殆ど残っていないのに、治癒魔法なんて不可能です。死んでしまいます」
「なら、好都合だよね。私が死ねばこのブレスもはずれるし、貴方に損はないでしょ」
「俺はリュシルの死など望んでいません」

 そんなの、どっちでもいい。もう私に生きてる意味なんてないから。行く宛も帰る宛もない、私を知ってる人は誰もいない。ただ、孤独なだけだもの。
 レナードがどれだけガスパールに似ていても、この人は違う。初対面の知らない男の人。

「後1年、逢魔が刻の森にいられれたら、ガスパールに好かれていなかった事を知らずに死ねたのに」
「……っ」
「『幸せになって』って、何の冗談なの?ガスパールは自分だけ言いたい事を言って、スッキリして死ねたでしょうね。でも私は、永遠に許さないし、一生幸せになんてなれない」

 レナードが悪いわけじゃない。それは解ってるけど、怒りをぶつけたい相手が生きていない。私は20才の女なのよ。笑って許せるわけないじゃない!!

「私が幸せになる時は、このブレスが外れる時よ。貴方は、私が幸せになる姿をどうやっても見れないの」
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