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ニーナとボナース院2
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「まだ伯爵には伝えていません。」
そう私が言うと、やっぱり…と言いたそうな顔をしてる。
「教えて頂きたい事があるのですが、ここに支援金を届けてる方のお名前はわかりますか?届ける人が変わったとか。」
「男が2人と女が1人。1人はショーンとか名乗ってたね。他は知らない。」
「ショーン…他2人の特徴はありますか?」
「もう1人は護衛、女は髪を束ねた細身…あんたより細くて年齢は50近い。見た感じ。」
「ずっとその3人でしたか?」
「いや、女は6ヶ月前だね。」
その人が盗みを始めたんだわ…。
ボナースは『支援金がへった』と言われれば『そうなのか』と受け入れるしかないもの。
「受け取りの控えは?」
「これさ。」
ミラノさんが持って来た控えには2000ニードルと記入されているけど…用紙が安すぎるわ。控えといっても、伯爵がこんな安い紙を使わないよね。紙の質はマールくんのお喋りノートくらいだわ。
「2枚持ってきて、1枚はここにもう1枚は伯爵に受け取り証明として持って帰ると思うんですが、用意されているのは両方同じものですか?」
「そうじゃなきゃ受け取らないよ。」
…そりゃそうだよね。馬鹿な質問をしてしまったわ。
「これ、お借りしてもいいかしら?」
「ああ、構わないよ。」
「あかりがとうございます。」
1つ前進よ。これがあれば、すり替えられてる…ってわかるとは思うけど、伯爵のもとへ届けられているのは誰かがサインをした『本物』よね。
院か勝手に作ったのでは?という疑惑をぬぐうために、あと少し何かが欲しいわ。
「いつも資金が届けられる日は決まってますか?それと午前中と午後は?」
「月始め、1日だよ。時間は昼15時くらいだね。」
「資金が減ったのは何ヵ月分ですか?」
「3ヶ月だよ」
3ヶ月…6ヶ月分ではなく3ヶ月…。人が変わってから、すぐに額が減ったと思われたくないから?それとも他に何かあるのかしら。
う~ん…
悩むより院長のお話だわ。
「少し皆と話をしてきてもいいですか?」
「ああ、その方がこっちも楽だ。けど、甘く見ない方がいいよ。」
ミラノさんはニヤっと笑って部屋から出ていった。
…その訳がわかったわ。
男の子達はバタバタとはしゃいでるし、女の子は人形遊び。私が部屋に入ってきたからといってお構い無し…。
ここの状態で『お菓子持ってきたから食べよう』なんて言えば、どうなるかしら。
ボナースのリーダー格と話さないと。そうしなきゃ始まらないよね。
「お菓子を持ってきたんだけど、皆で食べませんか。って聞いてみてくれる?」
「うん。」
側にいた子に言うと、1番背の高い女の子に伝えにいった。
作戦成功だわ。
何事も、話はリーダーとしないと。
「お菓子を持って来てくれたんですか。ありがとうございます。」
「はい、これ。それを食べながら院長のお話を聞かせてもらえますか?」
「では、さようなら。」
…え?
「みんなー!おやつよー!」
そう言って、リーダーは行ってしまった。
やるわね。
お菓子はもらうけど、話をするつもりはないって事ね。
でも、残念ね。こちらだって、ただであげるつもりなんて更々ないわ。ある程度の年齢、物事の良し悪しが判断出来る子には、少々甘えは捨てもらうつもりよ。
「ちょっと!中身がないじゃないっ!!」
皆に分け与えようとするリーダーの女の子が、私に怒って近付いてきた。
「その袋に『おやつ』が入っているだなんて言ったかしら。」
中身は小さな砂袋。
こうなるんじゃないかって少し思ってたから、本物は別の所に置いたのよね。子供が
絶対開けないところへね。控えが盗まれたりしては困るから、ミラノさんが子供達に手が届かない棚に入れてくれたわ。
「嘘をついたの?」
「あら、ただであげるなんて私は一言でも言ったかしら。あなたの早とちりでしょう?」
「嘘つき!」
「何故?あなたが私の話を聞いてくれなかったのに、嘘つき呼ばわりとはいい度胸ね。泥棒扱いに泥団子、私なんて何もしていないのに不当な扱いを受けたわ。」
「知らないわよ!そんなの!」
「そうね、『ボナースの子』は、人の話を聞けないのかしら?それとも、聞くつもりはないのかしら。人を泥棒扱いしておいて、違うと弁解しても聞いてくれない。そして許してくれない。案外周りの人と何も変わらないのね。残念だわ。」
「うるさいっ!!出ていけっ!みんなこんな女の相手するんじゃないわよ!」
ああ…怒らせちゃったわ…。これはお話を聞くのは無理ね。
リーダーが『駄目』って言ったら、お菓子を食べたい子も『欲しい』って言えなくなるよね。
可哀想な事をしているけれど、私に対して自分が受けてきた事と同じ事をしていたのだと自覚してほしいのよね。
やられたらやり返す。その精神は嫌いではないわ。
でもそれは相手によるわ。
自分を苦しめた人、あるいは強い相手よ。なんの関係もない人をターゲットにしては駄目よね。
「あなた…年齢はいくつ?見たところ15、16才くらいかしら。小さい子のする事を注意もせず見ていていい年ではないはずよ。ここを取り仕切ってるのはあなたなのでしょう。」
…話も聞かなくなったわ。
育ってきた環境がちがうんだから、たとえ私が正論だと思う事を言っても、この院の子達の受け止め方は違うよね。
私は何でも手に入る生活をしていた。この子達は何でも我慢する生活をしてきた。
偉そうに言っても、その差は天と地ほども違う…。
この子達は知るべきだわ。
人とうまく付き合う術を。じゃないと次は『ボナースにいた子だから…』とか言われてしまう。18才になったら牢に入る事になるかもしれない。
…この国は王子ですら人を2ヶ月放置出来るような心の持ち主だもの。恐ろしい国よ。
しかもいなくなった私を探していないかもしれない可能性が見受けられたわ。個人的には嬉しいけど、人として最低よ。
…院長不在。腹が立ってきたわ。
仕事をしないで何処をうろついているのかしら。
敵意を向けられてるし、ボナース院にもう
来ても大した情報は得られないし、相手にもしてもらえないわね。
お金もなくなっちゃうし、もう来なくても何とかなるでしょ。
そう私が言うと、やっぱり…と言いたそうな顔をしてる。
「教えて頂きたい事があるのですが、ここに支援金を届けてる方のお名前はわかりますか?届ける人が変わったとか。」
「男が2人と女が1人。1人はショーンとか名乗ってたね。他は知らない。」
「ショーン…他2人の特徴はありますか?」
「もう1人は護衛、女は髪を束ねた細身…あんたより細くて年齢は50近い。見た感じ。」
「ずっとその3人でしたか?」
「いや、女は6ヶ月前だね。」
その人が盗みを始めたんだわ…。
ボナースは『支援金がへった』と言われれば『そうなのか』と受け入れるしかないもの。
「受け取りの控えは?」
「これさ。」
ミラノさんが持って来た控えには2000ニードルと記入されているけど…用紙が安すぎるわ。控えといっても、伯爵がこんな安い紙を使わないよね。紙の質はマールくんのお喋りノートくらいだわ。
「2枚持ってきて、1枚はここにもう1枚は伯爵に受け取り証明として持って帰ると思うんですが、用意されているのは両方同じものですか?」
「そうじゃなきゃ受け取らないよ。」
…そりゃそうだよね。馬鹿な質問をしてしまったわ。
「これ、お借りしてもいいかしら?」
「ああ、構わないよ。」
「あかりがとうございます。」
1つ前進よ。これがあれば、すり替えられてる…ってわかるとは思うけど、伯爵のもとへ届けられているのは誰かがサインをした『本物』よね。
院か勝手に作ったのでは?という疑惑をぬぐうために、あと少し何かが欲しいわ。
「いつも資金が届けられる日は決まってますか?それと午前中と午後は?」
「月始め、1日だよ。時間は昼15時くらいだね。」
「資金が減ったのは何ヵ月分ですか?」
「3ヶ月だよ」
3ヶ月…6ヶ月分ではなく3ヶ月…。人が変わってから、すぐに額が減ったと思われたくないから?それとも他に何かあるのかしら。
う~ん…
悩むより院長のお話だわ。
「少し皆と話をしてきてもいいですか?」
「ああ、その方がこっちも楽だ。けど、甘く見ない方がいいよ。」
ミラノさんはニヤっと笑って部屋から出ていった。
…その訳がわかったわ。
男の子達はバタバタとはしゃいでるし、女の子は人形遊び。私が部屋に入ってきたからといってお構い無し…。
ここの状態で『お菓子持ってきたから食べよう』なんて言えば、どうなるかしら。
ボナースのリーダー格と話さないと。そうしなきゃ始まらないよね。
「お菓子を持ってきたんだけど、皆で食べませんか。って聞いてみてくれる?」
「うん。」
側にいた子に言うと、1番背の高い女の子に伝えにいった。
作戦成功だわ。
何事も、話はリーダーとしないと。
「お菓子を持って来てくれたんですか。ありがとうございます。」
「はい、これ。それを食べながら院長のお話を聞かせてもらえますか?」
「では、さようなら。」
…え?
「みんなー!おやつよー!」
そう言って、リーダーは行ってしまった。
やるわね。
お菓子はもらうけど、話をするつもりはないって事ね。
でも、残念ね。こちらだって、ただであげるつもりなんて更々ないわ。ある程度の年齢、物事の良し悪しが判断出来る子には、少々甘えは捨てもらうつもりよ。
「ちょっと!中身がないじゃないっ!!」
皆に分け与えようとするリーダーの女の子が、私に怒って近付いてきた。
「その袋に『おやつ』が入っているだなんて言ったかしら。」
中身は小さな砂袋。
こうなるんじゃないかって少し思ってたから、本物は別の所に置いたのよね。子供が
絶対開けないところへね。控えが盗まれたりしては困るから、ミラノさんが子供達に手が届かない棚に入れてくれたわ。
「嘘をついたの?」
「あら、ただであげるなんて私は一言でも言ったかしら。あなたの早とちりでしょう?」
「嘘つき!」
「何故?あなたが私の話を聞いてくれなかったのに、嘘つき呼ばわりとはいい度胸ね。泥棒扱いに泥団子、私なんて何もしていないのに不当な扱いを受けたわ。」
「知らないわよ!そんなの!」
「そうね、『ボナースの子』は、人の話を聞けないのかしら?それとも、聞くつもりはないのかしら。人を泥棒扱いしておいて、違うと弁解しても聞いてくれない。そして許してくれない。案外周りの人と何も変わらないのね。残念だわ。」
「うるさいっ!!出ていけっ!みんなこんな女の相手するんじゃないわよ!」
ああ…怒らせちゃったわ…。これはお話を聞くのは無理ね。
リーダーが『駄目』って言ったら、お菓子を食べたい子も『欲しい』って言えなくなるよね。
可哀想な事をしているけれど、私に対して自分が受けてきた事と同じ事をしていたのだと自覚してほしいのよね。
やられたらやり返す。その精神は嫌いではないわ。
でもそれは相手によるわ。
自分を苦しめた人、あるいは強い相手よ。なんの関係もない人をターゲットにしては駄目よね。
「あなた…年齢はいくつ?見たところ15、16才くらいかしら。小さい子のする事を注意もせず見ていていい年ではないはずよ。ここを取り仕切ってるのはあなたなのでしょう。」
…話も聞かなくなったわ。
育ってきた環境がちがうんだから、たとえ私が正論だと思う事を言っても、この院の子達の受け止め方は違うよね。
私は何でも手に入る生活をしていた。この子達は何でも我慢する生活をしてきた。
偉そうに言っても、その差は天と地ほども違う…。
この子達は知るべきだわ。
人とうまく付き合う術を。じゃないと次は『ボナースにいた子だから…』とか言われてしまう。18才になったら牢に入る事になるかもしれない。
…この国は王子ですら人を2ヶ月放置出来るような心の持ち主だもの。恐ろしい国よ。
しかもいなくなった私を探していないかもしれない可能性が見受けられたわ。個人的には嬉しいけど、人として最低よ。
…院長不在。腹が立ってきたわ。
仕事をしないで何処をうろついているのかしら。
敵意を向けられてるし、ボナース院にもう
来ても大した情報は得られないし、相手にもしてもらえないわね。
お金もなくなっちゃうし、もう来なくても何とかなるでしょ。
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