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奴隷市
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「え……?」
木箱をいくつか束ねた所に布をひいて、そこに乗っていたのは俺と同じくらい年の男だ。
裸で両手を縛られ、首には犬のリードみたいにロープをつけられている。
奴隷がいるなら、奴隷を売ってる所があるのは当然だ…。
競りなのか、まわりからは金額が聞こえてくる。
最高額は1ゴールドだった。
取説では、1ゴールドは現在の日本円だと15万前後って書いてあった…。
客はきっと金持ちだから、もっとお金は出せる。けど、奴隷に15万以上は使いたくない…、『この人間の一生は15万以下の価値しかない』って、コイツらはそう思ってるんだ。
ムカつくっ!
こんな奴らに使われるくらいなら、俺のとこにいた方が少しはマシだし、家に返してやれるかもしれない!
「10ゴールドっ!!」
1番後ろにいる俺が叫ぶと、皆が一斉に振り返った。
あ、まずい…
目立ってる。俺の顔を見てジークだと気付く奴がいるかもしれない。
「コタロー!勝手に彷徨くなっ!!」
走ってきたトマスに、ゴンっと頭を殴られた。
「ぐぁ……っ」
タマゴヤキ王国一の剣士のゲンコツは痛いっ!!
「おやおや、私の弟子が少年を買ってしまいましたか。」
レイモンドとトマスの姿を見て、奴隷市にいた奴らがざわめいている。こいつら2人も相当有名人だよな。
俺だけ名前隠したって、意味なくないか?
「貴方達が何故この島に?」
「そんなにおかしな事では無いと思いますが。私は陛下から、この島の調査を命じられいます。そして、トマスは私の護衛です。」
「ですが、トマス様は王子の護衛では…?」
「俺はジーク殿下の護衛の任から解放されるために、自ら志願してこの島へ来た。」
「ああ、なるほど。」
納得されてる!
トマスがジークを嫌いって事を皆が知ってるから納得してんのかな。それとも、『我が儘な王子の護衛なんて誰もやりたくないだろうから当然だ』って事か?
どちらにしろ、ショックだ…。
「さて、10ゴールドでしたね。お支払しますので、少年の縄を解いてください。」
レイモンドの冷たい笑顔に、客が固まってる。その間にトマスがズカズカと歩いていって、少年の縄を剣で切った。
剣の動きが殆んど見えなかったけど、あれは人間技なのか…。
市場に長居したくなかったので、俺達はすぐに馬車で出発した。
「なぁ、名前は何て言うんだ?俺はコタロー」
「……」
「家どこ?」
「……」
「腹へってない?」
「……」
何も喋らないぞ…。
俺の喋ってる言葉が解らないのかも。
「なぁ、レイモンド。この子って何語喋んの?」
「……コタローこそ、何語を喋っているのですか?」
「へ?何って、別にいつもと同じ……」
……じゃないのか?
俺はタマゴヤキ王国の言葉は日本語で聞こえているし、喋る時も日本語。
もしかして、通訳機能が全言語に自動発動している!?
まずいぞ、レイモンドが鋭い目で俺を見てる…。偽ジークだと気付かれたらどうしよう。
無視だ無視。
「家、ここから遠いのか?近かったら今から送って行くけど。」
何か喋ってくれ!
レイモンドの気を引いてくれ!
「……だ」
「…だ?」
「ムリだ…」
「何で?」
「村…焼かれた…。家もないし、家族も全員売られた。」
「えっ!?さっきの場所に家族もいたのか!?」
「いない」
そう言って、首をふった。
「じゃあどこに?」
「わからない…。女と子供は売る場所が違うって。俺はもう16だから、大人と一緒に連れてこられた。」
「親父は?いないのか?」
「アイツらに殺された…」
「……」
抵抗したんだ。だから、殺された。人を奴隷として売る奴が、人を殺すのを躊躇うわけがない。だって奴らにとって奴隷は物なんだから。
「コタロー、彼は何と言ってるのですか?」
「村が焼かれて、父親は殺されて、家族は別の奴隷市で売られてるって…」
「では、どうしますか?」
「どうするって?」
「コタローが買ったんですから、コタローが決めてください。」
俺が買った……。
嫌な言い方だな。
けど、その通りだ。人を買ったのはタマゴヤキ野郎達と変わらねぇ。
家に帰してやれると思ってたから、あまり具体的に考えてなかった。どうしようかな…。
「畑仕事出来る?」
「出来るけど…」
「じゃあ、俺と一緒に畑を耕す一員として働いてくれない?」
「……あんたも耕すの?」
「うん。ただ、何を植えたら良いかわからねぇし、知ってたら教えてくれ。」
「顔の皮がカサカサになってるけど、日焼けに耐えられるのか?」
「何か日焼けに効く薬とかある?」
「ない。この島で日焼けに負けるヤツなんて、見た事ない。」
「新たな記憶の1ページに、『日焼けに弱いコタロー』という名前を刻んでおけ。」
木箱をいくつか束ねた所に布をひいて、そこに乗っていたのは俺と同じくらい年の男だ。
裸で両手を縛られ、首には犬のリードみたいにロープをつけられている。
奴隷がいるなら、奴隷を売ってる所があるのは当然だ…。
競りなのか、まわりからは金額が聞こえてくる。
最高額は1ゴールドだった。
取説では、1ゴールドは現在の日本円だと15万前後って書いてあった…。
客はきっと金持ちだから、もっとお金は出せる。けど、奴隷に15万以上は使いたくない…、『この人間の一生は15万以下の価値しかない』って、コイツらはそう思ってるんだ。
ムカつくっ!
こんな奴らに使われるくらいなら、俺のとこにいた方が少しはマシだし、家に返してやれるかもしれない!
「10ゴールドっ!!」
1番後ろにいる俺が叫ぶと、皆が一斉に振り返った。
あ、まずい…
目立ってる。俺の顔を見てジークだと気付く奴がいるかもしれない。
「コタロー!勝手に彷徨くなっ!!」
走ってきたトマスに、ゴンっと頭を殴られた。
「ぐぁ……っ」
タマゴヤキ王国一の剣士のゲンコツは痛いっ!!
「おやおや、私の弟子が少年を買ってしまいましたか。」
レイモンドとトマスの姿を見て、奴隷市にいた奴らがざわめいている。こいつら2人も相当有名人だよな。
俺だけ名前隠したって、意味なくないか?
「貴方達が何故この島に?」
「そんなにおかしな事では無いと思いますが。私は陛下から、この島の調査を命じられいます。そして、トマスは私の護衛です。」
「ですが、トマス様は王子の護衛では…?」
「俺はジーク殿下の護衛の任から解放されるために、自ら志願してこの島へ来た。」
「ああ、なるほど。」
納得されてる!
トマスがジークを嫌いって事を皆が知ってるから納得してんのかな。それとも、『我が儘な王子の護衛なんて誰もやりたくないだろうから当然だ』って事か?
どちらにしろ、ショックだ…。
「さて、10ゴールドでしたね。お支払しますので、少年の縄を解いてください。」
レイモンドの冷たい笑顔に、客が固まってる。その間にトマスがズカズカと歩いていって、少年の縄を剣で切った。
剣の動きが殆んど見えなかったけど、あれは人間技なのか…。
市場に長居したくなかったので、俺達はすぐに馬車で出発した。
「なぁ、名前は何て言うんだ?俺はコタロー」
「……」
「家どこ?」
「……」
「腹へってない?」
「……」
何も喋らないぞ…。
俺の喋ってる言葉が解らないのかも。
「なぁ、レイモンド。この子って何語喋んの?」
「……コタローこそ、何語を喋っているのですか?」
「へ?何って、別にいつもと同じ……」
……じゃないのか?
俺はタマゴヤキ王国の言葉は日本語で聞こえているし、喋る時も日本語。
もしかして、通訳機能が全言語に自動発動している!?
まずいぞ、レイモンドが鋭い目で俺を見てる…。偽ジークだと気付かれたらどうしよう。
無視だ無視。
「家、ここから遠いのか?近かったら今から送って行くけど。」
何か喋ってくれ!
レイモンドの気を引いてくれ!
「……だ」
「…だ?」
「ムリだ…」
「何で?」
「村…焼かれた…。家もないし、家族も全員売られた。」
「えっ!?さっきの場所に家族もいたのか!?」
「いない」
そう言って、首をふった。
「じゃあどこに?」
「わからない…。女と子供は売る場所が違うって。俺はもう16だから、大人と一緒に連れてこられた。」
「親父は?いないのか?」
「アイツらに殺された…」
「……」
抵抗したんだ。だから、殺された。人を奴隷として売る奴が、人を殺すのを躊躇うわけがない。だって奴らにとって奴隷は物なんだから。
「コタロー、彼は何と言ってるのですか?」
「村が焼かれて、父親は殺されて、家族は別の奴隷市で売られてるって…」
「では、どうしますか?」
「どうするって?」
「コタローが買ったんですから、コタローが決めてください。」
俺が買った……。
嫌な言い方だな。
けど、その通りだ。人を買ったのはタマゴヤキ野郎達と変わらねぇ。
家に帰してやれると思ってたから、あまり具体的に考えてなかった。どうしようかな…。
「畑仕事出来る?」
「出来るけど…」
「じゃあ、俺と一緒に畑を耕す一員として働いてくれない?」
「……あんたも耕すの?」
「うん。ただ、何を植えたら良いかわからねぇし、知ってたら教えてくれ。」
「顔の皮がカサカサになってるけど、日焼けに耐えられるのか?」
「何か日焼けに効く薬とかある?」
「ない。この島で日焼けに負けるヤツなんて、見た事ない。」
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