とある少年の奮闘記

シンさん

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到着2

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ああいうの、歴史とかで習ったことがある。

植民地にした土地に住む人間を『野蛮人』だとか言って、酷い事をする…って。
もしかして、さっきの男の子が言ってた『父ちゃんを返せ』って…
奴隷とかで売られたとか…?
この状況なら、ありえる。

歴史で習った事が目の前で起きてる…。どこへ行っても、人間の思考回路なんて大して変わらない…。

「おい!お前っんん!?」

人だかりに向かって叫ぼうとしたら、レイモンドに口を塞がれて馬車に連れ戻された。

「…っ何すんだよ!あんなの人間のすることじゃねぇだろ!止めろよっ!!」
「ジーク様、この土地で目立った行動は慎んでください。」
「目立つって、ちょっと注意するだけだろ!」
「それを止めてください。」
「何でだよ!よくわかんねぇけど、お前らは強くて偉い奴なんだろ?それに、俺は王子なんだから、言ったら止めるだろ!!」
「ええ、何とかなるでしょう。ですが、貴方が王子であると知られてはいけないのです。」
「…どういう意味だ?」
「王子だと知られてしまえば、原住民の怒りの矛先は全てジーク様に向けられます。今、この場をおさめたとしても、誰からも感謝などされません。」
「別に、感謝されたくて言ってる訳じゃない。」
「この土地にいる本国民には、ジーク様の顔と名前を知ってる人もいるでしょう。」
「だったら、結局バレるんだから同じじゃねぇか!」
「人がいる所では、私とトマスはジーク様をアースと呼び、私の弟子として扱います。」
「そんなの、船で言っとけばいいだろ。30日もあったんだから。」
「船で言って機嫌を損ねられると、困るからです。船酔いで体力もなくなっているのに、『私の弟子扱いをする』と言えば怒りで暴れまわるでしょう。」
「……」

それくらいで、暴れまわるのか…。ジークが嫌われるのが理解できる。

「……解った。」

俺だって『王子なのを隠して生きていこう』って思ったんだし、俺の中身は王子じゃないんだから、あまり考えないでおこう……



考えないように…って思っても、頭から簡単にはなくならない。

勝手に『この土地は今日から俺のものだ!』って乗り込んだのはタマゴヤキ王国なんだったら、最低だ。

俺は、その最低な国の王子なんだ…。

「ジーク様、着きましたよ。」
「うん…」

ジーク…、俺はこれからこの名前で生きていかないといけないのか。あっ!!そうだ!!人前では別人の扱いをするからアースって呼ぶって言ってたな。それを『小太郎』に変更してもらえば良いんじゃね?

「トマス、レイモンド、俺の事はジークでもアースでもなく『小太郎』って呼んでくれ。」
「『コタロー』…構いませんが、それに何か意味があるのですか?」
「別にない。ただ、ジーク以外の名前で呼ばれるなら、それがいいと思っただけだし。」
「解りました。珍しい名前ですが、希望通りに致します。」
「人がいてもいなくても、この土地では『小太郎』って読んでくれ。様も何もいらない。ただの『小太郎』だ。」
「そう仰るなら…」

話を終えて馬車を降りて見たものは、デッカイ家だった。
新しいし、最近建てたのか。俺をここに住まわせるために。
いや、建物が大きくても小さくても、そんなのはどっちでも良い!

「風呂はあるのか?」
「あります。」
「トイレは!?」
「……」
「無いのか…?」
「ここは本国の城とは違いますので。建物以外の敷地内は、全てお手洗いと思って頂いても構いません。」

トマスがケロっとした顔で言った。

敷地の庭が便所…って、平安時代かよ!!

まぁ、馬車の窓から外を見てたけど、畑と木以外何もなかったし、期待はしてなかったけどもさ。
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