とある少年の奮闘記

シンさん

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耕しましょう

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「でっかい家だな…」

平屋だけど、部屋は沢山ありそうだ。
……トイレはないけどな。

家具もあるし、すぐに住めるようにはしてあるのか。

「なぁ、今日の夜ご飯はどうすんの?」
「肉を焼きます。」
「船の時と変わらねぇ!!」

トマスに突っ込む俺を見て、レイモンドが笑ってる。
珍しいな。

「明日は私がパンを焼いて、野菜が沢山入ったスープもご用意しておきますよ。」

おお!ついに野菜と巡り会えた!!

「それなら、今日はカリカリ肉で我慢する。ところで、明日からは俺は何をしたらいいんだ?強制的にここに送られたのは、理由があるんだろ?」
「……」
「……」

トマスとレイモンドは何故か答えない。

まさか、俺は邪魔者扱いされて追放されたんじゃ…。
いや、ありえる。気に入らないことがあると暴れる王子なんて、邪魔でしかない!
このままでは、この2人も愛想を尽かして帰ってしまうかもしれない。すでに、愛想尽かされてるんだけども!

「よし!明日から農業を始める!」

この場所で出来る事なんてそれしかない!

「……あ、もしかして俺の土地って、この敷地だけ?」
「いえ、この辺りはジーク……コタローの土地ですので、自由に使って頂いて構いません。」
「なら、明日から俺らは農家だ!!」

……どうやって作物育てるのか解らないけど、そこは取説様が助けてくれる事を期待しよう。



次の日
農具を買うために俺達は出かける事にした。

昨日取説を出そうとしたら出てこなかった。
この魔法、結構細かい所まで的をしぼらないと機能しないらしい。
全然役に立たない!
ギフトで役立ってるのって、今のところ言語のみな気がする…。

馬車の窓を覗いていると、畑を耕している人が何人か見えた。

「レイモンド、あの人達は何を作ってるんだろうな。」
「聞いてみましょうか?」
「うん。」

畑に行くのはトマスと俺だけ。レイモンドは馬車を見ている。

「こういう話はレイモンドが聞いた方がいいような気がするけど……」
「何かあったらどうするんですか。」

農民が襲いかかってくるとは思わないけど、そうだとしてもトマスは護衛だからついてくるよな。

「すみませーん。」

畑に入るのも悪いと思って、近くにいるおっちゃんを呼んだけど無視されてしまった。

「絶対、聞こえてるよな?」
「はい。」
「仕事の邪魔をするのは悪いし、馬車で少し待ってよう。」

トマスと馬車に戻ろうとした時、畑の方から叫び声が聞こえてきた。

「すみません!申し訳ございませんでした!」
「うるさい!このクズ野郎!働かざる者食うべからずだ!テメェは当分、飯ぬきだ!」

畑からは原住民とは違う、俺みたいに肌が白くてヒョロヒョロっとした男が怒って出てきた。

「全く、あれはもう捨て時だな。」

小さな声で言ったのが、俺には聞こえた。

捨て時…?

「トマス、何を捨てるんだと思う?」
「奴隷でしょうね。」
「……奴隷って、この働いてる人って奴隷なのか?」
「この畑の所有者が、タマゴヤキ王国の人間のようなので、恐らく…」

何か、昨日からこういうのばっかりでうんざりする…。


酷い事を言ってたオッサンは、俺達に目もくれず行ってしまった。

「ここで話を聞くのは無理ですね。馬車に戻りましょう。」
「何で?畑にいる人に聞けばいいだろ。」
「私達と話せば、きっとあの者達は罰を受けます」

それはダメだ。

「仕方がない。とりあえず、農具を買いに行こう。」


諦めて市場に向かったけど、農具は売ってなかった。

「さっきの畑で使ってたヤツは、どこで手に入れたんだろう。国から持ってきたのか?」
「そうですね。色々思うところはありますが、邸に帰ってからにしましょう。」
「うん。何か食うもん買って帰りたいけど、それもあんまり売ってないな。」
「自給自足が多いのでしょう。邸には週2日、食材が運ばれてきますので問題ありません。」
「ふーん」

お金持ちって召し使いとかが買い物にいくんじゃないのか。でも、あの邸には召し使いがいないな。

「なぁ、これからあの家に3人で住むのか?」
「その予定ですが、何か問題でもございますか?」
「いや、別に…」

俺の事を嫌ってる2人と一緒にいるのもつまらないし、誰か家にいて欲しい!
そうだ!
「料理人を雇おう!」
「料理ならレイモンドが作ります。」
「じゃあ…、掃除を…してくれる人とか…」
「私とレイモンドでやります。」

トマスめ、断るにしても、もうちょっと話を聞いてくれてもいいだろう!さては、俺への嫌がらせか?

「ん…?」

寂れた市場なのに、一ヶ所だけ盛り上がってる場所がある。

「今日のラスト、1番粋の良い品だ!」

『いきの良い品』って、美味い物でも売ってんのかな?

「トマス、見に行こう!!」

トマスの返事を聞かず、走ってその場所へ向かった。
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